2024.11.14

会社設立

副業を法人化するタイミングは?節税だけじゃない!メリット&デメリットとは

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

本業でサラリーマンをしながら副業を始めた方の副業が軌道に乗り、所得が一定ラインを超えると法人化を検討するようになります。

個人事業主だと所得が増えるほど納税額が高額になりますので、法人化を考えるのは自然な流れです。

法人化させると節税対策となりますし、他にもメリットがあります。

しかし同時にデメリットもありますので、本当に「今」このタイミングで法人化させるべきなのかを慎重に検討するべきです。

副業を法人化する適切なタイミングやメリット・デメリットについてお伝えします。

ご自身のケースでは法人化すべきかどうかを、考えていきましょう。

副業を法人化するタイミング

副業法人化

サラリーマンが副業を法人化させる際には、タイミングを見極めないといけません。

節税などの恩恵を受ける目安となる、法人化のタイミングについて理解しておきましょう。

  • 副業の利益が500〜700万円程度になったとき
  • 課税売上高が1,000万円を超えたとき
  • 副業で社会的信用が必要なとき

副業の利益が500〜700万円程度になったとき

法人化の目的が節税だという場合には、利益が500万円を超えた頃が目安となります。

個人事業主は所得に応じて税金が課せられ、累進課税なので所得が増えるほど納税額が高額になっていきます。

個人事業主の税率は最大45%となりますが、法人税は最大でも23.2%となります。

つまり利益が多いほど節税になりますので、法人化させた方が良いといえます。

ただし利益が少ない状態で法人化させると、逆に支払う納税額が多くなってしまいます。

利益が500万円~700万円程度になった時が、目安になると覚えておきましょう。

課税売上高が1,000万円を超えたとき

課税売上高とは、消費税が課税される取引の売上金額を指します。

課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生しますが、課税売上高が1,000万円を超えて2年間は消費税の納税が免除されます。

そのためこのタイミングで法人化させると、節税対策となります。

副業で社会的信用が必要なとき

取引先から「法人化してほしい」という要望を受けて法人化を検討されている方もいるでしょう。

個人とは取引を行わないという方針の企業もありますので、法人化させた方がビジネスチャンスが広がります。

取引先の担当者としては、発注先が法人の方が安心感があると考えられるからです。

副業を法人化するメリット

サラリーマンの副業を法人化させると、以下のようなメリットがあります。

  • 法人化した方が節税になる
  • 決算日を自分で決められる
  • 社会的な信用度が向上する
  • 資金調達しやすくなる
  • 事業主の責任が限定される

法人化した方が節税になる

副業法人化節税

お伝えした通り、個人事業主よりも法人の方が最高税率が低いので節税になります。

計上できる経費の幅が増えるので、以下のような項目も経費とできます。

  • 役員報酬
  • 従業員への退職金
  • 社会保険料の半分
  • 生命保険の支払い
  • 旅費規程に基づく出張手当
  • ジム代などの福利厚生
  • 健康診断の経費

