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軽貨物運送業の会社設立は難しい?必要な手続きや注意点を解説

読了目安時間:約 6分
近年、ネットショッピングなどの需要が高まり、狭い住宅地の道でも小回りが利く軽貨物自動車を使った運送業のニーズが高まっています。軽貨物運送業は、大きなトラックを準備する必要もなく、大型免許や中型免許の取得も不要なため、運送業の中でも気軽に会社設立をしやすい業種だといえるでしょう。
しかし、軽貨物運送業の会社設立時には注意しなければならないこともあります。今回は、軽貨物運送業の会社設立に必要な手続きや注意点などについてご説明します。
目次
軽貨物運送業とは
軽貨物運送業とは、軽自動車の貨物車両を使って、荷物の運送や配送をする事業のことです。具体的には、軽トラックや軽ワンボックスなどの車両を使って、小型の荷物を運搬します。一般的に軽貨物運送業では、顧客から引き受けた荷物を法人や個人に届ける宅配サービスを営むケースが多いでしょう。
また、会社設立をして軽貨物運送業を行うのではなく、個人事業主として軽貨物運送業を営む人も多くいます。その理由は、軽貨物運送業の開業手続きは比較的簡単であり、普通自動車免許と軽自動車があれば開業できるからです。しかし、個人事業主として営む軽貨物運送業が軌道に乗り、顧客が増加し、1人では荷物をさばききれない場合や、売上が伸びている場合などは、会社設立を検討した方がメリットを得られる可能性が高くなります。
軽貨物運送業の会社設立をするメリット
軽貨物運送業の会社を設立する主なメリットをご紹介します。

一般貨物自動車運送事業に比べ簡単に設立できる
軽自動車ではなく、トラックなどの貨物自動車で依頼主の荷物を有償で運搬、配送する事業は、一般貨物自動車運送事業と呼ばれます。一般貨物自動車運送事業の場合、会社設立時には運輸局長の許可を受ける必要があり、運送業の法令試験にも合格しなければなりません。また、5両以上の車両や運行管理者、整備管理者などの配置が必要です。しかし、軽貨物運送業の場合、許可を得る必要はなく、届出制となっています。また、車両数にも制限はありません。そのため、比較的手間がかからず、短期間で会社設立が可能です。
普通自動車免許だけで事業を始められる
一般貨物自動車運送事業では、トラックなどを運転するための大型免許や中型免許などが必要です。しかし、軽貨物運送業の場合、普通自動車免許があれば事業を始められる点も、軽貨物運送業の会社設立のメリットだといえるでしょう。
会社設立時にそれほど高額な資金を準備する必要がない
一般貨物自動車運送事業の許可を取得する際には、資金要件もクリアする必要があります。6ヶ月分の人件費や燃料費、修繕費、事業用自動車の車両価格に相当する資金またはリース料の1年分、営業所、車庫などの土地や建物の取得価格または1年分の賃借料など、自己資金を用意しなければならないのです。
しかし、軽貨物自動車運送事業の場合、会社設立にあたっての資金の規定はありません。この点も、軽貨物自動車運送事業の会社を設立するメリットであるといえます。
個人事業主の場合より節税につながる可能性がある
軽貨物自動車運送事業の会社設立を検討している方の中には、個人事業主として軽貨物自動車運送業を営んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。個人事業主の場合、事業で得た所得に対しては所得税が課せられます。所得税には累進課税の仕組みが採用されており、所得が高くなるほど税率も高くなってしまいます。
一方、会社設立をすると、事業で得た所得に課せられる税金は法人税です。法人税には累進課税制度は用いられていないため、所得が高くなるほど税率も高くなることはありません。
したがって事業が軌道に乗り、一定以上の所得を得られるようになった場合には、会社設立をした方が節税効果を得られる可能性があります。
最大10年、赤字の繰り越しができる
