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贈与税の無申告はなぜバレる?申告漏れで課されるペナルティとは
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
財産を無償で与えた際に発生する贈与税ですが、
「少額なら申告しなくても大丈夫」「現金手渡しだから無申告でもバレない」
このように考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、税務署はあらゆる情報を有しているため、贈与税の無申告や申告漏れは高い確率でバレてしまい、重いペナルティとなる恐れがあるので注意が必要です。
本記事では、贈与税の無申告がバレる理由と申告漏れが発覚した場合のペナルティについて解説します。
正しい申告や修正申告が早いほど加算税は少なく済み、ペナルティが課されない可能性もありますので、ぜひこの記事を参考に贈与税についての理解を深め、正しく納税・申告していただけたらと思います。
目次
贈与税とは
そもそも贈与税とは、個人からの財産の贈与に対して課される税金です。
財産を贈与する側を「贈与者」、財産を受け取る側を「受贈者」と呼び、贈与税は受贈者が支払うことになります。
1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の課税価格が110万円を超えた場合に、超えた部分に対して課税されるため、受贈額が110万円を超えたら申告が必要です。
相続税との違い
贈与税と混同されやすい言葉に「相続税」がありますが、財産を他の人に譲るという意味では同じですが、発生するタイミングや対象者、税額などに違いがあります。
相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産がその遺族(相続人)に引き継がれることで発生するのに対し、贈与税は、生存する人(贈与者)が別の人(受贈者)に無償で財産を贈与することで発生し、贈与税には血縁関係の有無は問題になりません。
また、税額は贈与税のほうが相続税よりも高い傾向にあります。
贈与税の申告期間
贈与税の支払い義務があると分かったら、受贈者が住む地域を管轄している税務署に申告書を提出する必要があります。
申告は基本的に、贈与があった年の翌年2月1日から3月15日までの期間に行うことになっています。
申告期間を過ぎてしまうと、後述するペナルティにより課税される恐れがあるため、必ず期限を守って申告しましょう。
贈与税の時効
贈与税には時効があり、原則として6年、そして、贈与を隠すなどを目的として故意に申告しなかった場合には7年に延長されます。
しかし、税務署としては申告漏れとなるのは避けたいため、様々な手段で贈与の実態を調査し、タイミングをみて指摘します。
そのため、スムーズに贈与税の時効が成立するのは難しいと考えておいた方が良いでしょう。
贈与税が課される対象
一般的に、年間で基礎控除額である110万円を超える贈与を受けた場合に贈与税が課されますが、贈与の目的や財産の性質などによっては、贈与税がかからないものもあるのです。
ここでは、贈与税の対象となるもの、ならないものについて具体的にご紹介します。
贈与税の対象となるもの
贈与税の課税対象となる財産は、現金とは限りません。
以下の資産を贈与した場合にも贈与税が課されることがあります。
- 生活費や教育費とは別の一定額額以上の現金や預金
- 株式などの有価証券
- 自動車
- 家財
- 土地・建物などの不動産
また、極端に低い価額での財産の譲渡や借金の肩代わり、無理しでの金銭の借入など、直接的に贈与してはいなくても、贈与とみなされる財産もあるので、注意が必要です。
贈与税の対象とならないもの
以下のものは基本的に、受け取ったとしても贈与税がかかりません。
- 日常の生活費
- 学校や塾などに支払う教育費
- 結婚式の費用
- 出産費用
- お祝い金
- 香典
お祝い金や香典などは、常識の範囲内であれば課税されないとされています。
また、夫婦間や家族間には扶養義務があることから、生活費や教育費には贈与税がかかりません。
贈与税の課税方法
贈与税の課税方式には、贈与の方法によって以下の2つがあります。
- 暦年課税
- 相続時精算課税
それぞれの課税方法の仕組みや税率、税額などについて、詳しく見ていきましょう。
暦年課税
暦年課税 は、1月1日から12月31日までの1年間に発生した贈与に対する課税のことで、受け取った財産の合計が基礎控除額の110万円を超えた場合に課税されます。
暦年課税の税率は、贈与者と受贈者の関係性によって変わり、18歳以上の人が直系尊属の贈与者から受けた贈与は「特例贈与」となり、それ以外の場合は「一般贈与」となります。
【特例贈与の税率】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
出典:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
【一般贈与の税率】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
出典:国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
相続時精算課税の税率
相続時精算課税とは、60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の推定相続人である子供や孫などへの贈与した場合に選択できる課税です。
贈与者1人あたり最大2,500万円の特別控除額が設けられており、2,500万円を超えた部分は一律20%が課税される仕組みとなっています。
ただし、相続時精算課税を選択した場合は、暦年課税に戻すことができない点に注意する必要があります。
贈与税の無申告はなぜバレる?
