メニュー
- 税務調査
税務調査での正しい喧嘩の仕方|不利にならない反論方法や振舞いのコツ
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税務調査ではいろいろ質問されるので、どう返答するべきか準備しておくといいでしょう。
調査が進むとついつい熱くなり、感情的に返答してしまう事業者の方もいます。
ご自身の正当性を認めてもらいたい気持ちはわかりますが、できれば税務署と喧嘩をせずに丸く収めていきたいものです。
税務署の指摘に納得いかない場合は審査請求を行いますが、そこまで戦ったとしたら勝てるのでしょうか。
税務調査は勝ち負けではありませんので、「どう正当性を認めてもらうのか」「正しく税申告していると理解してもらうのか」という点を考えていきましょう。
目次
税務調査の結果報告
税務調査は不正をしていない納税者にとって、気持ちの良いものではありません。
思わず喧嘩腰で対応したくなってしまうかもしれませんが、冷静に対応すべきです。
税務調査が行われた後の結果報告は、主に3種類です。
「申告是認(ぜにん)」「修正申告」「更生」となっており、受け取った内容によって対処法が異なります。
税務調査での結果報告3種類と、その後の振る舞い方についてお伝えします。
- 申告是認
- 修正申告
- 更生
申告是認
申告是認とは、何も指摘する内容がないという結果報告です。
税務が調査した上で申告内容に何も誤りがないという結果ですので、次回以降の税申告も同様に丁寧に行っていきましょう。
申告是認の結果を受け取ったら、税務調査は終了です。
特に対応の必要はありません。
修正申告
修正申告とは、申告額に誤りがあったという通知です。
「申告した税額が少なすぎる」「還付金が多すぎた」という場合に出されます。
具体的な指摘内容が示されますので、納税者自身が確認し、修正申告の内容が正しいかどうかチェックします。
多くの人は指摘通り修正し、不足分の納税を行います。
「税務調査を早く終わらせたい」「税務署と喧嘩したくない」という場合は、修正申告に対応していきましょう。
更生
修正申告は義務ではありませんので、拒否をするという選択肢もあります。
修正申告の内容を確認した上で、「どうしても納得できない」という場合があるかもしれません。
修正申告をしないでいると、指摘内容が記載された更生通知書が届きます。
更生通知書に異論がある場合は、裁判所に不服申し立てをする審査請求を行うという選択肢もあります。
今後も事業を継続し、納税を続けていく中で、審査請求までするのが本当に望ましい選択なのか、悩まれる方が多いでしょう。
どう振る舞っていくかを悩まれる場合は、顧問税理士と相談しながら決めていくといいでしょう。
税務調査で喧嘩をして勝てるのか
「やはり納得いかない」と感じるのであれば、審査請求をしていく流れになります。
全国で何件程度の審査請求がされているのか、またその容認率がどのくらいの数字になるのかを見ていきましょう。
- 審査請求の数
- 審査請求の容認率は10%前後
審査請求の数
税務署長や国税局長などが行った処分に不服がある場合に、その処分の取消しや変更を求めて、国税不服審判所長などに対して不服を申し立てる制度が審査請求です。
国税庁のホームページで審査請求件数が公表されており、直近の令和5年度では多くの審査請求がされているとわかります。
年度 | 審査請求数 |
令和元年 | 2,563件 |
令和2年度 | 2,237件 |
令和3年度 | 2,482件 |
令和4年度 | 3,034件 |
令和5年度 | 3,917件 |
審査請求の容認率は10%前後
この審査請求された件数に対する容認件数、容認率を見てみましょう。
年度 | 全部容認 | 一部容認 | 容認率 |
令和元年 | 90件 | 285件 | 13.2% |
令和2年度 | 65件 | 168件 | 10.0% |
令和3年度 | 160件 | 137件 | 13.0% |
令和4年度 | 72件 | 153件 | 7.1% |
令和5年度 | 140件 | 139件 | 9.7% |
1年以内の処理件数割合が100%ではない上での数字ではありますが、容認率は10%前後となっています。
この割合が高いと感じるか低いと感じるかは個人差があるかもしれませんが、あまり多くないという印象を受ける方が多いのではないでしょうか。
過去の容認率を見ても10%前後で推移しているのがわかります。
この割合を見た上で本当に審査請求をしていくのか、今一度考え直してみるべきでしょう。
