2024.10.10

会社設立

自己資金が少ない!会社設立時の資本金に見せ金を利用したらどうなる?

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

会社設立の検討をしているときに、思ったよりも自己資金を貯めることができないケースがあるかもしれません。自己資金が少なければ、会社設立時の資本金の額も低くなります。2006年の新会社法の施行によって、資本金の下限額に関する規定は撤廃され、1円からでも会社設立が可能になりました。しかしながら、資本金は会社の信用度を図る1つの判断基準として使われることが多いため、資本金が低すぎると、取引会社から敬遠されたり、融資を受けにくくなったりというデメリットが生じます。そのため、会社設立を考えている人の中には、見せ金をして資本金を多く見せてもよいのだろうかと悩む方もいらっしゃるかもしれません。しかし、見せ金には多くのリスクが隠れています。

そこで今回は、資本金に見せ金を利用するリスクや、自己資金が不足している場合の対策についてご説明します。

会社設立時の資本金の見せ金とは

まずは、見せ金とはどのようなことを指す言葉なのか、見せ金という行為についてご説明します。

見せ金とは

見せ金とは、お金を多く見せかける行為のことです。会社設立時に行われることがある、資本金の見せ金とは、一時的に他所からお金を借入し、資本金に相当するお金があるように見せかける行為を指します。

会社設立時には、定款に資本金の額を記載します。また、登記申請の際には、出資金の払い込みがあったことを証明する書面と、銀行の預金通帳のコピーの提出が必要です。そのため、出資金が実際に銀行口座に振り込まれていなければ、定款に記載した通りの資本金であることを証明できません。

そのため、資本金の見せ金をするときには、会社設立登記をする前に借りてきたお金を発起人の口座に入金し、会社設立後に借りたお金を返済します。したがって、会社設立時には口座にお金があるように見せかけるものであり、実際には登記した額の資金は存在しないこととなります。

このような行為を資本金の見せ金と言いますが、見せ金は、法に反する行為です。

見せ金と預け合い

見せ金と同様、会社設立時に自己資金が不足している場合に行う違法な手段に、預け合いという行為があります。預け合いとは、会社を設立する人と金融機関が、共謀して行うことです。

預け合いの場合、金融機関は預け合いに合意し、会社設立を検討している人に対してお金を貸します。会社設立予定者は借りたお金を貸し出して、元の金融機関に開いた口座に入金し、出資金の払い込み証明として通帳のコピーを添え、会社設立の登記をします。会社設立完了後は、金融機関に借りたお金をそのまま返済するというわけです。

見せ金と同様、預け合いも法に反する行為であることに違いはありません。

資本金の見せ金や預け合いが発生する理由

見せ金や預け合いによって資本金を多く見せる行為は、実は、かつてほどは行われていません。なぜなら会社法の改正によって最低資本金の制度が撤廃されたからです。

会社法が改正される前は、株式会社設立の場合は最低1,000万円、有限会社設立の場合は最低300万円の資本金が必要でした。そのため、会社設立を計画していても自己資金が不足し、最低資本金の額に達しない場合などに、見せ金や預け合いなどが行われていたのです。

現在では、最低資本金の制度が撤廃されたことや金融機関のガバナンス強化、コンプライアンス遵守の徹底により、見せ金や預け合いの数は減っています。しかしながら、会社設立の見せ金がなくなったわけではありません。それは、現在でも資本金の額が会社の評価につながり、取引や融資に影響を与える可能性があるからです。

たとえ資本金1円から会社設立が可能になったとしても、資本金1円の会社と新規の取引を積極的に行う企業は少ないでしょう。また、金融機関も資本金が低い会社への融資は見送る可能性が高くなります。資本金の額は会社の体力を表すとも言われ、会社の評価につながる数字でもあるのです。

また、許認可が必要な事業を営む会社を設立した場合、事業によっては資本金の基準が決められている場合があります。定められた資本金が用意できなければ、会社を設立しても許認可を取得できず、目的の事業を開始できないため、見せ金によって資本金を偽るケースもあるようです。

資本金の見せ金や預け合いは違法行為

会社設立時の資本金の額は、会社設立後の取引や融資にも影響を与えます。しかしながら、自己資金が不足するために、資本金に見せ金を使うと、法に違反する行為となります。

見せ金や預け合いは公正証書原本不実記載等罪にあたる可能性が

見せ金や預け合いは、実際にはないお金を資本金として偽装し、会社の設立登記をする行為であり、登記簿に事実ではない情報を記載する行為となります。この行為は刑法第15条に違反する公正証書原本不実記載等罪に問われる可能性があり、その場合、5年以下の懲役、または50万円以下の罰金が処される恐れがあります。

