2024.10.15

法人化

インボイス制度に伴って法人化するメリット・デメリットとは?法人化するタイミングも紹介

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

インボイス制度に伴って法人化するメリット・デメリットについて知りたいと悩んでいませんか?

この記事では「インボイス制度に伴って法人化するメリット・デメリット」について紹介していきます。

他にも「インボイス制度に合わせて法人化する場合に準備するべきこと」や「個人事業主が法人化するのに最適なタイミング」についても解説していきます。

ぜひこの記事を参考にして、インボイス制度について理解を深めてみてください。

そもそもインボイス制度とは?

インボイス制度とは、10%と8%の消費税率が存在する中で、商品やサービスの提供者および受領者がどの税率を適用しているかを明確にする制度です。

複雑な税率をより明確にし、取引先間での消費税の負担を把握しやすくすることを目的としています。

消費税の透明性と正確な申告を促進するために、税務署が導入しました。

企業や個人事業者は、取引において発生する消費税を控除するために、インボイスの発行と保存が必須となります。インボイスを発行しない取引では、消費税の還付を受けることができません。

また、インボイスとは、適格請求書のことであり、従来の請求書に以下の情報を追加することが求められます。

  • インボイス制度の登録番号
  • 商品やサービスごとの適用税率
  • 消費税額

適格請求書は、あらかじめ税務署に登録された「適格請求書発行事業者」のみが発行することができます。

インボイス制度に伴って法人化するメリット

インボイス制度に伴って法人化するメリットについては、以下のとおりです。

  • 節税対策になる
  • 社会的信用度が上がる
  • 赤字を10年間繰り越すことが可能
  • 決算月を決めることができる
  • 最長2年間は消費税が免税される

それぞれのメリットについて解説していきます。

節税対策になる

個人事業の場合、事業の利益から経費を差し引いた額がそのまま所得となり、これに所得税が課されますが、法人になると、自分が受け取る給与(役員報酬)が経費として扱われます。

この役員報酬には「給与所得控除」が適用されるので、税負担を軽減することが可能です。

役員報酬が法人の損金(経費)として認められることで、法人の課税所得が減少し、結果として法人税も少なくすることが可能です。

また、住民税の計算においても、法人税割が適用されずに、均等割のみが課税されるので、全体的な税負担が軽減される可能性もあります。

さらに、個人事業主としての税務負担が軽減されるだけでなく、経費計上の範囲が広がり、長期的な赤字の繰越控除が可能になるなど、多くの節税メリットが挙げられます。

社会的信用度が上がる

会社を設立する際には、資本金の準備や法務局での登記が必要になるので、個人事業主と比べて社会的な信用度が高いとされています。

近年、フリーランスや個人事業主の数が増えていますが、法人とのみ取引する企業も依然として多く存在しているのも事実です。

法人化することで、さまざまな企業と取引が可能になり、ビジネスの幅を広げることができるメリットも挙げられます。

また、事業を拡大する際には、銀行などの金融機関から融資を受けやすくなるという利点もあります。

赤字を10年間繰り越すことが可能

青色申告を選択した個人事業主の場合、年度内に発生した赤字を3年間繰り越し、その後の年度の事業所得と相殺することが可能ですが、法人では欠損金の繰越控除が認められており、期間は最大で10年間(特定の事業年度では9年間)繰り越すことが可能です。

