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会社設立
会社設立における発起人とは?役割や責任についても徹底解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
会社設立における発起人とは、企画立案や出資、定款の作成など、設立過程で中心的な役割を果たす重要な存在です。
発起人には特定の資格や条件は求められておらず、誰でもその役割を担うことが可能ですが、会社法で定められた責任があり、職務の重要性が高いと言えます。
本記事では、会社設立における発起人について紹介します。
他にも「発起人の役割」や「発起人の責任」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、会社設立における発起人について理解を深めてみてください。
目次
会社設立における発起人とは
会社設立における発起人とは会社を設立する計画を立て、その実現のために出資や必要な手続きを行う人物のことを指します。
例えば、1人で会社を立ち上げる場合、自分自身が発起人となります。
この役割を担う人は、会社設立までの間、資本金を出資したり、定款を作成したり、取締役を選任したりといった重要な作業を行います。
設立が完了すると、発起人は株主として会社運営の意思決定に関与する立場となります。
しかし、他の人を取締役に選任した場合、経営の権限がその取締役に移るので、取締役を選ぶ際には、自身の意向に反して経営が進むリスクを考慮し、慎重な判断が求められます。
発起人と他のステークホルダーの違い
発起人と他のステークホルダーの違いについては、以下の4つが挙げられます。
- 発起人と出資者の違い
- 発起人と株主の違い
- 発起人と役員の違い
- 発起人と取締役の違い
それぞれの項目について解説していきます。
発起人と出資者の違い
出資者と発起人の違いは、主に経営への関与の有無にあります。
発起人が自ら出資するケースもありますが、事業運営に必要な資金を集めるために、経営には関わらず資金提供のみを行う出資者を募ることも可能です。
出資者は株主として議決権を持つ立場になるため、出資者の数が増えることで意思決定が複雑化するリスクがあることに留意する必要があります。
一方で、株式会社には発起人制度が設けられていますが、合同会社には発起人制度が存在しません。
合同会社の場合、出資者である「社員」が原則として経営を担い、取締役の選任などの手続きが不要です。
また、合同会社の設立には定款への社員全員の署名または記名押印が求められます。
このように、会社の形態に応じて適切な手続きが必要となりますので、事前に確認するようにしましょう。
発起人と株主の違い
設立が完了すると、発起人は会社の株主としての地位を得ることになりますが、発起人であったという事実は変わりません。
一方で、株主は会社に資金を提供する出資者を指します。
発起人がそのまま株主になる場合はありますが、設立後に発起人ではなかった株主が発起人として認められることはありません。
発起人と役員の違い
役員は、設立された会社の運営や管理を担当する責任者です。
会社設立時には、発起人が役員を指名する仕組みになっています。また、発起人自身が役員を兼ねることも可能です。
株式会社における役員については、会社法で以下のような職務が規定されています。
- 取締役
- 会計参与
- 監査役
このように、発起人は会社設立の初期段階を支える役割を担い、役員は設立後の運営を統括する役割を果たしているので、それぞれの役割を理解しておくことが重要です。
発起人と取締役の違い
取締役は会社設立後に経営を担当し、企業の利益を追求する役割を果たします。
そのため、発起人は出資を行うとともに、取締役の選任や会社の基本方針の決定といった重要な役割を担います。
また、発起人が設立後も引き続き取締役となり、経営に関与することも可能です。
発起人の役割
発起人の役割については、以下の3つが挙げられます。
- 資本金の出資
- 定款の作成
- 役員の選任
それぞれの役割について解説していきます。
資本金の出資
会社法の規定により、発起人は少なくとも1株以上を引き受ける必要があり、それによって資本金を拠出することになります。
このようにして株式を所有する人は「株主」と呼ばれるため、発起人は会社設立後に自動的に株主として扱われます。
