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2023.12.07
建設工事現場の労働者が業務中に災害が起きた場合、受けられる労災保険とは?
労災保険とは、業務中や通勤中にケガをしたり、業務上の理由で病気になったりした場合、亡くなってしまった場合などに、労働者や遺族に必要な保険を給付する制度です。雇用形態に関わらず、一人でも労働者を雇った場合には事業主は労災保険に加入する必要があります。もちろん、建設業でも労働者を雇っている場合には労災保険の加入が必要であり、建設工事現場で労働者が業務中にケガをした場合などは、労災保険の給付対象となります。
しかし、建設業の労災保険は他業種とは異なる特徴があります。
そこで今回は、建設業の労災保険の特徴についてご説明します。
建設業が加入すべき3つの労災保険
建設業の事業主が加入すべき労災保険は3つあります。
工事現場の労災保険
建設工事現場で働く労働者が、業務上または通勤途上で災害に遭った場合に必要な給付を受けるための保険です。現場労災とも呼ばれます。
工事現場以外の事務所や作業場の労災保険
工事現場で働く労働者ではなく、事務所やその他の作業場などで働く労働者が業務上または通勤途上で災害に遭った場合に必要な給付を受けるための保険です。事務所労災とも呼ばれます。
雇用保険
労働者が失業した場合の失業給付や育児休暇取得時の育児休業給付などを受けるための保険です。
以上のうち、工事現場の労災保険については元請事業者が加入します。工事現場以外の事務所や作業場の労災保険と雇用保険については、元請・下請けに関係なく加入が必要となります。
ただし、雇用保険については、雇用契約が31日以上あり、所定労働時間が週20時間以上、学生ではないことなどの加入条件があります。
そのため、加入条件を満たす労働者を雇用していない場合は、加入は不要です。
建設業の労災保険の特徴
建設業の労災保険には、次のような特徴があります。
工事現場の労災保険は、元請企業が加入する
通常、労災保険は、労働者を雇用している事業主が加入します。ところが、建設現場では、複数の請負会社が作業を担うケースが多くなっています。
そのため、建設業の場合は、工事現場を一つの事業体として捉え、元請会社を事業主として扱うのです。したがって、工事現場の労災保険の責任は、元請企業が担うことになります。
工事現場の労災保険には2つの種類がある
建設業は、工事が完了し、建築物の引渡しが終わると事業が終了するため、労災保険では終了が予定されている事業である有期事業に該当します。有期事業も一括有期事業と単独有期事業の2つに分けられます。
一括有期事業として扱うことができる場合、複数の工事や作業を一つの事業としてまとめて処理できるようになります。一括有期事業として認められるためには、次の要件を満たす必要があります。
・事業主が同じであること
・一括しようとする事業の種類が同じ事業であること
・それぞれの事業の保険料の概算見込み額が160万円未満であること
・それぞれの事業の請負金額が1億8,000万円未満であること
・それぞれの事業の労災保険率が同一であること
一方、単独有期事業は一括有期事業には該当しない建設工事です。
つまり、請負金額が1億8,000万円以上の工事や保険料の概算見込み額が160万円以上となる、規模の大きな建設工事は、工事ごとに単独で保険関係が成立することとなります。
建設業は労災保険と雇用保険の範囲が異なる二次適用事業である
労働保険は、労災保険と雇用保険の総称です。ほとんどの事業主では、労災保険と雇用保険が適用される労働者の範囲は同じになるため、労災保険と雇用保険の保険料の申告や徴収はまとめて行われます。
これを一元適用事業と呼び、製造業や販売業など、ほとんどの事業は一元適用事業に該当します。
しかし、建設業の場合は、工事現場の労災保険は元請事業者が加入し、事務所労災と呼ばれる現場以外の労災については雇用元の事業主が加入します。
また、雇用保険は工事現場で働く労働者も工事現場以外の場所で働く労働者も、雇用元の事業主が加入することになります。
そのため、建設業は、労災保険と雇用保険を別々に取り扱う二元適用事業となるのです。
建設業の労災保険の手続き
建設業は有期事業であり、保険の取り扱いでは二次元適用事業に該当します。労災保険の成立続きは、どのように進めればよいのでしょうか。
建設業の労災保険手続きは単独有期事業と一括有期事業で異なる
建設業の労災保険を成立させるためには、単独有期事業も一括有期事業も手続きが必要となりますが、両者の手続き方法には違いがあります。
単独有期事業の労災保険手続き
事業を開始した日から10日以内に、事業を管轄する労働基準監督署に保険関係成立届を提出します。
保険料を計算し、事業開始日から20日以内に概算保険料申告書を提出し、保険料を納付します。
また、事業が終了したら終了日から50日以内に確定保険料申告書を提出し、概算保険料を清算します。
一括有期事業の労災保険手続き
一括有期事業では、事業開始日(最初の工事を開始した日)から10日以内に有期事業を一括する事務所を管轄する労働基準監督署に保険関係成立届を提出します。
保険料を計算し、事業開始日から50日以内に概算保険料申告書を提出し、保険料を納付します。
一括有期事業では、年度更新と呼ばれる手続きが必要であり、毎年、6月1日~7月10日に前年度の確定保険料の申告と清算、当年度の概算保険料の申告・納付をします。年度更新の手続きが遅れた場合、政府が労働保険料と一般拠出金の額を決定することとなり、
さらに追徴金を課される可能性があるため、手続きを忘れないようにしましょう。
労災保険の保険料の計算方法
労災保険の保険率は、労災のリスクによって決定されます。
そのため、建設業の場合、工事の内容によって異なる保険率が適用されます。
建設業の現場労災は、元請事業者が下請事業者の労働者の分も含めて責任を負います。労働保険料は、原則として「労働者の総賃金額×労災保険率」で算出しますが、元請事業者が下請事業者の賃金まで正確に把握するのは難しいケースもあります。
そのため、建設業の現場労災の保険料は、元請企業が把握できる請負金額に所定の労務費率をかける「請負金額×労務費率×労災保険率」の計算式で求めることが認められています。(労務費率は事業の比率によって細かく決められています。)
複雑な建設業の労災保険の手続きは専門家のサポートを
工事現場の労働者の業務中や通勤中の災害については元請事業者が手続きを行いますが、事務所や作業所などで工事現以外の労働に従事する従業員がいる場合は、現場労災とは別に事務所労災の手続きを取らなければなりません。また、工期が延長されたり、工事内容が縮小されたりした場合などは保険料も変わってくるため、別途手続きが必要になります。建設業の労災保険の取り扱いは、他の業種と異なることが多いため、手続きは複雑です。
社会保険労務士法人松本は、これまでに多くの建設業の労災保険手続きのサポートを行ってまいりました。複雑な建設業の労災保険手続きにお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
まとめ
建設工事現場の労働者が業務中に災害に遭った場合、元請事業者が加入する現場労災から保険の給付を受けることができます。建設業は、雇用保険と労働保険の適用者の範囲が異なる二元適用事業であり、工事の規模によって一括有期事業と単独有期事業に分けられるなど、複雑な仕組みとなっています。
労働保険の成立手続きや労働保険料の算定に悩む場合には、業務効率を上げるためにも建設業界に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
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