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会社設立
会社設立時の事業目的はどう書くべき?書き方や業種別の例をご紹介

読了目安時間:約 7分
会社設立をする際には、会社の基本的なルールを記載した定款の作成が必要です。定款には必ず記載しなければならない絶対的記載事項が6つあり、事業目的も絶対的記載事項の1つとなります。しかし、初めて会社を設立する場合には、事業目的はどのように決めるべきなのか、書き方に悩んでしまうケースもあるでしょう。
そこで今回は、会社設立時に悩みやすい事業目的の書き方について、業種別の例を交えながらご説明します。
定款と事業目的
会社設立時には、定款を作成しなければなりません。どのような形態の会社を設立する場合でも、法務局に定款の提出が必要です。
定款の絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項です。絶対的記載事項に記載漏れがあった場合、定款が無効になるため、以下の6つの事項は必ず記載するようにしましょう。
・会社名(商号)
・事業目的
・本店所在地
・出資金
・発起人の氏名
・発起人の住所
事業目的が果たす役割
事業目的とは、会社の事業内容を明示するものです。事業目的に事業の内容を記載することで、取引先や金融機関などにも、どのような事業で収益を得る会社であるのかをはっきり示すことができます。
また、会社設立後は、定款に記載されている事業目的以外の事業を行うことはできません。そのため、会社設立後に新たな事業を営むときは、必要な手続きを踏んだうえで、法務局での変更登記をしなければならないのです。変更登記には登録免許税の支払いが必要になるため、近い将来、開始する予定の事業があるのであれば、会社設立時にあらかじめ事業目的に追加しておいた方がよいでしょう。
事業目的を決定する際に必要な3つの視点
前述のように、取引を始める場合や融資を依頼する場合、取引先や金融機関では取引や融資をしても問題のない企業であるかを見極めるため、事業目的をチェックします。そのため、事業目的を決定する際には次の3つのポイントを確認し、第三者が見てもしっかりと理解できるように内容を決めることが大切です。

法に違反していないか
まずは、事業目的は法に違反しないものでなければなりません。法に違反する行為や、違法性はなくても公序良俗に反するような事業目的は、認められません。
営利性があるか
会社は、ビジネスで得た利益を、社員や株主などに分配することを目的に設立される営利法人です。そのため、会社設立の際には、営利性のある事業目的を設定しなければなりません。
事業目的が明確であるか
事業目的は、第三者が見てもどのような事業を営むのか、はっきりと理解できるものでなければなりません。一般的に浸透していない専門的な用語や業界用語を使用している場合、意味が通っていない文章となっている場合などは、明確性に欠けると判断される可能性があるため、注意が必要です。
事業目的を決める際の注意点
事業目的は、会社の事業内容を示す重要な役割を担います。したがって、事業目的を決定する際には次の点に注意するようにしましょう。

将来営む可能性がある事業も記載する
繰り返しになりますが、定款の事業目的に記載されていない事業を営むことはできません。また、事業目的を定款に追加する際には、定款の変更が必要となり、登録免許税の負担も発生します。
そのため、会社設立時にはまだ行わない事業でも、経営が軌道に乗った後に展開したい事業が決まっているのであれば、会社設立時点で事業目的に加えておくようにしましょう。
事業目的が多すぎると不信感につながるリスクがある
定款に事業目的を記載する際、記載できる数に制限はありません。そのため、主な事業目的のほか、将来営む可能性がある事業についても、事業目的として記載しておくべきです。しかし、あまりに事業目的の数が多く、脈絡のない事業目的が記載されている場合、主に何の事業を営む会社なのかが分かりにくくなります。そのため「安心して取引ができる相手ではないかもしれない」という不信感を抱かせてしまう恐れがあるのです。