しかし、会社の設立に関与した人物であっても、出資を行わない限り発起人としての資格を持つことはできません。
定款の作成
定款は、会社の方針を記載したルールブックの役割を果たすもので、作成は発起人の重要な責務です。
この書類には、商号や本店所在地、株主総会の開催時期、決算期など事前に決めておくべき事項が記載されています。
また、定款に記載する内容は以下3つのカテゴリに分けられます。
項目 | 内容 |
絶対的記載事項 | 必ず定款に記載しなければならない項目であり、記載がなければ定款自体が無効となる重要な要素です。具体的には、事業目的、会社名(商号)、本店所在地、出資財産の価額、発起人の氏名や住所などが含まれます。 |
相対的記載事項 | 記載がなくても定款の有効性そのものには影響しませんが、記載しないとその内容に効力が発生しない事項です。例として、株式譲渡制限や役員任期の延長、取締役会の設置などが挙げられます。 |
任意的記載事項 | 任意的記載事項は、会社が自由に決めた内容を記載する項目です。これらは記載がなくても効力には影響しませんが、明文化することで後々の運営をスムーズに進める助けとなります。 |
完成した定款は、発起人全員の実印で押印され、製本した上で、公証人の保管用、会社保存用、登記用として3通作成されます。
役員の選任
会社設立において、役員の選定は発起人が担う重要な任務の一つです。
会社法(第326条1項)では、株式会社において最低でも1名以上の取締役を設置することが義務付けられています。
この取締役をはじめとする役員は、会社の定款を作成する段階で発起人が選任することが求められます。
具体的に、発起人が任命する役員の主な種類とその役割は以下の通りです。
役員の種類 | 内容 |
取締役 | 最低1名以上の設置が必要になり、会社の経営方針や事業計画を策定する責任者です。取締役が1名の場合、その人が「代表取締役」となります。一方、複数名の取締役がいる場合には、「取締役社長」や「専務取締役」などの役職を設定することも可能です。 |
会計参与 | 会計参与は、取締役などと共同で会計書類を作成する役割を担います。この役職には、公認会計士や税理士といった専門家が選ばれることが一般的です。 |
監査役 | 監査役は、取締役や会計参与の業務において不正がないかを監査する役割を果たします。監査役には、会社内部から選ばれる「社内監査役」と、外部から迎え入れる「社外監査役」の2つの種類があります。 |
これらの役員は必ずしも発起人の中から選ぶ必要はなく、発起人以外の人物を選任することも可能です。
また、全ての役員が決定した時点で発起人としての法的な役割は完了となり、会社設立後はそれぞれ株主や役員としての職務を遂行していきます。
発起人の責任
発起人の責任については、以下の5つが挙げられます。
- 第三者への損害賠償責任
- 会社不成立の責任
- 仮装出資履行責任
- 財産価格填補責任
- 任務懈怠責任
それぞれの責任について解説していきます。
第三者への損害賠償責任
会社設立に関する任務を遂行しなかった結果、第三者に損害が生じた場合、発起人はその損害について賠償責任を負うことがあります。
しかし、この責任が問われるのは、発起人の行為が悪意または重大な過失に基づくものであると認められた場合に限られます。
そのため、これらの条件が満たされない場合には、責任を免れることが可能です。
会社不成立の責任
定款を作成したものの、その後の手続きが滞り、設立登記が完了せず会社の設立が実現しなかった場合、発起人はその過失に対して連帯して責任を負うこととなります。
また、会社設立に携わった発起人には、法律に基づき罰則や過料が課される可能性があるため、慎重に対応する必要があります。
仮装出資履行責任
会社に対して出資の履行を偽装した場合、その偽装した金額を全額支払う責任が発生します。
金銭を出資したケースでは、偽装された額に相当する金銭を全額納付しなければなりません。
また、現物出資の場合は、虚偽の給付とされた財産のすべてを提供する必要があります。
さらに、出資履行の偽装に関与した他の発起人についても、会社に対して偽装した発起人と同額の金銭を連帯して支払う義務が生じます。
しかし、関与した発起人が、自身の職務を遂行する際に十分な注意を払っていたことを立証できた場合には、責任を免除される可能性があります。
仮装出資履行に関する責任が果たされるまでは、当該発起人は株主としての権利を行使することができないので、あらかじめ注意が必要です。
財産価額填補責任
