メニュー
法人化
株式投資の法人化は本当にメリットがある?適切な節税の知識とは

読了目安時間:約 7分
個人で株式投資をしている投資家は、法人化することでメリットを得られるのでしょうか。
一般的には年収がある一定の額を超えると、個人よりも法人の方が税率を抑えられる傾向にあります。
投資家の場合も一般的な個人事業主と同じような理由で法人化をするメリットがあるのでしょうか。
本記事では、株式投資の法人化にメリットがあるのか、節税という意味で身につけておくべき知識について解説します。
目次
個人投資家が法人化すると税制が変わる
個人投資家が法人化して大きく変化するものといえば、税制です。
個人投資家は所得税法に基づいて所得税を、投資会社・法人は法人税法に基づいて法人税を計算します。
所得税率と法人税率の税制の違いについて、以下の項目にわけてお伝えします。
- 個人投資家にかかる所得税は最大45%
- 法人税率は原則23.2%
- 節税効果は期待できるのか
個人投資家にかかる所得税は最大45%
個人投資家が納める所得税には2種類あります。
総合課税制度 | 各種所得を総合した総所得により 所得税を計算 |
分離課税制度 | 各種所得を総合せず分離して一定の税率で所得税を計算 |
総合課税制度は累進課税となっており、所得が増えるほど税率が高くなる仕組みになっています。
5%~45%と幅があり、所得が少なければ税率も低く抑えられますが、所得が増えれば最大で45%となります。
株式投資は分離課税制度が適用できますので、一般的には分離課税制度の方が税負担が軽くなることが多いです。
株式投資を特定口座(源泉徴収あり)で行うと、税率は20.315%となります。
この内、所得税は15%となります。
参考:国税庁|総合課税制度
参考:国税庁|源泉分離課税制度
法人税率は原則23.2%
所得税が累進課税なのに対し、法人税は資本金1億円以下の中小企業であれば、年間所得800万円を超えた部分に23.2%、以下は15%の軽減税率が適用されます。
最大45%の所得税という税率だけを考えると、法人税の23.2%の方が節税になります。
一般的に個人事業主が法人化を検討するラインが、まさにこの税率が逆転するタイミングです。
年収800万円~900万円が、所得税と法人税の税率が逆転するタイミングといえます。
参考:財務省|法人課税に関する基本的な資料
節税効果は期待できるのか
上記のように所得税と法人税の税率だけをみると、個人事業主は所得が上がれば法人化をした方が節税になります。
しかし株式投資を特定口座で行うと税率は20.315%となりますので、株式投資に関しては法人化が節税になるとは言い切りにくいです。
法人化をしたために納税額が増えてしまうという状況も考えられます。
個人投資家は単純にこの税率だけでなく、状況に合わせて法人化を検討していく必要があります。
法人化とは資産管理会社の設立
資産管理会社とは、個人の不動産や株式を所有・管理するために設立する法人を指します。
株式で資産管理会社を設立すると、主な収入は株を保有していることで得られる配当収入です。
一般的な法人とは異なり資産管理以外の事業は行われませんので、プライベートカンパニーとも呼ばれます。
株式投資を法人で行う際のメリットを考える
株式投資を法人で行う場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
一般的に個人事業主が法人化するとメリットがあるといわれるような事柄は、投資家にとってもメリットとなるのか、考えていきましょう。
- 損益通算が認められる
- 10年の損失繰越控除が受けられる
- 経費の幅が広がる
- 社会的信頼がアップする
損益通算が認められる
損益通算とは、1年間で生じた利益と損失を相殺する行為です。
個人では損益通算は認められませんが、法人になると以下の損益通算が認められるようになります。
- 不動産所得
- 事業所得
- 譲渡所得
- 山林所得
参考:国税庁|損益通算
複数の分野で株式投資をしている人であれば、一部の分野で損失が出たとしても損益通算によりトータル的に税負担を軽減できるようになります。
このような投資家にとっては、損益通算が大きなメリットになるでしょう。
10年の損失繰越控除が受けられる
法人は損失繰越控除が認められており、その期間は10年間となります。
個人だと損失控除期間は最大3年なので、法人化すると期間が長くなるというメリットがあります。
投資をしていると、コロナやリーマンショックの頃のように、思わぬ損失を出してしまうかもしれません。
もし株式の譲渡損失や含み損が出ても、法人化していれば10年に渡って利益から差し引けるようになります。
経費の幅が広がる
