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引越しをしても税務調査はなくならない!住所変更後の管轄や税務調査対策について解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
個人・法人に対して行われる税務調査において、「調査前に納税地の変更をすると税務調査がなくなる」
このように聞いたことがあり、引越しをすれば税務調査逃れができるのではないかと考える人もいるのではないでしょうか。
本記事では、申告後に会社を移転した場合の税務調査について解説します。
結論として、令和3年の法改正により、会社の所在地が変わったからといって税務調査から逃れられるということはありません。
税務調査の管轄となる部署や法改正について、さらに税務調査の流れや指摘されないための対策についても詳しく説明していきますので、税務調査に不安を感じている方はぜひこの記事を参考に、適切な税務調査対策を行いましょう。
目次
税務調査とは
そもそも税務調査とは、国税局や税務署により、個人や法人が収入や所得、納税額などを税法通りに正しく申告しているかを確認する一連の流れを指します。
税務調査の主な目的は、税金の適正かつ公平な徴収であり、第三者の確認によって正しい申告と国の税収を確保しているのです。
万が一税務調査で申告内容に間違いや不正があると判断された場合は、適切な納税額への修正が指示または指導され、内容に応じてペナルティなどが課されます。
税務調査は拒否できる?
税務調査には、強制調査と任意調査の2種類の調査がありますが、任意調査といっても納税者が拒否できるものではありません。
正当な理由なく税務調査を拒否すれば罰則の対象となり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課される可能性があるので注意が必要です。
とはいえ、調査官の言うことを全て聞く必要はなく、意図的に不正をしているのでなければ過度に恐れず、主張すべき点は主張するようにしましょう。
税務調査はどこが行うのか
税務調査を行うのは基本的に、管轄する税務署によって行われます。
そのため、税務調査で調査に訪れる調査員は基本的に税務署の職員です。
税務署は全国に524ヵ所に設置されており、管轄する税務署は、会社の所在地(登記場所)で決まっており、国税の申告書を提出する税務署と同じになります。
会社の規模によっては特官部門が担当になる
会社の規模によって、税務調査の管轄が変わるケースもあるのです。
売上金額が大きいなど、ある一定の基準を超えると、税務署の中でも特別国税調査官、いわゆる「特官(とっかん)」が税務調査の担当になります。
特官管轄になる基準は税務署ごとにことなるため、一概には言えませんが、比較的規模の大きい会社は通常よりも深い税務調査が必要となるため、能力が高いとされる特官が調査するという仕組みになっているのです。
国税局が税務調査を行うこともある
税務調査は必ずしも税務署が管轄するわけではなく、資本金が1億円以上の法人については、原則として管轄が国税局となります。(沖縄国税事務所の管轄区域は資本金5,000万円以上)
一般的に、税務署よりも国税局の税務調査の方が厳しいとされており、具体的には以下の傾向があります。
- 調査日数が長い
- 否認項目が細かい・譲らない
- 税務署より更正を安易に行ってくる
このように、信用力を得るために資本金額を高く設定するケースもありますが、税務調査を国税局が管轄となると、レベルの高い厳格な調査となりやすいため、覚悟が必要であり、様々な面を考慮して資本金額を設定する必要があるのです。
会社を移転したら税務調査から逃れられる?
