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会社設立
法人化すると節税になる?メリット・デメリットやタイミングについても解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
法人化すると、課税対象となる税金の種類が変わったり、経費として認められる項目が増えることなどによって節税につながる可能性があります。
本記事では「法人化すると節税になるのか」について紹介します。
他にも「法人することのメリット・デメリット」や「法人化するタイミング」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、法人化して節税してみてください。
法人化すると節税になる?
法人化することによって、節税するメリットが挙げられますが、すべての事業において法人化が適しているとは限りません。
具体的には、事業の利益額に基づいて、法人化するべきかどうか慎重に判断することが必要です。
所得税と法人税の税率の違いがあり、所得税は事業の利益が増えるほど税率が高くなる累進税率が適用されます。
一方、法人税は利益の大小に関係なく一定の税率が適用されることが原則です。
所得税の税率は、課税総所得額に応じて最低5%から最高45%まで設定されていますが、中小企業に対する法人税は、所得が800万円以下の場合は約15%、それを超える部分には約23%の税率が適用されます。
このように、利益が少ないうちは法人化を控え、利益が増えたタイミングで法人化を検討するようにしましょう。
法人化によって得られる節税のメリット
法人化によって得られる節税のメリットについては、以下の4つが挙げられます。
- 給与所得控除によって課税所得を抑えられる
- 経費の計上範囲が広くなる
- 相続税対策に活用できる
- 欠損金の繰越控除可能期間が長くなる
それぞれのメリットについて解説していきます。
給与所得控除によって課税所得を抑えられる
法人化することによって、給与所得控除を活用し課税所得を減らすことが可能です。
給与所得控除とは、個人の所得を計算する際に、一定の金額を経費として自動的に差し引く制度です。
個人事業主の場合、事業によって得られた収入から必要な経費を差し引いた後の金額が課税所得となり、この課税所得に対して所得税が課せられます。
一方で、法人化をした場合には、社長が受け取る役員報酬について、給与所得控除を適用することができます。
給与所得控除により、報酬の一部が所得から自動的に差し引かれ、残った金額が課税所得となり、給与所得控除の適用を受ける分だけ節税が可能になります。
経費の計上範囲が広くなる
会社設立をして法人化することには、経費として認められる範囲が広がり、所得金額を抑えることができるメリットが挙げられます。
具体的に、法人化することで経費として認められる例として以下が挙げられます。
- 法人が契約者となる生命保険料や社会保険料
- 福利厚生にかかる費用
- 健康診断の費用
- 出張時の日当や社宅の家賃
- 社宅制度を利用した際の住宅費
- 経営者自身の給与
- 退職金の支払い
- 経営者の家族への給与支給
上記のように、個人事業では経費として認められない項目も、法人化することで経費に計上できるようになるので、結果として大幅な節税が可能になります。
相続税対策に活用できる
会社を設立して資産を法人に移すことで、相続税を軽減できる可能性があります。
相続税は個人の資産に課税されるので、資産を法人に移管すれば、相続税の課税対象から除外されることになります。
しかし、この方法が効果的かどうかは状況によって異なるので、事前に確認が必要です。
例えば、相続税の基礎控除額以内に収まるような資産の場合、この手法による節税効果は期待できません。
また、実際に事業をおこなっている実態がなければ、単に法人を設立して資産を移すことは難しいです。
このように、相続税対策として会社設立を検討する際には、そのメリットとデメリットを十分に理解した上で、専門の税理士に相談することをおすすめします。
欠損金の繰越控除可能期間が長くなる
法人化するメリットとして、欠損金の繰越控除期間が長くなることで、節税効果を得やすくなります。
大きな赤字が発生した際、繰越期間が短いと赤字を十分に活用できない可能性があるため、期間が長いほど節税につながります。
個人事業主の場合だと赤字を翌年以降の所得と相殺するために繰り越すことができますが、その繰越期間は最大で3年です。
