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法人化
法人化に必要な資本金はいくら必要?決め方や重要性についても徹底解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
現在では、資本金が1円でも法人化することが認められるようになりました。
資本金は事業を運営するための基盤となる資金であり、同時に会社の信用力や社会的な評価にも大きく影響を与える重要な要素のひとつと言えます。
本記事では、法人化に必要な資本金について紹介していきます。
他にも「法人化する際の資本金の決め方」や「法人化における資本金の重要性」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、法人化に必要な資本金について理解を深めてみてください。
目次
資本金とは?
資本金とは、事業を始める際の初期資金のことであり、会社設立時に欠かせない重要な要素です。
経営者自身が用意する場合もあれば、出資者や株主、投資家といった他者が提供する場合もあります。
しかし、創業直後に外部の第三者から資金提供を受けるケースは少なく、多くの場合、経営者が自己資金を使って資本金を用意します。
また、資本金はその会社の規模や経営の安定性を示す指標となり、企業の信用力に直結するので、資本金が少なすぎると、会社に余裕がないと判断され、取引先や金融機関からの評価が低くなる可能性があります。
特に銀行融資を希望する場合には、資本金として十分な額を用意し、事業の基盤がしっかりしていることを示す必要があります。
さらに、借入金については資本金とは区別され、会社の負債として扱われるので注意が必要です。
法人化に必要な資本金はいくら必要?
法律上の観点から説明すると、法人を設立するには最低でも1円の資本金があれば可能です。
以前は「株式会社を設立するには最低1,000万円、有限会社には最低300万円の資本金が必要」という規定が存在していました。
しかし、2006年の法改正により最低資本金制度が撤廃され、1円でも起業が可能になりました。
このように、法人を設立するだけであれば、以前のように多額の資本金を準備する必要はありません。
法人化する際の資本金の決め方
法人化する際の資本金の決め方については、以下の5つが挙げられます。
- 運転資金と初期投資
- 信用度
- 許認可
- 消費税免税
- 節税対策
それぞれの決め方について解説していきます。
運転資金と初期投資
会社の資本金を設定する際には、初期投資と運営資金を正確に見積もることが重要なポイントの一つです。
具体的には、会社設立に必要な登記や手続き費用、事務所や店舗の契約金、設備の購入費用などが含まれます。
また、設立後すぐに必要となる仕入れ費用、賃料、従業員の給与などの運営コストも考慮する必要があり、資本金から賄うことになるため、しっかりと計画を立てることが求められます。
さらに、事業の内容や規模によって必要な金額は大きく変わるため、自社の状況に合わせた資本金を設定することが欠かせません。
特に、創業当初は売上が計画通りに上がらない場合も多く、その間も固定費や運営費は発生し続けます。資本金が不足していると、早い段階で資金が底をつくリスクが高まります。
リスクを回避するためには、会社設立に必要な初期費用に加え、少なくとも半年分の運転資金を含めた金額を最低ラインとして資本金を設定することをおすすめします。
このように、余裕を持った資本金を準備しておくことで、事業の安定したスタートを切ることにつながります。
信用度
多くの企業では、新しい取引先と関わる際に信用調査を実施しており、資本金の額を確認するのが一般的な手順となっています。
特に設立したばかりの企業や相手が大手企業である場合、資本金の規模は信頼性を測る要素の一つとみなされます。
資本金が極端に少ないと、取引を断られる可能性があるので、慎重に設定することが求められます。
許認可
事業を開始する際には、事前に特定の業種において許認可が必要となる場合があります。
許認可を取得するための条件には、資本金の要件が含まれることがあり、この条件を満たしていない場合、許認可が取得できない可能性があるため十分な注意が求められます。
