メニュー
- 税務調査
税務調査で調査官がチェックするポイントと対応策|何をどう準備すべきか
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税務調査の対象になると事前通知があり、日程をあらかじめ決めて調査が行われます。
必要な資料や心の準備をする時間がありますが、何をどう準備しておけばいいのかわからないという方が多いでしょう。
税務調査の目的、調査官が何をどうチェックしているのか、というポイントがわかれば、税務調査の対応策が見えてきます。
科目別の税務調査のチェックポイント、対応策などについてお伝えします。
目次
税務調査を行う目的
税務調査とは、事業者が提出した税申告の書類に誤りがないかを確認するための調査です。
事業の規模に関わらず対象になる可能性があり、法人だけでなく個人事業主も調査の対象です。
申告された内容の正確性を確かめますので、売上や所得、経費について確認していきます。
誤りがあれば追徴課税が課されますが、税務調査の結果、特に指摘内容がないという通知を受け取る事業者もあります。
故意に脱税をしていなければ怯える必要はありませんので、堂々と調査に協力できるよう備えておきましょう。
科目別の税務調査のポイント
とはいうものの、税務調査で調査官はどのような内容を重点的にチェックしているのかが気になるという方も多いでしょう。
科目別での税務調査のポイントをご紹介しますので、
「正しく申告できているか」「税務調査で指摘を受けてしまわないか」を確認しておきましょう。
- 売上高
- 仕入れ・外注・買掛金
- 棚卸資産
- 減価償却資産・減価償却
- 人件費・給与等
- 福利厚生費
- 旅費交通費・交際費
- 修繕費
- 消費税
売上高
売上をごまかし、本来の所得額よりも少なく見せかけると税額が少なくなります。
脱税としてはよくある手口であり、税務調査では基本的な確認事項となります。
見積書や納品書、請求書といった売上に関する全ての書類を準備しておきましょう。
「収益計上基準の要件を満たした処理がされているか」「履歴が残りにくい現金でのやり取りは正確に処理されているか」といった点がポイントになります。
仕入れ・外注・買掛金
仕入れや外注費、売上原価に関する処理が適切にされているかという点も、基本的な税務調査のチェックポイントです。
「売上と仕入れの関係が適切か」「架空の外注費がないか」という内容を見られています。
外注費は消費税や源泉徴収税がかからないので、税務調査で必ず確認される項目であると覚えておきましょう。
従業員への給与と外注費との違いは、明確にわかるように処理しておく必要があります。
買掛金が正しいタイミングで処理されているかも、今一度確認しておきましょう。
棚卸資産
棚卸資産は多額になると税金計算への影響が大きい、また社内で容易に計上額を操作できるなどの理由から、税務調査で確認されるポイントです。
「棚卸資産の数量は間違っていないか」「棚卸資産の評価方法の届出書が提出されているか」などを確認しています。
原始記録を整理しておく、評価の基準について明確に説明できるようにする、などの対策をしておくようにしましょう。
減価償却資産・減価償却
事業のために必要な建物や建物附属設備、器具装備といった時の経過等によってその価値が減っていくものを減価償却資産といいます。
減価償却とは、これらの資産を購入した際に一度に計上せずに少しずつ資産価値を減少させて計上していく会計処理です。
「本当に事業のための減価償却資産なのか」「正しい償却方法で計算されているか」などが確認されています。
資産の購入日と資産の使用状況を確認しておく、見積書・領収書等を整理しておくといった準備をしておくといいでしょう。
人件費・給与等
人件費が正しく計上されているかは、「架空の従業員がいないか」「タイムカードや帳簿に矛盾がないか」という点が確認されています。
特に家族が従業員として働いている場合は、実態を詳しく調べられるかもしれません。
日雇いのアルバイトを雇っている場合には、きちんと源泉徴収がされているかもチェックポイントです。
福利厚生費
福利厚生は従業員の生活を向上させ、労働意欲を高めるという目的があります。
福利厚生と認められれば損金として計上できますが、問題は損金として認められるか否かのボーダーラインです。
従業員のための社宅や寮、研修旅行などが福利厚生に該当しますが、特定の者だけが利用するような福利厚生施設は認められません。
福利厚生施設の利用管理簿、福利厚生費勘定の内容を確認し、不正を疑われないようにしましょう。
旅費交通費・交際費
旅費交通費や交際費は、プライベートとの見分けがつきにくいものです。
