2024.10.17
  • 税務調査

個人事業主の脱税!?税務調査の対象になる人の特徴&回避の対策

個人事業主脱税

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

個人事業主として事業を行いながら、確定申告などの税務申告作業をするのは大きな負担です。

しかしだからといって、虚偽の申告や不正を行ってはいけません。

 

税務調査とは、納税者が正しく税務申告を行っているかの調査です。

税務調査により追加課税のペナルティが科せられないよう、適正な申告を行いましょう。

 

個人事業主で税務調査の対象となる人の特徴や、税務調査を回避するためのポイントについてまとめました。

個人事業主の脱税とは

個人事業主脱税

脱税とは、売上を隠す、不正な経費を計上するなどして、本来納めなければならない税金を軽減させる行為です。

「申告漏れ」「所得隠し」という言葉について、正しく意味を理解しておきましょう。

 

  • 申告漏れ
  • 所得隠し

申告漏れ

申告漏れとは、簡単な計算ミスや経費計上の誤りによって納税額を少なく申告してしまう状態です。

「手続きの期限を知らずに遅れてしまった」「申告が必要だと知らなかった」というケースも申告漏れに該当します。

 

故意ではなく、うっかりミスが原因であるというのが大きな特徴です。

 

ただし故意ではないからといってペナルティがないわけでなく、納税を免れるわけでもありません。

所得隠しと比較するとペナルティは軽くなりますが、追加課税されますので正しく納税しましょう。

所得隠し

所得隠しとは、脱税のために意図的に所得を少なく計上する行為です。

「売上を隠ぺいする」「架空の人件費を計上する」というケースがあり、意図的に行うために悪質性が高いと判断されます。

 

申告漏れよりも重いペナルティが科される傾向があります。

意図的な所得隠しなのかは、本人しか知りえない事実ではありますが、最終的には税務当局の判断次第となります。

個人事業主に税務調査が入る割合

個人事業主に税務調査が入る割合は、おおよそ0.5%~1%となります。

これは令和3年度の税務調査および確定申告の数から計算した割合です。
(参照:
国税庁|令和3事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

 

税務調査が入る割合は法人の方が高いので、個人事業主であれば安心だと思っている人がいるかもしれません。

しかし税務調査の対象はランダムに選出されているわけではなく、
きちんと理由があって選ばれています。

 

割合が少ないとはいえ、税務調査される個人事業主にはそれなりの理由があると覚えておきましょう。

税務調査が入りやすい個人事業主の特徴

では、どのような特徴がある個人事業主だと税務調査の対象になるのでしょうか。

税務調査が入りやすい個人事業主の特徴を9つまとめました。

 

  • 確定申告をしていない個人事業主
  • 申告漏れが多い業種の個人事業主
  • 盛り上がりのある業種の個人事業主
  • 経理に不審な点がある個人事業主
  • 現金の取り扱いが多い個人事業主
  • 開業して3年以上で売上が好調な個人事業主
  • 顧問税理士が付いていない個人事業主
  • 医療控除と売上が共に大きい個人事業主
  • 海外との取引がある個人事業主

確定申告をしていない個人事業主

個人事業主無申告

確定申告をしていない無申告の状態で営業を続けている個人事業主は、税務調査の対象になりやすいです。

税務署に対して所得や納税額を申告していない状態となりますので、不審に思われても不思議ではありません。

 

「自分が確定申告をしなければ収入はバレない」と思うかもしれませんが、取引先の税務申告や税務調査によって、個人事業主の売上が想定できてしまいます。

無申告だと脱税をしている状態になってしまいますので、必ず確定申告を行いましょう。

申告漏れが多い業種の個人事業主

国税庁が公開しているデータには、申告漏れ所得金額が高額な上位10業種というものがあります。

申告漏れが多い業種は把握されており、上位10位は以下のようになっています。

 

1位 キャバクラ
2位 風俗業
3位 不動産代理仲介
4位 システムエンジニア
5位 機械器具、部品修理
6位 焼肉
7位 冷暖房設備工事
8位 人材派遣
9位 バー
10位 ダンプ運送

参照:国税庁|事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種

 