会社設立後に事業が行えなくなる事態を避けるためにも、資本金の額を決める前に、事業に必要な許認可の条件をしっかりと確認しておくことが重要です。
特に、資本金に関する条件が設定されている業種については、その基準を満たす金額を用意しておく必要があります。
以下は、資本金の要件が定められている主な業種と最低資本金額の一覧です。
業種 | 最低資本金額 |
貨物利用運送業 | 300万円以上 |
一般建設業 | 500万円以上 |
特定建設業 | 2,000万円以上 |
有料建設業 | 500万円以上 × 事業所数 |
労働者派遣業 | 2,000万円以上 × 事業所数 |
第1種旅行業 | 3,000万円 |
第2種旅行業 | 700万円 |
第3種旅行業 | 300万円 |
地域限定旅行業 | 100万円 |
このように業種によって要求される最低資本金額が異なるため、事業計画を立てる段階で該当する要件を確認し、それに応じた資本金額を設定することが重要です。
事業所数が条件に影響を及ぼす業種では、複数の事業所を運営する場合に必要な資本金が増加することも考慮に入れて計画を立てることをおすすめします。
節税対策
会社の資本金の額は、さまざまな税金の課税対象になるかどうかや、税額の計算方法に直接影響を与えます。
そのため、資本金を決める際には、これらの税金にどのような影響を与えるかを事前にしっかりと確認し、許認可の要件や運転資金とのバランスも考慮することが重要です。
具体的な、課税対象になる税金については、以下のとおりです。
- 消費税
- 地方税
- 法人税
- 法人住民税
それぞれの税金について解説していきます。
消費税
法人化すると、一定の条件を満たすことで最長2年間、消費税の納税が免除される場合があります。
しかし、資本金が1,000万円を超えると、設立初年度から消費税の納税義務が発生します。
具体的に、以下のようなケースでは消費税の免税が適用されません。
- 資本金が1,000万円を超えている場合
- 特定新規設立法人を設立した場合
- 相続による事業承継を行った場合
- 「消費税課税事業者選択届出書」を提出した場合
一方、これらの条件に該当しない場合は、消費税の納税が免除される猶予期間が設けられる可能性があります。
なお、2023年10月1日から施行されたインボイス制度の影響で、初年度から課税事業者を選択する場合は、資本金の額や他の要件にかかわらず消費税を納める義務が発生する点に注意が必要です。
地方税
地方税は、企業の資本金額に応じて税率が異なる仕組みが採用されています。
資本金が1億円以下の企業には軽減された税率が適用され、特に資本金が1,000万円以下の場合は最低税率が適用されるため、税負担がさらに軽くなります。
そのため、資本金が1,000万円を超えるケースでは、地方税に関する影響についても事前に十分な検討が求められます。
法人税
法人税の税率は、資本金の規模によって異なります。
具体的には、資本金が1億円を超える場合とそれ以下の場合で区別されます。
資本金が1億円以下の法人の場合、所得が800万円を超える部分には23.2%の税率が適用され、800万円以下の部分には15%の税率が適用されます。
一方で、所得が800万円以下であれば、全額に対して15%の税率が一定で適用されます。
このように、資本金が大きい企業ほど、負担する税金の額も増加する傾向があります。
法人住民税
法人住民税には、たとえ赤字でも必ず支払わなければならない「均等割」という仕組みがあり、その金額は資本金などに応じて異なります。
例えば、東京都23区内において、従業員数が50人以下の企業を例に挙げると、資本金が1,000万円以下の場合は均等割の年間金額が7万円になります。
しかし、資本金が1,000万円を超える場合には、その金額が18万円に増加します。
法人化における資本金の重要性
法人化における資本金の重要性については、以下の3つが挙げられます。
- 融資限度額が決まる
- 与信調査の対象になる
- 会社規模を表す指標になる
それぞれの重要性について解説していきます。
融資限度額が決まる
銀行からの融資を検討する際には、資本金の額が重要な指標となります。
一般的には、融資可能な金額は資本金と同程度から2倍程度が目安とされています。
