2024.11.24

創業融資

連帯保証人なしの創業融資|保証人のリスクなく事業をスタートさせる

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

創業融資を受ける際には、保証人が必ず必要なのでしょうか。

「保証人を誰かに頼むのはなんとなく気が引ける」という場合は、保証人不要の創業融資を探してみましょう。

万が一、事業に失敗すると、連帯保証人になってくれた友人や知人とその家族の人生までもをメチャクチャにしてしまう可能性すらあります。

連帯保証人不要の創業融資にはどんな種類があるのか、またデメリットはないのか、など、連帯保証人と創業融資についてご説明します。

保証人制度とは

創業融資連帯保証人

融資を受ける際や事務所の賃貸契約を結ぶ際などに必要になるのが、保証人です。

保証人には単純保証人連帯保証人があり、厳密には異なるものです。

保証人制度の基本的な知識について、確認しておきましょう。

  • 保証人制度の基本知識
  • 「単純保証人」と「連帯保証人」

保証人制度の基本知識

基本的には融資を受けた債務者が返済していくものですが、万が一、返済が難しくなった場合に代わりに返済を行うという契約を結ぶ人が保証人です。

融資をする金融機関としては、債務者本人に返済能力がなくなった場合でも返済をしてくれる人となりますので、貸し倒れのリスクを軽減してくれる大切な存在です。

事業の融資を受ける際の保証人は、生計を共にしていない、他の独立した生計の人を選ばなくてはいけません。

しかし友人や知人ではなかなか受け入れてもらいにくいという実情があり、保証人選びに苦労する人も少なくないでしょう。

「単純保証人」と「連帯保証人」

単純保証人とは、抗弁権(こうべんけん)が認められた保証人です。

抗弁権とは、主債務者の財産を優先的に執行するよう求められる権利を指します。

一方、連帯保証人には抗弁権が認められておらず、主債務者と同等の責任を負います。

融資をした金融機関の立場では、返済能力が高い方から優先的に訴訟や強制執行を実施できるようになります。

連帯保証人になると主債務者と同等に返済の義務が発生しますので、慎重に検討をしなければいけません。

保証人なしで利用できる日本政策金融公庫の創業融資

創業融資日本政策金融公庫

日本政策金融公庫とは、一般の金融機関が行う金融を補完することを旨としつつ、国民生活の向上に寄与することを目的とする政策金融機関です。
参照:日本政策金融公庫|政策金融機関の業務の概要

日本政策金融公庫の創業融資にはいくつかの種類がありますので、保証人なしで利用できるものをご紹介します。

  • 新規開業資金(旧・新創業融資制度)
  • マル経融資(小規模事業者経営改善資金)
  • 挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

新規開業資金(旧・新創業融資制度)

日本政策金融公庫の新創業融資制度が2024年3月に廃止となり、新規開業資金となりました。

新たに事業を始める方、もしくは事業開始後7年以内の方が対象となり、担保・保証人が原則不要です。

融資限度額7,200万円
(うち運転資金4,800万円)
設備資金
ご返済期間
20年以内
(うち据置期間5年以内)
運転資金ご返済期間10年以内
(うち据置期間5年以内)
利率(年)基準利率
(2.30~3.50%)
担保・保証人原則不要
参照:日本政策金融公庫|新規開業資金

マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

日本政策金融公庫のマル経融資(小規模事業者経営改善資金)とは、商工会議所・商工会の指導を受けている小規模事業者が融資を受けられる制度です。

融資限度額2,000万円
設備資金
ご返済期間
10年以内
(2年以内)
運転資金
ご返済期間
7年以内
(1年以内)
利率(年)特別利率F
(1.45%)
担保・保証人原則不要
参照:日本政策金融公庫|マル経融資(小規模事業者経営改善資金)

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)

挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)とは、新規事業やスタートアップ、事業再生等に取り組む方の税務強化を支援する制度です。

地域経済活性化に関わる事業を行っており、1期以上の税務申告を行っている事業者が対象です。

融資限度額7,200万円
ご返済期間5年1ヶ月以上
20年以内
利率(年)0.50%~4.65%
担保・保証人原則不要
参照:日本政策金融公庫|挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)