税務調査で喧嘩をしないための振る舞い方
税務調査で調査官と言い合いをしても、良い結果にはなりません。
むしろ余計な話までしてしまう可能性がありますので、スムーズに調査が進むように協力する姿勢を見せるべきです。
税務調査での振る舞い方のポイントについて、お伝えします。
- 調査官を尊重する
- 冷静に対応する
調査官を尊重する
税務調査に慣れている事業者は、そう多くありません。
税務調査が来るというだけで緊張しており、さらに「税金を取り立てに来ている」「確定申告の間違いを探しに来ている」というイメージを持っている人も少なくありません。
しかし調査官はあくまでも公務員として仕事で来ているのであり、当然個人的な悪意があるわけではありません。
誤りがなければ指摘事項もありませんので、堂々としていれば大丈夫です。
調査官を尊重しながら調査に協力していく上で、心得ておきたいポイントがあります。
話を聞く
調査官が話をしていると、口を挟みたくなってしまうかもしれません。
「自分は間違っていない」「話を聞いてもらえば納得してくれるはず」と主張したくなるかもしれませんが、まずはグッとこらえて話に耳を傾けましょう。
初対面の段階から話の腰を折るような受け答えをしていると、調査官との信頼関係が構築できません。
まずは調査官が何をいいたいのか、心地よく相槌を打ちながら話を聞いていきましょう。
尊敬の意をもって接する
税務調査の調査官は仕事として調査に来ており、税務調査そのものが歓迎されるものではないと理解した上で行っています。
正しく税金を徴収するための国の役目を果たしており、尊敬の意をもって接するべきです。
税務調査では「自分だけが調査されている」「なぜ自分が」と感じるかもしれませんが、調査官への尊敬の意を持って接すれば、喧嘩腰にはならないはずです。
調査官としてもスムーズに終わらせたい気持ちは同じであると想像できます。
ここは協力して、調査をスムーズに進行させていきましょう。
結果を受け止める
お伝えした通り、税務調査の調査結果は「申告是認(ぜにん)」「修正申告」「更生」の3種類です。
結果を見た途端、「納得できない!」と感じるかもしれませんが、まずは冷静に結果を受け止めてみましょう。
反論するという選択肢もありますので、素直に受け止めてみましょう。
あまりにも反撃していると「脱税を隠そうとしているのか」と疑われる可能性があります。
冷静に対応する
税務調査にやってくる調査官は、全員ではありませんが威圧的な態度の人もいます。
強い口調で責められているような気分になるかもしれませんが、冷静に対応すべきです。
例えば「こんな処理であっているのか!」と強く言われたとしても、冷静に捉えればただ会計処理が正しいかを聞いているだけです。
質問の真意を捉え、感情に飲み込まれずに冷静に丁寧に対応できるようにしていきましょう。
税務調査でやってはいけない対応
税務調査でやらないように注意したい対応について、ご紹介します。
- 高圧的な態度を取る
- 非協力的な態度で臨む
- 資料を隠す・廃棄する
- 嘘をつく・曖昧な返答をする
高圧的な態度を取る
調査官が高圧的な態度ではないのにも関わらず、思わず喧嘩腰になってしまう事業者の方がいます。
「冷静に対応しよう」と心の準備をしていたとしても、調査が進むにつれて調査官の質問の内容に腹を立ててしまうというケースがあるためです。
感情的で高圧的な態度をとったとしても、調査が好転するわけではありません。
非協力的な態度で臨む
税務調査の日程が決まると、資料の準備をして調査の用意をしておきます。
「調査に必要な書類の準備をしない」「質問に答えない」というような非協力的な態度は、いうまでもなく良いものではありません。
調査協力が得られないと判断されると、反面調査をされて取引先に迷惑をかけてしまう可能性があります。
反面調査が入ると手間をかけさせてしまうだけでなく、取引先との信頼関係にも亀裂が入ってしまう危険があります。
資料を隠す・廃棄する
税務調査に必要な資料は一通り準備してはいるものの、「一部を隠す」「出さない」「廃棄する」というような行為は望ましくありません。
「なぜないのか」「見られたら困るものなのか」という判断をされても、反論のしようがありません。
見せられないと感じる資料がある場合は、税務調査の前に税理士に相談しておくようにしましょう。
嘘をつく・曖昧な返答をする
税務調査では質問に答えていきますが、中には答えにくいような質問もあるかもしれません。
雑談のような質問があり、例えば「開業したのは何年ですか?」という質問では、他の収入源がないかを確認しています。
