2024.04.21
  • 税務調査

税務調査で指摘される?金券ショップでお得に買った商品券の取り扱いには注意が必要!

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

取引先やお客様、従業員などに配布することを目的として、金券ショップで商品券やギフト券などを購入するケースがあるかもしれません。

実は、金券ショップで購入した商品券の取り扱いや商品券・ギフト券などの金券の取り扱いについては、税務調査で指摘を受けるケースが多くなっています。なぜなら、商品券やギフト券は換金性が高いため、納税額の調整目的で悪用されるケースが多くなっているからです。また、金券ショップは、商品券やギフト券の額面金額と実際の支払額が異なるため、経費を計上する際のミスも多くみられます。

では実際、金券ショップで商品券などの金券を購入した場合、税務調査ではどのような点で指摘を受けやすいのでしょうか。

今回は、金券ショップや商品券に関する経費処理上の注意点についてご説明します。

 

金券ショップ利用時の経費処理には注意が必要

お客様に対して、商品券やギフト券などをプレゼントするような販売促進施策を行う場合もあるでしょう。また、取引先や従業員に金券を贈呈するケースもあるかもしれません。

その際、少しでも経費削減につながればと、定価で商品券やギフト券を購入するのではなく、金券ショップを利用するケースもあるのではないでしょうか。

しかし、金券ショップで金券を購入した場合の経費処理には注意が必要です。

 

金券ショップとは

金券ショップとは、商品券や新幹線の回数券、ビール券、切手、印紙、映画チケットなど、さまざまな金券やチケットを通常よりも安く販売したり、不要となった金券やチケットなどを買い取ったりするお店です。

金券ショップは、チケットを取り扱うことが多いため、チケットショップと呼ばれるケースもあります。

 

金券ショップでは商品券などを割安で購入できる

金券ショップは、定価よりもお得に金券やチケットを購入できるお店です。そのため、1,000円分の商品券を1,000円以下で購入することができます。

例えば、1,000円分の商品券を1枚950円で販売している金券ショップで、10枚分の商品券を購入したとします。このとき、手に入れられるのは10,000円分の価値を持つ商品券ですが、実際に支払う金額は9,500円となります。つまり、実際に支払った額と手に入れた金券の価値に差異が生じるのです。そのため、誤った経費処理をしやすく、税務調査で指摘を受けることとなります。

 

金券ショップでは、商品券などの換金もできる

金券ショップでは、商品券などを額面金額よりも安く購入できますが、反対に所有している商品券を現金に換えることもできます。したがって、帳簿上では商品券を取引先やお客様などに贈呈したものと扱い、実際には外部に贈呈することなく、金券ショップで換金するといった不正も行うことができます。

税務調査では商品券の取り扱いについて、慎重に調査が行われる理由には、換金性が高い点も関連しているのです。

 

金券ショップで買った金券が税務調査で指摘されるケース

金券ショップで買った商品券などの金券について、税務調査で指摘されやすいケースと注意点を具体的にご紹介します。

 

金券ショップで買った商品券の購入費を経費として計上した

商品券などの金券は、購入しただけでは経費として計上することはできません。商品券を使ってものを購入するか、お客様などに渡したタイミングで初めて、商品券の購入費用は経費として計上できるルールとなっています。そのため、商品券を購入したタイミングで、金券ショップに支払った金額を経費として計上すると、間違いなく税務調査で指摘を受けることになります。

商品券を購入し、その金額を経費に計上できれば、その商品券の使途を把握することはできません。商品券を決算期の直前に大量に購入し、その額を経費として計上すれば、課税対象となる所得金額を減らせるため、納めるべき税額を低く装うことができてしまうのです。

さらに、翌期に商品券を再び金券ショップで換金すれば、ほんのわずかの差額を負担するだけで、延々と経費を計上し、不正に税金の負担を逃れられるようになってしまいます。

したがって、金券ショップで商品券などの金券を購入したタイミングで経費にその額を計上していた場合、税務調査では確実に問題視されるのです。

 

金券ショップに支払った金額ではなく、商品券の額面金額を計上した

9,500円を支払って10,000円分の商品券を金券ショップで購入したとします。その商品券を使って10,000円の会社の備品を購入したとしたとき、経費として10,000円の経費を計上してしまうと税務調査で指摘を受けることになります。

購入した商品は10,000円の商品ではあるものの、実際に支払いに使用した商品券は金券ショップで9,500円の価格で購入しているため、経費に10,000円を計上することはできないのです。

実際の金額と販売額が異なる金券ショップで金券を購入した際は、経費計上時には商品券を使用して購入した物品の額ではなく、金券ショップに支払った額を計上するようにしましょう。

 

商品券の額や渡した相手などを帳簿に記載していなかった

金券ショップで購入した商品券などの金券は、何に使用したかによって計上すべき科目が変わってきます。例えば、取引先になんらかの謝礼、またはお詫びとして商品券を渡すケースも考えられます。この場合は、交際費として扱うことになりますが、帳簿には、商品券を渡した時期と金額、渡した相手についても記載しておかなければなりません。交際費以外の使途の場合であっても、帳簿には同様の記述が必要です。

これは、商品券などの金券は換金しやすいものであるため、前述のように税金逃れの手段として悪用されるケースが多いためです。税務調査では、本当に商品券を渡したのかどうか、厳しく確認されるケースが多くなっています。

 

商品券を販売促進費や広告宣伝費として計上した

一定以上の商品を購入してくれたお客様や契約が成立したお客様に、商品券をプレゼントするようなキャンペーンを行う場合もあるでしょう。その場合、商品の売り上げ向上のためにかかった費用だからと、販売促進費として計上してしまうことがあるかもしれません。また、商品を広くアピールするための広告宣伝の一環と捉え、広告宣伝費として計上してしまうケースも考えられます。

しかし、特定の人に商品券を贈るという行為は、販売促進費や広告宣伝費としては扱えません。販売促進費や広告宣伝費として計上できるのは、不特定多数の人を対象として、販売促進や広告のために使用した金額です。具体的には、商品やサービスの認知向上のために配布するサンプルやノベルティなどの作成や配布にかかった費用などは、販売促進費や広告宣伝費として計上できます。

したがって、一定以上の商品を購入したお客様や契約を結んだお客様といった、特定の相手だけに商品券をプレゼントするような場合の経費は、交際費として計上しなければなりません。

中小企業の場合、交際費は年間800万円以内であれば、全額を経費として計上できます。しかし、800万円を超えた部分に関しては損金として計上することできない点に注意し、正しく処理をすることが大切です。

 

まとめ

金券ショップで買った商品券を外部に贈呈したように装い、実際には購入した商品券を再び換金するような不正が行われているケースは少なくありません。経費を水増しして計上し、見かけの所得額を少なくし、納税額を抑えようというケースもあれば、外部に金券を贈呈したように見せかけ、商品券を換金し、私的に流用している可能性も考えられます。そのため、税務調査では、商品券やギフト券など、金券の取り扱い状況について詳しく調べられるケースが多くなっています。

税務調査で指摘を受ける前に、日頃から金券ショップで購入した金券の取り扱いには十分に注意し、正しいルールに則り、経理処理を行うことが大切です。しかし、金券の取り扱いに誤りがあった場合には、早めに税理士に相談し、税務調査で指摘を受ける前に対策を取ることをおすすめします。

 

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