会社法に違反する可能性も

会社法第52条の2では、出資の履行を仮装した場合の責任が記載されています。「発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う」とし、「一 払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払」としています。

つまり、会社法では、発起人に対し仮装した出資金の支払いを求めているのです。また同項では、仮装した出資金の支払いを完了した後でなければ、株主の権利を行使できないとも示しています。

預け合いの場合は、会社法第965条に預け合いの罪と明記され、発起人と預け合いに応じた金融機関の両者に5年以下の懲役、もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科されるおそれがあるとされています。

会社設立後、資本金の見せ金がバレる理由

コンプライアンス強化によって、現在では金融機関と共謀する預け合いの実施は難しいのが現状です。しかし、会社設立をする発起人1人だけの意思で行える見せ金は、現在でも実施できる可能性があります。

会社設立の際に見せ金をして、資本金の額を多く見せかけても、仮装行為がバレることはないと思われるかもしれません。しかし、資本金の見せ金は会社設立後、バレることになります。なぜ、資本金の見せ金が会社設立後にバレるのでしょうか。

融資申請時には自己資金の申請が必要

会社設立後に、設備投資資金や運転資金の調達のため、金融機関に融資を申し込むこともあるでしょう。設立間もない会社の場合、直接、民間の金融機関から融資を受けることは難しいため、日本政策金融公庫に融資を申請するケースがほとんどです。

日本政策金融公庫では、融資申請時にどのくらいの自己資金があるのかを証明するために、通帳のコピーの提出が求められます。通帳に不審な入金と出金の記録があれば、見せ金であることが簡単にバレてしまうでしょう。

見せ金の会計処理が不自然になる

見せ金によって資本金を多く見せた場合、見せ金として借りたお金は、返済が必要になります。しかし、会計上で資本金を返済したという履歴を残すことができないため、見せ金の金額分を役員貸付金として処理するケースが多くなります。実際には返済した見せ金のお金も、会計上は会社から役員に貸し付けた金額として処理するしかないのです。会社設立早々に役員に貸付金が計上されていれば、税務調査の際などには必ず見せ金の存在がバレることになるでしょう。

資本金に見せ金を使うことで生じるリスク

会社設立時に自己資金が不足する場合でも、見せ金の利用は絶対に行ってはいけません。見せ金を使って資本金を大きく見せて会社設立時をした場合、次のようなリスクが生じます。

違法行為となり処罰の対象となる

繰り返しになりますが、見せ金は違法行為です。公正証書原本不実記載等の罪が確定すれば、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

株主としての権利を行使できなくなる

会社法では出資の履行を仮装した場合、発起人は出資金額の全額を支払う義務があるとしており、支払いができなかった場合には株主としての権利を行使できないとしています。

つまり、出資者が見せ金の分の金額を支払わなければ、株主としての権利が認められないため、会社の意思決定に関与することができなくなってしまうのです。

会社設立が認められない

過去には、見せ金は一時的な借入金のため、営業資金を確保していないことにあたり、払い込みとしての効力を持たないとした判決が下された例もあります。正しく出資金の払い込みをしていなかったと判断されれば、会社設立自体が無効になってしまう恐れもあるでしょう。

融資を受けられない

見せ金は違法行為です。融資を申請する際には、預金通帳の提出を求められるケースがほとんどです。審査の過程で不審なお金の流れが発覚すれば、見せ金の疑いが強まり、融資審査に通ることは難しくなります。

融資を受ける際には資本金も審査の判断基準の1つに用いられます。そのため、少しでも資本金を大きく見せようと見せ金の利用を考えるケースがあるかもしれません。しかし、見せ金行為は金融機関からの信頼の喪失につながり、融資の可能性を限りなく0に近づけてしまいます。

見せ金に税金が課せられる

見せ金は、会計上、役員貸付金として処理するケースが多くなります。会社から会社設立者である代表者にお金を貸すという形で処理をしますが、代表者から見せ金の提供元にお金を返済しても、会計処理上は代表から会社に戻されることはありません。したがって、見せ金分の役員貸付は、代表者に貸したまま返済されない状態となるため、役員報酬として扱われ、課税の対象になります。結果、会社設立者である代表者の所得が実際よりも多く支払われている形になり、代表者が負担する所得税の負担額が大きくなるのです。

会社設立時の資本金の調達法

会社設立時に自己資金が不足している場合、見せ金を使って資本金を増やすべきではありません。前述のように見せ金にはさまざまなリスクがあります。

では、見せ金以外の方法で資本金を準備するためにはどうすればよいのでしょうか。

所有する不動産や株式などを売却する

自身が所有する不動産や株式などがあれば、売却によって得た利益を会社設立時の資本金にあてることができます。ただし、売却のタイミングによって得られる利益の額が変わってくるため、売却をする際にはタイミングを見極めることが大切です。

