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会社設立
会社設立時にはどんな印鑑が必要になる?種類や選び方などを解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
会社を設立すると、さまざまなシーンで法人の印鑑が必要になります。そのため、会社設立時には法人の印鑑を作成しておくべきですが、法人印にはさまざまな種類があり、どのような印鑑を作ればよいのか悩むケースがあるかもしれません。
そこで今回は、会社設立時に印鑑を準備すべき理由と印鑑の種類や役割、印鑑選びのポイントなどについてご説明します。
会社設立時に印鑑の準備が必要な理由
会社設立時には、法務局で法人登記をしなければなりません。この際、かつては必ず代表者印の登録が必要でした。しかし、2021年の法改正に伴い、契約書などの締結の際に書面への押印が不要となりました。法人登記についても押印の見直しが行われ、オンラインで登記申請を行う場合、印鑑の登録は任意に変わったのです。したがって、以前のように法人の印鑑を作成していなければ、会社設立ができないという状況ではありません。
また、政府は社会全体に対し、押印慣行の見直しを求めています。しかし、実社会では押印慣行はまだまだ根強く残っており、印鑑の押印を求められるシーンは少なくありません。例えば、会社設立後、資金調達のために銀行に融資を申し込む際には、法人の印鑑証明の提出を求められます。印鑑証明は、代表者印を法務局に届け出て印鑑登録をしなければ、発行できない書類です。したがって、法人の印鑑を作らなければ、融資に申し込むこともできません。
また、取引先と契約を締結する際、オフィスの賃貸借契約を締結する際など、会社設立後に印鑑を求められるケースは少なくないのです。会社設立後に、スムーズに事業を進めていくためにも、会社設立のタイミングで法人の印鑑を準備しておいた方が賢明だと言えます。
会社設立時に用意すべき印鑑の種類と用途
会社設立時に用意する印鑑は、1つだけでよいのではと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、リスクを分散するためにも法人の印鑑は複数用意すべきです。
印鑑を1つだけしか用意していない場合、1つの印鑑をさまざまなシーンで使うこととなるため、紛失のリスクが高まります。万が一、会社の代表者印を紛失してしまった場合、悪用される可能性もあるため、会社設立時には1つの印鑑だけでなく、複数の印鑑を準備し、シーンに応じて使い分けるケースがほとんどです。
会社設立時に用意すべき法人用印鑑の種類と用途ついてご説明します。
代表者印(会社実印)
代表者印とは、会社の実印とも呼ばれ、印鑑登録に使用する印鑑です。法人の場合、法務局に印鑑届書を提出し、印鑑登録の手続きを行い、印鑑登録完了後に印鑑証明書を請求できるようになります。
印鑑届書には印鑑の大きさについての記載があり、辺の長さが1cm以上3cm以内で、正方形の中に収まるものでなければならないと記載されています。 そのため、代表者印を作るときには、この基準を守る必要があります。
一般的に、代表者印は丸型のものが多く、直径18mm~20mm程度の大きさが選ばれることが多いようです。また、代表者印の刻印内容に関する規定はありませんが、二重の円になっていることが多く、外側の円の中に会社名、内側の円の中に役職名を入れる形式のものが一般的となっています。株式会社設立の場合には、内側には代表取締役印、合名会社や合資会社、合同会社などの場合には代表者印と入れることが多くなります。
代表者印は、会社の存在証明ともなる重要な印鑑であるため、使用時以外は金庫などに厳重に保管するようにしましょう。
代表者印の主な用途
・ビジネス上の重要な契約書類への押印
・不動産売買契約書への押印
・委任状への押印 など
法人銀行印
会社設立後は、銀行に法人名義の口座を開きます。個人事業主の場合は、取引に個人名義の口座を使用しているケースもあり、会社設立後も個人口座を継続して利用するケースもあるかもしれません。
しかし、法人化すると法人と個人の財産は明確に区別する必要があります。個人口座の中で法人の事業に関するやり取りが行われていると、経営状況を把握しにくくなります。また、取引先に入金を依頼する際にも、振込先が個人名義の口座であると公私混同のイメージを与える恐れもあるでしょう。したがって、会社設立後は、法人名義の銀行口座を開設することが一般的です。
法人銀行印は、法人名義の銀行の口座を開設する際に使用する印鑑です。代表者印と兼用することもできないわけではありません。しかし、銀行印は経理担当者が使用する可能性が高く、使用者が複数に渡ることで代表者印を紛失してしまうリスクも高まります。そのため代表者印と銀行印は別に作成し、別々に保管しておくことが多くなっています。
法人銀行印についてはサイズの規定があるわけではありません。しかし、多くの場合、直径16.5mmから18mmの大きさの印鑑サイズが選ばれているようです。法人銀行印も会社代表者印と同じく、丸型で二重の円の外側に法人名、内側の円に銀行之印と刻印するものが多くなっています。
