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給与の現金手渡しでも脱税はバレる!現金取引のリスクや注意点を解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
毎月の給与は銀行口座に振り込まれるという方が大半ですが、中には現金手渡しで支給している会社があるのも事実です。
しかし、給与を現金手渡しにしていると、法律上問題はないのでしょうか。
本記事では、給与の現金手渡しのリスクと注意すべきポイントについて解説します。
結論として、給与の現金手渡しは違法ではありませんが、脱税を疑われる危険性があります。
一定の所得があるにもかかわらず、確定申告をしていなければ脱税となってしまうので注意が必要です。
税務調査で無申告や所得隠し等を指摘された場合のペナルティについても説明しますので、ぜひこの機会に税金を正しく申告することの重要性を理解していただけたら幸いです。
目次
給与の現金手渡しは脱税になる?違法性やリスクについて
給与を現金手渡しで受け取っている人で、「現金の手渡しは違法ではないか」と指摘されて不安に感じている方はいないでしょうか。
実は、現金収入は記録に残りづらいのを逆手に取り、確定申告しないなど、所得隠しをする事業者もいるのです。
ここでは、給与の現金手渡しによる違法性やリスクについて説明していきます。
給与の現金手渡しは問題ない
給与の現金手渡しに違法性がないか心配される方がいるかと思いますが、結論として、現金で給与を渡すことは違法ではないため、問題ありません。
労働基準法の第二十四条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定められており、原則として給与は現金で労働者本人に直接手渡すことになっているのです。
しかし、給与の支払いは現金手渡しのほか、口座振込や電子マネー口座を利用するデジタル払いなどの方法が選択でき、利便性や安全性から口座振り込みを選択するケースが多くなっています。
給与の現金手渡しでもかかる税金は同じ
給与の現金手渡しでも、口座振込でも税金のルールは変わらないため、かかる所得税や住民税は同じです。
1年間の年収が103万円を超えると、超えた額に対して所得税が課税され、住民税は、自治体によって異なるものの、年収93万~100万円を超えると課税されます。
給与所得が年103万円を超えている場合、基本的には年末調整で納税ができていますが、勤務先で年末調整されないパートやアルバイトの人は、自分で確定申告する必要があるのです。
給与を現金手渡しは脱税を誘発?メリット・デメリット
日雇いアルバイトなど、給与を現金手渡しにしているケースもありますが、口座振込と比較して以下のメリット・デメリットがあります。
【給与現金手渡しのメリット】
- 現金をすぐに手にすることができる
- 給料を実感しやすい
- 口座振込手数料がかからない
【給与現金手渡しのデメリット】
- 口座に記録が残らない
- 事業主が源泉徴収をしていない場合、自分で確定申告を行う必要があるので手間がかかる
- 給料日に多額の現金を持ち歩かなければならない
もし事業主が源泉徴収をせず給与を支給している場合、給与を受けた側が自分で確定申告を行わなければならないので、給与取得者は所得税の源泉徴収がされているか必ず確認する必要がありますが、現金手渡しの場合は口座に記録が残らないため申告に手間がかかります。
このように、現金手渡しによる給与には違法性はありませんが、脱税を疑われる危険性があるので、注意しなければなりません。
なぜ現金手渡しで脱税がバレるのか
「現金で収入を得ているから確定申告をしなくてもバレない」と考えている方は要注意です。
なぜなら、現金手渡しであっても取引があったことは様々な方法で把握できてしまうからです。
ここでは、脱税がバレるケースについて説明していきます。
脱税がバレるケース①税務調査
税務調査は申告漏れや無申告を見つけるのが得意といっても過言ではありません。
税務調査とは、税務当局が税金の申告や支払いに問題がないかチェックするために行うもので、たとえ現金取引であっても、異常な金額の流れや申告漏れが疑われる場合、税務調査の対象となるケースがあります。
税務当局は様々な情報を入手して収入を隠していないか調べるため、確定申告していなければすぐに発覚してしまうでしょう。
脱税がバレるケース②支払調書や源泉徴収票
会社は、誰にいくら給与を支給したのかなどを支払調書として税務署に提出しています。
支払調書には給与を受け取った人の名前や住所などが記載されており、確定申告をしていなければすぐにバレてしまいます。
また、パートやアルバイトの給与を現金で受け取っている場合、事業主は源泉徴収票を発行しているため、税務署に現金の受け取りがバレる可能性が高いため、必ず確定申告するようにしましょう。
脱税がバレるケース③マイナンバー
給与の支払状況に関しては、マイナンバーで紐付けされています。
マイナンバーは確定申告書はもちろん、支払調書、源泉徴収票にも記載されているため、例え現金で受け取ったとしても、給与を受けていることはバレてしまうのです。
現金手渡しで脱税がバレたらどうなる?税務調査で課されるペナルティ
現金で給与を受け取り、確定申告しないままでいたり、支給額を誤魔化したりすると、税務当局から指摘され、加算税が課されるリスクが高いです。
加算税とはいわゆるペナルティ税ですが、具体的なペナルティには以下のものがあり、行為の内容によって加算される割合が大きく異なります。
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 不納付加算税
- 重加算税
- 延滞税
税務調査で指摘された際に課される加算税や延滞税について、課税割合も含めてそれぞれ詳しく説明していきます。
過少申告加算税
過少申告加算税とは、確定申告を期限内に申告して納税したものの、申告納税額が本来納めるべき税額よりも過少であった場合に課される加算税です。
税務署から指摘される以前に自主的に修正申告した場合にはペナルティはありませんが、指摘により修正申告する場合は加算税が課されます。
【過少申告加算税の課税割合】
