2024.10.31

起業・開業

個人事業主が開業する時のやること&手順|流れを知って備えよう

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

個人事業主が開業する時には、どんな手続きを、どんな流れで行っていくのでしょうか。

会社のように誰かが教えてくれる環境ではありませんので、自分で能動的に動いていかなければいけません。

個人事業主として収益を上げると、税金を納めるようになります。

納税に関して「知らなかった」では済まされないこともありますので、失敗がないように開業時の手順を確認しておきましょう。

個人事業主が開業時にやるべき内容

個人事業主開業

個人事業主として開業する際にやるべき事柄は、以下のような内容になります。

納税をするための確定申告も自分で行わなければいけなくなりますので、後で困らないように内容を理解しておきましょう。

  • 事業計画を作成する
  • 副業なら就業規則を確認する
  • 国民年金や国民健康保険に切り替える
  • 開業届を提出する
  • 確定申告の準備
  • 青色申告書の提出
  • 事業用の口座を作っておく
  • インボイスの登録

事業計画を作成する

事業計画とは、事業を運営していくためのプランを分析し、計画するものです。

どのような事業で、どうやって収益を上げていくのかを具体的に考えていきます。

取り扱いサービスや価格設定だけでなく、ターゲット層を明確にする、集客方法を考えるなどの戦略も事業計画に含まれます。

参入しようとしている市場や競合を分析し、差別化ができるような事業計画を打ち出せるといいでしょう。

ライバルを分析し理解した上で、何を強みとして事業をしていくのかを考えておきましょう。

副業なら就業規則を確認する

個人事業主とは、個人で事業を行う人を指します。

近年は会社員として仕事をしながら、個人で副業を開始するという方も少なくありません。

個人事業主になるために、必ず会社を辞めなくてはいけないというわけではありません。

ただし副業が禁止されている会社もありますので、就業規則を確認しておいた方がいいでしょう。

会社員が副業として個人事業をスタートさせると、経済的なリスクを少なく起業できます。

会社が副業を禁止している場合、バレるとトラブルになる可能性がありますので注意しましょう。

国民年金や国民健康保険に切り替える

個人事業主社会保険

会社員であれば社会保険に加入していますが、個人事業主になると
国民健康保険と国民年金への加入手続きが必要になります。

会社員を辞めて個人事業主になる場合は、会社で加入していた社会保険から切り替えをします。

国民健康保険

退職の翌日から14日以内に市区町村役場の窓口で、国民健康保険の切り替えを行います。

以前の勤務先の健康保険を継続したい場合は、自分で会社負担分の保険料を負担すれば最大2年間任意継続できます。

個人事業の収入が多い場合、扶養家族がいる場合には、社会保険の方が保険料を抑えられる可能性があります。

社会保険を任意継続するか、国民健康保険に加入するかは、個人事業の収入や社会保険の金額によって判断するといいでしょう。

国民年金

会社員の副業として個人事業を行う場合は厚生年金に加入したままで問題ありませんが、会社を辞めて個人事業のみでやっていくのであれば国民年金に加入します。

厚生年金の脱退手続きは会社が行い、無事に処理されれば「社会保険喪失届」が届きます。

退職日の翌日から14日以内に市区町村役場で手続きをしていきます。

国民健康保険の切り替えと同じタイミングで行うと、役所に出向く回数を減らせます。

開業届を提出する

開業届とは、個人が開業した旨を税務署に届ける書類です。

所得税法に基づいて提出が義務付けられていますので、忘れないようにしましょう。

開業届の提出については、詳しく後述いたします。

確定申告の準備

確定申告とは、1年間の収入から所得を計算し、税金額を計算して税務署に申告する一連の手続きを指します。

会社員時代は年末調整を受け取るのみだったかもしれませんが、
個人事業主になったら確定申告を行わなければいけません。

無申告のまま放置したり、期限を過ぎたりするとペナルティが科され、本来よりも多くの税金を納めなくてはいけなくなります。

領収書や帳簿、レシートなどが必要になりますので、整理して保管しておくようにしましょう。

青色申告書の提出

個人事業主青色申告書

