2024.12.13

創業融資

創業融資の運転資金は何ヶ月分?審査通過のための事業計画書のポイント

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

創業融資の運転資金は、何ヶ月分が目安となるのでしょうか?

事業を軌道に乗せるために欠かせない運転資金は、少なすぎても多すぎてもいけません。

運転資金をどう計算していくべきか?

また何が運転資金に含まれるのか?

事業計画書の書き方のポイントも含めながら、創業融資の運転資金についてご説明します。

運転資金は何ヶ月分が必要?

創業融資の運転資金は、3ヶ月~6ヶ月分が妥当であるといわれています。

製造業が絡むような事業では6ヶ月で事業を軌道に乗せるのは難しいかもしれませんが、融資をする金融機関としては6ヶ月で何かしらの成果を出してほしいというのが本音です。

「6ヶ月で軌道に乗らない事業は成功しにくい」と見なされてしまいますので、注意が必要です。

例えば、7ヶ月目で黒字になる事業であれば、起業後6ヶ月ずっと同額の赤字があるわけではありません。

起業後だんだんと赤字額が少なくなっていくと考えるのが一般的なので、トータル的に3ヶ月分の運転資金の融資が受けられるといいでしょう。

運転資金と認められる項目

運転資金は、大きく分けて「固定費」と「変動費」があります。

固定費は毎月必ず必要になる費用で、変動費は事業規模や売り上げの増減に伴って変動するものです。

固定費と変動費を含めた運転資金とは、以下のような項目が挙げられます。

  • 人件費
  • 事務所や店舗の維持費
  • 仕入れ費用
  • 備品の購入費用
  • 広告宣伝費
  • 通信費
  • 販売に必要な費用

人件費

従業員を雇用するのであれば、人件費がかかります。

従業員の給与や交通費、福利厚生に関わる費用が人件費に含まれます。

固定費と考えられる場合がありますが、変動費的な側面をもつものでもあります。

社会保障や退職金の積み立ても人件費に含まれますので大きな負担となりますが、人材の確保やモチベーションの維持のためには必要不可欠なものです。

良い人材を集め、良い仕事をしてもらうためには必要な経費であると考えられます。

事務所や店舗の維持費

事業を行っていく上で必要不可欠な、事務所や店舗の維持費は運転資金となります。

代表的なものは事務所や店舗の家賃、水道光熱費などです。

選ぶ立地によって家賃が異なりますので、場所や規模感によって必要な運転資金も変動します。

管理費や修繕費が必要な物件であればこれらも含めて維持費となりますし、駐車場を利用する場合は駐車場代も含まれます。

仕入れ費用

商品やサービスを提供するためには、仕入れが必要となります。

材料費はもちろん、外注費用も含まれます。

売上に直結する費用ではありますが、食品を扱う場合のように長期保存ができないものを仕入れる場合は、保管についても考えて行かなければいけません。

適切な時期に適量の仕入れができるよう、しっかり計画していきましょう。

備品の購入費用

事業を行う上で日常的に必要になる細かな物の購入費用です。

