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会社設立
決算月の決め方のポイントは?会社設立時に知っておきたい節税対策
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
会社を設立する際には決算月を決めますが、どう決めていけばいいのでしょうか。
決算月を間違えてしまうと、節税面で損をしてしまいますし、通常業務に支障が出てしまうかもしれません。
とはいうものの、決算月は変更できますので、そこまで身構える必要もないかもしれません。
決算月を決めるポイントと狙える節税効果、決算月を変更する方法などについて、お伝えします。
目次
会社の決算月とは
会社を設立したら、期間を区切っていくら利益が出たのかを計算する必要があります。
区切った期間を事業年度といい、事業年度ごとに決算を行っていきます。
決算月とは、事業年度の最後の月を指しており、決算月に作成した申告書により税金の申告を行っていきます。
法人税法上、1年に1回は本決算を実施しなければなりません。
会社の決算月を慎重に決めるべき理由
1年に1回であれば自由に決算月を決められますが、いつでもいいわけではありません。
決算月の決定により、節税や業務効率に大きな変化が出るためです。
特に1年を通して売上に大きな変化が出る企業は、慎重に決算月を決定させるべきでしょう。
決算月の決め方はいくつかポイントがありますので、事業内容や繁忙期の有無によって、最も適切な時期を選ぶようにしましょう。
会社設立時の決算月の決め方
会社を設立する際に決算月をいつにするべきか迷ってしまう方も少なくありません。
以下のような考え方がありますので、決算月をいつにすべきか考えていきましょう。
- 繁忙期を決算月にしない
- 繁忙期を決算月にするという考え方
- 税金の支払い時期を考える
- 消費税の免税期間を考える
- 売上が多い月を年度初めにする
- 商品在庫が少ない時期を決算月にする
- 税理士の繁忙期を避ける
繁忙期を決算月にしない
1年の中で最も忙しくなる時期は本来の業務に集中できるよう、繁忙期と決算月を外すのが一般的な考え方です。
これらが同時期になると、忙しさのあまり申告がおろそかになってしまう可能性があります。
繁忙期の売上が予定よりも多かった場合は、納税額も想定以上に膨れ上がります。
一方、繁忙期の売上が少なかった場合は、赤字のまま決算を迎えなければいけなくなります。
繁忙期は業種によって異なります。
税理士とじっくり節税対策ができるよう、閑散期を選ぶといいでしょう。
繁忙期を決算月にするという考え方
一方で繁忙期を決算月にするという、真逆の考え方をするケースもあります。
1年分の売上を一定期間で売り上げるというような企業で、わざと繁忙期と決算月を合わせるのです。
繁忙期と決算期を同時期にするメリットとしては、社内に追い上げムードを高められるという点です。
「目標売上達成だ!」というように気運を高め、一体となって業績向上を目指します。
ただし先述したようなデメリットもありますので、繁忙期と決算月を同時期にするかどうかは、企業の方針によります。
税金の支払い時期を考える
決算月で税金を申告すると、その後は納税しなくてはいけません。
法人税や住民税、事業税や消費税といった複数の項目があり、一度に納付するために支払いが厳しくなるという悩みを抱える経営者も少なくありません。
そのため資金が潤沢にある時期に、納税できるよう調節するのも決算月の考え方のひとつです。
この場合は決算月のおよそ2ヶ月後に納税時期がやってきますので、逆算して決算月を決めていきます。
消費税の免税期間を考える
資本金が1,000万円未満の会社であれば、最大2年の消費税の免税を受けられます。
注意したいのは、「2年間」ではなく「2年度」という点です。
そのため会社設立と決算月ができるだけ離れている方が、消費税免税期間が長くなると考えられます。
「4月に会社を設立するなら3月を決算月にする」「10月に会社を設立するなら9月を決算月にする」というように、会社設立月の前月を決算月にすると、消費税免税期間を最大にできます。
売上が多い月を年度初めにする
決算月の決め方のひとつとして、売上が多い月を年度初めにするという考え方もあります。
繁忙期だとしても、見込み通りの売上があるかは、わからないからです。
もし見込み以上の売上があったら、決算月までに時間の余裕があるとじっくりと節税対策ができます。