確定申告をするには、青色申告書と白色申告書の2種類の申告書があります。

青色申告書の提出をしなければ、白色申告書での確定申告となります。

白色申告書での優遇措置はありませんが、青色申告書にしておくと最大で65万円控除の優遇措置が受けられます。

青色申告書にするデメリットとしては、帳簿や申告の要件が厳しくなるという点です。

ただ青色申告書だと税制上の特典がありますので、青色申告書にしておくといいでしょう。

事業用の口座を作っておく

個人事業主の場合、個人の口座しかもっていないと事業でのお金の流れがわかりにくくなりますので、事業用の口座を作っておくのがおすすめです。

事業用の口座があると、確定申告の時に仕分け作業の手間がなくなるというメリットがあります。

個人事業主であれば屋号で口座が作れます。

事業用口座は必ず作らなければならないものではありませんが、お客様からの信頼を得るという意味でも事業用口座は意味のあるものとなるでしょう。

インボイスの登録

インボイス制度とは、令和5年(2023年)10月1日からスタートした制度で、各事業者が消費税を正確に納められるように計算する仕組みです。

参照:国税庁|インボイス制度について

インボイスの登録は義務ではありませんので、個人事業主となると課税事業者か免税事業者を選択できます。

「免税事業者よりもインボイス登録済みの事業主と取引したい」と考える会社もありますので、取引先の意向によってインボイス制度に登録するという個人事業主もいます。

課税事業者になると所得に関わらず消費税を納税しなくてはいけませんので、メリットとデメリットを比較して判断していくといいでしょう。

開業届の提出

個人事業主開業届

開業届は「個人事業の開業・廃業等届出書」が正式名称です。

納税地の税務署に提出しますので、お住まいの地域の税務署に提出します。

開業届の提出について確認しておきましょう。

  • 開業1ヶ月以内に開業届を
  • 事業をする屋号を決める
  • 開業届の提出方法

開業1ヶ月以内に開業届を

原則として開業届は開業してから1ヶ月以内に提出するように、とされています。

しかし1ヶ月を過ぎても罰則などはありませんので、1ヶ月を過ぎても焦らずに開業届を提出しておきましょう。

名前やマイナンバー、開業日や青色申告承認申請の有無など、基本的な内容を記述するのみなので難しい書類ではありません。

事業をする屋号を決める

屋号とは会社でいう会社名のようなもので、個人事業主が事業を行う際に使う名称です。

個人事業主だからといって必ず必要なものではなく、屋号がなくても構いません。

屋号がすでに決まっていれば開業届に記載しますが、将来的に必要を感じたタイミングでつけてもいいでしょう。

ただし屋号は事業内容をわかりやすくする、事業の信頼をアップさせるという効果もありますので、考えておくといいかもしれません。

事業内容が伝わるような覚えやすい屋号がいいでしょう。

有名企業に似た紛らわしい屋号や、他社の商標権を侵害するような屋号は避けると無難です。

開業届の提出方法

開業届は税務署に提出するものですが、必ずしも税務署に出向く必要はありません。

3つの提出方法があり、お好きな方法が選べます。

  1. 税務署に出向いて提出
  2. 郵送で提出
  3. e-TAXで提出

「税務署が行きにくい場所にある」「時間がとれない」という場合は、郵送やe-TAXを選ぶと便利です。

税務署に直接行ければ、開業届の用紙をもらって、その場で記入できます。

疑問点があればすぐに質問できますし、確定申告で行く必要が出てくるかもしれませんので、開業のタイミングで一度出向いておいてもいいかもしれません。

郵送の場合は切手や返信用封筒が必要になり、e-TAXの場合はマイナンバーカードの準備が必要です。

融資・補助金・助成金について

個人事業主開業助成金

個人事業主として開業する際には、資金を準備しておくべきです。

開業届の提出にかかる費用は0円であり、全く資金をかけずに開業するのも可能です。

しかし個人の生活もありますので、事業のための資金の確保が必要です。

個人事業主開業に関する、融資や補助金・助成金について、お伝えします。

  • 新たな事業者を融資する創業融資
  • 国や地方自治体による補助金・助成金

新たな事業者を融資する創業融資

創業融資とは、開業の際に受けられる融資です。

開業直後は収入が安定していない状態で、運転資金が必要になると想定できます。