法人が本社を移転したり、個人事業主が引越しするなどして管轄税務署が変わったら、税務調査はなくなるのか気になる方もいるでしょう。
そもそも、会社がこれまでの管轄から離れた場所に移転した場合、税務調査を受ける管轄税務署はどうなるのでしょうか。
ここでは、会社を移転した場合の管轄税務署について、そして管轄税務署が変わった場合の税務調査について説明していきます。
以前は引越しにより税務調査を行う管轄税務署が変わっていた
基本的に税務署は地域ごとにブロック分けされており、以前の法令では税務調査の管轄は、税務調査時の本店所在地と定められていました。
そのため、申告書を提出した後に会社を移転し、その後税務調査になるケースでは、同じ管轄内で引越しや会社移転が行われた場合は同じ税務署の調査官が携わり、管轄外に移転や引越しをした場合は、新しく管轄になった税務署が税務調査を行っていたのです。
これでは、税務調査に関して引越し前と後で十分な引き継ぎが行われない可能性もあるため、税務調査逃れのために移転や引越しを繰り返す悪質な行為が行われることもありました。
実際に税務調査逃れのために悪用されたケース
実際にこの法令を悪用し、税務調査を受けた会社が、意図的に会社の所在地を移転するケースも多くありました。
原則として納税地となる国税局や税務署の職員だけが質問検査権を使うことができていたため、それを悪用した調査逃れで、納税地が変わったことで税務調査もなくなるという事例もあったのです。
現在は管轄税務署が変わっても税務調査はなくならない
前述したような税務調査逃れのための引越しや移転は、令和3年7月1日以降の国税通則法(第74条の2)という税法の改正により通用しなくなりました。
法人税等についての調査通知があった後にその納税地に異動があった場合、異動前の税務署長が必要であると認めるときは、旧納税地の所轄税務署の職員は、その異動後の納税地の所轄税務署の職員に代わり、その法人税等に関する調査に係る納税義務者等に対し、質問検査権の行使をすることができる
改正後の税務調査に関する法令は、引越し前に管轄であった税務署が、引越し後の地域で管轄外となっても、引き続き税務調査が行えるというものです。
これは、税務調査逃れのために引越しや移転を繰り返す個人・法人を封じる目的で改正されたとされています。
そのため、引越しによって税務調査がなくなるわけではないので必ず正しく申告するようにしましょう。
税務調査の主な流れ
税務調査は必ずしも疑わしい会社にだけ入るわけではないため、過度に恐れる必要はなく、税務調査の流れを把握しておけば適切な準備をしておけますし、当日も落ち着いて対応できるはずです。
個人・法人に入る税務調査の主な流れは以下の通りです。
- 税務署からの事前通知
- 調査実施日の日程調整
- 必要な書類を揃える
- 税務調査当日
- 税務署の指摘に回答する
- 税務調査結果の連絡
万が一税務調査の対象となった場合に備えて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 税務署からの事前通知
国税通則法においては、税務調査の対象となる納税者に対して、事前通知を行うように定められています。
事前通知によって税務調査に支障をきたす恐れがあるケースを除き、はじめに税務署から調査対象となる個人・法人に対し、電話や書面にて税務調査を行う旨の連絡が入り、調査内容についてもあらかじめ伝えられるのが一般的です。
また、顧問弁護士税理士がいる場合は税理士に対しても同様の通知が行われます。
② 調査実施日の日程調整
事前通知にて調査内容や対象となる科目、帳簿書類とともに税務調査をはじめる日時についても知らされ、税務署側との日程調整を行います。
税務調査自体は拒否できませんが、病気やケガなどのやむを得ない事情がある場合には日程変更が可能です。
また、顧問税理士に税務調査に立ち会ってもらう場合は、税理士の予定を確認したうえで日程を調整しましょう。
③必要な書類を揃える
税務調査が行われる前にも、調査に必要な書類を不備のないように準備しておきます。
多くのケースでは過去3年分の税務申告について調査が行われますが、5年分の調査が行われる場合もあります。
税務調査で提示や提出を求められるものは主に以下の通りです。
- 申告書類
- 帳簿類
- 請求書や領収証など
- 源泉徴収票など給与に関する書類