個人から法人になると、経費として認められる科目の幅が広がります。以下は、経費として認められる代表的な科目です。
- 役員報酬
- 退職金
- 家賃(事業分のみ)
- 光熱費(事業分のみ)
- パソコン代を減価償却
- 勉強のための書籍購入代 など
家賃や光熱費などは個人でも経費と認められるものなので、大きな違いは役員報酬や退職金になります。
個人だと収入から経費を引いた残りが所得となるわけですが、法人化すれば自身の給料が役員報酬として法人から支払われるという形になります。
ただし役員報酬を受け取ると個人の所得税が課税されますので、注意してください。
社会的信頼がアップする
法人化すると登記内容が誰でも閲覧できる状態となりますので、社会的信頼がアップします。そのため、個人よりも、法人の方が取引や金融機関の借入などがスムーズになります。
株式投資家として法人化をするのであれば、法人化するだけの投資スキルを備えておくようにしましょう。
株式投資で法人化するデメリット
株式投資で法人化するとメリットになり得る点がいくつかありますが、その分、以下のようなデメリットもあります。
- 含み益も課税対象になる
- 法人の設立・維持の負担
- 社会保険料の負担
- 赤字でも払う税金がある
含み益も課税対象になる
個人投資家であれば、含み益が出ても決済しなければ所得税は課税されません。
しかし法人は期末に含み益があれば、法人税の課税対象とされることがあります。
含み益は期末に時価評価が必要となりますので、覚えておきましょう。
法人の設立・維持の負担
法人化する際には、会社を設立するための費用や手続きが必要になります。
投資家としての業務内容はかわらないのに時間や手間がかかりますので、煩わしく感じてしまう方がいるかもしれません。
また法人化がゴールではなく、その後は毎年利益を出し続けていかなければいけません。
法人としての納税は金銭面だけでなく、スケジュール面でもハードになります。
社会保険料の負担
法人として会社を設立したら、代表者1人の会社であったとしても社会保険に加入しなくてはいけません。
社会保険に加入するには、会社設立とは別の手続きが必要になります。
赤字でも払う税金がある
決算をして赤字であれば、法人税や法人事業税などは納めなくてもよいです。
しかし法人住民税の均等割や登録免許税など、赤字でも納めなくてはいけないものがあります。
株式投資に消費税はかかりませんが、事業を行っている法人は赤字であっても消費税を納めなくてはいけません。
支払う税金が増えるという点で、個人投資家のままの方が良いと感じる方がいるかもしれません。
参考:総務省|法人住民税
株式投資の法人化が向いている人とは
株式投資を法人化するか否かは、どのメリットに重きを置いて判断するかを考えていかなければいけません。
株式投資の法人化が向いている人とは、どんな人なのかをご紹介します。
- 株式投資を行う個人投資家
- 副業で資産運用しているサラリーマン
- 相続税対策をしていきたい資産家
株式投資を行う個人投資家
個人事業主にかかる所得税は最大で45%でしたので、法人税23.2%の方が節税になります。
また法人になれば生命保険の控除上限がなくなりますので、高額の保険に入っておけば課税所得を下げられます。
自宅で投資をしているという方の場合、自宅を法人所有にすればローンの支払利息を経費として計上できるというメリットがあります。
副業で資産運用しているサラリーマン
副業として株式投資をしているサラリーマンは、法人化すると経費の幅が広がるなどのメリットがあります。
ただし本業での勤め先がある場合、注意したいのが社会保険の二重加入です。
会社を設立すると必ず社会保険に加入しなければいけなくなりますので、本業での勤め先と
2か所で社会保険に加入する状態となります。
本業の勤め先の管轄の年金事務所に「二以上事業所勤務届」を提出しておくようにしましょう。これは、どちらの事業所を主に保険料を支払う事業所にするかを届け出るための書類です。
相続税対策をしていきたい資産家
多くの資産を保有していると、相続税が高額になるのが悩みのひとつかもしれません。
生前贈与を個人間で行うと非課税なのは年間110万円までとなり、これを超えると最大55%もの贈与税が課せられてしまいます。
参考:国税庁|贈与税がかかる場合
そこで資産管理会社を設立し、適切な役員報酬設計のもと家族に役員報酬として資産を渡していれば、贈与税課税対象額の削減が可能です。
また不動産に関しても個人のものではなく資産管理会社のものとしておけば、不動産そのものが相続の対象ではなくなります。
資産管理会社を設立する流れ
資産管理会社を設立する流れについて、お話します。
- 会社に必要な情報を決めていく