個人事業主は経費を差し引いた分が所得となりますが、法人化させると役員報酬も経費の一部となるのが大きな違いです。

税負担を軽減させられれば、より事業の利益を追及できるようになるでしょう。

決算日を自分で決められる

個人事業主の事業年度は1月1日から12月31日までと決められており、全員決められた時期に確定申告をします。

しかし法人化させれば、自由に決算日を決められます。

本業での決算日は繁忙期と重ならないように決算日を定めておくと、本業も副業もスムーズに業務ができるでしょう。

社会的な信用度が向上する

個人で事業を行うよりも、法人化させた方が社会的信用度が上がり、事業がしやすくなります。

「取引先に法人化を求められる」「法人でないと入札できない」という悩みを抱えている方もいるでしょう。

法人化させるには労力だけでなく費用もかかりますので、事業に本気で取り組んでいる姿勢が伝わります。

登記した内容は誰でも確認できるので、取引先からの信用度が向上します。

資金調達しやすくなる

取引先だけでなく金融機関からしても、個人よりも法人の方が融資しやすいものです。

融資や資金調達、助成金という面でも、法人化させた方が有利であるといえるでしょう。

個人事業主は個人と事業の資産が曖昧になりがちですが、法人化されていれば個人の資産とは切り分けられていますので融資しやすいという側面があります。

融資を受けたいタイミングも、法人化のひとつのタイミングであるといえるでしょう。

事業主の責任が限定される

株式会社や合同会社は「有限責任」となり、会社が倒産した時に会社の資産以上の責任を負う必要はありません。

個人事業主の場合だと、個人の借金となり自己破産するまで免責されませんので、法人化はメリットとなるでしょう。

会社が不祥事を起こしてしまっても、有限責任によって社長個人の資産は守られます。

副業を法人化するデメリット

副業法人化デメリット

副業を法人化すると、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。

  • 会社設立に費用がかかる
  • 決算処理が煩雑になる
  • 赤字でも税金を納めなくてはいけない
  • 社会保険加入が必要になる
  • 廃業時にも費用と手間がかかる

会社設立に費用がかかる

会社設立は、費用がかかります。

手続きだけでも約22~24万円、さらに資本金の準備が必要になります。

お金さえあれば法人化できるというわけでなく、手続きも複雑なので手間に感じる方もいるでしょう。

法人化して会社設立する手順

会社を設立する手順についてご紹介します。

  1. 登記申請書など必要書類の準備
  2. 会社概要を決め定款の作成
  3. 定款の認定を受ける
  4. 資本金を払い込む
  5. 登記申請を行う
  6. 法人銀行口座を設立する
  7. 税務署関連の手続きを行う

登記申請や定款の作成は、専門的な知識がないと難しいと感じる方もいるかもしれません。

本業がありながらの法人化は時間が限られますので、
専門家に相談するのがおすすめです。

決算処理が煩雑になる

個人事業主も確定申告を行うので、今までは自身で処理をしてきたという方もいるかもしれません。

しかし会社の決算処理は個人事業主よりも複雑で、専門的な知識が必要になります。

税理士に依頼すると費用がかかり、事業の規模が小さければその費用にインパクトを感じるかもしれません。

法人の納付スケジュール

法人の納付スケジュールは、3月決算の会社の場合、
年間で以下のようになります。

1年に1回納付するものと、複数回納付するものがあり、毎月のように納付する税金があります。

個人事業主から法人化させると、納付スケジュールが多忙なのでデメリットに感じるかもしれません。

納付月税金の内容
毎月10日源泉所得税住民税社会保険料
4月固定資産税
5月法人税等消費税
6月なし
7月労働保険料固定資産税
8月なし
9月なし
10月なし
11月なし
12月固定資産税※年末調整を行う
1月なし
2月固定資産税
3月※決算月

