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社長の経費使い込みは罪になる?疑われる場合の流れや発覚した際の対応も紹介
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
社長の経費使い込みは、たとえ少額であっても、経費の不正使用は犯罪行為の責任が問われます。
本記事では「社長の経費使い込み」について紹介します。
他にも「社長の経費使い込みが疑われる場合の流れ」や「社長の経費使い込みが発覚した際の対応」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、社長の経費使い込みについて理解を深めてみてください。
目次
社長の経費使い込みは罪になる?
社長の経費使い込みは罪になります。
会社の資金は、社長にとって自分のものでなく「他人の財産」とみなされるので、私的な目的に利用した場合、これは法律上の横領罪に該当する可能性があります。
業務上横領罪に該当してしまうと、最大で10年の懲役刑が科される可能性があります。
さらに、社長が会社の資産を不正に取得した場合、会社に損失が生じるため、その損害に対する賠償責任も追及されることがあります。
経費使い込みによって受ける処罰の種類
経費使い込みによって受ける処罰の種類については、以下の3つが挙げられます。
- 詐欺罪
- 業務上横領罪
- 私文書偽造等罪
それぞれの項目について解説していきます。
詐欺罪
社長が経費を不正に利用し、意図的に会社を欺く行為がある場合、刑法第246条に定められた「詐欺罪」に問われる可能性があります。
詐欺罪は、「嘘をついて他人から財産をだまし取った者」に適用されます。
例えば、交通費や接待費を虚偽の内容で申請したり、架空の請求を行うような行為は、会社の経理担当者に虚偽の情報を伝え、金銭を不正に得ようとすることに該当します。
そのため、これらの行為は詐欺罪が成立する可能性が高いです。
また、実際に金銭を受け取る前の段階でも、未遂として処罰対象となるので、会社が不正を発見した時点で処罰されるケースもあります。
業務上横領罪
経費の不正利用が問題となる場合、業務上横領罪にも当てはまります。
刑法第253条では、「業務上管理している他人の財産を不正に使用した者」に対して罰則が適用されると規定されています。
例えば、会社の経費として預かっている資金を私的な目的で使用した場合、業務上横領罪に該当する可能性があります。
この罪に問われた場合、法定刑として「10年以下の懲役」が科され、通常の横領罪よりも厳しい罰則が設けられています。
私文書偽造等罪
架空の領収書を作成したり、正式な領収書の金額を書き換えたりする行為は、刑法第159条に定められた「私文書偽造等罪」に該当する可能性があります。
私文書偽造等罪に対する罰則は、懲役3か月以上5年以下と規定されています。
一般的に、領収書を偽造・改ざんした時点で、この罪は成立します。
しかし、これが発覚するのは、偽造・改ざんされた領収書を用いて、実際に誰かを欺く行為に及んだ場合がほとんどです。
そのため、領収書を偽造・改ざんする行為は、「有印私文書偽造罪」に加え、それを利用して詐欺を行った場合には「同行使罪」や「詐欺罪」に問われる可能性もあります。
社長の経費使い込みが疑われる場合の流れ
経理担当者や他の従業員に限らず、社長であっても、横領行為があれば刑事告訴や民事訴訟により損害賠償を求めることが可能です。
責任を追及したり法的措置を取る際には、横領の事実を裏付ける十分な証拠、被害額の詳細な確認が不可欠です。
具体的に、社長の経費使い込みが疑われる場合の流れについては、以下の2つが挙げられます。
- 経費使い込みの事実関係を調べる
- 経費使い込みした社長本人に確認する
それぞれの流れについて解説していきます。
経費使い込みの事実関係を調べる
社長による横領の疑いが浮上した場合、その事実の有無や被害額を確認する必要があります。
具体的には、以下のような調査が実施されます。
- 領収書や会計記録の照合
- 防犯カメラの映像確認
- 取引先や従業員へのヒアリング
- コンピュータ内のデータやメールの履歴の調査
特に、パソコン内のデータやメールの履歴に関しては、プライバシーの問題やデータの消去といった障害があり、個人での調査は困難です。
