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会社設立
会社設立後に税務署に届出が必要な手続きとは?
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
法務局での登記申請が完了すれば、会社は設立できたことになります。しかし、会社設立の登記が終わっても、必要な手続きがすべて完了したわけではありません。
会社設立後は、法人としてさまざまな税金の納付義務が発生するため、税務署に各種届出を提出する必要があります。また、インボイス制度の開始に伴い、会社設立当初からインボイスに対応するためには、適格請求書発行事業者として登録も必要です。
今回は、会社設立後に税務署に届出が必要な手続きや、インボイスの登録手続きなど、税金に関して必要な届出についてご説明します。
会社設立後に税務署への届出が必要な手続き
会社設立後、税務署への届出が必要な書類は7つあります。このうち、必ず届出が必要となる書類は、「法人設立届」と「給与支払事務所等の開設届出」の2つです。その他の5つの届出は任意となりますが、「青色申告書の承認申請書」や「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」についてはメリットが大きいため、提出した方がよいでしょう。
では、税務署へ提出が必要な書類についてそれぞれ、詳しくご説明します。
法人設立届:届出期限 会社設立日から2ヶ月以内
会社を設立すると会社の所得に応じた法人税の納税が必要となります。そのため、会社設立後は税務署に、法人税などの国税を納付する法人を設立したことを報告する「法人設立届出書」の提出が必要です。
法人設立届出書は会社設立日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。
法人設立届出書は、税務署の窓口で入手することもできますが、国税庁のウェブサイトからもダウンロードが可能です。必要事項を記入のうえ、窓口に提出すればスムーズに手続きができるでしょう。
法人設立届出書には、本店の所在地の住所や納税地、法人名、代表者の氏名と住所、設立年月日、設立時の資本金または出資金の額などを記載します。事業の目的には、定款に記載した事業目的のうち、主なものと現に営んでいるもの、または営む予定のものを記載するようにします。資本金が1,000万円以上の会社を設立したときには、消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日の欄に、設立年月日を記載します。この欄に設立年月日を記載したときは、消費税の新設法人に該当する旨の届出書の提出は不要です。
また、法人設立届出書を提出する際には、定款の写しを1部提出する必要があります。ただし、資本金1億円以上の場合には、定款の写しは2部必要です。
国税庁:法人設立届出書
給与支払事務所等の開設届出書:提出期限 会社設立日から1ヶ月以内
「給与支払事務所等の開設届出書」も税務署への届出が必要となる書類です。
会社を設立すると、会社には従業員の給与から所得税を差し引き、本人に代わって納税する源泉徴収義務があります。「給与支払事務所等の開設届出書」を提出すると、税務署から納付書や年末調整に関連する書類が送られてくるようになります。
「給与支払事務所等の開設届出書」は、給与の支払いを行う事業所の開設を報告する目的の書類ですが、従業員を雇用せず、経営者1人の会社設立時でも提出が必要です。なぜなら、経営者1人の場合であっても、役員報酬の支払いが発生するため、源泉徴収を行わなければならないからです。従業員を雇用していない場合でも、届出が必要であることに注意しましょう。また、「給与支払事務所等の開設届出書」の提出期限は、会社設立日から1ヶ月以内と、法人設立届出書と比べて提出期限が短い点にも注意が必要です。
「給与支払事務所等の開設届出書」には、給与支払いを開始する年月日を記載する欄があります。この欄は、給与支払事務所等の開設した月中に「給与の支払いが開始されない」場合に、給与の支払いを開始する予定の日を記入することになります。例えば、経営者1人だけの会社を設立する場合は、役員報酬の支払いを会社設立の数か月後からスタートさせる場合もあるでしょう。そのようなときには、役員報酬の支払いを開始する予定の日を記載することになります。
「給与支払事務所等の開設届出書」は、 税務署の窓口で入手できるほか、国税庁のウェブサイトからもダウンロードできます。
青色申告書の承認申請書:提出期限 会社設立日から3ヶ月以内(任意)
青色申告によって申告書を提出する場合に必要な申請書です。
青色申告書を提出する法人の場合、欠損金を10年にわたって繰越控除ができるといったメリットがあります。また、資本金1億円以下の企業の場合、欠損金の繰越控除ではなく、欠損金の繰り戻しによる前年度の納付済みの法人税額の還付を選択することも可能です。青色申告には多くのメリットがあることから、ほとんどの会社では青色申告を行っています。
「青色申告書の承認申請書」の届出期限は、会社設立から3ヶ月以内です。ただし、会社設立から3ヶ月以内に事業年度が変わる場合には、事業年度が終了する日の前日までに提出しなければなりません。
「青色申告書の承認申請書」の「参考事項」欄には、伝票から総勘定元帳までの帳簿の種類や形態、記帳時期などを記載します。複写の伝票や大学ノート、ルーズリーフなど具体的な帳票の形態を記載しますが、会計ソフトを使用している場合は会計ソフトと記載して問題ありません。その場合、特別な記帳方法の採用の有無の箇所で電子計算機利用を選択します。また、記帳の時期の欄には、毎日、毎月など、記帳のタイミングを記載しましょう。