そのため、事業開始直後から大きく成長を目指す場合、十分な資本金を用意しておくことが望ましいです。
また、銀行の融資制度を利用する際には、売上高や未払いの状況といった要素に加え、資本金の額も審査対象となります。
資本金が極端に少ない場合、融資の承認が得られないケースもあるため注意が必要です。
さらに、創業時や増資のために資本金として使うことを目的とした融資を受けることはできません。
資本金は「出資金」として扱われるため、融資とは性質が異なるので、違いを正しく理解することが大切です。
与信調査の対象になる
新しい取引を開始する際、多くの場合で与信調査が実施されます。
取引相手が確実に商品代金を支払ったり、納品を確実に行ったりする信頼性があるかどうかを確認するためです。
信頼性を評価する指標の一つとして、資本金が注目されることがあります。
取引先や仕入先、さらには競合企業の規模や資本金も含めて詳細に調査し、それらを考慮した上で判断を進めることが重要です。
会社規模を表す指標になる
会社の設立時における資本金は、初期の運転資金として活用されるだけでなく、企業の基礎的な強さを示す重要な要素になります。
そのため、資本金の規模が小さい企業は、外部からの融資や支援を受けにくい傾向があります。
また、資本金の大きさは企業の信用度に直結することが多く、特に設立直後の会社においては、外部から見た際の信頼性や事業規模を測る基準として評価されることがあります。
そのため、資本金の額が企業の初期段階でのイメージや信頼感に大きく影響を与えると言えます。
資本金を増資する方法
事業を開始した後で資本金を増やす必要がある場合には、「増資」と呼ばれる方法を利用し、新たに株式を発行することで資本金を拡充する仕組みのことです。
具体的に、資本金を増資する方法については、以下の3つが挙げられます。
- 公募増資
- 株主割当増資
- 第三者割当増資
それぞれの方法について解説していきます。
公募増資
公募増資とは、企業が新たな株式を発行し、証券市場を通じて幅広い投資家から資金を集める手法を指します。
この方法により、多くの投資家に出資の機会を提供できますが、発行済み株式が増えることで株価や1株当たりの利益が低下する可能性があります。
株主割当増資
株主割当増資とは、現在の株主に対して、追加の出資を行うことで新しい株式を取得する権利を提供する仕組みです。
メリットとして、既存の株主間での所有割合が大きく変動しにくい点が挙げられます。
しかし、すべての株主が必ずしもこの権利を行使するとは限らないため、資金調達が期待通りに進まない可能性もあります。
また、新たな株式が発行されて流通量が増えることにより、1株あたりの株価や利益率が希薄化する点にも注意が必要です。
第三者割当増資
第三者割当増資とは、特定の第三者、例えば親会社などに対して新たに株式を発行する資金調達の手法です。
この方法は、株式市場を通さないため、発行価格を比較的柔軟に決めることが可能です。
しかし、発行済み株式数が増加することで、一株あたりの株価や利益率が希薄化するという影響があります。
資本金を増資する際の注意点
資本金を増資する際の注意点については、増資を行いすぎると、発行する株式の総数が増えるため、一株当たりの利益が減少する恐れがあり、既存の株主にとって不利益が生じ、利益が薄まるリスクがあります。
また、増資を実施することで、株式の所有割合を示す「持株比率」にも影響が及びます。
特に、第三者への増資を実施した場合、経営陣の持株比率が低下する可能性があります。
その結果、外部の株主が経営に介入し、場合によっては代表取締役を解任する権限を持つ状況が生じることも考えられます。
資本金額は慎重に決めよう!
今回は、法人化に必要な資本金はいくら必要なのかについて紹介しました。
事業を展開していく上では、金融機関をはじめとする取引先からの信頼を得ることが重要で、一定の資本金を確保しておくことが求められます。
しかし、資本金はあくまで表面的な数値に過ぎないという点も念頭に置く必要があります。
今回の記事を参考にして、資本金の本質を正しく理解し、自社にとって最適な資本金額を慎重に設定することが大切です。
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