2025.02.19

会社設立

法人化する際に合同会社を選ぶメリットは?株式会社との違いも解説

読了目安時間:約 6分

個人事業主から法人化する際、合同会社を設立するケースを耳にすることがあります。合同会社の設立にはどのようなメリットがあるのでしょうか。株式会社との違いや、デメリットについても知っておきたいところです。

この記事では、法人化する際に合同会社を選ぶメリットとデメリットに加え、株式会社や他の会社形態との違い、法人化する際の流れなどについてわかりやすく解説しています。

合同会社と株式会社の違い

まずは、合同会社と株式会社の違いについて見ていきましょう。

所有者と経営者による違い

合同会社と株式会社の違いとしては、所有者と経営者を分けているかどうかが挙げられます。

株式会社の場合、出資者である所有者と経営者は分離しており、所有者は「株主」、経営者は「代表取締役」と呼ばれます。

合同会社の場合、出資者である所有者は「社員」であり、経営者は「代表社員」と呼ばれます。

法人化の際、株式会社でも出資者が経営者となっているケースや、1人で株式会社を設立するケースもあります。

出資者と経営者を分ける形態をとっているのが株式会社、出資者と経営者が同一となるのが合同会社であるという違いがあるのです。

議決権の違い

株式会社の場合、株主の出資額(持ち株数)の比率に応じて議決権が大きくなりますが、合同会社では出資額にかかわらず、すべての出資者(社員)が同じ議決権を持っています。

業務執行の決定に関する違い

取締役会を設置していない株式会社の場合、重要な業務執行の決定などは株主総会によって決められますが、合同会社では代表社員すべてに議決権があるため、株主総会によらず、社員によって業務執行を決定します。

合同会社の社員のうち、経営に参加したくない人がいる場合や、重要事項の決定を特定の人に任せたい場合に業務執行社員を設置します。業務執行社員が複数いる場合には、そこから代表社員を選出することとなります。

取締役の任期の違い

株式会社の取締役の任期は2~10年ですが、合同会社には取締役を設置しないため、原則として任期はありません。業務執行社員については、定款で定めれば任期を設けることが可能ですが、任期満了に伴う業務執行社員の退社や、新たな業務執行社員の追加をする際には、その都度定款を更新する必要があります。

取締役会設置の違い

合同会社では取締役を設置しないため、取締役会も設置しません。株式会社においては取締役会の設置は任意となりますが、上場企業や監査役を設置した場合など、一定の要件を満たした場合は取締役会の設置が必須となります。

監査役に関する違い

監査役は、企業において業務執行や会計参与などを監査する役割を持ちます。合同会社では監査役は不要ですが、株式会社では大企業や上場企業の場合に監査役の設置は必須となり、非上場企業では設置は任意となっています。

定款に関する違い

株式会社・合同会社のいずれも会社設立時には定款の作成が必須となります。定款とは、会社の基本情報やルールなどを定めたものです。

株式会社の場合は、公証人から定款の認証を受け、正当な手続きを経て作成された書類であることを証明する必要があります。公的な認証を受けた定款があることで社会的な信用につながり、株主とのトラブルなどを回避しやすくなります。

一方、株主と社員がイコールとなる合同会社においては、定款の認証は不要となっています。定款の内容を変更する際も、株式会社では株主総会で2/3以上の同意を得る必要がありますが、合同会社では社員全員の同意を得ることで変更が可能です。

設立費用の違い

合同会社と株式会社では、設立時にかかる費用にも違いがあります。株式会社の設立時費用が約22~24万円であるのに対し、合同会社は約10万円で設立登記が可能となります。

決算公告の違い

決算公告とは、前年度の決算書を広く公表することで、会社の経営状態について利害関係者へ知らせることにより、取引の安全性などが保たれることを目的として実施されます。

株式会社では決算公告は義務となっており、非上場企業であっても決算公告をする義務があることが会社法で定められています(会社法第440条1項)。一方で、合同会社の決算公告は不要となっています。