事業実績がなくても融資を受けられる、金利が低いといった特徴があります。

創業融資には、日本政策金融公庫の新創業融資制度や地方自治体による制度融資などがあります。

融資を受けるには返済見込みがあるのが条件なので、しっかり準備をしてから申請しましょう。

国や地方自治体による補助金・助成金

お金を借りる融資に対し、補助金や助成金は資金を補填してもらえる仕組みです。

つまり補助金や助成金は返済不要の場合が多いので、開業したばかりの個人事業主にとってはありがたい制度です。

地方自治体で受けられる補助金の内容が異なりますので、お住まいの地域の補助金や助成金を確認してください。

補助金や助成金は要件さえ満たしていれば受給できますので、受給できそうな補助金・助成金があれば申請してみましょう。

個人事業主に税理士は必要か

個人事業主開業税理士

今まで会社員として勤務をしてきた人が個人事業主になると、慣れない事務処理に直面する場合があるでしょう。

個人事業主になるために税理士は必ず必要なものではないかもしれません。

しかし以下のような理由から、税理士を検討するのがおすすめです。

  • 相談相手が必要
  • 事務が本業を圧迫してしまう

相談相手が必要

開業届の提出をすれば、個人事業主としての事業をスタートできます。

しかし会社員時代には不要であった経費の管理や税金の仕組みなど、疑問点が多々出てくるかもしれません。

「収入が上がらず支払いが必要な場合の対処法は」「インボイスの対応は」など、ひとつひとつを1人で処理していくには労力も時間も費やす必要が出てくるでしょう。

税理士は開業時の資金の相談や節税、業績についての相談もできます。

税理士はプロなのでスピーディーに問題を解決し、事業のサポートができます。

事務が本業を圧迫してしまう

「事業が順調であれば税理士は必要ない」と考えるかもしれませんが、事業が順調であればそれだけ事務処理も増加します。

慣れない経理処理や請求書発行、支払い業務といった業務に追われてしまうかもしれません。

本業に全力を注ぎたいのに、これらの業務が本業を圧迫してしまうという状態に陥ってしまう人もいます。

将来的な成長を考えて本業に尽力すべきであり、税理士に任せられる業務は任せるべきです。

税理士に依頼するデメリット

個人事業主開業税理士

個人事業主に税理士がついていた方が良いですが、一方でデメリットもあるのが事実です。

以下のようなデメリットがありますので、確認しておきましょう。

  • 税理士費用がかかる
  • 税理士とのコミュニケーションが必要

税理士費用がかかる

個人事業主であれば、税理士顧問料の相場は月額2万円~3万円程度となります。

確定申告を依頼した場合は、おおよそ5万円~10万円程度です。

開業したばかりで事業が軌道に乗っていなければ、税理士費用が負担になってしまうかもしれません。

開業時から税理士を依頼すべきか悩む、1番の要素が費用であるといえるでしょう。

ただしお伝えした通り、本業を圧迫するような事務作業に追われている状態だと事業を軌道に載せられなくなってしまうかもしれません。

費用対効果を考慮して、税理士を依頼すべきか検討していきましょう。

税理士とのコミュニケーションが必要

税理士は確定申告だけでなく、開業時の資金や節税、業績などの相談ができます。

しかし多くの相談に乗ってもらうとなると、それだけ税理士とのコミュニケーションが必要になります。

税理士に当たりハズレがないとも言えませんし、人間的な相性が合わない場合もあるでしょう。

税理士とのコミュニケーションそのものが負担となり、ストレスになってしまうケースもありますので、税理士はしっかりと選ばなくてはいけません。

個人事業主の開業は税理士に相談を

個人事業主の開業は、税理士に開業届を提出するだけでなく、社会保険の手続きや事業のための資金集めも必要です。

毎年必ず確定申告をしなくてはいけませんが、以前は会社員だった人は確定申告に煩わしさを感じてしまうでしょう。

個人事業主が開業する際には、税理士に相談するのがおすすめです。

開業という大切な時期に万全の体制を整え、事業に注力できる環境を作っておけます。

税理士法人松本では、初回の電話相談が無料となっています。

是非お気軽にご相談ください。


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