国税庁:青色申告書の承認申請書
事前確定届出給与に関する届出:提出期限 会社設立日から2ヶ月以内(任意)
役員報酬は、従業員の給与と異なり、原則として損金算入ができません。しかし、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与の3種類は、損金算入が可能です。
このうち、事前確定届出給与を損金算入するためには、事前に税務署に届出が必要となります。もし、事前確定届出給与に関する届出を提出していなかった場合、事前確定届出給与の損金算入は認められないため注意しましょう。
事前確定届出給与は役員の賞与にあたるもので、指定した日に、決められた金額を払うものです。「事前確定届出給与に関する届出書」には、株主総会や取締役会等において事前確定届出給与に関する決議をした日や、決議をした機関名などについての記載をします。また、届出書と併せて事前確定届出給与等の状況に関する付表を付けなければなりません。付表は、事前確定届出給与を支給する役員ごとに作成する必要があります。また、支給時期と支給額を記載するほか、定期同額給与についても支給時期と支給金額を記載しなければなりません。
会社を設立したばかりの企業の場合、「事前確定届出給与に関する届出書」の提出期限は、会社設立日から2ヶ月以内です。「事前確定届出給与に関する届出書」も税務署の窓口で入手できるほか、国税庁のウェブサイトからダウンロード可能です。
国税庁:事前確定届出給与に関する届出書
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書:提出した日の翌月に支払う給与から適用(任意)
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、給与の支給人数が常時10人未満の源泉徴収義務者で、納期の特例制度の適用を希望する場合のみ提出が必要になる書類です。
所得税法では、給与の支払い者が所得税を徴収して納付する、源泉徴収制度を採用しています。所得税を源泉徴収して国に納める義務がある人を源泉徴収義務者、源泉徴収される所得税を源泉所得税といいます。
源泉所得税は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに、納付書を添えて国に納付しなければなりません。しかし、毎月10日までに源泉所得税を計算し、納付書を添えて納付する作業は、小規模事業者の負担になる可能性があります。そのため、常時雇用している従業員が10人未満のときには、源泉徴収をした所得税を毎月納付するのではなく、7月と翌年の1月の年2回にまとめられる特例があり、この特例を源泉所得税の納期の特例といいます。源泉所得税の納期の特例を受けるためには「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の届出が必要です。
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、必ず提出しなければならない書類ではありません。そのため、届出の期限は設定されていませんが、申請書を提出した日の翌月に支払う給与から適用することが可能です。
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」は、税務署の窓口で入手できるほか、国税庁のウェブサイトからもダウンロードできます。
棚卸資産の評価方法の届出書:設立1期目の確定申告書の提出期限まで(任意)
棚卸資産の評価方法を選択したい場合のみ、提出が必要になる書類であり、必ず提出が必要な届出ではありません。
棚卸資産とは、販売することや使用することを目的に仕入れたものの、社内に在庫として残っている資産を指す会計用語です。確定申告の際には、決算書の作成時に、対象事業年度の売上から売上原価を差し引いた額を算出しなければなりません。しかし、仕入れたものを期末までにすべて売り切る、または使い切るということはありません。そのため、在庫には翌年度に繰り越すものも生じます。正しく売上から売上原価を差し引いた額を算出するためには、来年度に繰り越す在庫を明確に仕訳する必要があります。
棚卸資産の金額を確定させることを棚卸資産の評価といいます。棚卸資産の評価方法にはいくつかの種類がありますが、自社に適した評価法を選択したい場合には「棚卸資産の評価方法の届出書」の提出が必要です。「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出しない場合は、最終仕入原価法が採用されることとなります。
「棚卸資産の評価方法の届出書」も税務署の窓口のほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードが可能です。
国税庁:棚卸資産の評価方法の届出書
減価償却資産の償却方法の届出書:設立1期目の確定申告書の提出期限まで(任意)
減価償却資産を、法定償却方法以外の方法で計算したい場合に提出が必要な書類です。必ず提出が必要なものではありません。
減価償却資産とは、業務に用いる建物や建物付属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの、時間の経過とともに価値が減少していく資産のことです。減価償却資産の取得にかかった費用は、取得時に全額を経費として計上するのではなく、資産の耐用年数に合わせて分割して計上することになります。