本当に出張のための旅費であるにも関わらず、カラ出張を指摘されるケースがありますので、実際に経費であると説明できるようにしておかなければいけません。
例えば「新幹線のグリーン車は旅費交通費になるのか」「従業員の食事代は認められるのか」という点がポイントになるでしょう。
業務上必要な旅費なのか、金額は妥当なのかを明確に示せるようにしておきましょう。
修繕費
修繕費とは、事業に必要な建物や機械といった設備を元通りに修繕し、原状回復させるための費用です。
「水増し請求をしていないか」「資本的支出ではないか」という点が確認されています。
資本的支出とは、資産の価値や能力を高めるための費用を指します。
原状復帰をさせたものであれば修繕費となりますが、線引きが難しいものもありますので税務調査では確認されるポイントとなります。
消費税
消費税が正しく申告されているかも、税務調査で必ず確認される項目です。
「課税売上高が適正に算出されているか」が確認されています。
インボイス制度の導入により、個人事業主であっても、課税売上高
1,000万円未満であっても適格請求書発行事業者であれば消費税を納めます。
インボイス制度が始まったのは令和5年(2023年)10月1日と比較的新しい制度のため、税申告の誤りを正すという意味で重点的にチェックされる項目であると覚えておきましょう。
税務調査で見られている内容
税務調査で科目別のポイントを理解しつつ、細かな内容についても確認しておきましょう。
調査官は、書面上のものだけを調査しているわけではありません。
調査の意図を知ると、税務調査でどう振る舞うべきかが見えてきます。
- プライベートな経費計上がないか
- 海外取引の消費税区分
- 事業者の人柄や性格
- 辻褄の合わないものはないか
プライベートな経費計上がないか
経費として認められるのは、事業に関するもののみです。
中にはプライベートな支出を経費として計上する事業者がいて、調査官が目を光らせているもののひとつです。
例えば、「自家用車なのか社用車なのか」「出張なのか私的な旅行なのか」という曖昧な経費を見極めようと調査してきます。
税務調査で質問された時には、事業に関わる支出であると正確に説明できるようにしておきましょう。
海外取引の消費税区分
消費税は国内で消費される商品やサービスに対して課税されるものであり、海外取引の場合は消費税が課されません。
ただし海外から輸入仕入れした商品を国内で販売する際には、消費税が発生します。
輸出と輸入で消費税区分の扱いが異なりますので、正しく処理されているかという点が税務調査のポイントとなります。
事業者の人柄や性格
税務調査は、まずは事業のヒアリングからスタートします。
受け答えの様子から、事業者の人柄や性格といった人間性もチェックされていると覚えておきましょう。
経営者の人間性は税申告の書類では判断できないものですが、
「細やかな人なのか大雑把な人なのか」などという点から、書類の正確性を見極める判断材料のひとつとしているのです。
「会社設立の経緯や経営状況を把握しているか」「部下に高圧的な態度をとっていないか」という点もポイントです。
日常的な世間話から不正がバレるケースもありますので、プライベートな話でも気を抜かないようにしましょう。
辻褄の合わないものはないか
税務調査の調査官は、事業者だけでなく従業員に質問をする場合があります。
「従業員と事業者の主張で食い違っている点はないか」「辻褄が合わない書類がないか」という点も調査ポイントです。
「従業員に口裏合わせを指示している」という対応は、好ましいものではありません。
日頃からクリーンな会計処理を行うようにしておきましょう。
税務調査の対象になった時の対策
税務調査の通知がきて、いざ自身が税務調査の対象になったら、どう対応していけばいいのでしょうか。
ほとんどの人は税務調査を受けるのが初めてであり、慣れているという人はいません。
以下のような内容を理解し、心得ておきましょう。
- 税務調査は恐れるものではない
- 質問には答えられるようにしておく
- 留置きに備えて書類をコピーする
- 顧問税理士に立ち会ってもらう
税務調査は恐れるものではない
税務調査の対象になると「何か不正を疑われているのではないか」「追加納税を課せられて負担になるのではないか」と心配してしまうかもしれません。
しかし税務調査に入ったら必ず何かを指摘されるわけではありませんし、指摘されたとしても修正申告を行えば問題ありませんので、過度に恐れる必要はありません。
意図的に不正行為をしていないのであれば、罰せられるものではありませんので安心してください。
質問には答えられるようにしておく
税務調査に訪れた調査員から質問をされる場合がありますが、その質問にはスムーズに答えられるようにしておきましょう。