金融機関に融資を申請する際も、事業目的が多すぎる場合、融資担当者によい印象を与えません。事業目的が多すぎることで、事業計画が曖昧なのではという疑念を抱かれ、融資審査が長引く恐れや、希望の融資を受けられない恐れも出てきます。
事業目的を記載する際は、多くても10個以内におさめるようにしましょう。あまりに事業目的が多い場合には、どのような事業を営みたいのか、もう一度、事業計画を確認した方がよいかもしれません。
許認可を受ける際に必要な文言を使用する
業種によっては事業を開始するにあたって、許認可を取得しなければならないものがあります。許認可申請は、一般的に、会社の設立登記が完了した後に行います。しかし、会社設立後に許認可を取得する際、事業目的に決まった文言や具体的な内容が記載されていないと、許認可が得られないケースがあるのです。
そのため、許認可が必要な事業を営む予定の場合は、定款作成時にあらかじめ指定された記載方法について確認しておかなければなりません。
許認可や登録、届出が必要な事業は次のようなものです。
・食料品製造業
・食料品販売業
・飲食店、喫茶店
・建設業
・医薬品製造業
・乳製品製造業
・酒類販売業
・米穀販売業
・薬局
・リサイクルショップ
・ペットショップ
・不動産業
・旅行業
・旅館業
・美容室、理容室
・労働者派遣事業
・職業紹介業
・風俗営業
・自動車運送業
・自動車整備業
・介護事業 など
事業目的に幅を持たせる文言を追加する
事業目的を記載する際には、最後に「前各号に付帯または関連する一切の事業」といった文言を追加し、事業目的に幅を持たせておくようにします。この文言を加えることで、事業目的に関連した事業であれば、事業目的を新たに追加することなく、事業を開始できるようになります。
したがって、会社設立時に想定していなかった事業でも、将来的に関連事業にも進出できるよう、事業目的に幅を持たせることができる「前各号に付帯または関連する一切の事業」の文言を入れておきましょう。
業種別の事業目的の書き方の例
では、業種別の事業目的の記載例をご紹介しましょう。
IT、インターネット等の情報通信業
・ハードウェア・ソフトウェアの企画、開発、制作、販売、保守、リース
・アプリケーションソフトウェアの設計、開発、販売
・インターネット等の通信技術やネットワークを利用した通信販売業
・インターネット等の通信技術やネットワークを利用した情報提供サービス
・各種ウェブサイト、ウェブコンテンツの企画、制作、運営、保守及び管理
・インターネットによる音楽、動画、映像等の配信に関する企画、制作、運営、管理
・情報収集、分析、管理ツールの企画、制作、販売
・コンピューターの操作指導等に関する業務
不動産業
・宅地建物取引業
・不動産賃貸業
・不動産の保有、売買、仲介、賃貸借及び管理
・不動産に関するコンサルティング業務
・不動産の鑑定業
・ビルメンテナンス業務、プロパティマネジメント業務
飲食業
・飲食店及び喫茶店の経営
・コンビニエンスストアの経営
・フランチャイズシステムによる飲食店の経営
・深夜酒類提供飲食店営業
旅行業、宿泊業
・旅行業法に基づく旅行業
・旅行業法に基づく旅行代理店業
・旅行業法に基づく旅行サービス手配業
・旅館あっせん業
・ホテル、旅館、貸別荘等の宿泊施設の経営
・住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業、住宅宿泊管理業及び住宅宿泊仲介業の経営
・外国人旅行者のガイド業
小売業
・日用品、雑貨の販売
・衣料品、衣料雑貨品、装身具、鞄等の販売
・農水産物及びその加工食品の販売
・酒類の輸入、販売
・医薬品、医薬部外品の販売
・化粧品、健康食品等の販売
・事務用品、文房具等の販売
・古物営業法に基づく古物営業
広告、出版業
・広告代理業
・各種広告宣伝物の企画、立案、制作及び販売
・雑誌書籍等の企画、編集、制作、出版及び販売
・電子出版物の製作及び販売
理容業、美容業
・理容業
・理容室の経営
・美容業
・美容室の経営
・美容商材や美容用機器の企画、製造、輸出入、販売
・エステサロン、ネイルサロン及びマッサージサロンの経営
・美容に関するセミナー企画、運営、管理
コンサルティング業
・経営コンサルティング業
・投資に関するコンサルティング業務
・インターネットビジネスに関するコンサルティング業務
・人材開発コンサルティング業務