売上の確保ができなかった場合は、決算月までの間に修正や対策ができるでしょう。
商品在庫が少ない時期を決算月にする
事業内容によっては、決算月に棚卸をしなくてはいけません。
棚卸とは、社内の棚卸資産を数えてその価値を確認する作業です。
会社の事業年度は1年を超えられませんので、少なくとも1年に1回の棚卸が必要になります。
商品在庫が最も少ない時期を決算期にすれば、棚卸の負担が軽減され、計算ミスも減らせるでしょう。
上記のような理由から決算期にセールをする企業もあります。
税理士の繁忙期を避ける
日本では多くの企業が3月を決算月としています。
決算に関連する業務に税理士が関わる場合が多いので、税理士にとっても忙しい時期といえます。
3月決算だと、その後の4月、5月は税理士の繁忙期といえます。
自社の決算業務に余裕を持って取り組んでもらうためには、税理士の繁忙期を避けるというのも考え方のひとつです。
会社設立後の決算月を変える方法
会社を設立した後でも、決算月は変えられます。
もし決算月を変更させるのであれば、以下のような手順を踏んで手続きをします。
- 株主総会で定款の変更を決議する
- 税務署へ届け出る
- 取引先や金融機関へ事業年度変更の連絡
株主総会で定款の変更を決議する
一度決めた会社の決算月を変更するには、株主総会で特別決議をとります。
「事業年度の変更」を行い、定款の変更を決議します。
株主の過半数が出席する株主総会を開催し、議決権の
3分の2以上の賛同を得なければいけません。
税務署へ届け出る
事業年度は登記に記載する事柄ではありませんので、
法務局に届ける必要はありません。
株主総会の議事録と決算月変更の旨を記した異動届出書へ提出します。
変更後の定款のコピーも添付しておくといいでしょう。
取引先や金融機関へ事業年度変更の連絡
税務署へ必要書類を届け出たら、法的な手続きは完了です。
次年度でスムーズに業務を行うために、主要な取引先や金融機関に年度変更の旨を連絡しておくといいでしょう。
法人の決算月が集中する理由
日本の法人では、バラつきはあるものの、決算月が一時期に集中しています。
なぜ決算月が集中するのでしょうか。
- 3月決算の会社が多い理由
- 9月・12月決算の会社が多い理由
3月決算の会社が多い理由
日本では公的機関や教育機関で、4月から3月までを年度の区切りとしています。
これらの企業との取引きがある事業内容であれば、
決算月を合わせるために3月を決算月とする場合が多くなります。
また税務に関する法改正が行われる場合は、4月に実施されます。
決算月が3月であれば、法改正が年度をまたぐ心配はありません。
9月・12月決算の会社が多い理由
あえて3月を決算月にしない会社は、9月や12月を決算月にする会社が多くなります。
4月は人事異動がある、新入社員を迎え入れる、というように忙しい時期なので、決算月と重ならないようにしています。
個人事業主から法人成りした企業は、個人事業主時代に12月決算をしていた流れでそのまま12月決算にしている場合もあります。
また海外との取引がある企業も、海外企業の決算月に合わせて12月を決算月にしています。
上記のような理由はありますが、12月は年末年始で繁忙期となる場合は9月を決算月にする企業もあります。
決算月にすることとは
会社の決算月には、以下のような流れで決算書を作成し、申告書を提出します。
確定申告で必要な作業であるだけでなく、金融機関や投資家からの評価材料にもなります。
- 事業年度の全期間の記帳を完了させる
- 資産や負債の実地棚卸と残高確認
- 決算整理仕訳
- 決算書の作成
- 株主総会での承認を受ける
- 法人税の申告書を作成し提出する
事業年度の全期間の記帳を完了させる
決算期は事業年度のまとめともいえる時期なので、まずは事業年度の全期間の記帳ができているか確認します。
決算を行う前の準備段階として、当期分の記帳を完了させてから試算表や明細表を作成していきます。
資産や負債の実地棚卸と残高確認
棚卸資産の数量と実際の金額、帳簿上の記録に相違がないようにしなければいけません。
預金の残高証明、現金の実残高、未収金残高の確認や実地棚卸も行い、間違いがないようにしておきましょう。
決算整理仕訳
決算整理仕訳は、年度の決算月にのみ行う作業で、帳簿とのズレを状況に合わせて修正します。
固定資産の減価償却や有価証券の評価替えも含まれますので、時間や手間がかかる作業となるでしょう。