会社設立をすると、最大10年間、欠損金の繰り越しが認められます。赤字分を繰り越すことができれば、黒字になった年の所得から欠損金分を相殺できるため、課税所得額を低く抑えられ、法人税の負担を軽減できます。車両の購入などで出費が膨らみ、大きな赤字が出た場合などは10年にわたって赤字を繰り越せるため、長期にわたって節税効果を得ることが可能です。
軽貨物運送業の会社設立に必要な手続き
軽貨物自動車運送事業の会社設立をする際は、一般的な会社設立手続きのほかにも、届出などの手続きが必要です。
軽貨物自動車運送業の会社設立は、次のような流れで行います。

会社の設立登記の流れ
会社設立をするためには、まずは法務局での登記申請が必要であり、次のような流れで手続きを進めます。
会社の概要を決める
設立する会社の形態や社名、代表者、資本金、本店所在地、設立日、会計年度、事業目的などを決めます。これらの情報は定款への記載が必要になるものもあるため、事前にしっかり考えておくことが大切です。
定款の作成と認証
定款とは、会社を運営するための基本的なルールをまとめた書類です。定款には、絶対に記載しなければならない「絶対的記載事項」というものがあります。絶対的記載事項は、会社名、事業目的、本店所在地、資本金、発起人の氏名・住所の6つです。絶対的記載事項が記載されていない定款は無効となるため、絶対的記載事項については漏れなく記載するようにしましょう。
また、株式会社を設立する際には、公証役場で定款の認証を受ける必要があります。合同会社などを設立する場合には、定款の認証は不要です。
資本金の払い込み
定款が完成し、株式会社の場合は定款の認証も完了したら、定款に記載した資本金額の払い込みをします。この時点ではまだ会社設立が済んでいないため、会社名義の口座は作れません。そのため、発起人の個人口座に資本金を払い込みます。会社設立の登記申請をする際には、資本金を払い込んだことを証明する書類の提出が必要になるため、預金口座に残高がある場合でも、一度お金を引き出して払い込みをしなければなりません。
会社法では資本金額の下限が設定されていないため、1円以上あれば会社の設立は可能です。しかし、資本金が低すぎる場合、社会的信用を得にくく、事業を進めるうえでもデメリットが生じる可能性があるため、ある程度の資本金を準備するようにしましょう。
会社設立の登記申請
資本金の払い込みが完了したら、いよいよ本店を管轄する法務局で会社設立の登記申請を行います。設立する会社の形態によって必要となる書類は異なりますが、設立登記申請書や定款、資本金の払い込みを証明する書面などの提出が必要です。また、設立登記の際には、登録免許税分の負担も発生します。
書類などに問題がなければ、会社設立の登記申請より、2~3週間程度で設立が完了します。
貨物軽自動車運送事業経営届出書の提出
会社設立の登記が完了したら、運輸支局に対し、軽貨物自動車運送事業経営届出書の提出をします。軽貨物自動車運送事業に使用する軽貨物車には、黒色のナンバーをつけなければなりません。黒ナンバーを取得するために必要な手続きが、貨物軽自動車運送事業経営届出書の提出です。
届出に必要な書類
軽貨物自動車運送事業の会社設立時に必要な書類は次のようなものです。
・貨物軽自動車運送事業経営届出書
・運賃料金表
・事業用自動車等連絡書
・車検証または完成検査証
貨物軽自動車運送事業経営届出書の書き方
貨物軽自動車運送事業経営届出書には、営業所の名前や住所、事業用自動車の種別ごとの数、車庫の位置、収容能力、乗務員の休憩または睡眠のための施設の位置、収容能力などの記載が必要です。自宅を営業所とする場合には、営業所の位置は自宅住所で構いません。また、車庫は営業所から直線距離で2km以内の場所に確保する必要があり、1両あたり8㎡以上の収容能力が必要です。乗務員の休憩または睡眠のための施設に関しては、収容能力に準じた大きさを記載します。
また、運送約款に関しては、適用する運送約款にチェックを入れます。運行管理体制を記載した書面の箇所には、責任者の氏名を記入します。最後の宣誓書の部分には、車庫の使用権原があること、車庫の土地や建物は関係法令に抵触していないこと、運送に関して生じる損害賠償の支払い能力があることの3か所にチェックを入れ、提出日と提出者の住所、氏名を記入します。