・医療、介護等に関するコンサルティング業務
・会社設立や合併、清算に関するコンサルティング業務
アミューズメント業、レジャー業
・レジャー施設、スポーツ施設、キャンプ場等の経営
・演劇、園芸、スポーツ、映画等、各種イベントの企画、運営
・音響機器及び映像機器の製造、販売、リース
・コンサート、コンクール等、音楽関連イベントの企画、運営
・音楽レーベルの企画、運営
建設業
・土木工事業
・建設工事業
・電気工事業
・鉄筋工事業
・防水工事業
・内装仕上工事業
・石工事業
・舗装工事業
・板金工事業
・防水工事業
・造園工事業
・電気通信工事業
・解体工事業
製造業
・医薬品及び医療機器の製造業
・衣料品製造業
・食品製造業
・自動車製造業
・建設機械製造業
・楽器製造業
・化粧品製造業
・スポーツ用品製造業
・建具製造業
運輸業
・一般貨物自動車運送事業
・貨物軽自動車運送事業
・貨物利用運送事業
・内航海運業
・港湾運送事業
・航空運送事業
・一般旅客自動車運送事業
・一般乗乗合旅客自動車運送事業
・一般貸切旅客自動車運送事業
・特定旅客自動車運送事業
福祉業
・介護保険法に基づく施設サービス事業
・介護保険法に基づく居宅サービス事業
・介護用品の販売業
・介護保険法に基づく地域密着型サービス事業
・介護保険法に基づく居宅介護支援事業
・介護保険法に基づく介護予防サービス事業
・介護保険法に基づく地域密着型介護予防サービス事業
・介護保険法に基づく介護予防支援事業
教育事業
・学習塾の運営
・語学教室の運営
・各種カルチャースクールの運営
人材サービス業
・労働者派遣事業
・有料職業紹介事業
・求人情報提供サービスの企画、運営、管理
・アウトソーシング事業の受託、請負事業
会社設立時の事業目的の記載に悩んだときは
会社設立の際、事業目的をどのように記載すべきか悩んだときには、次の方法をおすすめします。
同業他社の事業目的を参考にする
事業目的の記載方法は、事業分野によって異なりますが、同じ分野であれば参考にすることができます。そのため、同業の会社がどのような事業目的を記載しているのかが分かれば、参考にすることができるでしょう。
会社設立時に法務局で設立登記をしますが、設立登記が完了すると、会社の登記情報は誰でも見ることができます。つまり、同業他社の登記情報も手数料を支払えば、法務局で登記事項証明書を取得することで確認できるのです。登記事項証明書は、法務局の窓口で請求することもできますが、オンラインで請求し、送付してもらうことも可能です。
また、一般財団法人民事法務協会では、インターネット上で不動産や法人登記の情報を確認できる有料サービス「登記情報提供サービス」を提供しています。手数料は必要になるものの、事業目的の記載に悩んでいる場合は、利用を検討してみるとよいでしょう。
専門家に相談をする
初めて会社設立をする際には、事業目的の決定にあたっても、書き方が正しいのか、内容に問題がないのか不安になるケースは少なくありません。今回ご紹介したような業種にはない、新しいサービスの提供を目指している場合や、許認可が必要な事業を営む予定の場合などは、特に事業目的の書き方に慎重になるでしょう。
事業目的の書き方に悩む際には、会社設立をサポートしている税理士など、専門家に相談することをおすすめします。税理士に相談すれば、適切な事業目的の記載方法はもちろん、資金調達や事業計画などについてのアドバイスを受けることも可能です。
まとめ
会社設立の際には、まず、定款を作成するために事業目的を明確に定める必要があります。会社を設立しても、事業目的に記載されていない事業は営むことができません。また、事業目的の変更や追加をする場合には、法務局での登記変更手続きが必要になります。
そのため、事業目的を決定する際には、将来的に営む予定がある事業までを含め、複数の事業目的を記載するとよいでしょう。ただし、記載しすぎた場合、取引先や金融機関に不信感を与える恐れがあるため、記載する数は10個以内にとどめた方が賢明です。
また、事業目的の記載方法が分からない場合には、同業他社の事業目的を確認したり、専門家に相談したりすることをおすすめします
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。