「家族構成を教えてください」という質問では、架空の給与が存在しないかなどを確認しています。
このような質問の受け答えで曖昧な返答をする、嘘をつく、という対応をすると「何かを隠しているのかな」と疑われてしまいます。
すぐに答えられない質問があれば「調べて後日お返事します」と、正直にわからない旨を伝えましょう。
税務調査での正しい反論の仕方
税務調査では冷静にとお伝えしていますが、絶対的に調査官の指摘が誤りであると確実な場合は事業者としても主張したい事柄があるでしょう。
感情的にならない、正しい反論の仕方を覚えておきましょう。
- 論点を明確にする
- 否認根拠だけを反論する
論点を明確にする
調査官から指摘を受けた際には、論点がどこにあるのかを明確に理解しなければいけません。
「法令による解釈の相違」と「事実認定の問題」に区別されますので、どちらに該当するのかを考えてみましょう。
否認原因の認識がズレてしまうと、主張や反論をしても意味がないかもしれません。
話をこじらせてしまわないためにも、論点を明確にしておくべきです。
否認根拠だけを反論する
否認根拠を理解したら、的確な答えのみで反論します。
このときにアレコレ言いたくなってしまうかもしれませんが、余計な議論や反論はしないのが得策です。
論点のズレた反論材料を提示し、収拾がつかなくなってしまうと調査が長引いてしまいます。
税務調査の対応に関するよくある質問
税務調査の対応に関するよくある質問をまとめました。
- お茶やお菓子、食事は用意すべきですか?
- 税務調査で人柄はチェックされますか?
- 税理士はどこまで味方になってくれますか?
お茶やお菓子、食事は用意すべきですか?
お茶やお菓子を出しておもてなしすべきかと考える方がいらっしゃいますが、お茶やお菓子を出しても手をつけない場合がほとんどです。
準備する必要はないと考えていいでしょう。
饗応を疑われないよう、あえて手をつけないようにするという配慮があるようです。
税務調査で人柄はチェックされますか?
税務調査では事業者の人柄もチェック項目だと心得ておきましょう。
例えば、「大雑把な性格の人であれば帳簿を雑に記入している可能性がある」「部下に高圧的な態度の人は私的な経費を無理やり計上してはいないか」などです。
重要なチェック項目ではありませんので、正確に経費を計上していれば問題はありません。
ただ事業者の性格も調査に無関係ではないと覚えておきましょう。
税理士はどこまで味方になってくれますか?
税理士は事業者の味方です。
税務調査の税務官は、自分の成績のために追徴税額を増やしたいという気持ちもあるでしょう。
そのため細かく調べられるかもしれませんが、無駄な税金を納めなくて済むように事業者側にたってやり取りできるのが税理士です。
税務調査が不安な方は、調査前から税理士にご相談いただき、準備の段階から一緒にすすめていけるようにしましょう。
税務調査は喧嘩の勝負ではない
税務調査の調査官は、なんとなく「敵」のように感じてしまう方がいるかもしれません。
しかし事業者を個人的に狙い撃ちしているわけではなく、正しく納税してもらう、という目的があって行われている調査です。
事業者にとっても、正しく税申告・納税する意図があるわけですから、本来の目的は同じであると考えられます。
申告に誤りがあると指摘されたら内容を確認し、調査の通りであれば修正申告・追徴課税を行うだけです。
日頃から丁寧な経費計上を行い、税務調査でも堂々と対応できるようにしておきましょう。
免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
- 現在、税務調査が入っているので困っている
- 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
- 税務調査に強い税理士に変更したい
- 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
税務調査の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
- 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
- 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
- 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます
30秒で完了かんたん税務調査リスク診断