このほかにも、持分譲渡が自由(制限を設けることも可能)である株式会社に対し、合同会社では社員全員の承認が必要などの違いがあります。

法人化の際に合同会社を選ぶメリット・デメリット

法人化で合同会社を選ぶメリットとデメリットについて見ていきましょう。

法人化で合同会社を選ぶメリット

法人化で合同会社を選ぶメリットには、以下のような点が挙げられます。

・会社設立時の費用が安い

法人化で会社を設立する際、株式会社よりも合同会社を選んだ方が、設立時にかかる費用が抑えられるメリットがあります。

株式会社設立時と合同会社設立時の費用を比較すると、以下のようになります。

【株式会社設立時の費用】

登録免許税:資本金の0.7%または最低額15万円

定款の認証手数料:3~5万円

定款へ貼付する収入印紙代:4万円(電子定款は不要)

定款謄本手数料:1枚あたり250円

【合同会社設立時の費用】

登録免許税:資本金の0.7%または最低額6万円

定款へ貼付する収入印紙代:4万円(電子定款は不要)

定款謄本手数料:1枚あたり250円

合同会社の方が登録免許税の最低額が低く、定款の認証手数料も不要となるため、株式会社設立時の半額ほどで設立登記が可能となります。

法人化の際の初期費用を抑えたい場合、合同会社を選ぶメリットは大きいといえるでしょう。

・決算公告の義務がない

株式会社は前年度の決算について公告の義務があります。公告を行うためには株主総会で承認を得た後、官報や新聞などへ掲載料を支払って公告することとなります。

官報や新聞へ掲載する場合の費用の目安は7~10万円、新聞社や掲載枠によっては100万円ほどかかるケースもあります。

自社のホームページへ決算公告を掲載する場合の費用はかかりませんが、改ざんしていないことを証明するための調査料を別途支払う必要があります。

合同会社は決算公告の義務がないため、決算公告にかかる手間と費用を軽減することが可能です。

・経営の自由度が高い

合同会社は出資者が社員となるため、社員の同意が得られれば、株主総会を開くことなく、意思決定をすることが可能です。

利益の分配や重要事項の決定なども株主総会を経る必要がないため、<span style=”background: yellow;”>株式会社に比べると経営の自由度は高くなる</span>といえるでしょう。

法人化で合同会社を選ぶデメリット

法人化で合同会社を選んだ場合にデメリットとなる主なポイントは以下の通りです。

・株式会社に比べると信用性が低くなるケースがある

合同会社は2006年に新しくできた会社形態で、近年設立数が増えている反面、株式会社に比べると会社形態としての知名度は低いのが現状です。

「〇〇合同会社」と企業名を出して営業活動を行う機会が多い場合は「〇〇株式会社」として活動する方が、社会的な信用度は高いといえるでしょう。

・意思決定に時間がかかるケースも

出資者と経営者が一致している合同会社の場合、経営の自由度が高く、意思決定にかかる時間も短い場合が多いのが一般的です。

しかし、出資額によらず社員全員が議決権を持っているため、意見が割れた場合に話がまとまらず、かえって意思決定に時間がかかるケースもあるため注意が必要です。

合同会社と株式会社のどちらで法人化するか迷う場合は、自身のケースが合同会社設立に向いているかを知ることで選択しやすくなるでしょう。

法人化で合同会社を選ぶのが向いているケース

法人化で合同会社の設立が向いているケースについて見ていきましょう。

個人事業主から合同会社設立で法人化するのに向いている代表的なケースには、以下が挙げられます。

個人向けのサービスを行う業種で法人化するケース

ホテル経営や美容室、飲食店や小売店など、個人向けのサービスを提供する企業は合同会社設立に向いています。個人向けサービスの場合、企業名よりも店舗名やホテル名などが前へ出るため、合同会社設立によるメリットが得やすくなるのです。

企業向けのサービスを提供する企業の場合、企業名を出して取引する機会が多いため、信用度の高い株式会社の方が営業しやすいでしょう。

個人事業主が集まって法人化するケース

ファイナンシャルプランナーや各種コンサルティング、士業事務所やライター、デザイナーなど、フリーランスや個人で営業活動を行っている者が複数名集まって法人化するケースも、合同会社設立に向いています。