上記でお伝えした税務調査のポイントを理解し、気になる点があれば質問を想定しておきましょう。
「曖昧な返事をする」「自信なさそうにモゴモゴと答える」という受け答えだと、何か隠したい事柄があるのかと疑われてしまいます。
わからないのであれば「調べて後ほどお返事します」と、正直に答えるようにしましょう。
留置きに備えて書類をコピーする
税務調査で必要であると判断された場合に、帳簿書類などの書類を預かるのが留置きです。
事業者の承諾の上で書類を持ち帰りますが、事業に支障がでるといけませんので事前に書類のコピーをとっておくと安心です。
帳簿書類等の提示・提出をお願いしたことに対し、正当な理由がないのに提示・提出を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類等を提示・提出した場合には、罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科されることがあります
引用:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)
このように示されており強制的な行為に感じるかもしれませんが、留置きはあくまでも任意で行われるものです。
顧問税理士に立ち会ってもらう
税務調査は、顧問税理士立ち合いで対応するのがおすすめです。
税理士は専門的な知識がありますので、調査官からの受け答えや書類の不備があった場合の説明ができます。
税務調査の通知がきた段階から税理士に相談し、書類の整理や準備を一緒にしておくといいでしょう。
税務調査がスムーズに進み、指摘箇所をできるだけ少なくできるようサポートします。
税務調査に関するよくある質問
税務調査に関するよくある質問をまとめました。
- 税務調査の対象になりやすい法人の特徴は?
- 税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴は?
- 税務調査が入ると人生終わりですか?
税務調査の対象になりやすい法人の特徴は?
「売上が急激に伸びている」「過去に追加納税をした」という法人は、税務調査の対象になりやすいといえます。
また数年続けて「ちょっと赤字」「ちょっと黒字」という、調整したような不自然な申告をしている場合も目をつけられやすいので覚えておきましょう。
税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴は?
個人事業主の場合は、課税所得が1,000万円を超えると税務調査の対象になりやすいといえます。
毎年課税所得が1,000万円にギリギリ届かないという個人事業主も目をつけられやすい状態です。
課税所得1,000万円を超えると適格請求書発行事業者でなくても消費税の納税義務が発生するためです。
何かしらの不正をして所得を抑えていると疑われる可能性があります。
税務調査が入ると人生終わりですか?
お伝えしている通り、税務調査が入ったからといって人生が終わるというわけではありません。
もし指摘事項があったとしても、誤りを認めて修正申告をします。
税務調査に不安がある場合は、税理士にご相談ください。
税務調査のポイントを知って対策を
税務調査は、正しく税申告がされているかを確認するのが目的です。
誤りがあったからといって「脱税だ!」と、直ちに罪になるわけではありませんので、過度に怯える必要はありません。
しかし税務調査は、その誤りをわざわざ探すものなので多くの人が指摘事項を示されます。
日頃から正しく税申告するという基本的な管理を第一に、気持ちよく事業をしていける環境を整えておきましょう。
免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
- 現在、税務調査が入っているので困っている
- 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
- 税務調査に強い税理士に変更したい
- 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
税務調査の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
- 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
- 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
- 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断