源泉所得税や住民税は原則毎月ですが、特例の場合はこの限りではありません。

赤字でも税金を納めなくてはいけない

副業法人化デメリット

法人住民税均等割という税金があり、会社だと赤字でも絶対に納めなくてはならない税金があります。

法人住民税均等割は、赤字か黒字か関係なく、資本金や従業員数に応じて課税されるものです。

社長が1人で経営している会社であっても例外ではありません。

社会保険加入が必要になる

法人化して会社になると、従業員数に関わらず社会保険に加入しなくてはいけません。

本業が別にある副業の会社であっても、社会保険に強制加入となる可能性があります。

すでに務めている会社で社会保険に加入しているはずなので、二ヶ所目の社会保険加入となります。

本業の社会保険に影響がある可能性があり、本業の会社が副業を禁止している場合は注意が必要です。

廃業時にも費用と手間がかかる

個人事業であれば廃業する際に届出を出すだけですが、会社になると廃業するにも費用がかかります。

解散登記3万円清算人登記9,000円、清算結了登記2,000円の合計41,000円が必要です。

さらにハローワークでの雇用保険の廃止手続きも必要となり、費用だけでなく手間が負担になるでしょう。

サラリーマンの副業法人化が会社にバレるケース

サラリーマンとしての本業があると、副業の法人化が会社にバレないかと心配する方がいます。

副業を禁止している会社は減少してきていますが、まだまだ副業を禁止している会社もあります。

最悪の場合は裁判で争われる可能性がありますので、
会社の方針を確認しておいた方がいいでしょう。

サラリーマンの副業が会社にバレてしまう原因についてお伝えします。

  • 噂話やSNS
  • 住民税
  • 社会保険の届出
  • 公開法人データ

噂話やSNS

副業バレる

副業を会社に隠しておきたいのであれば、会社の関係者や仲の良い同僚にも話をしない方が無難でしょう。

口止めをしていたとしても、パートナー同士の会話で噂が広がってしまうというケースはよくあります。

またSNSを使った副業だと、個人が特定されるリスクがあるので注意しましょう。

インターネット上に公開する情報は、全世界の誰もが閲覧可能であると忘れてはいけません。

住民税

本業の会社で住民税の特別徴収をしている場合、住民税の金額から副業がバレる可能性があります。

給与明細の控除に住民税という項目があれば、会社で住民税を徴収していますので確認してみましょう。

前年の収入により住民税が決まりますので、住民税の金額で収入が増えたかがわかってしまいます。

会社での給与の割合を超えた住民税の金額だと、他にも収入源があるのだろうと推測され、副業を疑われてしまうでしょう。

社会保険の届出

先述した通り、法人化させると社会保険に加入しなければいけませんので、本業の会社と二ヶ所で社会保険に加入している状態となります。

二以上事業所勤務届を会社の管轄の年金事務所に提出しますので、そこから会社に副業がバレる可能性があります。

社会保険料は本業と副業の合算の収入によって決まりますので、副業がパートやアルバイトであったとしても会社にバレるリスクがあります。

公開法人データ

副業で設立した会社の代表取締役になると、名前がいろいろな場所で公開されるようになります。

会社で新設法人のデータを収集しているかもしれませんし、ホームページの代表取締役の名前から副業がバレてしまうかもしれません。

特に珍しい苗字や名前の場合は注意が必要です。

副業の法人化に関するよくある質問

副業法人化

副業の法人化に関するよくある質問をまとめました。

  • 副業を法人化すること自体に問題はありますか?
  • 副業禁止の会社があるのはなぜですか?
  • 副業を認める会社のメリットにありますか?

副業を法人化すること自体に問題はありますか?

法律上は会社員が副業を法人化させても、問題はありません。

しかし会社が副業を禁止している場合は、慎重に考えた方がいいでしょう。

会社にバレるとトラブルに発展する可能性があります。

副業禁止の会社があるのはなぜですか?

副業を禁止する会社がありますが、副業の禁止そのものは違法ではありません。

副業を禁止する理由としては、「本業に支障がでる」「情報漏洩などのリスクがある」という点が挙げられます。

副業が禁止されていない会社であっても、副業に専念しすぎて本業が疎かになってしまってはいい顔はされないでしょう。

本業を大切にした上で、余裕のある時に副業に取り組むようにしましょう。

副業を認める会社のメリットにありますか?

副業は会社にとってデメリットばかりでなく、メリットもあります。

社員が副業を始めるとスキルアップが期待できますし、人材不足でも副業を希望する優秀な人材確保が可能となります。

また副業を解禁している企業は魅力的なので、新たな人材確保やブランディングにも効果的であると考えられます。

副業を法人化すべきかは節税だけじゃない

サラリーマンの副業を法人化するか否かは、節税対策だけが問題ではありません。

もちろん法人化させるといくつかのメリットがありますが、デメリットもあると忘れてはいけません。

法人化は節税効果がありますが、支払う税金の種類が法人の方が多いため、本当に法人化した方が良いのかの判断が難しいでしょう。

特に副業が禁止されている会社にお勤めの場合には、
バレるリスクがあるので注意が必要です。

法人化させるか、タイミングを待つべきか、またどんなタイミングがベストなのか迷ったら、一度税理士にご相談ください。


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