2024.11.30

会社設立

フリーランスのエンジニアが法人化するメリットや注意点を解説!

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

会社などの組織に所属せず、クライアントと直接契約を結んで仕事を受けるフリーランスのエンジニアとして活躍する人が増えています。会社に所属していれば、会社の指示に従い受注を受けた業務に取り組まなければなりません。しかし、フリーランスになれば、エンジニアとしてのスキルを活かし、自分の意思で関わりたい仕事を自由に選べます。
また、報酬についての交渉も自分で行えるため、収入アップにつながる可能性が高い点もフリーランスエンジニアの魅力です。しかし、フリーランスエンジニアとして順調に成長していくと、法人化して仕事を受けた方がより大きなメリットを得られる場合があります。
では、フリーランスエンジニアの方が法人化するとどのようなメリットを得られるのでしょうか。
今回は、フリーランスエンジニアが知っておきたい法人化のメリットやデメリット、法人化にあたっての注意点などについて分かりやすくご説明します。

フリーランスエンジニアの法人化とは

フリーランスエンジニアの法人化とは、個人事業主として事業を営むエンジニアが会社を設立し、事業を法人に移行することです。法人化するといっても従業員を雇用しなければならないわけではありません。フリーランスとして活動してきたエンジニアが社長となり、これまで通り、自分一人でエンジニアの仕事を継続するのです。ただし、個人事業主として受けてきた仕事は、個人が契約をするのではなく、設立した法人がクライアントと契約するようになります。

フリーランスのエンジニアが法人化するメリット


フリーランスエンジニアが法人化すると、次のようなメリットを得られます。

社会的信用を高められる


法人化とは、会社を設立するということであり、会社設立にはさまざまな手続きが必要になります。フリーランスとして開業した時とは異なり、資本金も準備しなければなりません。また、法務局で会社の設立登記を行えば、会社名や代表者名、事業内容、資本金の額などが登録されるため、誰でも会社の情報を閲覧できるようになります。そのため、誰がどのような形で運営している会社なのか、会社の実態を把握しやすくなり、フリーランスの立場よりも社会的な信用を得やすくなるのです。
企業によっては、取引先は法人のみと限定しているケースもあります。フリーランスというだけで受けられなかった案件も、法人化すれば取引できる見込みも生じ、取引先を拡大できる可能性もでてくるのです。
また、フリーランスの場合、会社員に比べ、収入が不安定であると捉えられる傾向にあります。そのため、マイホームを取得する場合に金融機関に住宅ローンを申し込んでも審査が厳しくなる可能性があります。しかし、法人化し、事業が順調に成長している場合は、よい条件で融資を受けられる可能性が高まるのです。

節税できる可能性がある


フリーランスエンジニアとして仕事をしている場合、仕事で得た利益に対し、所得税が課せられます。所得税は、所得額が高くなるほど税率も高くなる累進課税制度が採用されています。そのため、仕事を頑張り、多くの利益を得られるようになると、納税すべき所得税の額も高額になってしまうのです。
一方、法人化した場合、法人の所得に課せられる税金は法人税です。法人税には、累進課税制度は用いられていません。そのため、利益が多くなったからといって税率もどんどん高くなることはありません。
フリーランスエンジニアとして成功している方の場合、得られる利益が大きくなるため、毎年多額の所得税の納税が求められます。しかし、そのような方が法人化すると、課せられる税率が所得税よりも低くなる可能性があるため、納税額を抑えられるケースがあるのです。

自分の給与を経費にでき、経費計上ができる


フリーランスエンジニアの場合、仕事で得た報酬は、そのまま個人の利益となります。しかし、法人化すると法人の売上がそのまま自分の報酬になることはありません。法人化した場合は、法人から役員報酬という形でお金を受け取ることになります。毎月、同額が支給される定期同額給与として役員報酬を受け取れば、自分が受け取る報酬を経費として計上することが可能です。
法人税は、法人の利益に対して課せられます。利益は、売上から必要経費を引いた額であり、自分の報酬を経費として扱うことができれば課税対象となる額が低くなり、納税額も抑えられるのです。
法人化によって課せられる税金の種類が変わり、税率が異なるため節税につながる面もありますが、自身の報酬を経費計上できる点も法人化によってできる節税法だといえます。