運賃料金表の書き方
運賃料金表は、運送にかかる料金を詳細に記載する書類です。1車貸し切りで距離制の運賃を設定する場合には走行距離ごとの料金、時間制の場合には時間数や走行距離ごとの料金を記載します。
また、運搬する荷物の個数で運賃を設定する場合には、1kgあたりの料金などを記載します。
事業用自動車等連絡書の書き方
事業等の種別で貨物の欄から「軽」を選択します。事業者の名前や住所などを記載し、自動車登録番号等の欄で、事業に使用する軽貨物車の車体番号、貨物自動車の種別、最大積載量を記載します。荷物を運ぶように設計された軽貨物車の場合、主要諸元表に最大積載量が記載されています。また、事業発生理由の箇所では「新規届出」に〇をつけましょう。
この書類は、事業用ナンバーの登録に必要な書類となります。
事業用ナンバーの取得の手続き
運輸局での手続きが完了したら、軽自動車検査協会で事業用ナンバー、いわゆる黒ナンバーの取得手続きをします。このとき、車検証や事業用自動車等連絡書などの提出、ナンバープレート代の支払いが必要です。
軽貨物運送業の会社設立後に必要な手続き
会社の設立登記が完了した後、貨物軽自動車運送事業経営届出書の提出をし、事業用ナンバーを取得したら、軽貨物運送業として事業を開始できます。
しかし、会社設立後には、税務署や都道府県税事務所での税金に関する手続き、社会保険事務所などでの年金や健康保険に関する手続きなどが必要です。また、従業員を雇用する場合は、労働基準監督署やハローワークで、労災や雇用保険の手続きが必要になることも忘れないようにしましょう。
軽貨物運送業の会社設立をする際の注意点
軽貨物運送業の場合、一般貨物自動車運送事業に比べ、会社設立のハードルが低くなっており、比較的手間をかけずに会社設立が可能です。しかしながら、会社設立の際には次のようなデメリットが生じる可能性があることも理解しておきましょう。

会社設立にはコストがかかる
軽貨物運送業の会社設立には費用がかかります。
会社設立時にかかる費用としては、次のようなものが想定されます。
・定款の認証費用(株式会社の場合)
・登録免許税
・会社の実印の作成費
・資本金
・ナンバープレート代
また、定款の作成や会社設立手続きなどを専門家に依頼する場合、専門家に支払う報酬も発生します。
会社設立や運営に手間がかかる
軽貨物運送業の会社を設立するまでは、ご説明してきたように、会社の設立登記、軽貨物運送業の経営届出の提出、黒ナンバーの取得申請、税務署での手続き、社会保険事務所での手続きなどが必要です。また、会社設立後も、決算などの複雑な会計処理や税務処理が必要になります。経理などの知識がない場合には、税理士などへの相談が必要になり、会社の運営にもコストがかかる点も覚えておかなければなりません。
社会保険料の負担が必要となる
会社設立をすると、社会保険の加入義務が発生します。従業員を雇用する場合、社会保険料は半分を事業主が負担することになるため、従業員が多いと、社会保険料の負担が大きくなる可能性があります。
無届出での営業は処分の対象になる
軽自動車を使い、軽貨物運送業を営む場合、必ず、国土交通省への届出が必要です。会社設立後に軽貨物運送業の届出をすることになりますが、万が一、届出をせずに軽貨物運送業の仕事をした場合、罰金が科せられます。
届出に手間はかかりますが、必ず軽貨物運送業の届出を済ませ、黒ナンバーを取得してから営業を開始するようにしましょう。
まとめ
軽貨物運送業の会社を設立する場合、法務局での設立登記だけでなく、運輸局への届出、黒ナンバーの取得といった手続きが必要になります。一般貨物自動車運送事業に比べると手続きは簡単になるものの、届出の要らない業種に比べると、会社設立手続きは複雑です。
軽貨物運送業の会社設立を検討している場合は、会社設立のメリットとデメリットを十分考えたうえで、会社設立の手続きを進めるようにしましょう。会社設立をするべきか、個人事業主として事業を営むべきか悩む場合には、会社設立に詳しい税理士などへの相談をおすすめします。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。