保証人なしの信用保証制度

保証人を付けずに創業融資を受けられるものとして、
信用保証制度があります。

中小企業・小規模事業者の金融円滑化のために設立された公的機関が信用保証協会です。

都道府県などの自治体と信用保証協会、事業者の3者で成り立つ制度であり、自治体が保証人になってくれる制度です。
参照:全国信用保証協会連合会

信用保証料を支払う必要がありますが、知人や友人に連帯保証人を頼みにくいという場合には選択肢のひとつとなります。

融資をする金融機関としても、自治体が保証人になってくれるので安心して融資ができます。

2023年からのスタートアップ創出促進保証制度

スタートアップ創出促進保証制度

2023年3月に、スタートアップ創出促進保証制度がスタートしました。

スタートアップを応援するための制度であり、保証人が不要なのが大きな特徴です。

スタートアップ創出促進保証制度についてご説明します。

  • スタートアップ創出促進保証とは?
  • スタートアップ創出促進保証のメリット
  • スタートアップ創出促進保証の注意点

スタートアップ創出促進保証とは?

スタートアップ創出促進保証とは、経営者保証不要で利用できる融資制度です。

経営者保証とは、経営者個人が会社の保証人になる状態で、経営者個人としてのリスクが大きくなります。

スタートアップ創出促進保証は、経営者個人ではなく
信用保証協会が保証します。

万が一、事業に失敗したとしても経営者個人の責任が追求されませんので、安心して事業をスタートできます。

融資限度額3,500万円
保証期間10年間
金利金融機関所定
保証料率保証料率の0.2%
担保・保証人原則不要
参照:中小企業庁|経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度を開始します。