揃えた書類については事前に顧問弁護士に漏れや不備がないか確認しておくと安心できます。
すぐに取り出せるよう丁寧にファイリングしておくのがおすすめです。
④税務調査当日
税務調査当日は、担当の税務調査官がオフィスや店舗などを訪れ、1〜3日ほどにわたって調査が行われます。
顧問弁護士がいる場合は一緒に税務調査に立ち会ってもらうのが一般的です。
基本的には帳簿類の確認などのほかにヒアリングが行われますが、雑談のようなかたちで趣味やプライベートな質問をされることもあります。
しかし、このような関係のない会話も含め、全て税務調査官の意図があって聞かれる場合が多いため、回答には十分注意しなければなりません。
⑤税務署の指摘に回答する
税務調査官の訪問が終わると、当日の調査を踏まえて税務署から指摘や質問があるため、それに対する回答をしたり資料を準備したりします。
顧問弁護士がいる場合は基本的に税理士が交渉するため、それほど心配いりません。
⑥税務調査結果の連絡
税務調査からおよそ1ヶ月程度で調査結果が通達され、基本的に、以下の3パターンがあります。
- 申告是認
- 修正申告
- 更正
申告是認というのは、申告内容に誤りや不審な点がなく、正しく納税されていることを証明できた場合の結果で、そこで調査が終了します。
しかし、申告内容に誤りがあった場合は「修正申告」を求められ、税務署の指摘に納得できず、修正申告を出さない場合は、「更正」といって税務署が各税法の規定を根拠に行なう課税処分が行われます。
税務調査は対策すれば怖くない!調査をスムーズに進めるための注意点
税務調査によって加算税などのペナルティが課されることもあるため、調査が入るのを恐れている人も多いかと思います。
最後に、税務調査をスムーズに進めるために注意しておきたいポイントについて説明していきますので、対策をとっておきましょう。
適切な対応を心がける
税務調査で調査官から受けた質問に対し、誠実に、かつ正直に事実を答えることが大切です。
調査官に委縮してしまい、受け答えが曖昧になったり、適当に返答していると、調査官に不信感を与える恐れがあります。
過剰にへりくだった対応をしたり、もてなしたりする必要はありませんが、過度に恐れず、社会人として適切な対応をするように心がけましょう。
また、税務調査で質問されたことはその場ですぐ答える必要はないため、わからない場合は曖昧な返答をせず、後日回答すると伝えるのが有効です。
受け答えは一貫性を重視する
税務調査官からの質問は多岐に渡りますが、質問によって受け答えをころころ変えてしまうと辻褄が合わなくなり、疑われる原因となります。
そのため、質問に対しては一貫性を意識しながら疑われないような受け答えをするようにしましょう。
その点、税理士に依頼すれば、これまでの経験を踏まえながらうまく対応してもらえるため、顧問弁護士との連携をとることも重要です。
誤りを発見した場合は税務調査前に修正申告をする
税務調査前に帳簿等の確認をしていると、申告内容の誤りを見つける場合もあるでしょう。
このような場合は、税務調査が行われる前に修正申告をするのが望ましいです。
なぜなら、税務調査によって税務署から指摘を受けてから修正すると、自主的に修正するよりもペナルティが重くなってしまうからです。
万が一、修正申告が税務調査までに間に合わない場合は、調査日程の延期を申し出るという方法もあります。
顧問税理士に依頼する
税務調査に不安を抱えている場合は顧問税理士をつけるのがおすすめです。
税の専門家である税理士を活用すれば、申告内容のミスや漏れが少ないと判断されやすく、税務調査の対象となりにくくなり、たとえ税務調査が入ることになってもサポートを受けられるほか、節税対策や資金繰りの相談など、事業を行ううえで多くのメリットがあります。
そのため、税理士を活用していない個人や法人は検討してみると良いでしょう。
引越ししても税務調査逃れはできない
改正後の税務調査に関する法令によると、引越し前に管轄であった税務署が、引越し後の地域で管轄外となったとしても、引き続き税務調査が行えるため、会社を移転したからといって税務調査から逃れることは不可能です。
そのため、税務調査に来てほしくないのであれば、正確な申告・納税を心がけ、必要があれば税理士に依頼するなどの対策をとっておくようにしましょう。
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