そのため、法的に正当な手続きを経て調査をおこなう専門家に依頼することが推奨されます。
さらに、個人で行う調査は、客観性や正確性が欠ける可能性があるので、データに基づく証拠の収集は専門の調査機関に依頼するのが望ましいといえます。
経費使い込みした社長本人に確認する
事実確認が進み、証拠がある程度揃った段階で、横領の疑いがある社長に対して事情聴取をおこないます。
以下のように、あらかじめ質問事項を整理し、聴取の目的を明確にすることが大切です。
- 横領の事実について認めるかどうか
- 横領の具体的な内容、方法、資金の使用目的
- 返済の意思の有無や、具体的な返済方法について
- 共犯者の存在や、被害が社内以外にも及んでいるかどうか
事情聴取は、少なくとも聴取役と記録役の2人以上でおこない、対象者の発言は詳細に記録するようにしましょう。
しかし、証拠が不十分な状態で聴取を行うと、横領を否定されるだけでなく、共犯者による証拠隠滅のリスクも高くなってしまうので、証拠をしっかりと収集しておくことが重要です。
社長の経費使い込みが発覚した際の対応
社長の経費の使い込みが発覚した際の対応については、以下の2つが挙げられます。
- 刑事告訴
- 損害賠償請求
それぞれの対応について解説していきます。
刑事告訴
被害額が大きい場合には、刑事告訴を検討し、法的手段で加害者の責任を追及することが可能です。
刑事告訴とは、被害者が捜査機関に対して具体的な事実を報告し、加害者に法的な制裁を求める手続きを指します。
告訴状を警察に提出することで捜査が開始されますが、その際には横領の事実を裏付ける確固たる証拠が必要になります。
しかし、社内での調査は中立性が欠けていると見なされる可能性があり、告訴が受理されないリスクがあります。
そのため、専門の調査会社に依頼することで、より客観的で信頼性の高い証拠を集めることができます。
調査会社は、裁判においても有効とされる書類を作成し、専門的な知識を駆使して証拠の信憑性を高める役割を持っているので、少しでも不安がある方は調査会社に依頼することをおすすめします。
損害賠償請求
社長が業務上の不正行為として横領を行った場合、民事訴訟として損害賠償を請求することが可能です。
しかし、業務上の横領は他の横領行為に比べ、被害額が大きくなることが多く、損害回収が困難なケースが見られます。
一般的には退職金の支払い停止や、退職後に再就職した先で得ている収入を差し押さえるなどの手段を用いて回収が試みられます。
また、損害賠償を求める訴訟を行う際には、横領の事実を立証するための証拠が不可欠です。
関係者の証言や関連データの履歴など、証拠となり得るものは全て適切に保管して証拠を確保することが必要です。
社長の経費使い込みの事例
社長の経費使い込みの事例については、以下の4つが挙げられます。
- 接待交際費の不正計上
- 架空請求
- 交通費の不正受給
- 出張費の不正受給
それぞれの事例について解説していきます。
接待交際費の不正計上
会計処理において、本来は接待交際費として認められない飲食代などを取引先との接待で発生した費用として計上する手法です。
例えば、社員同士のミーティングを接待費用として処理するケースが一般的です。
また、飲食店側との信頼関係を利用し、日付や金額、宛名が未記入の領収書を受け取り、それを不正に経費として申告するケースもあります。
さらに、顧客や取引先との接待にかかった費用を、実際よりも多く請求する事例も少なくありません。
特に接待での飲食代金は、企業側が具体的な注文内容や料理の詳細を正確に把握しにくいことから、請求額が実際の支出よりも膨らむことが頻繁に起こりやすいといえます。
架空請求
実際には支出していないにもかかわらず、架空の領収書などを提出してお金を受け取る手法です。
領収書を偽造する手段のほかにも、クレジットカードで一度決済を行い、その利用明細をもとに経費を申請したあと、すぐに決済を取り消すといった悪質な手口もあります。
また、実際には出張していないのに出張費を申請するような場合も該当します。
交通費の不正受給
経費の不正計上において、特に典型的な例として挙げられるのが交通費に関する不正受給です。
例えば、バス通勤の申請をしておきながら、実際には電車や徒歩などでより安価な手段で通勤していたり、私用で利用したタクシー代を業務上の交通費として偽って申請するケースがあります。