しかし、法人では欠損金の繰越控除期間が9年、場合によっては10年まで延長することが可能です。
法人化するデメリット
法人化するデメリットについては、以下の4つが挙げられます。
- 設立費用がかかる
- 必ず節税できるとは限らない
- 確定申告や決算作業が複雑になる
- 副業が会社にバレる可能性が高い
それぞれのデメリットについて解説していきます。
設立費用がかかる
会社を設立して法人化するには、初期費用が発生してしまうデメリットが挙げられます。
株式会社を設立する場合には、最低でも約25万円程度の費用が必要です。
具体的に費用の内訳は以下のとおりです。
- 収入印紙代:4万円
- 定款認証手数料:5万円
- 定款の謄本請求手数料:約2,000円
- 登録免許税:15万円以上
上記の費用の中で、収入印紙代は紙の定款を作成する場合のみ必要になり、電子定款を利用すれば、この費用を節約することが可能です。
また、定款の謄本請求手数料は1ページあたり250円で、通常8ページほどの定款が必要になるので、合計で約2,000円かかります。
さらに、登録免許税は資本金の0.7%と定められていますが、その金額が15万円未満の場合は、最低額として15万円が適用されます。
必ず節税できるとは限らない
会社設立によって節税が可能なケースもありますが、必ずしも節税できるというわけではないので注意が必要です。
実際に、インターネットやSNSなどの情報で、「所得が〇円以上であれば節税が可能」といった内容がよく見られますが、これはあくまで一般的な目安です。
法人化することでどの程度の経費を計上できるのか、役員報酬をどのように設定するのか、事業の内容やその安定性などによって、節税の効果は個々の状況によって異なります。
本当に節税効果があるのかどうか、事前に税理士にシミュレーションを依頼し、慎重に検討してから法人化することをおすすめします。
確定申告や決算作業が複雑になる
会社を設立すると、個人でおこなう確定申告と比較して、確定申告や決算作業が複雑になってしまい手間がかかってしまうデメリットが挙げられます。
また、会社から役員報酬を受け取る場合には、個人の所得税の申告も別途必要となります。
実際に、法人の決算は、細かく正確におこなわなければならないので、会社の事務作業と本業を両立させるのはかなりの負担となってしまうのも事実です。
副業が会社にバレる可能性が高い
会社員が節税を目的に法人化する際には、副業が会社にバレてしまう可能性が高くなってしまうデメリットが挙げられます。
具体的には、複数の場所から給与を受け取っている場合には、その情報が勤務先に通知される可能性があります。
法律的には、雇用契約を結んでいる人が副業をおこなったり会社を設立したりすること自体に問題はありません。
しかし、企業によっては副業を禁止している場合があるので、副業をする際には十分注意する必要があります。
就業規則や雇用契約で副業や兼業が禁じられている場合、会社設立によって懲戒処分を受ける可能性もあります。
法人化するべきタイミング
法人化するべきタイミングについては、以下の2つが挙げられます。
- 事業所得が800万円以上になったタイミング
- 年間の売上が1,000万円を超えたタイミング
それぞれのタイミングについて解説していきます。
事業所得が800万円以上になったタイミング
事業所得が800万円を超えたときは、法人化を検討するタイミングといえます。
所得が800万円を超えると、個人事業主としての税負担が法人よりも高くなる可能性があるためです。
個人事業主の場合、全ての利益が個人所得として扱われてしまい、所得税が課されて、所得税は5%から45%の7段階に分かれており、所得が増えるほど税率も高くなってしまいます。
また、個人事業主は住民税も負担する必要があるので、所得税と住民税を合わせると、個人事業主の税率は最大で55%負担することが必要です。
一方、法人にかかる法人税率は、最大でも23.20%になるので、法人化することで税負担が軽減される可能性があります。
年間の売上が1,000万円を超えたタイミング
個人事業主の年間売上が1,000万円を超えた場合、法人化を検討するタイミングといえます。
年収が1,000万円を超えると、2年後から自動的に消費税の課税対象者となり、消費税の支払いが求められることになります。
しかし、法人化をすると、年収のカウントがリセットされるので、消費税の納税義務を法人化後の2年後に延期することが可能です。
消費税の支払いを一時的に回避できるというメリットがありますが、暫定対策であり、恒久的な節税対策にはならないので注意が必要です。
