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会社設立
会社設立時に利用できる補助金や助成金制度。利用時の注意点もご紹介
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
補助金や助成金は、国や地方自治体などが会社の運営や人材の雇用・育成などに必要な費用の一部をサポートする制度です。補助金や助成金の中には、会社設立時に利用できるものもあります。補助金も助成金も、原則として融資のように返済の必要がないため、補助金や助成金を利用できれば資金面での不安を軽減でき、経営者にとって非常にメリットの大きい資金調達法となります。
しかし、多数の補助金や助成金の制度があるため、会社設立時に利用できるものを探すとなると手間がかかってしまいます。そこで今回は、会社設立時に利用できる補助金や助成制度をご紹介するとともに、補助金や助成金を利用する際の注意点についてご説明します。
補助金と助成金の違いについて
補助金と助成金は似たようなものと思われている方もいらっしゃるかもしれません。補助金と助成金は、いずれも国や地方自治体などが事業者の取り組みをサポートするために、事業にかかる資金の一部を給付するというものです。補助金や助成金の運営は国や地方自治体が行っているため財源は公的な資金となっており、補助金や助成金を受けるためには、申請や審査などが必要になるという共通点があります。
しかし、補助金と助成金には次のような違いもあります。補助金や助成金を申請する際には、まず両者の違いを把握しておくことが大切です。
補助金とは
補助金とは、国や地方自治体が掲げる政策目標を達成するために、対象となる事業者に対し、資金の一部を給付するものです。補助金にはそれぞれ目的や趣旨が定められており、適用対象の要件を満たしている補助金でなければ申請することはできません。
また、補助金を受けるためには審査が必要になります。多くの場合、補助金には予算や採択できる件数の上限が設定されています。補助金は比較的、額が大きいものが多いことから、採択される件数に対し多くの申請が寄せられ、競争率が高くなるため、申請しても必ず受給できるとは限りません。
助成金とは
助成金とは、労働環境の整備や雇用の維持、新規人材の確保など、事業者の労働環境の改善や人材育成を支援するために必要な資金の一部を給付するものです。助成金は、労働環境改善や雇用対策を目的としているものが多く、ほとんどの助成金は厚生労働省が管轄し、厚生労働省が管轄する都道府県の労働局が申請先となります。ただし、中には雇用関連以外にかかる資金をサポートする制度でも補助金ではなく、助成金としているものもあり、厳密に区別はされていません。
助成金は補助金に比べると1件あたりの助成額は低くなります。しかしながら、ほとんどの場合において要件を満たしていれば、原則として給付を受けることができます。
会社設立時に利用できる補助金・助成金
では早速、会社設立時に利用できる補助金や助成金をご紹介します。
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
地域中小企業応援ファンドとは、中小機構と都道府県、金融機関等が資金を拠出してファンドを作り、その運用益によって中小企業を支援する事業です。地域中小企業応援ファンドには「地域中小企業応援ファンド」と「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の2つの種類がありますが、約23の都道府県の状況に応じてさまざまな助成が行われています。したがって、全ての都道府県にファンドがあるわけではない点には注意が必要です。
地域中小企業応援ファンドでは、地域の活性に繋がる各地の農林水産物や伝統技術を活用する商品開発、販路開拓などの取り組みを支援します。支援重点分野や支援対象分野はファンドによって異なり、助成上限額や助成率、助成期間も変わってきます。
例えば「ちば中小企業元気づくり基金」は、新商品開発・新技術研究開発支援を中心とした中小企業支援のファンドです。新商品・新技術開発助成分野では、助成上限額は500万円で助成率は2/3以内、助成期間は3年以内です。
また、農商工連携型地域中小企業応援ファンドは、中小企業と農林漁業者が連携する商品開発・販路開拓の取り組みなどを対象とした助成金です。
中小機構のウェブサイトには、ファンドの一覧も掲載されており、都道府県によってさまざまなファンドがあるため、会社設立時に利用できるものがあるか、助成対象となる事業に合致するか、確認しておくとよいでしょう。
参照:中小機構「地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)」
研究開発型スタートアップ支援事業
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、研究開発型スタートアップの創出、育成のための支援事業を行っています。2024年度には、「GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業」や「研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業/ディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)/躍進コース」などの公募を行う予定となっています。