このようなデータがあるため、申告漏れの可能性が高い業種を絞って税務調査が行われます。

上記のような業種であれば、申告漏れを疑われやすいと認識しておいた方がいいかもしれません。

盛り上がりのある業種の個人事業主

「IT業界が繁栄してきた」「シェアリングサービスが業績を伸ばしてきた」というように、時代の流れとともに盛り上がりのある業種も変化していきます。

経済活動が活発になっている新業界に対し、税務署としても調査が必要となるため、積極的な税務調査が行われる場合があります。

 

例えば令和3年度では、アフィリエイトなどのネット広告を行う個人事業主に積極的に税務調査が行われました。

今後はユーチューバーやインフルエンサーといったSNSで高い発信力を持つ人達も、税務調査の対象となっていくと予測できるでしょう。

経理に不審な点がある個人事業主

個人事業主経理

税務署はプロなので、経理に不審な数字があれば気付かれてしまいます。

「事業に無関係な経費が計上されている」という場合だけでなく、
逆に「経費が全く計上されていない」というのも不審な点とされます。

 

このような状態でもきちんとした理由があれば問題ありませんので、説明できるようにしておきましょう。

取引先の支払調書を見れば正しい数字がすぐに見破られてしまいますので、不正はしないようにしましょう。

現金の取り扱いが多い個人事業主

取引先やお客様と現金でお金のやり取りをしている現金商売の業種も、税務調査が入りやすい業種であるといえます。

例えば、飲食店や美容室といった小売店が挙げられます。

 

現金管理だと帳簿操作がしやすいため、脱税の証拠が残りにくくなります。

細かなレシートや伝票などの証拠が必要になるかもしれませんが、
現金商売が適正に処理されているとわかると調査員に対して好印象を残せるでしょう。

開業して3年以上で売上が好調な個人事業主

開業して3年目は、事業の売上が伸びやすい時期です。

さらに確定申告にも慣れてきて油断やミスが出やすい、消費税が課税されるタイミングであるなどの理由が考えられます。

 

税務調査の目的は追徴課税なので、売上が好調な個人事業主の方が
税務調査の対象になりやすいと考えられます。

顧問税理士が付いていない個人事業主

確定申告の際に顧問弁護士が申告書を作成しているか、個人事業主が自身で作成しているかという点も関係しています。

顧問弁護士が作成した申告書の方が、単純なミスが少なく、故意な所得隠しがないだろうと予測できるからです。

 

そのため顧問税理士が付いていない、自分で確定申告書を作成している個人事業主の方が税務調査の対象になりやすいといえます。

医療控除と売上が共に大きい個人事業主

医療控除税務調査

医療費控除とは、1年間で高額の医療費を支払った場合に、超過支払い分の医療費が課税対象となる制度です。

高額な医療費を支払ったという場合は、事業主が大きな怪我や病気をしたと予測できる状態なので、売上も大きいと虚偽申告が疑われます。

 

「入院しながらパソコンで仕事をしていた」「怪我をしていたけど通院で仕事はできた」という状況かもしれませんので、100%虚偽とは言い切れません。

ただし不審な点として税務調査の対象になりやすい状態であるといえるので、きちんと説明できるようにしておきましょう。

海外との取引がある個人事業主

インターネット環境が整った状態で経済のグローバル化が進んでいますので、海外との取引を行っているという個人事業主の方もいるでしょう。

海外取引は、源泉所得税や消費税の取扱いなどにミスが発生しやすいため税務調査の対象になる場合があります。

 

「海外投資をしている」「海外資産を保有している」という方は、
申告漏れがないよう注意しましょう。

個人事業主が税務調査に入られないための対策

個人事業主が税務調査に入られないように、事前にできる対策はあるのでしょうか。

以下のような点を意識し、売上や納税の申告は適正に行うようにしましょう。

 

  • 意図的な不正は行わない
  • 経費を適切に管理する
  • 丁寧に記帳しておく
  • 確定申告は詳しく記載する

意図的な不正は行わない

個人事業主脱税

税務調査が入りやすい個人事業主の特徴をお伝えしましたが、これらの個人事業主は無申告過少申告が疑われています。

基本中の基本ではありますが、意図的な不正は絶対に行わないでください。

 

「税金を少なくしたい」「住民税を安くしたい」というような理由で、以下のような不正が行われる場合があります。

 

