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転売目的の場合は免税販売でも消費税の免税が適用されない?!
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
新型コロナウィルスによる水際対策も緩和され、また街中でも外国人観光客の姿を見かけることが増えてきました。外国人観光客が店を訪れ、大量に商品を購入するケースもあるでしょう。観光客が自身で使用するものやお土産として購入する場合は、消費税は免税されます。
しかし、転売目的で商品を購入した場合には消費税が免税扱いにならないことをご存じでしょうか。
今回は2022年末に、アップル・ジャパンに科せられた追徴課税のニュースをご紹介しながら、転売目的の場合の消費税の取り扱いについてご説明します。
消費税の申告方法に不安を抱えている方は税理士法人松本までお気軽にご相談ください。
目次
税務調査でアップル・ジャパンに140億円の追徴課税
iPhoneなどを販売するアメリカのIT大手であるアップル社の日本法人、アップル・ジャパンは、転売目的の疑いがある取引について、消費税の免税販売を行ったと東京国税局から指摘されました。
免税販売とは
免税販売とは、免税店(輸出物品販売場)の許可を受けた店舗が、日本を訪れた外国人観光客などの非居住者に対して、通常生活のように供される物品(一般物品や消耗品)などを販売する際に、所定の手続きで販売することで消費税を免除するというものです。
免税対象となる一般物品には、カバンや靴、洋服、時計、宝飾品、民芸品、そして家電製品などが該当します。一般物品の場合、1人の外国人観光客に対して同じ店舗における1日の販売合計額が5,000円以上の場合、免税の対象となります。しかし、重要なのは、外国人観光客が生活に使用するわけではなく、事業用または販売用として購入することが明らかな場合は、免税販売対象外になるというルールです。
1人で数百台のiPhoneを購入した場合は転売目的の可能性が高いと判断
アップル・ジャパンの直営店であるアップルストアでは、外国人観光客が1人で数百台ものiPhoneを購入していたケースがありました。数百台のiPhoneを自分で利用する可能性は低く、また土産として購入するにも多すぎる数であり、この場合は転売目的で大量のiPhoneを購入したと判断されました。
日本におけるiPhoneの販売価格は、海外に比べると安価であり、この価格差を狙って転売する観光客が増えているのです。アップル・ジャパンでは、数百台のiPhoneを購入する場合も、免税販売を行っており、この点が税務調査の指摘対象となりました。2021年9月までの2年間に転売目的と考えられる取引が1,400億円に上り、免税販売をした分の消費税140億円がアップル・ジャパンに対して追徴課税されました。
免税販売の不正が税務調査で指摘されるケースが増加
アップル・ジャパン以外にも、転売目的として大量に購入された商品を免税販売しているケースや免税販売制度の対象とならない外国人などに免税で販売したケースなどが相次いで発覚しています。
東京のデパート3社に対して行った税務調査でも、消費税の免税販売の要件を満たさない取引が発覚し、合計して約1億1,000万円の追徴課税がなされています。留学生が来日から1か月の間に、デパートで同じ化粧品を10回にわたり、49万円程度まで繰り返し購入していた例もありました。1回の購入額を49万円程度に抑えた理由には、化粧品は消耗品に該当するため、免税が適用されるのは1日の合計額50万円以下の範囲までと定められているという背景があるからです。
日本では、長い間、物価が下がるデフレの状態でしたが、諸外国ではインフレが続いていました。さらに、2022年には記録的な水準にまで円相場が下落し、円安の状態となっています。
このような状況により、海外と日本の物価の差は広がり、外国人観光客にとって日本は物価の安い国になりつつあるのです。現在は、日本の物価が上がっているというものの海外と比べれば、まだまだその差は大きく、今後、入国緩和によりさらに外国人観光客が増えてきた場合、転売目的で商品を大量購入するケースは増えると考えられます。
転売が疑われるケース
転売目的で購入されるケースとしては、同一人物が同じ商品を大量に購入するケースのほか、転売業者がSNSなどを利用して旅行客を勧誘し、報酬を支払って免税購入させるケースも出ています。
日本に入国後6か月以上経過した外国人や日本国内にある事務所に勤務する外国人は免税販売の対象者とはならなりません。しかし、観光客だけではなく、日本に留学する学生など、外国人であっても日本に居住している人が転売に関わっているケースも増えています。
転売目的の免税販売を見抜かなければ、会社は大きな損害を受ける
税務調査で、転売目的として購入された可能性が高いと判断された取引に関しては、消費税が追徴課税されます。免税販売対象外となる人や買い物に免税販売をしてしまった場合、追徴課税された消費税額は会社側が負担しなければなりません。免税販売時に、転売目的か否かを見抜けなければ、消費税の追徴課税によって会社は大きな損害を受けることになるでしょう。
今後、外国人観光客の入国が増えれば、転売目的の購入件数も増加すると考えられます。
免税販売をする際には、1人でスマートフォンやゲームを大量に購入するケースや多額のブランド品をまとめて購入するようなケース、化粧品を数回に分けて何度も購入するようなケースは転売目的の可能性があります。転売目的が疑われるケースについては免税販売ができない旨を説明し、免税に関するトラブルが生じる前に予防することが大切です。また、パスポートを確認して日本の滞在期間が6か月未満であることを確かめたうえで販売するようにしましょう。
まとめ
日本では、滞在期間が6か月未満となる観光客に対し、出国後に使用するものや土産品の消費税を免税する制度があります。この免税制度を悪用し、転売を目的として商品を大量購入する外国人観光客や外国人観光客に報酬を支払って、免税販売を利用させる転売業者などが増加しています。外国人観光客であったとしても、転売目的をした購入の場合は消費税の免税は適用されないことに注意が必要です。もし、転売目的が疑われる免税販売が税務調査で発覚した場合は、販売者側に消費税の追徴課税を科せられるリスクがあります。
新型コロナウィルスの感染拡大に伴う入国制限が緩和され、観光客が戻ってきました。小売業界ではコロナ禍で沈んだ売上を回復できるチャンスでもありますが、転売目的の免税販売には十分気を付ける必要があることを忘れないようにしましょう。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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