合同会社では社員全員が議決権を持つため、公平で自由度の高い営業活動を維持しつつ、法人化のメリットを得ることが可能です。

株式会社設立が向いているケース

法人化の際に株式会社の設立が向いているケースとしては、いわゆるBtoBの事業に携わる企業や上場を目指している企業、事業承継などを視野に入れる場合や、公共事業に携わるケースなどでは、株式会社設立を選択した方がメリットを得やすいでしょう。

個人事業主から法人化する際の手順

個人事業主から法人化する際の手順について解説します。

法人化するタイミングを決める

個人事業主から法人化する際、どのタイミングを選ぶかは重要なポイントです。例えば税制にフォーカスした場合、個人事業主は所得税の確定申告が必要となりますが、法人化した場合は法人税の申告、納税をすることとなります。

所得税と法人税は税率が異なるため、所得額によっては、法人化したことでかえって税率が高くなってしまうケースもあるのです。

所得税は所得が高いほど税率が高くなる累進課税制度をとっています。所得の大きさによって5%から最大45%まで開きがあります。一方で、法人税の税率は原則として23.2%となります。

所得が小さいうちは法人税より所得税の税率の方が低く、一定のラインを超えたあたりから法人税の税率の方が低くなってくるのです。

一般的には、所得税の税率が23%となる700~800万円を超えるかどうかが、法人化する1つの目安とされています。

設立する会社形態を決める

法人化のタイミングを決めたら、次に設立する会社形態を決めていきます。上記で解説したメリットやデメリット、合同会社や株式会社設立に向いているケースなども参考に、初期費用や予算も考慮して会社形態を決めましょう。

会社設立登記申請書類を作成する

設立する会社形態が決まったら、登記申請に必要な書類を作成します。

登記申請書類のフォームは、法務局のホームページからダウンロードが可能です。

法務局:商業・法人登記の申請書様式

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html

合同会社設立時に必要となる書類には、以下のものがあります。

・定款

・登録免許税納付用台紙

・代表社員、本店所在地及び資本金決定書

・代表社員の就任承諾書

・会社印の印鑑届出書

・代表社員の印鑑登録証明書

・資本金の払込証明書

・登記すべき事項について記載した別紙またはCD-R など

定款の作成

登記申請に必要な定款の作成を行います。定款には必ず記載するべき事項のほか、トラブルを回避する目的で定める事項、必要に応じて任意に設定する事項などに分けられます。

記載必須の絶対的記載事項に記載漏れやミスなどがあると、登記が完了できなくなってしまうため注意が必要です。

資本金の入金~登記申請

定款が作成できたら資本金の払込を行い、登記申請します。資本金の額は1円から設定可能ですが、対外的な信用性や業界の相場なども考慮して、適正な資本金額を設定しましょう。

法人化手続きでお悩みの際は税理士法人松本へご相談を

登記申請に必要な書類の準備や定款作成が不安な場合は、専門家へ登記申請の代行を依頼するのもおすすめです。

税理士法人松本では、個人事業主からの法人化手続きや、会社設立時のサポートを専門的に扱っています。

法人化のタイミングや資本金の額、会社設立に関する疑問の解決や資金調達のサポートまで、創業時のあらゆるお悩みに対して親身に対応いたします。

全国どこでも、ご相談予約はフリーダイヤルまたは専用フォーム、LINEにて受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

まとめ

法人化する際に合同会社を選ぶメリットとしては、株式会社よりも設立時の初期費用が抑えられる点や、決算公告の義務がない点、株主総会がなく、出資者と社員が一致しているため意思決定が早いといったメリットが挙げられます。

その一方で、株式会社に比べると企業としての信用が得にくい点や、事業承継などの手続きが難しいといったデメリットもあります。

合同会社に向いているケースや法人化のタイミングなども参考にして、専門家のサポートも検討しつつ法人化を進めましょう。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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