法人銀行印の主な用途
・銀行口座開設
・現金の引き出し
・小切手や手形への押印 など
角印
角印とは、社判と呼ばれることも多い角形の印鑑です。業務において日常的に使用される機会が多い印鑑で、個人の認印のように用いられます。角印のサイズにも規定はありませんが、一辺が21mm~24mm程度の正方形のものが多くなっています。また、角印には法人名のみを刻印するか、文字のバランスを考慮して法人名に「印」や「之印」といった送り字を入れるケースもあります。
角印の主な用途
・社内文書への押印
・請求書、発注書、領収書への押印
ゴム印
ゴム印は、ゴム製のスタンプです。法人名や住所、電話番号、代表者名などを必要に応じて組み合わせて押せるものが多くなっています。ゴム印は、手書きでは手間がかかる場合などに使用し、事務負担を軽減する目的で使用されるものです。
ゴム印の主な用途
・領収書や申込書などへの押印
・封筒への押印
会社設立時に知っておきたい法人用印鑑の選び方とは
法人用の印鑑を作る際には、それぞれの印鑑に適した大きさや材質、形、書体の印鑑を作ることが大切です。法人用印鑑の選び方のポイントをご説明します。
印鑑の大きさ
代表者印については、印鑑登録をする際に大きさが決められていますが、その他の印鑑に関しては特に大きさの規定はありません。ただし、代表者印と銀行印はいずれも丸い形の印鑑であり、印影も二重の円の外側に法人名を入れるなど、似通っています。そのため、代表者印と銀行印を区別するため、大きさを変えることが多くなります。
一般的には、角印を最も大きいサイズで作成し、銀行印を最も小さいサイズで作成します。
印鑑の材質
会社設立後、社名変更をしない限り、法人の印鑑は長く使用することとなります。そのため、押印時の摩耗によって印影が変わることのないよう、耐久性の高い素材を選ぶとよいでしょう。印鑑に使われることの多い素材と素材ごとの特徴を次の表にまとめました。
素材 | 特徴 |
柘(つげ) | 柘の木は、木目が細かく、加工後の変化が生じにくいため、古来、印鑑に用いられることの多い素材です。木材の柔らかな手触りは手に馴染みやすく、持ち手部分は使用とともに艶が生じ、美しく変化します。 比較的価格が安いため、コストを抑えて印鑑を作りたい場合には最適な素材です。 |
黒水牛 | 水牛の角を加工した素材で、美しさと耐久性に優れています。 朱肉の馴染みがよく、印影が美しいことから、法人の印鑑に用いられるケースが多くなっています。 威厳のある風格でありながら、価格もそれほど高額ではないため、人気のある素材です。 |
チタン | 軽量で耐食性に優れた金属で、非常に耐久性の高い素材です。チタンには金属特有の重厚感があり、高級なイメージを与えられます。しかし、他の素材に比べると価格は高額になります。 |
刻印の書体
印鑑の刻印に使用する書体選びも大切です。法人の印鑑を使用する際には、偽造されにくくするために、判読が難しい書体を選ぶことが多くなります。
法人の印鑑で使用されることが最も多い書体は「篆書体(てんしょたい)」です。そのほか、「印相体(いんそうたい)」、「隷書体(れいしょたい)」、「古印体(こいんたい)」、なども選ばれるケースがあります。
篆書体は、角が丸みを帯びており、太い線が特徴の偽造が困難とされている書体です。伝統的な印象を与えるため、法人の印鑑に用いられるケースが多くなっています。印相体は、篆書体をさらに装飾的かつ複雑にしたデザインです。また、隷書体は篆書体を簡略化し、より直線的なデザインとした書体で、現代的な印象を与えます。古印体は、隷書をもとに奈良時代に日本で作られたと言われている書体です。日本独自の丸みを持つ、柔らかな雰囲気が特徴となっています。
法人の印鑑を作る際には、好みの書体を選ぶだけでなく、法人名の文字数や漢字・カタカナ・ひらがななど、文字の種類のバランスなどに配慮し、法人名に合った書体を選ぶようにするとよいでしょう。
法人の印鑑の作成方法と費用
会社設立時、法人の印鑑を作成する場合は、どこで発注できるのでしょうか。法人用の印鑑の作成方法と印鑑作成費用の目安についてご説明します。
印鑑は実店舗またはオンラインで発注
法人用の印鑑は、印鑑を取り扱う店舗やインターネットで購入できます。法人の印鑑は、世界で1つだけの自分の会社の印鑑です。長く使う印鑑だからこそ、書体やデザインにこだわりたいという場合には、実際に相談しながら作成できる実店舗に発注して作成してもらった方がよいでしょう。
一方、できるだけコストを抑えて印鑑を作りたい場合や急いで作る必要がある場合などは、インターネットで注文した方がコストは抑えられ、早く手元に届く可能性があります。ただし、画数の多い漢字を含む法人名の場合や文字数が多い場合などは、印影が不鮮明になってしまったり、文字の判読が困難といった理由から印鑑登録時に登録ができない恐れもあります。インターネットで注文する場合は、発注の前にデザインの確認ができるサイトを選んだ方が安心でしょう。
