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起業・開業
一人親方で開業届を出してないとどうなる?開業届を出すべき理由と提出方法

読了目安時間:約 5分
独立して一人親方として事業を行う際には、開業届を提出することが定められています。
しかし、開業届を出さないまましばらく経ってしまったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。原則、開業届は事業開始日から1ヶ月以内に提出することが定められていますが、期限を過ぎた提出でも受理してもらうことは可能です。
開業届を提出しておくことで得られるメリットもありますので、今からでも提出しておくことをおすすめします。
本記事では、一人親方が開業届を提出することで得られるメリットと提出方法について解説します。また、開業したら忘れてはならない確定申告についても触れていきますので、ぜひこの記事を円滑な事業運営の参考にしていただけたら幸いです。
目次
開業届とは
開業届とは、個人事業主が事業をスタートさせた旨を報告する書類で、管轄の税務署に提出するものです。
「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」が正式名称であり、事業所の新設や増設、移転や事業の廃止のタイミングで税務署に報告をします。
一人親方は個人事業主やフリーランスの一種となりますので、開業届を提出し、確定申告をして税申告・納税の義務が発生します。
開業日から1ヶ月以内に提出を
一人親方など個人で事業をする方は、所得税法により開業日から1ヶ月以内に開業届を提出するよう定められています。
ただし、1ヶ月を過ぎてしまっても気づいたタイミングで提出すれば受理してもらえます。詳しくは後述しますが開業届を提出しておくと得られるメリットもありますので、気付いたタイミングで提出することをおすすめします。
一人親方と個人事業主の違い
一人親方は広い意味では個人事業主に該当しますが、取り扱いに違いがある部分も存在します。
例えば、「特定の条件を除き、原則として個人事業主は労災保険に加入することができないが、一人親方の場合は加入ができる」といった点です。
一人親方は従業員ではないため、元請会社の労災保険の補償対象外となります。しかし建設業などは危険を伴う仕事が多いことから、特例として個人事業主であっても労災保険の特別加入制度を利用することができます。
こちらは任意での加入になるため、ご自身で手続きを行う必要がある点に注意が必要です。詳細については労働局に確認していただくと良いでしょう。
一人親方が開業届を出すべき理由
一人親方が開業届を出すと、以下のようなメリットがあります。
事業をスムーズに行うためのものや、節税のためのものがありますのでチェックしておきましょう。
- 青色申告を申請できる
- 屋号で銀行口座が開設できる
- 職業の証明ができるようになる
- 小規模企業共済への加盟ができる
青色申告を申請できる
一人親方で事業をしている人は、事業主として確定申告を行います。
確定申告は白色申告と青色申告があり、青色申告では複式簿記を採用した場合に最大65万円の特別控除が適用される可能性があります。
青色申告で確定申告をする場合は事前に、「青色申告承認申請書」が必要になります。
青色申告承認申請書は開業届を提出してから申請できる書類となりますので、開業届と同日、または後日に税務署へ申請します。
ただし、後日に申請する場合は「原則として青色申告は開業日から2か月以内に申請しなければ、その年度は青色申告事業者として承認されない」という点に注意しましょう。詳しくは納税地の所轄税務署に確認していただくことをおすすめします。
参考:国税庁|青色申告制度
屋号で銀行口座が開設できる
開業届を提出していると、屋号で銀行口座が開設できるようになります。
事業用の口座とプライベート用の口座を分けておくと、経費や売り上げの計算がスムーズにできますので、確定申告の手続きの際もお金の流れが把握しやすくなります。
ただし、屋号での口座開設が出来るか否かは各銀行によって異なりますので、あらかじめ確認するようにしましょう。
職業の証明ができるようになる
賃貸や融資を申し込む場面などでは、職業を証明するための書類として納税証明書や確定申告書などが求められることがあります。
しかし事業をスタートしたばかりではその書類がないケースが多いため、開業届の控えが職業を証明するものとして利用できる場合があります。
小規模企業共済への加盟ができる
小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の役員が廃業・退職時に備えて積み立てる共済制度です。一人親方には会社員のような退職金制度がないため、将来の備えとして小規模企業共済を利用した積立制度を利用する方が年々増加傾向にあります。
加入にあたっては、所得税の確定申告書の提出が求められますが、事業をスタートさせたばかりの一人親方の場合、代わりに開業届の控えの提出が求められることが多いです。詳しくは各共済ホームページで必要書類をご確認ください。
一人親方の開業届の提出について
開業届提出までの流れや迷いやすい点について、お伝えしていきます。
- 開業届提出の流れ
- 開業届の書き方でよく迷うところ
- 開業届提出にお金はかかる?
