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つまみ申告がバレたらどうなる?過少に申告した場合のリスクについて
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
つまみ申告という言葉をご存じでしょうか。税務調査でつまみ申告が発覚すると、申告の修正が求められると同時に、不足分の税額の納付とペナルティ分の加算税の納付も求められます。
また、つまみ申告は、脱税行為に該当するとみなされ、多額の加算税が課されるケースもあります。法人や個人事業主として事業を営んでいる方だけでなく、副業をされている会社員の方もつまみ申告を行っていると、大きなリスクを背負う可能性があるのです。
今回は、つまみ申告の概要とつまみ申告が発覚した場合のリスクについてご説明します。
目次
つまみ申告とは
つまみ申告とは、申告すべき売上や収入の中から一部だけをつまみ出して、過少に申告をする行為を指す言葉です。
確定申告の際には、全ての売上や収入から経費を差し引く形で所得額を確定しなければなりません。しかし、つまみ申告により特定の売上や収入だけをピックアップして申告を行うと、当然、課税所得額は小さくなり、納税額も少なくなります。つまみ申告は、所得隠しに該当する行為になるのです。
つまみ申告で1億9,300万円の所得隠しが発覚したケースも
2023年9月には、茨城県の農業を営む男性が、つまみ申告によって1億9,300万円もの所得を隠していたと、水戸地検に告発されたニュースが報道されています。男性はサツマイモの売上をつまみ申告によって過少に申告し、所得税約8,200万円を脱税したとの疑いから国税局によって告発されたのです。
また、2017年には、兵庫県の水道配管工事会社が同じくつまみ申告の手口で脱税をしたと神戸地検に告発されています。この会社は、3年間の実際の所得額が1億5,000万円程度であったにもかかわらず、つまみ申告によって所得額をわずか1,800万円として申告していたのです。所得税約4,600万円の脱税にあたるとし、過少申告加算税を含む約5,300万円の追徴課税がなされ、修正申告を行ったとされています。
つまみ申告がバレた場合のリスク
税務調査でつまみ申告がバレた場合、不足分の所得税の納税とペナルティとしての加算税の納付が求められます。
過少に申告した場合に課せられる加算税
つまみ申告は、意図的に過少に申告する行為となり、つまみ申告が発覚した場合には追徴課税がなされます。過少申告が指摘された場合の加算税には過少申告加算税と重加算税の2つがあります。
過少申告加算税は、申告はしたものの納税額が少なかった場合に課せられる加算税です。過少申告加算税の税率は、追加で納めることになった税額の10%ですが、追加で納める税額が当初の申告納税額と50万円のいずれか大きい額を超えている場合は、超えている部分についての税率は15%となります。
また、重加算税が課せられる場合は、過少申告加算税よりもさらに重い税率が適用されます。重加算税は、確定申告の際、意図的に隠蔽や仮装などの悪質な行為を行った場合に課せられる加算税です。
重加算税が課せられる場合、追加で納めることになった税額の35%の納付が求められます。さらに、過去5年のうちに重加算税を課されたことがある場合には、45%とさらに税率が重くなります。
つまみ申告がバレると重加算税の納付が求められる可能性が
国税通則法第68条1項では、重加算税が賦課されるのは、国税の計算の基礎となるべき事実の全部または一部を、隠蔽、または仮装した場合としています。隠蔽とは事実を隠すことであり、仮装とは事実を捻じ曲げ、虚偽の意思表示をする行為です。
税務調査では、事実を記録する帳簿のほかに虚偽の内容を記載した帳簿を作成していたり、帳簿を意図的に改ざんしていたなどといった行為があった場合に重加算税が課せられるケースが多くなります。
つまみ申告の場合、売上や収入の一部をつまみ出し、過少に申告する行為であり、二重帳簿などの作成行為があるわけではありません。そのため、つまみ申告が故意的な過少申告とみるべきか、隠蔽行為に該当するものなのかについての議論が続けられていました。
しかし、平成6年には、つまみ申告にも重加算税が適用されるという判決が下されました。
たとえ二重帳簿などの積極的な隠蔽行為を行っていない場合でも、所得を隠蔽しようとする明確な意思を持ち、意図的に過少申告をしたつまみ申告の行為は、重加算税の賦課対象になり得るというわけです。
重加算税が課せられる際には延滞税の納付も必要
延滞税とは、納付期限までに税金を納めなかった場合に課せられる税金であり、納付が遅れたことに対する利息の意味合いをもつものです。つまみ申告の場合、確定申告の期限までに正しい税額を納めていないため、延滞税の納付も必要になります。
延滞税は、税金の納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課せられます。令和4年1月1日から令和6年12月31日までの間は、納付期限の翌日から2か月を経過するまでの延滞税の税率は年2.4%です。また、納付期限の翌日から2か月を経過した日以降については、税率が高くなり、令和4年1月1日から令和6年12月31日までの間は、年8.8%の税率となります。
税務調査によってつまみ申告が指摘された場合、追加分の税額の35%に該当する重加算税と、延滞期間に応じた延滞税の納付が必要になる可能性があるのです。
つまみ申告の自覚がある場合は早めに修正申告を
つまみ申告は、脱税に該当する行為です。しかし、中には重加算税が課せられることを知らず、軽い気持ちでつまみ申告をしてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。その場合は早めに修正申告を行うことをおすすめします。
修正申告とは
修正申告とは、既に提出した確定申告の内容に誤りがあったときに、正しい金額に訂正してもう一度申告を行い、不足分の税金を納めることです。
早めに修正申告をするメリット
税務調査を受ける前に、納税者が自主的に修正申告を行い、正しい税額を申告するとともに、不足分の税金を納税する場合には、過少申告加算税は課せられません。修正申告は税務調査を受け、税務署から更正の処分を受ける前であれば、いつでも行うことができますが、過少申告加算税が免除されるのは、税務調査の前に自主的に修正申告を行った場合のみです。
税務調査の事前通知を受けてからでも遅くはない
税務調査が行われる前には、税務署から、税務調査に入る旨の事前通知が行われます。税務調査によってつまみ申告が発覚すれば、確実に過少申告加算税または重加算税が課せられるでしょう。しかし、事前通知を受けてからでも自主的に修正申告をし、不足分の税金を支払うと、過少申告加算税は軽減されます。
過少申告加算税の税率は、前述のとおり、新たに納めることになった税額の10%です。ただし、新たに納める税金の額が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超えている場合は超えている部分については15%の税率が課せられます。しかし、税務調査の事前通知後に自主的に修正申告を行った場合、過少申告加算税の税率は50万円までが5%、50万円を超える部分については10%に軽減されるのです。
つまみ申告をしており、税務調査の事前通知を受けた場合はできるだけ早く税理士に相談し、修正申告を行うようにしましょう。
まとめ
つまみ申告とは、収入や売上の一部だけをつまみ出して申告し、所得額を過少に見せかける行為です。税務調査でつまみ申告が発覚した場合は、最も重い加算税である重加算税が課せられる可能性もあります。重加算税に延滞税も加われば、その負担額は大きなものになるはずです。
これまでにつまみ申告をしてきたという自覚がある場合には、税務調査を受ける前に自主的に修正申告を行うようにしましょう。税理士法人松本では、つまみ申告についてのご相談も承っています。早めの修正申告を希望される場合はお気軽にご相談ください。
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