- 原則として納付額の10%
- 期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超えるときは15%
無申告加算税
無申告加算税は、確定申告の期限までに申告を行わなかった場合に課される加算税です。
基本的に、毎年2月16日~3月15日が確定申告の期間となりますが、この期間に確定申告をする必要のある人がしなかった場合に、無申告加算税が課されます。
【無申告加算税の課税割合】
- 原則として納付税額の15%
- 納付すべき税額が50万円超300万円以下の場合20%
- 納付術に税額が300万円超えの場合25%
※税務調査前に自主申告すれば加算税率は5%軽減
不納付加算税
不納付加算税は、減税所得税の納付が納付期限までに行われなかった場合に課される加算税です。
なお、正当な理由がある場合、もしくは納付期限から1月を経過する日までに納付し、過去1年以内において納付期限内に源泉所得税を納付している場合には、不納付加算税は課されません。
【不納付加算税の課税割合】
- 納期限を過ぎ、税務調査が行われる前に自主的な納付をした場合は5%
- 税務調査での指摘により納付する場合は10%
重加算税
重加算税は、意図的に隠ぺいや仮装などを行った場合に課される加算税で、4つの中で最も重いペナルティです。
故意に事実と異なる申告をしたり、申告漏れをしたりと、悪質性があると判断された場合、無申告加算税や過少申告加算税、不納付加算税に代えて支払う必要があります。
【重加算税の課税割合】
- 過少申告加算税・不納付加算税に代えて課される場合は35%
- 無申告加算税に代えて課される場合は40%
延滞税
延滞税とは、各種税金が納付期限までに納付されない場合に、課されるペナルティで、いわゆる利息に相当するものです。
法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて自動的に課税され、加算税に対してではなく、本税に対して課されます。
個人事業主の現金手渡し収入も危険!税務調査対策を紹介
個人事業主の方で収入を現金手渡しで受け取っている場合、税務調査で指摘されて加算税が課される恐れがあります。
中には「現金で受け取っているから確定申告しなくてもバレないだろう」と考える方もいるかもしれません。
しかし、先述した通り税務当局は様々な手法で収入を把握するため、すぐにバレてしまいますし、隠蔽する意思がなくても会計処理に誤りがあり、申告漏れが発覚する可能性もあるのです。
ここでは、個人事業主が現金収入を正しく申告するためにやっておくと良いことについて解説します。
出納帳へ記録をつける習慣をつける
税務調査で何より大切なのは、日々の取引を正しく記帳して適切に申告することです。
現金手渡しで収入を得たら、その都度現金出納帳に日付と勘定科目、収入額や支出額などを記入するようにしましょう。
現金取引は銀行口座のように記録が残らないため自分で管理する必要があるため、出納帳が税務調査で正しく申告しているか判断するための重要な役割を果たします。
そのため、面倒に感じても出納帳へ日々の入出金の記録を怠らずに行いましょう。
プライベートと事業用で通帳を分ける
税務調査対策として、収入をプライベート用と事業用とで通帳を分けるのがおすすめです。
個人事業主の場合、事業とプライベートで使う通帳を1つにまとめているケースが多く、どちらに入ったお金なのか、もしくは使ったお金なのかが曖昧になりがちですが、通帳を分別することで、お金の流れが把握しやすくなり、仕訳も楽になります。
そのため、個人事業主の方は売上や支出を適切に管理するために、プライベート用との区別ができるようにしておくと良いでしょう。
領収書やレシートをデジタル保管する
現金取引をする場合、領収書やレシートが大事な証拠となり、経費の内容が正しいことを証明するために必要であるため、無くさないよう大切に保管しておく必要があります。
ですが、紙の領収書やレシートは劣化や紛失のリスクがあり、万が一紛失した場合は税務調査で脱税を疑われるリスクがあるのです。
そのため、紙の領収書やレシートの劣化や紛失の心配がある方は、これらをデジタル保管するのが有効です。
デジタル保管はスマートフォンのアプリやスキャナーなどを使って画像データにでき、管理が楽になるだけでなく、税務調査の際も必要書類をすぐに提示できるなどのメリットがあります。
脱税が心配な個人事業主は専門家に相談する
個人事業主も、法人よりはやや確率が低いものの税務調査の対象となり、私的な支出を経費として計上していないかなど厳しくなってチェックされます。
確定申告では申告ミスや漏れが起こりやすく、正しく申告していなければ、脱税の疑いがかけられて重いペナルティとなる恐れがあるのです。
そのため、正しく確定申告できているか不安な方や、税務調査を受けるのが心配な方は、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
税理士に相談するには費用はかかりますが、税務の相談事ができたり、会計処理に関する適切なアドバイスを受けられたりするほか、万が一、税務調査を受けることになった場合でも、立ち会いや交渉を税理士に依頼できるので安心です。
現金取引をする際は脱税に注意!
現金手渡しでの取引には違法性はないものの、確定申告をせずに所得を隠す脱税行為が行われることがよくあるため、税務当局も現金取引に関しては注視しています。
脱税は違法行為であり、税務調査で指摘されると厳しく罰せられるため、給与を現金手渡しで受け取っている場合、確定申告の必要性を認識して正しく申告・納税しなければなりません。
また、個人事業主で現金手渡しでの収入がある場合も税務調査でチェックされやすいため、日々の記帳に気をつける他にも対策をしっかり行い、脱税を疑われないような行動をとる必要があるでしょう。
脱税を疑われる心配がある方や日々の会計処理が正しくできているか自信がない方は、税理士などの専門家に相談して必要な対策をとり、リスクを軽減させるのがおすすめです。
ぜひこの記事を参考に、正しく会計処理を行ない、適切に申告するようにしましょう。
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