開業届提出の流れ
開業届を税務署に提出するまでの流れは以下です。
- 開業届を準備する
- その他の必要書類を準備する
- 税務署に提出する
1.開業届を準備する
開業届(個人事業の開業・廃業届出書)は、税務署の窓口で受け取るか、公式サイトからダウンロードします。
参考:国税庁|個人事業の開業・廃業等届出書
提出用と控え用で2枚準備しますので、書いたものをコピーするか、2部同じように記入してください。
2.その他の必要書類を準備する
- マイナンバーカード
- 青色申告を希望する場合のみ「青色申告承認申請書」
マイナンバーカードをお持ちでない方は、マイナンバーが確認できる通知カードなどの書類と、免許証などの本人確認書類を用意しておきましょう。
青色申告書を希望する場合は「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。
開業届と同じタイミングでなくても構いませんが、同時にやってしまった方がよいでしょう。
青色申告承認申請書を提出しない方は、自動的に白色申告となります。
3.税務署に提出する
開業届を税務署に提出する方法は、以下の3つです。
- 税務署の窓口に持ち込む
- 税務署に郵送する
- e-taxでオンライン申請する
税務署の窓口に持っていけば、書類の返送を待たずに手続きが完了します。
郵送する場合は返信用封筒を入れておくのを忘れないようにしましょう。
e-taxで申請するのであれば、パソコンやスマホから開業届の提出ができます。
開業届の書き方でよく迷うところ
開業届の用紙はこのようになっており、事業所の住所や氏名、職業、屋号などについて記載します。
職業という欄は、一人親方であれば以下のような記載が一般的です。
- 土木・建築関係
- 大工
- 左官
- とび職
- 塗装
- 植木造園
屋号の記入は任意のため空欄でも受理はされますが、記載しておくと屋号で銀行口座を作る場合などにはスムーズに手続きができます。ちなみに、開業届の提出に手数料などの費用はかかりません。
開業届は税理士の代理提出ができる
開業届は、税理士などの代理人が提出をしても構いません。
もし代理人が提出をする場合は、お伝えした書類の他に以下の書類が必要です。
- 委任状
- 代理人のマイナンバーカード
多忙で時間が取れない、煩雑な事務作業を任せたいという方は、税理士に依頼することもおすすめです。
一人親方として開業したら確定申告を
開業届を提出し、一人親方として事業をスタートさせたら確定申告を行う必要があります。
毎年2月15日~3月15日までが確定申告の期間とされており、開業届を提出した管轄の税務署に確定申告書を提出します。
確定申告で申告した所得に応じて、所得税や翌年の住民税、国民健康保険料が決定します。
一人で確定申告をするのが難しい場合は、税務署の確定申告相談や税理士などのサポートを受けると良いでしょう。
一人親方が確定申告をしないリスク
確定申告をした経験がない方は、確定申告が少し面倒な作業に感じるかもしれません。
ただし確定申告をしないと以下のようなリスクが考えられます。
- ペナルティで納税の負担が大きくなる
- 収入証明をする公的書類がない
- 建設業の許可が受けられない
- 補助金・助成金の申請ができない
ペナルティで納税の負担が大きくなる
確定申告をしないと無申告加算税、所得税の支払いをしていないと不納付加算税、期限に遅れてしまうと延滞税などのペナルティを受けることがあります。
これらのペナルティを受けると、本来納めるべき税金よりも加算されてしまいますので、納税の負担が大きくなってしまいます。
延滞税は日数に応じて加算されていきますので、確定申告書の提出が遅れてしまった場合は1日でも早く対応しましょう。
収入証明をする公的書類がない
確定申告をしていないと、税務署が発行する「収入を証明できる公的書類」が存在しないことになります。
住宅ローンや融資などを受ける際には「所得証明書」や「課税証明書」が求められますが、確定申告をしていなければ、これらの書類が取得できなくなってしまいます。請求書や領収書などをもとに収入を証明することが可能な場合もありますが、公的な証明書とは認められにくいでしょう。
建設業の許可が受けられない
建設業許可の申請には収入を証明する書類が必要になりますので、一人親方の場合は確定申告書の控えがこの書類に該当します。
建設業許可は500万円以上の工事を請け負う際などに必要となり、もし許可なく工事を請け負うと建設業法違反となってしまいますので注意してください。
補助金・助成金の申請ができない
補助金や助成金の申請時に求められる書類は制度によって異なりますが、確定申告書の控えが信頼性の高い書類として必要書類に指定されていることが多いです。
確定申告を怠っていたことで、補助金や助成金の申請ができなくなるリスクがあります。
一人親方で事業を行うなら開業届を提出しよう
一人親方として事業を行うのであれば、開業届を提出することが定められています。
開業日から1ヶ月以内が提出期限とされていますが、期限過ぎても受理してもらうことは可能ですので、気付いたら早めに開業届を提出するようにしましょう。
多忙で時間がとれない、煩雑な事務作業は任せたい、という方は税理士にお任せください。税理士法人松本では、開業届の代理提出や青色申告の申請、確定申告に関わることなど幅広くサポートが可能です。
ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。