法人の印鑑作成にかかる費用とは
法人の印鑑作成費用は、素材などの違いにより、数千円から数万円と幅広い価格設定になっています。インターネットの店舗の中には、代表者印、銀行印、角印の3本セットが数千円で作成できるというケースもあります。
会社設立時には何かと費用がかかるため、印鑑の作成費用にお金をかけたくないという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、あまりにも低価格の印鑑の場合、使用されている材料の耐久性が低い可能性があります。柔らかい素材は短時間で摩耗が進んだり、落とした場合などに割れてしまったりといったリスクがあります。
また、職人が手掛ける印鑑は、職人の技術を活かして、印影が鮮明になるような仕上がりとなります。しかし、低価格の印鑑の場合は機械彫りを多用する傾向にあるため、繊細な仕上がりとはなりにくく、美しさという点で劣る可能性があるとともに、偽造のリスクも高くなると言えます。
法人用の印鑑は、長く使用するものであり、取引先との重要な書類にも押印するものです。法人用の印鑑を作成する際には、値段の安さだけにとらわれず、印影の美しさや耐久性も考慮したうえで納得できるものを選ぶようにしましょう。
法人用の印鑑はセットで作るべき
法人用の印鑑には、代表者印、銀行印、角印、ゴム印の4種類があることをご説明しました。このうち、ゴム印については、発注書や領収書を手書きするケースが少なければ作成する必要はないでしょう。ただし、代表者印と銀行印、角印の3つについては、事業を営むうえで使用する印鑑です。会社設立時にセットで作成しておくことをおすすめします。
会社設立の登記申請と同時に印鑑登録を
オンラインで法人登記を申請する際には、印鑑の提出は任意となりました。しかし、取引先と契約を締結する際には、代表者印の押印が必要になり、法人名義の銀行口座を開設する際にも、法人の銀行印が必要になります。また、オフィスや店舗として使用する物件も会社設立後は法人名義で契約を結ばなければならないでしょう。賃貸借契約を締結する際にも、法人の印鑑証明書の提出が必要です。
このように、登記申請時には印鑑の提出が任意であっても、事業を進めるうえでは必ず、法人の印鑑は必要になります。
法人登記の申請をオンラインで行った後に印鑑の届け出を行う場合、印鑑の届け出のみをオンラインで行うことはできません。しかし、法人登記申請と同時に印鑑の届け出を行う場合に限り、印鑑の届け出もオンラインで済ませることができます。法人登記の申請をする際には、事前に代表者印を作成し、申請と同時に印鑑届出も提出するようにしましょう。
印鑑届書のオンラインでの提出法
法務局の窓口で法人登記を申請する際には、必要書類と一緒に印鑑届書を提出すれば、代表者印を登録することができます。オンラインで法人登記の申請をする際には、印鑑の届け出はどのように行えばいいのでしょうか。オンラインでの印鑑届書の提出方法をご説明します。
印鑑届書を印刷する
法務局のホームページに用意されているオンライン専用の「印鑑(改印)届書」の様式を印刷します。登録をする印鑑の大きさを正確に計測できなくなる恐れがあるため、印刷時には拡大や縮小をせずにA4サイズの用紙に印刷しなければなりません。
必要事項を記入し、届出印を押印する
必要事項を記入し、届け出をする会社代表者印を鮮明となるように押印します。また、代表者の住所と氏名の記入欄の横にある欄には、個人の実印の押印が必要です。
作成した届出書をスキャンする
作成した届出書を、印影を鮮明に確認できるような解像度でスキャンし、PDFデータ化します。解像度の目安は600dpiとされています。また、スキャンをする際には拡大や縮小をせず、原寸大でスキャンしなければなりません。
電子署名を付与する
印鑑届出書のデータを送付する際には電子署名を付与し、電子証明書を取得したうえで送信する必要があるため、対応している電子証明書を使い、電子署名を付与します。
印鑑届書を添付・申請データの送信
登記申請の申請書情報に印鑑届出書を添付し、登記・供託オンライン申請システムに送信すると、登記申請と印鑑届書の提出が完了します。
まとめ
会社設立の登記申請をオンラインで行う場合、印鑑の届け出は不要となりました。しかし、代表者印は会社の正式な意思を表明するために必要な印鑑であり、重要な契約書類には会社代表者印の押印や印鑑証明書の提出が求められます。また、法人名義の銀行口座を開設する際や融資の申し込みを行う際にも、法人の印鑑は必要です。
そのため、会社設立をする際には、代表者印、銀行印、角印の3つの印鑑をまとめて作成することをおすすめします。法人用の印鑑は、会社名の変更をしない限り、長く使用するものです。価格だけを重視するのではなく、耐久性なども考慮しながら、納得できる印鑑を作成しましょう。
また、オンラインで登記申請をする際には、同時に印鑑の届け出も行うことをおすすめします。
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