GX分野のディープテック・スタートアップに対する実用化研究開発・量産化実証支援事業では、3つのフェーズに分けて公募が行われる予定で、助成額はフェーズにより異なりますが3億円~25億円以内と高額になります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、地域産業を支える小規模事業者を対象に、販路開拓などの取り組みや業務効率化、制度変更への対応などの取り組みを支援するための補助金制度です。
補助対象者は、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」において、小規模事業者であると定められている事業者です。宿泊業や娯楽業であれば常時使用する従業員が20人以下、宿泊業・娯楽業を除く商業・サービス業は常時使用する従業員が5人以下、製造業その他の場合は常時使用する従業員が20人以下の事業者となります。
創業枠の場合、補助率は2/3、補助上限は200万円となっており、インボイス特例の要件を満たしている場合は、50万円が上乗せされます。インボイス特例の適用要件は、2021 年 9 月 30 日から 2023 年 9 月 30 日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった、または免税事業者であることが見込まれる事業者、2023 年 10 月 1日以降に創業した事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者です。
小規模事業者持続化補助金の特徴は、補助金を受けられるだけでなく、商工会議所から事業運営についてのアドバイスを受けられるという特徴があります。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者などを対象とした補助金です。働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入などの制度改革に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援することを目的としています。
2024年現在は、補助金は「省力化(オーダーメイド)枠」、「製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)」、「製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX/GX))」、「グローバル枠」の4つに分かれています。
補助上限額は、従業員の人数やどの枠に申し込むかによって変わってきます。また、大幅賃上げにかかる補助上限額引き上げの特例が適用されると、補助上限額は上乗せされます。
IT導入補助金
中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的とし、業務効率化やDX等に向けたソフトウェアやサービス等のITツールの導入を支援する補助金です。
ソフトウェアやサービス等は、IT導入補助金のホームページに公開されているものが対象となります。補助金には自社の課題にあったITツール導入を目的とした「通常枠」と、インボイス制度に対応した会計ソフトや決済ソフトなどの導入を目的とした「インボイス枠(インボイス対応類型)」、インボイス制度に対区した受発注システムを商流単位で導入することを目的とした「インボイス枠(電子取引類型)」、サイバー攻撃の潜在リスク低減を目的とする「セキュリティ対策推進枠」の4つがあります。
また、ツールの導入費用だけでなく、相談をするためのサポート費用やクラウドサービス利用料なども補助対象に含まれる点が特徴です。補助金を申請する場合には、IT導入補助金事務局に登録しているIT導入支援事業者とパートナーシップを組むことが条件となります。
参照:IT導入補助金2024
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継を契機として、新しい取り組みを行う中小企業や事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業を対象とした補助金制度です。
「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」、「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」、「事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ)」の3つの枠があり、「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」の中に創業支援型、経営者交代型、M&A型の3種類があります。
創業支援型の場合は、廃業を予定している事業者等から株式譲渡や事業譲渡などによって経営資源を引継ぎ、創業する人を対象としています。創業支援型の補助下限額は100万円、上限額は600万円または800万円です。補助事業期間内において一定の賃上げを実施した場合には、補助上限額が800万円となります。
参照:事業承継・引継ぎ補助金
キャリアアップ助成金
厚生労働省の雇用関係助成金の1つで、有期雇用労働者や派遣労働者、短時間労働者といた非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するための助成金です。コースは次の5つに分けられています。
・正社員化コース
有期雇用労働者を正社員化する
・障害者正社員化コース