会社設立を検討している場合には、時間の余裕をもって会社設立の準備を進め、自己資金の額が不足するようであれば、会社設立までに売却のタイミングをはかっておくとよいでしょう。

親族に支援を依頼する

親などに会社設立費用の支援を依頼する方法もあります。ただし、借りる場合は返済の必要が生じるため、借りるのではなく、贈与として受け取る形の方がよいでしょう。

口座に急に大きな額の入金がある場合、見せ金として疑われる場合もあるため、たとえ親からの資金提供であっても、資金の提供があったことを証明する書面を残しておくことが大切です。また、年間110万円を超える贈与を受けた場合、受け取り手側に贈与税が課せられることも忘れないようにしましょう。

クラウドファンディングで出資者を募る

クラウドファンディングとは、インターネットを介して、不特定多数の人から出資を募り、資金を調達する方法です。実現したい事業はあるものの、資金が不足している場合などは、プロジェクトを紹介し、アイディアに賛同してくれる支援者から資金を集めることができます。

クラウドファンディングには大きく分けて「購入型」「寄付型」「ファンド型」の3つがあります。このうち、ファンド型クラウドファンディングで資金を調達した場合は、調達資金を資本金として扱うことができます。

ファンド型クラウドファンディングは、投資型クラウドファンディングとも呼ばれるもので、資金提供者には出資のリターンとして株式や利子、配当収入を提供します。

昨今では、クラウドファンディングの利用者も増えているため、資金調達手段として検討してみてもよいでしょう。

資金調達手段として日本政策金融公庫の融資の検討を

借入金は、資本金とすることはできません。しかし、借入金は、運転資金や設備投資資金として使うことができます。自己資金が不足する場合には融資も検討してみましょう。

政府系金融機関である日本政策金融公庫では、会社設立を検討している人、会社設立から間もない人を対象に融資を行っています。会社を設立するにあたって資金が不足する場合には、日本政策金融公庫の融資申請も検討してみることをおすすめします。

日本政策金融公庫とは

日本政策金融公庫とは、資金調達が難しい中小企業や小規模事業者、農林漁業者に対して、融資や信用保険などによる支援を行っている政策金融機関です。

会社設立時や会社を設立したばかりのときに、民間の金融機関から融資を受けることは難しくなります。しかし、中小企業や小規模事業者の場合、資金不足が影響して会社設立が難航するケースや、会社設立後の運営が厳しくなるケースは少なくないのが現状です。そこで、民間金融機関を補完することを目的に、日本政策金融公庫では、会社設立をする人や会社設立をしたばかりの人を対象に、積極的に融資を提供しています。

会社設立時に利用できる新規開業資金

日本政策金融公庫の新規開業資金は、新たに事業を始める人、または事業開始から7年以内の人を対象とした融資です。設備資金と運転資金として、最大7,200万円までの融資を受けられます。

会社設立時に融資を受ける場合は、創業計画書の提出が求められ、事業計画の内容によって融資の審査が行われます。日本政策金融公庫のホームページ上には次のような文言が記載されています。

「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限ります。

つまり、新規開業資金は会社設立時に利用できる融資制度ではあるものの、申請すれば誰でも融資を受けられるものではなく、融資に値する事業計画を策定していなければ、融資を受けることはできないということです。

日本政策金融公庫の融資申請時には専門家に相談を

日本政策金融公庫には、新規開業資金以外にも会社設立時に利用できる融資があります。しかしながら、融資を受けるためには審査を通過する必要があり、審査を通過するためには質の高い創業計画書を提出しなければなりません。

初めて会社設立をする場合などは、創業計画書の作成に悩むことも少なくないでしょう。確実に融資を受け、会社設立に必要な資金を調達したい場合には、専門家に相談し、事業開始後の見通しをしっかり伝えられる書類を作成することをおすすめします。

まとめ

会社設立時に一時的に借りたお金を資本金として見せかける行為を見せ金と言います。資本金に見せ金を使う行為は、犯罪行為であり、刑罰に処される恐れがあるなど、さまざまなリスクが生じます。自己資金が不足する場合であっても、見せ金を使うのではなく、所有する不動産や株式などを売買したり、親族にサポートを依頼したりするなどして、資本金を調達するようにしましょう。

また、資本金に借りたお金をあてることはできませんが、日本政策金融公庫では会社設立を検討している人を対象に、運転資金や設備投資資金の融資を行っています。自己資金が不足する場合には、日本政策金融公庫への融資申請の検討をおすすめします。

税理士法人松本様では、日本政策金融公庫の融資申請のサポートも行っています。会社設立が初めての方など、融資の申請にご不安のある方は、是非お気軽にご相談ください。

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