会社の設立方法には、現金以外の資産を出資する「現物出資」や、設立時に特定の資産を譲り受けることを条件とする「財産引受け」が含まれる場合があります。
このような方法で会社を設立する際には、財産価額填補責任という義務が発生することがあります。
財産価額填補責任とは、発起人が出資した資産の価額が定款に記載された価額に対して著しく不足している場合に、その不足分を補填しなければならない責任を指します。
しかし、この責任が免除されるケースも存在します。
例えば、発起人がひとりで会社を設立する場合、以下の条件のいずれかを満たせば免責が認められます。
- 検査役による調査を受けていること
- 発起人がその職務を誠実に遂行し、過失がなかったことを証明できること
一方、複数の発起人が関与する場合(募集設立)では、免責が認められるのは、検査役による調査を経ている場合に限られます。
このように、設立方法や状況によって財産価額填補責任の扱いが異なることを理解しておくことが重要です。
任務懈怠責任
会社設立に関わる重要な任務を果たさなかった場合、その結果として会社に損害が生じると、発起人はその損害を補填する責任を負うことになります。
懈怠(けたい)とは、業務を怠ることを指します。
また、複数の発起人が共同で設立業務を進めていた場合、いずれの発起人も連帯して損害賠償の責任を負う必要があります。
発起人の要件
会社の発起人になるためには、特別な資格や要件はなく、法律上の制限も設けられていません。
そのため、外国籍の方、未成年者、さらには法人も発起人として認められます。
しかし、会社設立時の定款認証では、発起人全員が印鑑登録証明書を提出する必要があります。
未成年者については、15歳以上であれば印鑑登録が可能であるため、発起人としての資格がありますが、親権者の同意書が必要です。
一方で、15歳未満の場合は親権者が法定代理人として手続きを代行することで、印鑑登録や定款の手続きを進めることが可能です。
法人が発起人となる場合は、新たに設立する会社の事業内容や目的が、発起人となる法人の定款に明記された事業内容や目的と関連性を持っていることが求められます。
この関連性を確認することが、新会社設立時の重要なポイントとなります。
発起人を決める際の注意点
発起人を決める際の注意点については、以下の2つが挙げられます。
- 法人が発起人になるケース
- 発起人を複数人決めるケース
それぞれの注意点について解説していきます。
法人が発起人になるケース
法人が発起人となる場合、その法人の権利は定款に記載された範囲内でしか行使できません。
そのため、発起人として参加しようとする法人の定款に記載された事業内容や目的が、新たに設立される会社の定款に記載された事業目的と一致しない場合、発起人としての適格性が認められないことがあります。
しかし、新設会社の目的に法人の目的を追加し、両者に関連性を持たせることで、発起人として認められる可能性を高めることができます。
発起人を複数人決めるケース
会社設立において複数人を発起人とする場合、必要となる書類の種類が増えたり、関係者間での調整が必要になったりするため、手続きが完了するまでに時間を要することがあります。
また、重要な意思決定を複数人で行う際には意見が分かれる可能性があるため、発起人の人数を設定する際には慎重な判断が求められます。
さらに、設立後の株式の所有割合についても十分な配慮が必要です。
会社の重要事項は株主総会で決定されるため、議決権の割合に応じて意思決定が行われます。
所有割合のバランスが偏ると、会社の支配権が特定の株主に集中するリスクがあるのも事実です。
このため、発起人が複数いる場合には、所有割合について明確に合意しておくことが重要です。
一方で、発起人が1人である場合には、自らが株主、取締役、発起人の役割をすべて担うことになるため、特別な調整が必要な事項はほとんどありません。
事業に最適な発起人を決定しよう!
今回は、会社設立における発起人について紹介しました。
会社設立に関わる発起人は、単に設立の手続きにとどまらず、設立後の運営や重要な意思決定にも深く関与する重要な役割を担っています。
そのため、発起人の役割や責任を十分に把握した上で、事業の成功にふさわしい人物を慎重に選定することが求められます。
今回の記事を参考にして、事業に最適な発起人を決定しましょう。
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