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2023.05.04
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2023年4月1日から月の残業60時間を超えると時間外労働の割増賃金率が引き上げられます

働き方改革の推進により時間外労働の上限規制が導入され、長時間労働の是正が進められています。また、月60時間を超える残業が発生した場合は、企業は従業員に対し、従来の割増率よりも高い割増率で賃金を支払わなければならなくなりました。これまでは一定の基準を満たす大企業に対して義務付けられていた措置ですが、2023年4月1日からは、中小企業にもこのルールが適用されています。
今回は、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げについてご説明します。

割増賃金とは

割増賃金とは、法定労働時間を超えて働いた場合や法定休日に出勤した場合、22時~翌朝5時の深夜に労働をした場合に企業から労働者に基本給にプラスして支払われる賃金です。3つの割増賃金の割増率は、次の通りです。

時間外労働の割増賃金率

残業、つまり時間外労働が発生した場合には、会社は労働者に対して基本給とは別に割増賃金を支払わなければなりません
時間外労働が発生した場合の割増賃金率は、時間単価の25%です。時間外労働の割増対象となるのは法定労働時間を超過した場合であり、会社の所定労働時間をオーバーしても法定労働時間を超えていなければ割増にはなりません。

休日出勤の割増賃金率

法定休日に出勤した場合の割増率は、時間単価の35%です。休日出勤とは、労働基準法で定める法定休日に勤務するケースを指します。例えば、日曜日を法定休日としている企業で通常は休みの土曜日に出勤した場合は、休日出勤の割増対象にはなりません。月曜日から金曜日まで勤務し、土曜日も出勤した場合は、時間外労働の割増賃金率が適用されます。

深夜勤務の割増賃金率

深夜勤務が発生した場合の割増率は、時間単価の25%です。深夜とは22時から翌朝の5時までを指します。
9時~18時までの勤務時間の人が24時まで労働した場合は、18時~22時までの4時間は25%の割増率、22時~24時までの2時間は50%の割増率で賃金を計算します。また、法定休日に出勤し、深夜に労働した場合は、22時を超えた分に関しては、休日出勤の割増率と深夜手当の割増率を合算し、時間給の60%の割増率で計算するようになります。

月60時間を超える時間外労働が発生した場合のルール

月60時間を超える残業が発生した場合は、前述したような割増賃金ではなく、さらに高い割増率が適用されます。2010年からは大企業に対して課せられていたルールですが、2023年4月1日からは中小企業も月60時間を超える時間外労働に対してはより高い割増率の賃金を支払わなければならなくなりました。

2023年4月1日からの月60時間超の残業割増賃金率は50%

これまでは、1か月に合計して60時間を超える時間外労働が発生した場合でも、中小企業では25%の割増賃金率を適用すれば問題はありませんでした。しかし、2023年4月1日からは、それまで大企業だけに適用されていたルールが中小企業にも適用され、月60時間以上の時間外労働が生じた部分には、50%の割増率が適用されます。

深夜労働や休日労働の割増手当との関係は?

月に60時間以上の時間外労働が発生し、さらにその時間外労働が深夜に行われたものであった場合、賃金の割増率は深夜割増賃金率の25%と時間外割増賃金率の50%を合計して考えます。したがってこの場合は、時間給の75%の割増率で賃金を計算しなければなりません。
また、月60時間の時間外労働時間の算定には、法定休日に行った労働時間は含まれません。法定休日に出勤した場合は、これまで通り35%の割増賃金率で支払われます。

割増賃金を支払う代わりに代替休暇(有給休暇)を付与することも

月60時間を超えた残業分について、割増賃金率の引き上げ分である25%の支払いに変えて代替休暇を付与することも認められています。ただし、代替休暇制度を導入するにあたっては、労働者と使用者の間で労使協定を締結する必要があります。
労使協定では、次の4つを定めなければなりません。
・代替休暇の時間数の算定方法
・代替休暇の単位
・代替休暇を与えることができる期間
・代替休暇の取得日の決定方法と割増賃金の支払日
また、労使協定を結んだ場合でも労働者が代替休暇を取得しなければならないわけではありません。代替休暇を取得するか、割増賃金の支払いを希望するかは、労働者の意思によって決定されます。

月60時間超の残業の割増賃金率の引き上げ目的

月60時間の残業が発生した場合は、企業は1.5倍もの割増賃金を支払わなければなりません。これは企業にとって大きな負担になります。
しかし、労働基準法で定められている時間外労働の条件は月45時間、年間360時間までです。臨時的な特別な事情があり、労働者と使用者が合意をした場合はこの上限を超えることができますが、その場合でも次の上限を守らなければなりません。
・年間の時間外労働を720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」がすべて、1月あたり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
つまり、月に60時間を超える労働は、労働基準法を超える範囲の残業であり、企業としては時間外勤務が60時間を超えるような勤務を労働者に強いる環境であれば、改善をしなければならないのです。2023年4月1日から中小企業にも適用された月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げは、長時間労働を是正することを目的とした措置であるといえます。

まとめ

大企業だけに適用されてきた月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げ措置は、2023年4月1日から中小企業にまで適用が拡大されました。月60時間を超える残業は労働基準法の上限を超えるものであり、労使が合意していたとしても月に60時間を超える残業が常時発生するような企業があれば労働基準法に違反することとなります。
残業が月に60時間以上となるような企業にお勤めのようであれば、法令を遵守する企業への転職を考えた方が良いかもしれません。

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