減価償却資産の償却方法は資産ごとに決められており、定率法または定額法が適用されます。これを法定償却方法といいます。しかし、法定償却方法以外の減価償却方法を用いる場合には「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出が必要です。会社設立時には、設立第1期目の確定申告の提出期限が「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出期限となります。
「減価償却資産の償却方法の届出書」は税務署の窓口でも受け取れますが、国税庁のウェブサイトからもダウンロードができます。
国税庁:減価償却資産の償却方法の届出書
個人事業から法人成りをした場合に必要な税務署への届出
個人事業主から法人成りをして会社を設立し、個人事業を廃業した場合にも、税務署へ届け出なければならない書類があります。
個人事業の開業・廃業等届出書:提出期限 事業開始から1ヶ月以内
会社設立をし、すべての事業を法人で行う場合は、個人事業の廃業届出を提出する必要があります。ただし、一部の事業を個人事業として続ける場合や、会社とは異なる事業を個人事業として続ける場合には、提出する必要はありません。
「個人事業の開業・廃業等届出書」は税務署の窓口のほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。
国税庁:個人事業の開業・廃業等届出書
所得税の青色申告の取りやめ届出書:提出期限 青色申告を取りやめる年の翌年3月15日まで
個人事業主として青色申告を行っていた場合で、会社設立に伴い、個人事業を廃業する場合には「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の提出が必要です。提出期限は青色申告を取りやめる年の翌年3月15日までですが、個人事業の廃業届と一緒に提出すると、提出漏れを防ぐことができるでしょう。
「所得税の青色申告の取りやめ届出書」は税務署の窓口のほか、国税庁のウェブサイトからダウンロード可能です。
国税庁:所得税の青色申告の取りやめ届出書
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出:提出期限 事業廃止から1ヶ月以内
個人事業主として従業員を雇用し、給与を支払っていた場合には「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」を提出し、給与支払事務所を廃止したことを届出なければなりません。提出期限は事業廃止から1ヶ月以内です。
「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」は、税務署の窓口のほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。
消費税の事業廃止届出書:提出期限 事業廃止事由が生じた場合速やかに
消費税の課税事業者であった場合は「事業廃止届出書」の提出が必要です。ただし、事業を廃止した場合、事業廃止の日が属する課税期間にかかる消費税の申告は必要であることを忘れないようにしましょう。
「事業廃止届出書」は、税務署の窓口のほか、国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。
税務署以外への届出が必要な税務関連書類
会社設立後は税務署のほか、都道府県税事務所や市町村役場にも「法人開設届出書」の提出が必要です。また、インボイスの発行事業者を希望する場合は、インボイス登録センターへの届出も行うようにしましょう。
都道府県税事務所・市町村役場に法人設立届を提出する
税務署に届け出る書類は、国税に関する手続きです。会社設立後は、地方税である法人住民税・法人事業税の納付も必要になるため、本店所在地がある都道府県税事務所と市町村役場にも「法人設立届出書」を提出します。
「法人設立届出書」の様式は自治体によって異なるため、各自治体のウェブサイトなどで確認するようにしましょう。提出期限も自治体によって異なるため、予め確認し、遅れないように手続きを済ませることが大切です。
適格請求書発行事業者の登録申請
インボイス制度の開始にあたって、会社設立と同時に適格請求書発行事業者の登録を希望するケースもあるでしょう。その場合は、課税期間の末日までに「課税事業者選択届出書」と「適格請求書発行事業者」の登録申請書を、併せて税務署またはインボイス登録センターに提出するようにします。また、令和5年10月1日から令和11年9月30日までに適格請求書発行事業者の登録を受ける場合は、経過措置として「課税選択届出書」を出さずに課税事業者となることができます。
国税庁:申請手続
まとめ
会社設立登記完了後は、税務署にさまざまな届出をしなければなりません。税務署への届出は、窓口に提出する方法や郵送する方法のほか、e-Taxでオンライン申請をすることも可能です。ほとんどの届出には提出期限があるため、しっかりスケジュールを立て、期限内に届出を済ませるようにしましょう。
会社設立後は、税務署のほかにも年金事務所やハローワークなどでの手続きも必要となり、本業に打ち込む時間が圧迫されてしまう可能性があります。税務署に提出する届出は税理士が作成することも可能です。また、棚卸資産の評価方法の選び方など、節税につながる的確なアドバイスを受けることもできるため、会社設立時には税理士に相談することをおすすめします。
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