「相続税を申告しなくてもバレずに済むのではないか」このよう考える方もいるでしょうが、相続税の無申告は必ず発覚すると言っても過言ではありません。
これは、税務署の高い捜査力に加え、国税総合管理(KSK)システムにより、全国の国税庁や税務署を結び、納税者の過去の情報を一元的に管理しているため、相続財産に関する情報を知ることができるためです。
ここでは、相続税の無申告が発覚するケースについて詳しく説明していきます。
相続が発生した場合
誰かが亡くなり相続が発生した際に、遺族は市区町村の役場に死亡届を提出しますが、死亡届が提出されると、税務署にもその情報が共有されます。
税務署では、死亡を把握した後にKSKシステムによって亡くなった人の財産状況を調べられるため、多額の財産があるにもかかわらず、相続税の申告がない場合にさらに詳しく調査されるのです。
その結果、相続税の申告漏れが判断され、相続人に連絡が来るケースも多くあります。
不動産を購入した場合
土地や建物などの不動産を相続した場合、法務局にて被相続人から相続人に名義変更(相続登記)をします。
税務署では様々な方法で亡くなった人の財産を調査しますが、特に不動産に関しては、税務署も厳しく調査しており、名義変更を行った際に、その登記情報が全て税務署に流れているため、申告漏れがあるとすぐに発覚してしまうでしょう。
さらに、相続税がかかる可能性のある不動産の相続登記がされていると、被相続人の他の財産も調査されるケースもあり、そこから相続税の無申告がバレる恐れもあります。
高額な買い物をした場合
現金で贈与を行う場合でも、銀行口座からお金を引き出すケースが多いため、税務署は亡くなった人の銀行の出金記録から多額なものを調査します。
税務署は個人の収入についても把握できるため、多額の入金や出金があれば贈与ではないかと疑うでしょう。
収入に見合わない買い物をしていると、銀行の入出金でバレる恐れがあるだけでなく、第三者からの密告やSNSへの投稿などからも情報を得て判明する場合もあります。
生命保険金を受け取った場合
生命保険をかけていた人が亡くなった場合、相続人が受取人となってお金が支払われることがあります。
生命保険会社から保険金が支払われると、受取人に対して会社から支払調書が送られますが、その際、税務署にもこの支払調書が送られるため、生命保険金を受け取った事実を税務署が把握しているのです。
保険金を受け取ったにも関わらず相続税を申告していなければ、税務署が申告の必要があるか調査を行い、納税義務があるのに申告を怠っていると、指摘されてしまいます。
贈与税の申告漏れが発覚した場合のペナルティ
先述した通り、税金の無申告は、高い確率で税務署が発見します。
贈与税の申告や納税を適切に行わなかった場合、以下のペナルティが与えられる可能性があるので、注意しましょう。
- 延滞税
- 無申告加算税
- 過少申告加算税
- 重加算税
それぞれ詳しく説明していきます。
延滞税
延滞税とは、期限までに税金が納付されなかった場合に、法定期限の翌日から実際に税金を納付する日までの日数に応じて、加算される税金のことをいいます。
延滞税が発生する具体的なケースは以下のとおりです。
- 期限までに税金を納付していないとき
- 期限後申告、修正申告をしたとき
- 税務調査により、追加で税金の支払いが必要になったとき
延滞税は、納期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて課税されますが、直近の延滞税の税率として、令和5年1月1日~令和6年12月31日では以下のように定められています。
- 納期限の翌日から2か月を経過する日まで:年2.4%
- 納期限の翌日から2か月を経過した日以後:年8.7%
無申告加算税
無申告加算税は、本来の確定申告の期間である2月16日から3月15日の間に申告や納税を行わなかった場合に課される加算税です。
無申告加算税の税率は、納付しなければならない税額によって異なります。
本来の納税額が50万円までの場合は15%、300万円までは20%、300万円を超える場合は30%です。
ただし、税務調査前に自ら申告した場合は期限後申告として扱われ、無申告加算税は5%となります。
過少申告加算税
過少申告加算税とは、確定申告を期限内に申告して納税したものの、申告納税額が本来納めるべき税額よりも過少であった場合に課される加算税です。
過少申告加算税の場合は、新たに納税することになった金額の10%に相当する額が加算され、期間内に申告した納税額または50万円のいずれか多い金額を超えている場合は、超過分に対し15%の過少申告加算税が課されます。
なお、自主的に修正申告を行った場合は、過少申告加算税は課税されません。
重加算税
重加算税は、意図的に隠ぺいや仮装などを行った場合に課される加算税で、加算税の中でも最も税率が高く、重いペナルティです。
重加算税の税率は相続税の申告書を提出しているか無申告かによって異なり、過少申告加算税に代えて課される場合は35%、無申告加算税に代えて課される場合は40%です。
故意に事実と異なる申告をしたり、申告漏れをしたりすると、税務署が悪質性があると判断し、最も重いペナルティが課される恐れがあるため注意しましょう。
刑事罰の対象になることもある
贈与税を申告しなかった場合、悪質性が高ければ重加算税では済まない可能性もあります。
その金額に応じて刑事罰も課される恐れがあるのです。
特に、脱税行為を指摘されると、処罰が重くなり、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、またはその両方が課せられる可能性があります。
偽りなく正当に申告を行なっていれば、加算税や刑事罰などのペナルティは発生しないため、自身の贈与を正確に把握する、自信がない場合は税務の専門家である税理士に相談するなど、適切に申告・納税を行う必要があるのです。
贈与税の申告漏れを防ごう
個人が年間110万円を超える現金や預貯金などの財産の贈与を受けると贈与税がかかり、申告が必要となりますが、贈与という認識がない、もしくは、税負担を避けようとして、申告しない人も多いです。
しかし、税務署はあらゆる手段を使って課税につながる情報を収集しているため、贈与税の無申告もバレてしまいます。
贈与税を申告しなかったり、少なく申告していたりすると、加算税や延滞税などの重いペナルティが課され、負担が大きくなってしまうので、申告や納税の重要性を理解し、無償でものを受け取ったらそれが贈与にあたるのか、申告が必要かを見極め、適切に対処していたたげたら幸いです。
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