このように、交通費の不正受給は、発覚しにくいものの、企業にとって大きな損失をもたらす行為です。
出張費の不正受給
出張費に関しても、不正が起こりやすいシチュエーションといえます。
例えば、往復の交通費だけでなく、宿泊が伴う場合にはホテル代においても不正が発生することがあります。
よくあるケースとして「架空出張」というものがあり、実際には出張していないにもかかわらず、出張したことにして経費を申請する手口です。
出張にかかる費用は通常高額になることが多いため、企業が詳細な監視を行うのが難しい状況が、不正行為を助長しやすい環境を生み出しています。
さらに悪質な例として、取引先のホテルや飲食店と共謀し、虚偽の領収書を作成してもらうケースがあります。
また、自分のクレジットカードで決済後、領収書を会社に提出した後で、そのクレジット決済を取り消し、返金を受けるといった手法も見受けられます。
これにより、企業にとって出張関連の不正利用は重大なリスクとなります。
社長の経費使い込みを防ぐための対策
社長の経費使い込みを防ぐための対策については、以下の3つが挙げられます。
- 税理士と連携して経理チェックを行う
- 経費と役員報酬の区分けを徹底する
- 社内の経費ルールを明確にする
それぞれの対策について解説していきます。
税理士と連携して経理チェックを行う
社長の経費使い込みを防ぐには、税理士や会計事務所と協力し、経理をしっかりと経理チェックすることが効果的です。
会計のプロフェッショナルがチェックすることで、不適切な経費の処理を早期に発見することが可能です。
また、税理士からの助言を受けることによって、社長自身も経費管理の意識を高めることが期待できます。
このように、外部の専門家と協力しながら、経費の健全な運用を目指すことが重要といえます。
経費と役員報酬の区分けを徹底する
社長の経費使い込みを防ぐためには、役員報酬と経費の厳格な区別が重要です。
社長が個人的に使う支出については、役員報酬の中から賄うことが求められます。
また、会社の経費と社長個人の支払いをしっかりと分けて管理することが不可欠です。
このように役員報酬と経費を明確に区分することで、社長の金銭感覚がより一層引き締まることが期待されます。
このように、経費と役員報酬の区分けを徹底することで、私的な支出と会社の経費を混同することを避け、適切で健全な経費管理の基盤を築くことが可能になります。
社内の経費ルールを明確にする
社長による経費の過剰な使用を防ぐためには、社内の経費ルールを明確にすることが重要です。
社長が個人的に使う支出については、役員報酬の中から賄うことが求められます。
会社の経費と社長個人の支払いをしっかりと分けて管理することが不可欠です。
このように社内の経費ルールを明確にすることで、社長の金銭感覚がより一層引き締まることが期待できます。
経費使い込みによる会社への影響
社長の経費使い込みが発覚すると、企業は単なる金銭的な損失だけではなく、重大な影響を受けることになります。
まず第一に、管理の甘さが露呈し、企業の信用が大きく損なわれてしまい、、取引先や顧客が離れてしまう可能性があり、売上の大幅な減少につながるかもしれません。
さらに、税務当局からの調査を受けるリスクも高まり、最悪の場合、脱税と見なされて多額の追徴課税を受けることも考えられます。
特に、過大な経費を計上していた場合は、その分だけ法人税の負担が軽減されてしまっているので、深刻なペナルティが科される可能性が増します。
このように、不正行為が続けば、最終的には企業が経営不振に陥り、倒産に至るケースも考えられます。
社長の経費使い込みは犯罪になる!
今回は、社長の経費使い込みは罪になるのかについて紹介しました。
会社の資金は、社長にとって自分のものでなく「他人の財産」とみなされるので、私的な目的に利用した場合、社長であっても法律上の横領罪に該当する可能性があります。
また、社長が会社の資産を不正に取得した場合、会社に損失が生じるため、その損害に対する賠償責任も追及されることがあります。
今回の記事を参考にして、経費使い込みを未然に防ぐようにしましょう。
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