例えば、ボールペンやコピー用紙といった事務用品、清掃用具などが挙げられます。

事業をスタートしたばかりだと、経費を無駄にせずに備品を発注していくのは難しいかもしれません。

在庫切れを起こさないよう、かつ在庫過多とならないよう、適切に備品を購入していけるようにしましょう。

広告宣伝費

事業をスタートさせたばかりの頃は、広告宣伝費が新規顧客獲得のための大切な投資となります。

ホームページの構築費用やチラシの作成、インターネット広告を使うのも効果的でしょう。

ターゲット層をしっかりと理解した上で、届けたい人にきちんと届く広告を準備していかなければいけません。

マーケティング戦略のもと、費用対効果が見込める広告宣伝を行っていきましょう。

通信費

インターネット接続料や携帯電話の料金、ソフトウェアの使用料などが、通信費となります。

事業を円滑に行っていく上で欠かせない費用であり、従業員がストレスなく業務に取り組める環境を整えておきましょう。

お客様をお迎えする店舗がある事業者だと、BGMに関する費用も通信費となります。

販売に必要な費用

商品やサービスをお客様に販売する際に必要になる費用です。

オンラインショップを開設するのであれば、運営コストや決済手数料などがかかります。

商品を梱包するための資材や配送費用は大きな負担になる可能性がありますので、物流システムやコスト管理を丁寧に行っていきましょう。

業種別の運転資金の具体例

基本的な運転資金の考え方は、お伝えした通りです。

では、より具体的に、業種別の運転資金について考えてみましょう。

  • 製造業の運転資金項目例
  • 飲食業の運転資金項目例
  • 小売業の運転資金項目例
  • IT・サービス業の運転資金項目例

製造業の運転資金項目例

製造業の運転資金の具体例として、このような項目が挙げられます。

扱う製品により具体的な材料や部品は異なります。

詳細具体例
材料費製品製造のための材料木材プラスチックなど
部品費製品組み立てのための部品ネジ金具など
製造用消耗品費製造過程で消耗するもの工場の電球清掃用の洗剤など
製造機械の保守費用最低限のメンテナンス費用定期点検費修理費用など

飲食業の運転資金項目例

飲食業の運転資金の具体例として、このような項目が挙げられます。

詳細具体例
食材費調理のための食材肉や野菜調味料など
消耗品費食事のための消耗品食器ナプキンなど
店舗設備のメンテナンス費最低限のメンテナンス費用店内の電球外壁や看板など
衛生費店内の衛生環境の維持清掃関連消毒品など

小売業の運転資金項目例

小売業の運転資金の具体例として、このような項目が挙げられます。

詳細具体例
仕入費商品の購入扱う商品による
ディスプレイ費用店のデザイン店内ディスプレイレイアウト変更費用など
包装費商品の包装包装紙店名入紙袋など

IT・サービス業の運転資金項目例

IT・サービス業の運転資金の具体例として、このような項目が挙げられます。

具体例
ソフトウェアライセンス費ソフトウェアのライセンス費用
クラウドサービス費クラウドストレージやサーバーの使用料など
ドメイン・ホスティング費ドメイン登録費用ホスティング費用など
技術支援費技術コンサルタントの費用ITサポートなど