消費税の免税期間を延ばせる可能性がある


1年間の売上が1,000万円以上の場合、課税事業者となり、消費税を納税しなければなりません。しかし、資本金が1,000万円未満の会社を設立する場合、条件を満たしていれば、設立から最大2年間は消費税の納税が免除されます。
また、フリーランスエンジニアとして活動している場合でも、売上が1,000万円を超えれば課税事業者となり、消費税の納付が必要になります。しかし、法人化すると個人事業主とは別人格として扱われるため、フリーランスエンジニアの時の売上高を引き継ぐことはありません。そのため、タイミングを合わせて法人化をすれば、消費税の免税期間を延ばすことができるのです。
しかしながら、インボイス制度の開始に伴い、売上高にかかわらずインボイス発行事業者として登録をするケースもあるでしょう。そのような場合は、売上高にかかわらず消費税の納税が必要になるため、法人化による消費税の納税面でのメリットは得られません。

社会保険に加入できる


社会保険に加入できる点もフリーランスエンジニアが法人化するメリットの1つでしょう。フリーランスの場合、国民健康保険と国民年金への加入が必要であり、いずれも保険料は全額自己負担となります。また、国民健康保険料は収入が高くなればなるほど保険料も高くなる仕組みです。
しかし、法人化すれば健康保険と厚生年金に加入できるようになり、それぞれの保険料は被保険者と会社で半分ずつを負担するようになります。したがって、社会保険に加入ができるようになれば、フリーランスエンジニアの場合よりも保険料の負担を軽減できる可能性が高いのです。
また、社会保険には扶養の制度があるため、一定以上の収入を得ていない配偶者や子どもを扶養することができます。子育て中の方の場合、社会保険に加入すれば子どもの国民健康保険料の負担がなくなるため、保険料の負担を大幅に軽減できるでしょう。

フリーランスのエンジニエアが法人化するデメリット


フリーランスエンジニアが法人化するとさまざまなメリットを得られる一方で、法人化によるデメリットもあります。
法人化で生じる恐れのあるデメリットについてご説明します。

法人化に手間と時間、費用がかかる


法人化するためには、会社の概要を決定して定款を作成し、株式会社を設立する場合には公証役場での認証も受けなければなりません。紙の定款を作成する場合には4万円の印紙を貼付しなければならず、定款の認証を受ける時にも3~5万円程度の手数料が発生します。
さらに、登記申請書類などを作成し、法務局に法人登記の申請を行う際には、登録免許税の納付が必要です。登録免許税の額は、資本金や設立する会社の種類によって変わってきますが、最低でも6万円は必要になります。
法人化の手続きが完了した後も、税務署や都道府県税事務所、年金事務所などで申請しなければならない手続きがあり、個人事業主の開業に比べると法人化には大きな手間と時間、そして費用がかかります。この点は法人化のデメリットといえるでしょう。

役員報酬の額を売上に合わせて変更することはできない


フリーランスエンジニアの場合は、多額の報酬が入れば、そのまま自分の収入の増加につながるため、収入に合わせて自由にお金を使うことができます。しかし、法人化するとクライアントから支払われる報酬は事業の売上となるため、たとえ代表者であっても会社のお金を自由に使うことはできません。
また、役員報酬の額は原則として1年間は変更できません。そのため、事業年度の途中で業績が好調となった場合でも、業績に合わせて役員報酬の額を増やすことはできないのです。フリーランスエンジニアとして長く仕事をしている場合、業績と個人の収入が直結しない点については、不自由さやもどかしさを感じるかもしれません。