  • 申告すべき売上を隠す
  • 前年の所得をコピーする
  • 仕事に関係ない経費を計上してしまう
  • 領収書や請求書の捏造

 

上記のような不正はすぐにバレてしまいますので、絶対にやめましょう。

経費を適切に管理する

個人事業主は、プライベートと事業の境目が曖昧になりがちなのも事実です。

どこまでが経費なのか、どこからがプライベートなのか、といった適切な経費の管理が求められます。

 

曖昧になりがちなものとは、以下のような例が挙げられます。

 

  • 自宅は仕事と無関係なのに家賃を経費にする
  • 事業に無関係の飲食費
  • 福利厚生として個人事業主本人のジム代
  • 衣類の購入
  • エステや脱毛の代金

 

業種によって経費と認められるものもありますが、ボーダーラインが曖昧な経費は注意が必要です。

丁寧に記帳しておく

税務調査に誠実に対応するためにも、日々の記帳を丁寧にしておくと安心です。

ついつい確定申告シーズンの前で慌てて処理しがちですが、入金があったタイミングで記帳をしておけば記入漏れを防げます。

 

確定申告直前だと焦りもでてきてしまいますので、時間と心の余裕がある時に落ち着いて適正な処理をしておくようにしましょう。

確定申告は詳しく記載する

調査員が確定申告書を見たときに、不審に感じる点がないように詳しく記載しておくといいでしょう。

「なぜ異常な数値が出ているのか」や、逆に「なぜ毎年同じ金額の計上なのか」という点を丁寧に記載しておけば信頼ある申告書を作成できます。

 

「その他」や「雑費」という項目をできるだけ減らし、内容が伝わるように詳しく記載しておくと安心です。

脱税ではなく「節税」をしていこう

個人事業主節税

脱税は刑法に触れる不法行為となりますので絶対にしてはいけません。

しかし節税であれば、税務制度にのっとって合法的に税金の額を減らせます。

 

個人事業主ができる節税方法には、以下のような方法があります。

 

  • 固定資産は一括で経費にする
  • 所得控除を受ける
  • 青色申告をする
  • iDeCoで節税しながら年金積み立てをする
  • ふるさと納税を活用する

 

知ってはいるものの、見直してみるとさらに活用の余地があるかもしれません。

このような節税制度を上手に活用し、適切に確定申告をしていきましょう。

顧問税理士のサポートをつけておこう

「税務調査が不安」「適切な会計処理をしておきたい」という個人事業主の方は、顧問税理士を検討してみましょう。

顧問税理士をつけると、以下のようなメリットがあります。

 

  • 税務調査が入りにくい
  • 資金繰りのアドバイスがもらえる
  • 本業に専念できる

税務調査が入りにくい

先述した通り、顧問弁護士が確定申告書を作成した場合の方が、
税務調査の対象になりにくいです。

故意な不正がないと判断されるようになりますし、万が一、税務調査の対象になったとしても顧問税理士が対応しますので安心です。

資金繰りのアドバイスがもらえる

資金繰りは、個人事業主や企業によって状況が異なりますので、現在の状況に合った適切なアドバイスをもらえると参考になるでしょう。

税理士はお金のプロともいえる存在ですので、効果の高い節税対策についての相談も可能です。

 

安定した経営を続けていくためのパートナーとして、顧問税理士がついているといいでしょう。

本業に専念できる

個人事業主は、事業も確定申告などの納税も自分で行わなければいけません。

「確定申告シーズンになると気が重い」という個人事業主の方も少なくないでしょう。

 

しかし顧問税理士がいれば、経理関連の仕事はお任せできますので、本業に専念できる環境を整えられます。

経理や税務申告作業は複雑な作業なのでプロに依頼し、時間や手間を本来注ぐべき場所に注力していくのがおすすめです。

個人事業主はうっかり脱税に注意

脱税をするつもりはなくても、個人事業主本人が税務申告作業をしていると、申告漏れとなってしまう場合があります。

故意ではないにせよ、「税務調査が入る」「追加課税される」というのは、気持ちの良いものではありません。

 

このようなリスクをできるだけ低くするために、顧問税理士の依頼を検討してみましょう。

安心して事業に専念するためにも、信頼できる顧問税理士を見つけ、適正な申告ができるようにしていきましょう。


 

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