事業計画書の書き方

事業計画書とは、事業の計画や戦略、見通しなどを記載する文書です。

創業融資を受ける際には、丁寧に作成して提出しなければいけません。

運転資金に関する事業計画書の書き方のポイントについて、お伝えします。

  • 運転資金記入のポイント
  • 運転資金で注意する点

運転資金記入のポイント

事業計画書には運転資金の記入欄がありますので、創業にあたってどのくらいの運転資金が必要かを明記しておかなければいけません。

ここで確認されているのは、事業の見通しと整合性がとれているかという点です。

事業の支出や収入を見積もって、利益や損失を予測していきます。

収支計画、売上予測を立てたら、返済計画も考えていきます。

事業が軌道に乗るまでに、どのくらいの運転資金が必要なのかを正確に計算していかなければいけません。

運転資金で注意する点

運転資金を計算する際に間違えやすいのが、店舗や事務所の敷金や保証金です。

家賃や礼金は運転資金となりますが、敷金や保証金は設備投資となりますので、ややこしく感じるかもしれません。

事業計画書の項目は、ひとつひとつ間違いがないように丁寧に作成していく必要があると覚えておきましょう。

創業融資の設備投資とは

創業融資は運転資金設備投資に大きく分けられます。

設備投資についても、正しく理解をしておきましょう。

  • 設備投資と運転資金の違い
  • 設備投資に含まれる項目
  • 設備投資と運転資金の注意点

設備投資と運転資金の違い

創業時には設備投資も運転資金も必要なので、どちらも準備をしなければいけません。

似ているもののように感じるかもしれませんが、性質が異なるものであり違いを理解しておかなければいけません。

設備投資は、将来の会社運営のために使われるもので、一時的にかかる費用です。

運転資金は、現在の会社経営のために使われるもので、継続的にかかる費用です。

設備投資の方が、運転資金よりも返済期間を長く設定できるかもしれません。

設備投資は運転資金よりも大きな投資が必要となるため、返済期間が長く設定される傾向があります。

設備投資に含まれる項目

具体的に設備投資に含まれる項目について、ご紹介します。

  • 店舗や事務所の敷金や保証人
  • 機械や車両
  • 土地や建物の購入
  • デスクやパソコン

設備投資と運転資金の区別に迷ったら、税理士にご相談ください。

設備投資と運転資金の注意点

もしも設備投資を運転資金として利用してしまうと、一括返済を求められてしまうかもしれません。

創業融資を受ける際に申請した用途とは異なる使い方をしてしまうと、ペナルティがあるからです。

ペナルティには、「一括返済を求められる」「将来的に融資が受けられなくなる」などがあります。

設備投資が想定よりも安く済んだために運転資金に回すというケースがありますが、領収書などでバレてしまいます。

融資申し込み時よりも設備投資が安く済んだ場合は、担当者に相談するなどして、勝手に使い道を変えないようにしましょう。

事業計画書を税理士に依頼するメリット

事業計画書は融資を受けられるか否かの大切な資料となりますので、難しいと感じる場合は税理士に依頼するという方法があります。

事業計画書を税理士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。

  • 融資を受けやすい事業計画書ができる
  • 作成の手間が省ける
  • 長期的な経営相談ができる

融資を受けやすい事業計画書ができる

事業計画書を作って申し込みをすれば、誰でも融資が受けられるわけではありません。

税理士は金融機関から融資を受けるための知見を有していますので、融資が通りやすい事業計画書を作成していきます。

融資に必要な情報を理解していますし、第三者が作成するという意味で伝わりやすい事業計画書になります。

融資審査の回数に上限はありませんが、時間をかけずに融資が受けられるよう準備をしていきたいものです。

作成の手間が省ける

事業計画書を作成するためには、時間や手間がかかります。

初めて事業計画書を作るという方には大きな負担となりますが、税理士に相談するとその手間が省けます。

創業時は他にもやらなければいけない業務が多々ありますので、専門家に依頼できる部分は任せていくといいでしょう。

長期的な経営相談ができる

税理士は事業計画書の作成だけでなく、創業時にさまざまなサポートができます。

税金に関するアドバイスはもちろん、補助金に関する内容や創業支援などです。

また顧問税理士として長期的なサポートをしながら、経営相談にも乗れます。

経営者として信頼できるサポーターがいると、さらに事業に尽力できるようになるでしょう。

創業資金に関するよくある質問

創業融資に関するよくある質問をまとめました。

  • 生活費は運転資金に含まれますか?
  • 創業融資で自己資金の目安はいくらですか?
  • 創業融資の準備にどのくらいの時間がかかりますか?

生活費は運転資金に含まれますか?

運転資金とは事業のために必要なものだけを指しますので、生活費は含まれません。

生活費を事業計画書に盛り込むわけにはいきません。

もし融資を受けた資金を生活費に使うと、使用用途が異なるために「資金使途違反」となり、ペナルティの対象となります。

創業融資で自己資金の目安はいくらですか?

創業融資を受けるためには、融資額の2割~3割程度の自己資金があるといいといわれています。

自己資金とは事業のために用意した資金となりますので、生活費は別で確保しておくようにしましょう。

創業融資の準備にどのくらいの時間がかかりますか?

創業融資は、創業の2ヶ月~3ヶ月前を目安に申し込みができるようにしましょう。

審査には1ヶ月程度の時間がかかるといわれています。

余裕をもって創業融資の準備にとりかかりましょう。

創業融資の運転資金は範囲を正確に

創業融資は、大きく分けて運転資金と設備投資があります。

どのような用途で使う資金なのかを明確にし、事業計画書で細かく内容を記していきます。

人件費や仕入費、事務所や店舗の家賃が運転資金となります。

創業融資で受けられる運転資金は、3ヶ月~6ヶ月分が妥当だと考えられます。

事業が軌道に乗るまでの資金として、できるだけ正確な見通しをたてていかなければいけません。

事業計画書の作成や創業時のお困りごとがあれば、ぜひ税理士にご相談ください。


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