決算など複雑な会計処理が必要になる


個人事業主の場合も1年間の収益を計算し、確定申告を行わなければなりません。しかし、法人化すると事業年度に合わせて決算書の作成が義務付けられており、賃借対照表や損益計算書などの作成が必要です。
会計についての専門的な知識がない人が決算業務を行うことは非常に難しく、一人で処理をしようとすると多くの時間がかかり、本業がおろそかになる恐れがあります。そのため、個人事業主から法人化した場合、税理士に処理を依頼するケースは少なくありません。
しかし、税理士に決算業務を依頼すれば、税理士に報酬を支払う必要があります。決算が必要になることで、個人事業主の場合より手間またはコストが増える点は法人化のデメリットだといえます。ただし、税理士に決算処理を依頼した場合に発生する報酬は経費として計上ができる点も覚えておきましょう。

赤字でも負担しなければならない税金がある


フリーランスエンジニアとして仕事をしていた時に、万が一、赤字になった場合は所得税や住民税が課せられることはありません。しかし、法人化した場合は、何らかの事情で赤字になってしまった場合でも、法人住民税の均等割分は必ず納税しなければならないのです。法人住民税の均等割額は、資本金の額や従業員の数によって変わってきます。フリーランスエンジニアが資本金1,000万円以下の会社を設立し、自分一人で事業を営む場合の法人住民税均等割の額は7万円です。金額としてはそれほど大きな額ではありませんが、法人化しなければ負担する必要がなかった額であると思うと、法人化の後悔につながる恐れもあります。

フリーランスのエンジニアが法人化する際の注意点


フリーランスエンジニアが法人化すると、メリットが得られる場合もあれば、デメリットの方が勝ってしまう場合もあります。
法人化を検討する際には次の点に注意するようにしましょう。

法人化によりすべてのエンジニアが節税できるわけではない


法人化の目的が社会的信用を獲得するためであれば問題ありませんが、節税を第一目的として法人化をする場合、すべてのフリーランスエンジニアが法人化後に節税できるわけではない点に注意が必要です。
フリーランスエンジニアに課せられる所得税と法人税の税率は、一定以上の利益を上げている場合でなければ逆転しないのです。フリーランスエンジニアとしての収益がそれほど高くない場合は、法人化するにあたってかかる費用や法人化後にかかる費用をすべて考えると、法人化した方がマイナスになるケースもあります。
法人化を検討する場合には、会社の設立にかかる費用や法人を維持するためにかかる費用、法人に課せられる税金、個人に課せられる所得税なども踏まえ、詳細なシミュレーションが必要です。法人化のタイミングに悩む場合などは税理士に相談し、法人化をすべきか、法人化をするならどのタイミングがベストなのか、アドバイスをもらうとよいでしょう。

法人化すると簡単に廃業できない


フリーランスエンジニアが法人化する場合には、長く法人として事業を営む覚悟も必要です。なぜなら、法人化した後に再び個人事業主に戻り、フリーランスエンジニアとして活動することは簡単ではないからです。
もちろん、法人を解散させ、廃業することは可能です。しかし、廃業するためには、清算事務や解散登記などの手続きが必要になり、登録免許税などの費用も発生します。個人事業主の廃業手続きとは異なり、法人の廃業には時間と手間、そしてコストがかかることを忘れてはいけません。

まとめ


フリーランスエンジニアが法人化するとさまざまなメリットを得られる一方で、会社設立の手間やコストがかかるなど、デメリットも発生します。また、法人化によって節税というメリットが得られるケースは、一定以上の利益を上げている場合に限られます。
一度法人化すると、廃業し、個人事業主に戻るためにまた煩雑な手続きと費用が発生するため、法人化すべきかどうかは慎重な判断が必要です。法人化のタイミングなどに悩む場合には、法人化すべきかどうか、フリーランスエンジニアとして継続した方がよいのか、税理士への相談をおすすめします。


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