企業が大きな赤字を出した場合、繰越控除の期間が長い法人は、より効果的に赤字をカバーできます。

短期間であれば、赤字の全額を消化できず、節税の効果が限定される可能性があります。

このように、節税の観点から法人化には大きなメリットがあるといえるでしょう。

決算月を決めることができる

個人事業主として事業を行う際には、1月から12月までの暦年が事業年度と定められているので、事業年度を変更することはできず、年度末の12月が固定されています。

一方、法人の場合は、事業年度の終わりを自由に設定できるという大きなメリットがあります。

企業は自社の経営状況やビジネスサイクルに応じて、もっとも都合の良い月を決算月として選ぶことができます。

例えば、決算月を忙しい時期と重ならないように設定することで、事務作業の負担を軽減することができるので、経営の柔軟性を高めることができます。

最長2年間は消費税が免税される

個人事業主が法人化する際に、一定の条件を満たすことで最大2年間、消費税の納税が免除される特例措置があります。

具体的に、個人事業主が法人化する際に、消費税が免税される条件については、以下のとおりです。

  • 資本金が1,000万円未満であること
  • 設立初年度の最初の6ヶ月間の売上が1,000万円を超えないこと

新しく設立された法人で、資本金が1,000万円未満の場合、第1期は自動的に免税事業者として扱われます。

第2期に関しても、資本金が1,000万円以下であり、かつ特定期間における課税売上高または給与等の支払総額が1,000万円以下であれば、引き続き免税事業者の資格を保持することが可能です。

このように、適切なタイミングで法人化をおこなうことで、税負担を軽減することにもつながります。

インボイス制度に伴って法人化するデメリット

インボイス制度に伴って法人化するデメリットについては、以下のとおりです。

  • 社会保険に加入しなければならない
  • 事務手続きが複雑になる
  • 赤字決算でも免税にならない項目がある

それぞれのデメリットについて解説していきます。

社会保険に加入しなければならない

個人事業主の場合、従業員が4人以下であれば、社会保険への加入が義務付けられていませんが、法人は役員が一人だけの場合でも、健康保険と厚生年金に加入しなければなりません。

個人事業主の時に支払っていた国民健康保険や国民年金の費用よりも高くなってしまうデメリットが挙げられます。

しかし、社会保険の方が手厚い保険の補償を受けられるというメリットもあります。

このように、社会保険の加入は、法人化の際に検討すべき重要な要素といえます。

事務手続きが複雑になる

法人として事業を運営する際には、個人事業主と比べて経理や決算に関する業務が増えてしまい、複雑になってしまうデメリットが挙げられます。

事業規模によっても異なりますが、税務署への提出書類の種類や量も多く、これに対応するための時間と労力が大幅に増加してしまうのも事実です。

法人化することによって、事務作業全般が増えてしまうので、効率的な業務をおこなうには、税理士や事務スタッフの支援が必要になるケースがほとんどです。

赤字決算でも免税にならない項目がある

個人事業主が赤字になった場合、所得税や住民税は免除されるので、事業が収益を上げられなかった場合でも、税金の支払いは発生しません。

法人の場合、赤字決算でも一部の税金を支払う義務があります。

具体的には、法人税や法人事業税、法人住民税の法人税割は免除されますが、法人住民税の均等割は納税する必要があります。

均等割は、法人の利益とは関係なく、企業の規模や事業所の有無によって算出されるためです。

これから個人事業主から法人化を検討している方は、法人は事業が赤字でも一定の税金を納める義務があることを覚えておきましょう。

インボイス制度に合わせて法人化する場合に準備するべきこと

インボイス制度に合わせて法人化する場合に準備するべきことについては、以下があります。

  • 納税する消費税額を把握する
  • 消費税の申告を前提とした経理方法を検討する

それぞれの項目について解説していきます。

納税する消費税額を把握する

課税事業者としての義務がある企業は、課税期間の末日から2か月以内に消費税を納める必要があるので、急に支払いが求められることがないように、日々の業務で納税額を把握し、納税用の資金を事前に準備しておくことが大切です。

