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一人親方に支払う報酬が外注費として認められないケースがあるって本当?
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
建設業を営んでいる場合、一人親方に仕事を依頼するケースも少なくないでしょう。一人親方に支払う報酬は外注費として処理をすることが多くなりますが、税務調査が入ると、外注費ではなく、給与としての処理が必要だと指摘される場合があります。そのため、一人親方に支払う報酬は、外注費として扱うべきなのか、給与として扱わなければならないのか悩んでしまうこともあるでしょう。
そこで今回は、一人親方の報酬の取り扱い方や税務調査で外注費が否認された場合のリスクについてご説明します。
外注費と一人親方の関係
一人親方に支払う外注費がなぜ問題となるケースが多いのか、外注費と一人親方の関係から確認していきましょう。
外注費とは
外注費とは、社内ではなく外部の法人や個人と請負契約を結んで業務を委託した場合に発生した費用のことです。一人親方は、個人事業主として従業員を雇用せず、自分一人または家族などで、大工やとび職などに従事し、事業を営む人を指します。
外注費は、会社の従業員ではなく、外部の業者に支払う報酬となるため、一人親方に支払う報酬は外注費として扱うことが多くなります。また、外注費は請負契約の対価として支払われるものであり、労働力の提供に対して支払われるものではありません。
しかしながら、外注費は給与との区別が難しい部分があるため、一人親方へ支払った報酬を外注費として扱うと、税務調査で問題になるケースがあるのです。
一人親方の外注費が問題になる理由
従業員に給与を支払う場合、消費税が課税されることはありません。一方、一人親方に支払う外注費は消費税が課税されるため、外注費にかかった仕入消費税は消費税の納税時に控除することができます。また、従業員の場合は源泉徴収も必要であり、社会保険料の負担も必要になります。
そのため、一人親方に仕事を発注したときには外注費として扱った方が、建設業者のメリットは大きくなり、本来は給与として扱わなければならない費用を外注費として処理するケースがあるのです。税務調査で一人親方の外注費について指摘を受けやすい理由はここにあります。税務署では雇用関係に近い形で仕事をしている一人親方に対し、外注費として報酬を支払い、不正に納税額を低く抑えているのではないかと考えるのです。
外注費と給与の判断のポイント
一人親方に対して支払われる報酬が外注費となるか、給与となるかについては、議論になるケースが多く、国税庁では平成21年に「大工、左官、とび職等の受ける報酬にかかる所得税の取り扱いについて」という法令解釈通達を出しています。この通達を基に考えると一人親方に支払う報酬が外注費と給与のいずれに該当するかの判断がしやすくなります。
他人が代替して業務の遂行や提供ができるか
一人親方に依頼している作業が他の人でもできる業務の場合は、外注費の性格が強くなると判断されます。反対に、特定の一人親方でなければできない作業であり、他の人では代替できない作業であると認められる場合は、給与としての性格が強くなると考えられるでしょう。
報酬の支払者から時間的な拘束を受けるか
報酬の支払者、つまり建設業者から指定された作業時間の中で作業をしなければならないなど、一人親方が時間的拘束を受けている場合は、給与としての性格が強くなると捉えられます。また、支払われる報酬が時間単位や日単位で計算される場合も、給与としてみなされる可能性が高くなるでしょう。
請負契約の場合は、労働力ではなく、成果物を提供することで契約が履行され、報酬が支払われることになります。そのため、外注費として支払われるものであれば、労働時間の拘束を受けることはなく、また、報酬は労働時間によって左右されないものとなるはずです。
報酬の支払者から作業についての指揮監督を受けるか
一人親方が建設業者から指揮監督を受け、作業を行っている場合は給与としての性格が強くなります。反対に、建設業者から指揮を受けることなく、自立して作業を行うような場合は、外注費としての性格が強くなると考えられています。
引き渡しが完了していない完成品が不可抗力のため滅失した場合でも報酬を得られるか
引き渡しが終わっていない完成物が地震や台風などによって被害を受け、完成品として引き渡せなくなってしまった場合、報酬を受け取れるかどうかも給与か外注費かの判断に用いられます。独立して事業を営んでいる場合は、成果物を提出できなければ、対価としての報酬を得られません。したがって、引き渡しが済んでいない場合に報酬は発生しない場合は外注費として判断できるでしょう。一方、完成品の引き渡しができなくても、作業をした分としての報酬が支払われるようなケースは給与として捉えられることが多くなります。
材料または用具等を報酬の支払者から供与されているか
工事の際に使用する材料や用具を一人親方本人が準備している場合は、外注費としての性格が強くなります。反対に、建設業者から材料や用具を支給され、作業を行うような場合は給与としてみなされる可能性が高くなります。
一人親方への外注費が給与と認定された場合のリスク
一人親方に支払った外注費が税務調査時に、税務署によって給与に該当すると判断された場合、次のような問題が生じます。
源泉所得税の納付が求められる
外注費の場合、源泉所得税の徴収義務はありません。しかし、外注費が給与として認定されると、源泉所得税の徴収漏れとして扱われてしまいます。源泉所得税の徴収漏れが指摘されると、納税していなかった分の所得税の納税とペナルティとしての不納付加算税や延滞税などの納付も求められます。
長年に渡り、外注費として処理してきた一人親方への報酬が給与であると認定されれば、さかのぼっての納付も必要になるため、追徴課税の額は大きくなるでしょう。
消費税の仕入額控除が否認される
外注費として支払っていた費用を給与として扱わなければならなくなった場合、外注費分の消費税に対して行った仕入額控除も全て否認されることになります。そのため、否認された消費税の分は全額、消費税として納税しなければなりません。
一人親方への外注費を否認されないための対策
一人親方へ支払っていた報酬が外注費として認められないと、所得税や消費税、延滞税等の支払いが必要になり、納税額が大きく増加してしまいます。一人親方に仕事を依頼している場合は、税務調査で外注費についての指摘を受けることがないよう、事前に対策を講じることが大切です。
請負契約書を必ず作成し、請求書を保管する
一人親方に作業を外注する場合は必ず請負契約書を作成し、発注する業務の内容や報酬の支払い条件などについても明確に記載しておきましょう。一人親方から請求書をもらうことも忘れてはいけません。また、請求書は必ず保管しておきましょう。
作業時間の管理はしない
請負契約では、発注者が時間的な拘束を行うことはありません。作業時間を指定したり、タイムカードで管理したりといった行為が認められれば、給与の性格が強いと判断されます。
一人親方にも請負契約である旨を通知する
一人親方は、個人事業主である以上、自分で確定申告を行わなければなりません。しかし、一人親方の中には確定申告を正しく行っていないケースもあります。万が一、外注費として支払った報酬を給与所得として申告していた場合は、一人親方は、発注者と雇用関係にあると認識していたと捉えられてしまいます。一人親方にも確定申告の義務があり、受け取っている報酬は給与所得ではないことを通知しておくことも大切です。
まとめ
一人親方に外注費として報酬を支払っている場合、税務調査で給与と判定されるケースがあります。外注費が否認され、給与と認定された場合は、源泉所得税の徴収漏れが指摘され、消費税の仕入額控除が否認されることになります。数年分さかのぼって指摘されることになれば、納税額はかなり大きな額に上るケースもあるでしょう。
一人親方に仕事を発注する場合は、請負契約書を発行し、請求書を保管しておくなど、雇用関係にはないことを証明できるような体制を整えておくことが大切です。
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