スタートアップ創出促進保証のメリット

スタートアップ創出促進保証のメリットは、経営者保証不要で起業のハードルが下がるという点です。

多くの事業者が経営者保証で創業融資を受けていますが、これは起業を躊躇する要因のひとつとなってしまいます。

また対象は創業予定の人や創業後5年未満の法人というように、幅広く設定されています。

スタートアップ創出促進保証に興味のある方は、金融機関か信用保証協会にお問い合わせください。

スタートアップ創出促進保証の注意点

スタートアップ創出促進保証を利用する際の注意のひとつは、自己資金が必要になるケースがあるという点です。

創業予定の人や税務申告1期未終了の人は、1/10の自己資金が必要になります。

保証人不要で融資が受けられるとはいえ、自己資金が全くないと審査が通らない可能性があります。

また創立3年目と5年目には、ガバナンス体制の確認が必要です。

金融機関からガバナンスチェックに関する連絡が来ますので、チェックシートに沿って確認をしていきます。

このような確認事項がありますので、覚えておきましょう。

創業融資で保証人を付けた方がいいケース

保証人付けた方がいい

創業融資を受ける際の保証人が不要だと、知人や友人に迷惑をかける心配がありません。

しかし条件によっては保証人を付けた方がよいと考えられるケースもあります。

以下のような条件で創業融資を受けたい方は、保証人を付けるという選択肢も視野に入れていきましょう。

  • 金利をできるだけ低くしたい
  • 大きな額の融資を受けたい
  • 審査に通りやすくしたい
  • 自己資金が少ない

金利をできるだけ低くしたい

保証人を付けずに融資が受けられれば嬉しいですが、
金融機関としては大きなリスクとなります。

そのため担保や保証人の有無が金利に影響してくる可能性があります。

返済の懸念がないと判断できると金利が低く抑えられる傾向があります。

金利が高くなればなるほど返済総額が大きくなりますので、将来的に大きな負担となってしまいます。

金利をできるだけ低くしたいと考えるのであれば、
保証人を付けた方が良いといえるでしょう。

大きな額の融資を受けたい

保証人がいない融資は金融機関にとってリスクとなりますので、大きな額の融資を受けるのが難しいといえます。

目安となるのは自己資金の3倍以上の融資を受けたい場合で、このボーダーラインをこえると保証人がいた方が審査に有利になります。

保証人なしの状態では、融資額にも影響がでると覚えておきましょう。

審査に通りやすくしたい

日本政策金融公庫は政府金融機関ですが、創業融資を希望する人全てが融資を受けられるわけではありません。

保証人なしで融資を希望する場合は返済能力の有無が厳しく審査されますので、審査に落ちてしまう可能性もあります。

「担保・保証人が原則不要」とされていたとしても、100%審査に通過するというものではありません。

保証人がいた方が審査が通りやすい傾向があるのは、
間違いありません。

自己資金が少ない

融資を申請する際には、事業に使用するための準備された自己資金が必要です。

自己資金がなくても申し込める融資はありますが、自己資金が審査の項目にあるのは事実です。

自己資金が準備できていないと「計画性がない人」
「目標のために努力ができない人」という印象を与えてしまうかもしれません。

審査担当者への印象は良くありませんので、保証人がいた方が審査が通りやすいといえるでしょう。

連帯保証人の有無は審査に影響するのか

連帯保証人審査

連帯保証人や担保が不要であると記載されているにも関わらず、保証人がいないと融資額や金利に影響があると考えられます。

では連帯保証人の有無は、融資の審査にどのような影響を与えるのでしょうか。

融資の審査は連帯保証人だけが重要視される項目ではありませんので、直接的に関連のある事柄なのかは判断できません。

連帯保証人だけでなく、経営者本人の信用力や総合計画書の内容が重要視されるのは言うまでもありません。

審査に通過するかは総合的な判断が行われますので、
もちろん連帯保証人なしで融資を受けられる人もいます。

創業融資や連帯保証人に関するよくある質問

創業融資連帯保証人

創業融資や連帯保証人に関するよくある質問をまとめました。

  • 連帯保証人に借金があるとどうなりますか?
  • 連帯保証人が催促を無視したらどうなりますか?
  • 連帯保証人が死亡したらどうなりますか?
  • 連帯保証人を断る良い口実はありますか?

連帯保証人に借金があるとどうなりますか?

借金がある人は、連帯保証人になれない可能性があります。

連帯保証人に対しても信頼調査が行われ、資産状況が確認されています。

「信用情報に事故情報がある」「ローンの返済が滞っている」「いわゆるブラックリストである」という人は、連帯保証人になれません。

連帯保証人が催促を無視したらどうなりますか?

連帯保証人は、主債務者と同等の返済義務を負います。

主債務者の代わりに返済をする義務がありますので、「催促を無視する」「返済ができない」という場合には、連帯保証人の財産が差し押さえられてしまうかもしれません。

連帯保証人を頼まれたら、安易に返事をせずによく検討するようにしましょう。

連帯保証人が死亡したらどうなりますか?

連帯保証人の地位は相続の対象となるものです。

つまり連帯保証人が死亡したら相続人にその地位が引き継がれ、家族や子が連帯保証人としての返済義務を負います。

相続の関係を知った時から、3ヶ月以内であれば相続放棄が可能です。

連帯保証人を引き継ぐ場合は、金融機関で契約書を書き換える等の手続きを行います。

連帯保証人を断る良い口実はありますか?

親しい人に「連帯保証人になってほしい」といわれても、引き受けられない時には以下のように断りましょう。

「すでに他の人の連帯保証人になっている」「私には荷が重い」「この先もずっと良い関係でいたいから」などが、相手の気持ちも配慮した断り方です。

また保証人・担保不要の創業融資があると教えてあげるのも良いかもしれません。

「家族での決まりになっていて連帯保証人にはなれない」と断る人もいるようです。

創業融資は保証人不要のものもある

融資を受ける際には連帯保証人が必要なものばかりではなく、保証人・担保なしで融資の申請ができるものもあります。

連帯保証人を頼むのも引き受けるのも、「なんとなく気が進まない」という人も少なくないでしょう。

連帯保証人は主債務者と同等の責任を負いますので、
将来的に迷惑をかけてしまうかもしれません。

保証人不要の創業融資は、「融資額が制限される」「金利が高くなる」という懸念がありますが、視野を広くもってどの選択肢がベストかを考えていきましょう。


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