障害のある有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換する
・賃金規定等改定コース
有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を改定し3%以上増額する
・賃金規定等共通化コース
有期雇用労働者等と正規雇用労働者との共通の賃金規定等を新たに規定・適用する
・賞与・退職金制度導入コース
有期雇用労働者等を対象に賞与または退職金制度を導入し、支給または積み立てを実施する
・社会保険適用時処遇改善コース
有期雇用労働者等を新たに社会保険に適用させ、収入を増加させる(手当支給・賃上げ・労働時間延長)または、週所定労働時間を延長し、社会保険に適用させる
※令和6年3月末の取り組みまでを助成する短時間労働者労働時間延長コースもありました。
令和6年度には、正社員化コースで有期雇用労働者を正規労働者として雇用した場合、中小企業では80万円が支給されます。また、派遣労働者を直接雇用する場合や母子家庭や父子家庭の父母を採用する場合などは、さらに助成額が上乗せされます。
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
厚生労働省による雇用関係助成金の1つで、雇用機会が特に不足している地域等の事業者が事業所の設置・準備を行い、その地域に居住する求職者を雇い入れる場合に、設置整備費用と対象労働者の増加数に応じて助成金が支給されるものです。
1年ごとに最大3回まで支給を受けることができます。受給額は設置・整備費用と対象労働者の増加人数に合わせて細かく定められています。対象労働者が3~4人増加し、300万円以上の設置・整備費用がかかった場合の受給額は50万円からとなっており、最大受給額は、対象労働者が20人以上増加し、5,000万円以上の設置・整備費用がかかった場合の800万円となっています。
地域活性化雇用創造プロジェクト実施地域において、都道府県の承認を受けた事業者が無期雇用かつフルタイム契約の労働者を雇い入れる場合は、第1回目の支給時に対象労働者1人あたり50万円を上乗せ支給するなどの特例措置も用意されています。
参照:厚生労働省「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
職業経験や技能、知識などが不足しているために安定した職業に就くことが難しい求職者の早期就職や、雇用機会の創出を図ることを目的に創設された厚生労働省の助成金制度です。
ハローワークや職業紹介事業者などから紹介されたトライアル雇用希望者を一定期間、試行雇用した場合に助成金を受け取れます。
トライアル雇用助成金を受給するためには、ハローワークや職業紹介事業者などに事前にトライアル雇用求人を提出する必要があります。また、支給期間は最長3ヶ月間で、支給額は支給対象者1人につき月額4万円です。ただし、母子家庭や父子家庭の父母の場合は1人につき月額5万円が支給されます。
参照:厚生労働書「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」
補助金・助成金を申請する際の注意点
補助金・助成金は、融資のように返済が不要なため、利用できるのであれば利用したいと考える経営者がほとんどでしょう。しかし、補助金や助成金を申請する際には次の点に注意が必要です。
補助金や助成金の申請には手間がかかる
補助金や助成金を申請する際には、補助金や助成金の制度によって必要となる書類は異なりますが、多くの場合において複数の書類の提出が求められます。特に、補助金の申請をする際には、補助金の対象事業としてふさわしいと判断されるような事業計画書などの作成が必要です。そのため、補助金や助成金を申請するためにはかなりの時間と手間がかかります。補助金は競合する企業も多いため、労力をかけて申請に必要な書類を作成しても、必ずしも採択されるとは限りません。その場合、申請のための時間と労力は報われなくなってしまう可能性があるということも覚えておかなければなりません。
補助金・助成金は後払いがほとんど
補助金や助成金は、後払いで支給されることがほとんどです。会社設立時に補助金や助成金を申請し、採択された場合でも、これから行うことに対して補助金や助成金を前払いしてもらえるわけではありません。そのため、補助金や助成金をあてにして事業計画を立てると、資金が不足してしまう可能性があります。したがって、会社設立時には、ある程度の自己資金を準備しておかなければ、たとえ助成金や補助金の申請に通過したとしても、支給されるころまでに資金が尽きてしまうリスクが生じるのです。補助金や助成金は先にもらえるものではなく、後から補うためのものであることを忘れないようにしましょう。
まとめ
会社設立時に利用できる補助金や助成金の制度をご紹介しました。補助金や助成金は、返還の必要がない、魅力的な資金調達法です。しかしながら、補助金や助成金の申請にあたってさまざまな書類の提出が必要になり、審査に通過するためには質の高い書類を用意しなければなりません。
補助金や助成金を受けるに値する事業であることをアピールするためには、実現可能性の高い事業計画であることを示す書類を作成する必要があります。税理士法人松本は、会社設立を検討されている方を対象に、補助金や助成金の申請サポートも行っています。会社設立とともに補助金や助成金の申請を検討されているようであれば、ぜひお気軽にご相談ください。
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