- 定款の作成と認証
- 資本金の払い込み
- 法務局にて登記申請
会社に必要な情報を決めていく
まずは会社の基本的な情報を決めていきます。
会社形態 | 株式会社 合同会社 合名会社 合資会社 |
会社名 | 会社形態を含めた名前であること |
本店所在地 | 自宅可 |
出資者 | オーナーのみ、親族も含むなど |
資本金の額 | 1円~ |
決算月 | 自由に設定できる |
会社を登記するためには、会社形態は上記4つから選ばなくてはいけません。
会社名は会社形態を含めた形であるという点に加え、使用可能な文字などの規制がありますので確認して決めるようにしましょう。
決算月は自由に決められますので、株保有をしている企業の決算月などから考えると良いでしょう。
定款の作成と認証
定款(ていかん)とは会社のルールブックのようなもので、会社組織について定めた書面です。
会社設立時に作成し、公証人役場で認証を受けます。
定款には会社の基本的な情報だけでなく、事業目的が株式投資である旨を記載しておかなければいけません。
原則として定款に記載のない業務はできませんので、将来的に行う予定の事業があれば記載しておきましょう。
資本金の払い込み
定款の作成と認証を終えたら、資本金の払い込みを行います。
資本金は1円からとなっており金額は自由に設定できますが、この資本金はよく考慮して決めるべきです。
資本金の金額は会社の信頼に影響しますし、法人として納める税金にも関与してくるからです。
以下のような税金に関与しますので参考になさってください。
消費税 | 課税売上高1,000万円超だと課税事業者となる |
法人税 | 資本金1,000万円以上1億円以下だと軽減税率適用 |
地方税 | 会社形態や資本金によって異なる |
法務局にて登記申請
登記申請を法務局に提出したら、1週間~10日程度で登記が完了します。
会社設立をした後は、法人として社会保険や労働保険などの加入手続きを行っていきましょう。
法人化で可能な税理士のサポート
法人化の手続きは個人でも行えますが、以下のようなお悩みをお持ちの方は税理士にご相談ください。
- 法人化するべきか迷っている
- 税金に関して損をしたくない
- 法人化に関する手間を省きたい
法人化するべきか迷っている
年収800万円~900万円が、所得税と法人税の税率が逆転するタイミングだとお伝えしました。
所得税と法人税だけを比較するとこの数字になります。
しかし投資に関しては分離課税制度が適用されますので、法人化によって払う税金が増える可能性があります。
本当に自分が法人化すべきなのか、「プロに判断してもらいたい」という方はご相談ください。
税金に関して損をしたくない
法人化する多くの方の狙いは節税ですが、ただ法人化をすれば必ず節税になるわけではありません。
会社設立時に決めていく内容によって、資金繰りや節税に影響が出る可能性があります。
- 決算月の決定
- 適切な役員報酬の決定
- 資本金の金額設定
最初に適切な金額を設定していくためにも、税理士の助言があるといいでしょう。
法人化に関する手間を省きたい
法人化をしていくには、上記のような決定事項だけでなく、専用の書類の作成、各機関への提出など多くのステップがあります。
全て自身で行っていると時間も手間もかかってしまいますし、何より慣れない作業でストレスを感じてしまうかもしれません。
法人化のための手間を軽減させたい方は、税理士がお力になれますのでご相談ください。
株式投資の法人化は税理士に相談を
税理士法人松本では、会社設立に関して多くのお客様をサポートしてきました。
法人として事業を継続的に発展させていけるよう、資金繰りや税金面での助言をしていきます。
丁寧にヒアリングをし、お客様一人ひとりに合ったプランをご提案させていただきます。
‐免責事項‐
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
税務・労務等のバックオフィス支援から
経営支援まで全方位でビジネスをサポート
本気で夢を追い求めるあなたの会社設立を全力サポート
- そもそも個人事業と会社の違いがわからない
- 会社を設立するメリットを知りたい
- 役員報酬はどうやって決めるのか
- 株式会社にするか合同会社にするか
会社設立の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 設立後に損しない最適な起業形態をご提案!
- 役員報酬はいくらにすべき?バッチリな税務署対策で安心!
- 面倒なバックオフィスをマルっと支援!
- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。