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2024.03.07
建設工事では請負契約書を締結しなければならない?作成の注意点について解説
建設工事では請負契約を結ぶと、契約書を締結することが一般的です。しかし、少額な建設工事などの場合や長い付き合いの取引先との契約の場合、契約書を作成しなくてもよいのではと思う場合があるかもしれません。
では、建設工事では請負契約書の作成義務はあるのでしょうか。今回は、建設工事の契約書の必要性について詳しくご説明します。
契約と契約書とは
契約とは法的な効果が生じる約束のことで、契約書とは取引先との契約の成立と契約内容を証明する文書のことです。
民法第522条1項では、契約が成立することについて次のように示しています。
「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。」
この条文では契約は相手方が契約内容に合意し、契約締結を承諾した場合に成立するとしています。また、契約の成立には特別な定めがない限り、書面の作成は不要であるとも書かれているのです。これは、相手が契約内容に同意をする意思表示を示せば、契約書がなくても契約は成立することを意味します。そのため、契約書が必要な一部の契約を除けば、契約自体は契約書がなくても口約束で成立するのです。
建設工事は契約書の締結義務がある
契約には必ずしも契約書が必要ないことをご説明しましたが、建設工事では請負契約書を締結しなければなりません。それは、建設業法において請負契約締結時には契約書の交付を義務付けているからです。
建設工事では、工事着手前の契約書の作成・交付が必要
建設業法には、請負契約について示す条文が含まれています。建設業法第18条では「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない。」と示したうえで、次に続く第19条1項で、契約書の必要性を次のように説明しています。
建設業法第19条1項「建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従って、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない」
つまり、建設工事の請負契約を結ぶ際には、契約を締結する際に決められた事項を記載した契約書を作成し、発注側・受注側がそれぞれ署名又は記名・押印をした契約書を交付する必要があるのです。
建設工事の契約書を作成する際に記載が必要な事項
建設業法第19条1項において、建設工事の請負契約書に記載するべき内容として示されているのは次の16項目です。
1.工事内容
2.請負代金の額
3.工事着手の時期及び工事完成の時期
4.請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
5.当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
6.天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
7.価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
8.工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
9.注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
10.注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
11.工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
12.工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
13.各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
14.契約に関する紛争の解決方法
書面による契約は、元請負・下請負に係わらず全ての建設工事請負契約について義務づけられています。
15.その他国土交通省令で定める事項
建設工事の請負契約書を作成しなかった場合のリスク
建設工事の請負契約書を作成しなかった場合には、次のようなリスクが発生します。請負契約を締結する際には、必ず契約書を作成しましょう。
建設業法違反となる
建設業法において請負契約を結ぶ際には契約書が必要であると謳われている以上、契約書を交付しなかった場合は、建設業法違反となります。建設業法に違反すれば、国土交通省や都道府県知事から行政指導や処分を受ける可能性があり、経営にも大きなダメージが生じます。
契約内容を巡るトラブルが生じやすくなる
建設工事の請負契約は、工期も長く、比較的契約金額も大きな契約となります。工事の途中で追加費用が発生した場合や工期が延長になった場合について、予め取り決めがなされていなければ、発注者との間で工事代金を巡るトラブルが生じる可能性があるでしょう。また、支払期日や支払い方法が不明瞭であった場合、代金の支払いについてもトラブルが起きる可能性もあります。さらに、工事内容についても認識に違いがあれば、工事途中や工事完成後に大きな問題となるでしょう。
請負契約が平等ではなくなる可能性が生じる
工事の請負契約は、発注者側に有利な形になるケースも少なくありません。しかし、請負契約書では、工期が延期になった場合や設計変更があった場合の工事代金の変更や損害額の負担などについても明確に記述しなければなりません。また、代金の支払い方法や支払い時期などについても明記する必要があるため、請負契約書を作成すれば、平等な契約を結ぶことができます。反対に、請負契約書を交付せずに請負契約を結んだ場合、書面という証拠がないために請負側に不利な契約内容となってしまう可能性が生じるでしょう。
建設工事の請負契約書作成時の注意点
建設工事の請負契約書を作成する際には注意したいポイントについてご説明します。
工事が遅延した場合の違約金について
請負契約書では、建設工事が遅れた場合の違約金の額について記載することが大切です。違約金を適正な額に設定しておくことで、何らかのトラブルが生じた場合にも解決がしやすくなります。
工期の延長に関する規定について
天候不順や発注者側の仕様決定の遅れなどによって工期が延長となった場合は、発注者側の承諾を得ずとも工期の延長ができるようにしておくことが大切です。また、請負側の理由によらず工期が延長になった場合には違約金が発生しない旨についても、言及しておきましょう。
追加工事代金の請求について
追加工事が必要になったり、工事内容が変更になったりした場合などに追加工事代金を発注者に請求できる旨を契約書に盛り込むことも必要です。
近隣からの工事に対するクレームについて
工事を開始したものの、近隣からのクレームで建設工事が中断する可能性があります。工事業者に責任のないクレーム対応は発注者が行うこと、クレームによって工事が中断した場合には工期の延長が認められることについても明記しましょう。
地中障害物や文化財などが発見された場合について
建設工事を進める中で、文化財や障害物などが地中から発見された場合、当初の予定よりも工事費用がかかる可能性が高くなります。地中障害物などの発見によって追加工事代が発生する場合は、発注者に追加費用を請求できるように記載しておきましょう。
まとめ
建設工事の請負契約では、請負契約書を交付しなければならないことが法律で決められています。契約書を交付せずに工事を請け負った場合、建設業法違反になるだけでなく、発注者と受注者の間でトラブルが生じる可能性も高くなります。建設工事の請負契約を結ぶ際には、必ず契約書を作成するようにしましょう。
契約締結後のトラブルを避けるためにも、請負契約書は記載すべき項目を漏れなくカバーすることが大切です。請負契約書を作成する際には、トラブルになる前に建設業法などに詳しい専門家にアドバイスを受けるとよいでしょう。
税理士法人松本には、建設業に詳しい税理士や行政書士が在籍しています。請負契約書の作成についてお悩みの際には、お気軽にご相談ください。経験豊富なスタッフが、プロの視点からお悩みにアドバイスをさせていただきます。
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