また、法人化前の売上状況によっては、法人化後の売上が1,000万円を下回ってしまうと、消費税の課税事業者には該当しなくなってしまうので、消費税の節税効果が得られない可能性もあります。
法人化する流れ
法人化する流れを把握しておくことによって、スムーズに法人化することができたり、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。
具体的に、法人化する流れについては、以下が挙げられます。
- 設立会社の基本事項を決める
- 定款を作成後に認証を受ける
- 資本金を振り込む
- 法人登記申請をする
- 法人口座を開設する
- その他手続きをする
それぞれの項目について解説していきます。
設立会社の基本事項を決める
会社設立を検討する際には、設立する会社の形態を決める必要があります。
株式会社にするか合同会社にするか、または他の法人形態を選ぶかを検討しましょう。
また、以下のような要素も決定する必要があります。
- 新会社の発起人
- 代表取締役を誰にするか
- 社名をどうするか
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金の額
- 決算月
どのような会社設立の方法が最適か判断に迷っている方は、税理士などの専門家のアドバイスを受けることで、より適切な選択につながります。
定款を作成後に認証を受ける
会社の設立に関する基本事項が確定したら、定款に反映させ、その定款の認証手続きをおこないます。
定款とは、会社の基本的な運営ルールを記載した文書であり、株式会社などを設立する際には必須となり、公証人役場での認証が必要です。
紙の定款を用いた場合には、収入印紙代として4万円がかかりますが、PDF形式の電子定款を利用すれば、印紙代は不要となります。
しかし、合同会社の場合、定款の認証は必要ありません。
資本金を振り込む
次に、発起人の個人銀行口座に、事前に設定した資本金を振り込む必要があります。
口座に既に資本金相当の金額が入っているだけでは不十分で、新たに資本金として振り込みや入金をおこなうことが必要です。
また、振り込みが完了したことを確認するために通帳のコピーを取り、払込証明書を作成します。
振込証明書は、登記申請の際に必要な添付書類として提出する必要があります。
法人登記申請をする
資本金の振込みが完了したら、次に法人登記のための書類を揃え、法務局にて法人登記申請をおこないます。
会社を設立する際に必要な書類は、設立する会社の種類や事業内容によって異なる場合があるので、事前に確認をしておきましょう。
また、法人登記の際には、登録免許税が必要となります。
税額は会社の種類によって異なりますが、株式会社の場合は最低でも15万円、合同会社の場合は最低でも6万円が必要です。
登記申請から完了までの期間は、通常1〜2週間程度が必要になります。
法人口座を開設する
会社設立の登記が完了した後、会社の印鑑証明書や登記簿謄本が取得可能になるので、これらの書類を持参して、法人名義の銀行口座を開設しましょう。
法人の銀行口座を持つことで、個人の資金と法人の資金を明確に分け、法人の財務管理がよりスムーズになります。
法人口座の開設は必須ではありませんが、融資を受ける際に必要となる場合があります。
また、今後の事業運営においても便利になるので、法人口座の開設を検討することをおすすめします。
その他手続きをする
法務局での登記が完了した後には、税務署での手続きも必須です。
具体的には、税務署や都道府県税事務所、市町村役場への届け出が必要になり、適切な納税をおこなうために不可欠になります。
また、会社を設立し、役員や従業員に一定以上の報酬や給与を支払う場合には、社会保険への加入が必要です。
役員報酬を支払う場合、健康保険と厚生年金保険の手続きや、従業員を雇用する場合は、労災保険と雇用保険の手続きもおこなう必要があります。
法人化に関する相談は税理士がおすすめ!
今回は、法人化によって得られる節税のメリットから法人化の流れを紹介しました。
法人化を検討する際には、必ず設立の利点と欠点を慎重に比較し、節税のシミュレーションをおこなった上で、総合的に判断することが重要です。
また、正確な判断を求める場合は、法人化に詳しい税理士に相談することを強くおすすめします。
今回の記事を参考にして、法人化で節税を検討してみてください。
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