決算書の作成・承認を受ける
決算整理が終わったら、決算書を作成していきます。
貸借対照表、損益計算書などの計算書類、事業報告、
計算書類の附属明細書、事業報告の附属明細書などが必要となります。
株式会社であれば、作成した計算書類は株主総会で承認を受けます。
法人税の申告書を作成し提出する
決算書が確定したら、法人税の申告書を作成していきます。
決算日の翌日から2ヶ月以内が申請期限となりますので、期限内に終わらせるようにしましょう。
会社を設立すると、法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人税、消費税の税務申告が必要となります。
決算月は税理士に相談しよう
決算月は会社によって、自由に設定できます。
決め方はいくつかありますが、迷ったら税理士に相談するのがおすすめです。
- 節税になる決算月を教えてくれる
- 業務効率を考慮して決算月が決められる
節税になる決算月を教えてくれる
業務内容で繁忙期のない事業をしている企業などは、「決算期が本当にこれでいいのか」と迷ってしまうかもしれません。
「少しでも不安がある」「決め手がない」という場合は、税理士に相談しましょう。
事業内容や繁忙期、納税月や消費税の免税期間を考慮しながら、最適な決算月を探っていけます。
設立時から適切な節税対策をするために、早めに相談するといいでしょう。
業務効率を考慮して決算月が決められる
決算月には、決算書の作成など多くの手間や時間を費やします。
どういった準備や手続きが必要なのかといった点を考慮し、会社の状況によって負担のない決算月を提案できます。
棚卸の負担は事業規模によっても異なりますので、多くの側面から総合的に決算月を決められるようにしましょう。
決算月に関するよくある質問
会社の決算月に関するよくある質問をまとめました。
- 会社の決算月を確認する方法はありますか?
- 決算月が多いのは?
- 決算月には何をしますか?
- 決算月は何が忙しいですか?
- 税理士の閑散期はいつですか?
会社の決算月を確認する方法はありますか?
会社のルールを記してある定款の「計算」という箇所に、決算月が記載されています。
定款が手元にない場合は、提出した法人設立届出書の控えを確認してみましょう。
控えもなければ、税務署に出向いて問い合わせるという確認方法もあります。
決算月が多いのは?
日本の企業で決算月が1番多いのは3月です。
次いで9月、12月、8月となっていき、最も決算月として少ないのは11月です。
事業年度終了月と法人数は、国税庁に以下のようなデータがあります。
事業年度終了月 | 法人数 |
---|---|
4月 | 195,243 |
5月 | 216,449 |
6月 | 252,265 |
7月 | 202,806 |
8月 | 238,234 |
9月 | 290,587 |
10月 | 114,052 |
11月 | 70,919 |
12月 | 245,664 |
1月 | 94,398 |
2月 | 176,981 |
3月 | 543,709 |
参照:国税庁|決算期月別法人数
決算月は何が忙しいですか?
決算月は、経理が最も忙しい時期です。
売上や目標達成率、税金や諸費用の計算が必要となるためです。
決算月だからしなければいけない業務だけでなく、日常的な業務もこなしながらの作業となりますので、忙しくなります。
できる業務はできるだけ前倒しで取り組み、負担がかかりすぎないよう準備しておきましょう。
税理士の閑散期はいつですか?
一般的に税理士の閑散期は6月~10月となります。
多くの企業で営業や研修に力を入れる時期であり、税理士は巡回監査や記帳代行、税務調査対応などを行っています。
税理士にじっくりと相談にのってもらいたい、自社の決算業務に注力してもらいたいという企業は、この時期を狙うといいでしょう。
自社に合う決算月を決めよう
決算月を決めるには、複数のポイントがあります。
「繁忙期を外して決算月の負担がかからないようにする」「節税効果が高い月を決算月にする」など複数の観点からベストな決算月を選びましょう。
事業内容や取引先の事業年度、繁忙期や棚卸の規模など、会社によって状況は異なります。
そのためどの決算月がベストかは、会社によってそれぞれです。
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