例えば、消費税専用の口座を別途設けると、納税時の混乱を避けるのに役立ちます。

また、正確な納税額を把握するためには、会計ソフトを活用したり、税理士のアドバイスを受けたりすることが有効です。

このように、常に大まかな納税額を予測し、適切に管理することが重要です。

消費税の申告を前提とした経理方法を検討する

法人化した際に重要となるのが、消費税に関する経理処理なので、消費税の申告を前提とした経理方法を検討しましょう。

具体的に、消費税の申告を前提とした経理方法については、以下2つの方法が挙げられます。

経理方法内容
税込経理方式売上や仕入れに消費税を含めて計上します。処理が簡単で理解しやすい点がメリットですが、消費税の具体的な金額を把握するのが難しくなるという欠点もあります。
税抜経理方式売上や仕入れから消費税を分離して計上します。処理が複雑で手間がかかる一方、消費税の金額を明確に把握できるというメリットがあります。

上記のように、どちらの方法を選ぶかは会社の状況やニーズによって異なるので、自社に最適な方法を選び、適切に経理処理をおこなうようにしましょう。

個人事業主が法人化するのに最適なタイミング

個人事業主が法人化するのに最適なタイミングについては、以下があります。

  • 事業拡大を検討している
  • 所得が800万円を超えた
  • 売上高が1,000万円を超えた

それぞれのタイミングについて解説していきます。

事業拡大を検討している

ビジネスの規模をさらに拡大するには、法人化が重要なステップとなります。

これから法人化を検討しているのであれば、以下のような例では、法人化を考える良い機会といえます。

  • 法人でなければ締結できない契約がある
  • 株式発行などで資金を集める計画がある

また、法人化によって、法人だけが利用できる補助金や助成金も活用できるようになります。

このように、事業の更なる拡大を目指すのであれば、法人化を検討する価値があります。

所得が800万円を超えた

個人事業主には累進課税制度が適用され、法人には一定の税率が適用されます。

例えば、所得が900万円以上の場合、個人事業主の所得税率は33%に達しますが、法人の税率は23.20%です。

控除を考慮しても、個人事業主の方が高い税金を負担することになるため、所得が800万円を超えた時点で法人化を検討するのをおすすめします。

しかし、法人化する際の報酬設定や所得控除の有無、その他の収入などによって、実際の税負担は異なる可能性があるので、事業所得が800万円を超えそうになった時点で、税務の専門家に相談することをおすすめします。

売上高が1,000万円を超えた

事業収入が1,000万円を超えた場合、法人化を検討することをおすすめします。

個人事業主としての年間売上が1,000万円を超えると、消費税の納税義務が発生してしまうので、このタイミングで法人化を考えることで、消費税の負担を減らすことにもつながります。

また、個人事業主が法人化することで、設立から最大2年間の消費税免除を受けることができます。

このように、設立初年度および次年度の免税期間を活用することで、経営の安定を図ることができます。

インボイス制度の登録申請方法

適格請求書発行事業者として登録するには、まず地域の税務署に登録申請書を提出する必要があります。

登録申請書を提出後は、税務署が審査をおこない、審査に通れば「登録通知書」が送付されます。

登録通知書には、登録番号やその他の公表情報が記載されており、再発行は原則として行われないため、慎重に保管することが重要です。

具体的に、適格請求書発行事業者として登録するのに必要なものについては、以下が挙げられます。

  • 電子証明書(マイナンバーカードなど)
  • 利用者識別番号
  • 本人確認書類

登録が完了すると、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」に事業者情報が掲載されます。

また、適格請求書発行事業者の登録番号を使って「事業者の名前・名称・登録日」などの情報を確認することが可能です。

インボイス制度に伴う法人化を検討しよう!

今回は、インボイス制度に伴って法人化するメリット・デメリットや個人事業主から法人化するタイミングを紹介しました。

インボイス制度に伴って法人化するメリットについては、以下のとおりです。

  • 節税対策になる
  • 社会的信用度が上がる
  • 赤字を10年間繰り越すことが可能
  • 決算月を決めることができる
  • 最長2年間は消費税が免税される

また、個人事業主が法人化するのに最適なタイミングを把握しておくことで、節税することにもつながります。

ぜひこの記事を参考にして、インボイス制度に伴う法人化を検討してみてください。


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