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お寺も車を経費にできる|宗教法人の車の選び方&減価償却について
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
宗教法人は非課税だといわれていますが、収益事業に関わる部分には課税されます。
そのため宗教法人は車を経費として計上できます。
宗教法人として車を購入する際の注意点や、選び方について考えてみましょう。
一般法人とは異なりますので、周囲の人からどう見えるかを意識しながら車種選びをした方がよい一面もあります。
税務上の処理として覚えておきたい減価償却についてもお伝えしますので、ぜひ参考になさってください。
目次
宗教法人の税金優遇措置
「宗教法人は非課税だ」といわれますが、これは半分本当で半分嘘です。
宗教法人が行う宗教活動は確かに非課税ですが、収益事業に関しては課税されていますので、宗教法人であっても税金を納めています。
一般法人は事業で得た全ての所得が税申告の対象となり、法人税や所得税、地方税や消費税を納めます。
しかし宗教法人の場合は収益事業に関する所得のみが課税されるという、税金の優遇措置があります。
宗教活動は営利目的ではないため、税金が課せられません。
宗教法人は車が経費になるのか
では宗教法人が車を購入する際には、経費として計上できるのでしょうか。
一般企業であれば社用車として経費になりますが、宗教法人だとどう処理していくべきなのか考えてみましょう。
- 収益活動であれば経費になる
- お坊さんの私用車にも課税されている
収益活動であれば経費になる
宗教法人でも収益事業に関するものには税金がかかりますので、収益活動のために使用する車であれば経費になります。
宗教法人の申告漏れで争点になるのが、その経費は宗教活動のためのものなのか、収益事業のためのものなのか、はたまた私用目的なのかという点です。
収益事業と宗教活動のボーダーラインが難しいものがあり、宗教法人側の主張と税務署の主張が食い違う場合があります。
堂々と「収益事業に必要なための車である」といえるものであれば、経費として計上できるでしょう。
お坊さんの私用車にも課税されている
お坊さんや住職、宮司や職員は、給与をもらって生活しています。
宗教法人に仕える立場だからといって給与がないわけではありませんし、給与を受け取っている以上は源泉徴収税といった税金を納めています。
一般法人も会社の収益と個人の給与は別であるように、宗教法人も職員の給与は別で考えます。
そのため、お坊さんがプライベートで車を購入している場合は、一般の方と同じように税金を納めています。
「宗教法人は非課税だから儲かっている!だからベンツに乗っているのか!」などと誤解を招く場合がありますが、非課税で儲かっているから高級車に乗っているという発想は誤りです。
宗教法人に仕える人にもプライベートがあり、自分の給与で購入した好きな車に乗っているだけです。
宗教法人の減価償却
一般法人も宗教法人も、固定資産を購入したら減価償却を行います。
新車の法定耐用年数は普通車が6年、軽自動車が4年となっていますので、正しく処理していかなければいけません。
車を経費として減価償却すると所得金額が少なくなり、結果的に税金を安く抑えられるようになります。
棚卸資産の評価方法を選ぶ
減価償却をしていくには、棚卸資産の評価方法を選ばなくてはいけません。
一般法人では以下の6つの評価方法があり、いずれかの方法を選択し、減価償却していきます。
宗教法人も一般法人と同様に棚卸資産の評価方法を選べますので、それぞれの評価方法について理解しておきましょう。
基本的な棚卸資産の評価方法について、お伝えします。
- 最終仕入原価法
- 個別法
- 先入先出法
- 移動平均法
- 総平均法
- 売価還元法
最終仕入原価法
最終仕入原価法とは、期末時点から最も近い時点での単価価格を用いて棚卸資産を評価する方法です。
在庫が複数あるものを扱っている場合は、残っている在庫数を最後に購入した時の単価でかけて期末在庫の金額を計算します。
時間をかけずに評価ができるというのが最終仕入原価法のメリットですが、会計上適切な評価をしたい時には向いていません。
評価方法を選択しない場合は、最終仕入原価法となりますので覚えておきましょう。
個別法
個別法とは、個々の取得価格で在庫を評価する方法です。
ひとつひとつ細かく管理をしますので時間はかかりますが、帳簿の計算と実際の物の流れを完全に一致させられます。
1点あたりが高額な品物を扱う場合に向いていて、宝石や不動産、絵画の管理に用いられる方法です。
先入先出法
先入先出法とは、実際の物の流れではなく、先に仕入れた棚卸資産から順に払出を行ったものと仮定して評価する方法です。
棚卸資産の仕入れ単価は、仕入先や時期、量によって変動するものですが、後に仕入れた物の単価が期末棚卸資産の価額に反映されるという特徴があります。
移動平均法
移動平均法とは、仕入れの度に棚卸資産の残高を残数量で割り、平均単価を評価する方法です。
都度平均額を算出しますので、期末だけでなく期中であっても棚卸資産の評価が確認できます。
総平均法
総平均法とは、一定期間に仕入れた物の原価を平均し、評価額を算出する方法です。
移動平均法よりも計算が簡単で、平均単価価格が影響を受けにくいという特徴があります。
売価還元法
売価還元法とは、棚卸資産をグループ分けし、販売価額に原価率を掛けて評価額を算出する方法です。
グループ分けをして管理できるので、商品の種類が多様化している小売業でよく用いられます。
減価償却資産の償却方法を選ぶ
減価償却の方法は、大きくわけて定率法と定額法の2つとなります。
- 定額法
- 定率法
定額法
毎年、一定額の減価償却を計上していくのが
定額法です。
「減価償却費(償却限度額)=取得価額×定額法の償却率」という計算式で求められます。
定額法の償却率は細かく定められており、例えば小型車を定率法で計算する場合の償却率はは0.250%となります。
小型車は耐用年数が4年となりますので、取得価額を4年かけて償却していきます。
定率法
毎年、一定の割合を減価償却し計上していくのが定率法です。
「減価償却費(償却限度額)=(取得価額-前年までの減価償却累計額) ×定率法の償却率」という計算式で求められます。
小型車を定率法で計算すると、償却率は0.625%となります。
定額法と定率法のどちらを選んでも構いませんが、定率法を選ぶと最初の年の減価償却額が
大きくなります。
定額法は毎年同額の減価償却費を計上できます。
宗教法人は減価償却すべきか
個人事業主の場合は強制償却となっており、
必ず減価償却しなければいけません。
しかし法人の減価償却は任意となっており、
必ずすべきものではありません。
これを任意償却といい、「黒字の時は減価償却するけど、赤字の時はしない」という方針の法人もあります。
税務的には問題ありませんが、もし将来的に融資を受けたいという希望がある場合は、きちんと減価償却して経費を計上しておくべきでしょう。
宗教法人が経費で車を購入するポイント
宗教法人として経費で車を購入するのであれば、以下のような点を意識しておくといいでしょう。
- 業務に適した車種を選ぶ
- 減価償却の耐用年数
- 契約タイミングを意識する
業務に適した車種を選ぶ
宗教法人に限らず、社用車を購入する際には、業務に適した車種であるかを検討します。
何のために利用するものなのかを考えると、
乗務定員や車のタイプが自ずと決まってくるはずです。
例えば、お寺の業務として車を使用するのであれば、あまり派手なイメージの車種は避けた方がいいかもしれません。
ベンツでもBMWでも業務が可能だとしても、お寺の経費で購入する車であるかは疑問です。
減価償却の耐用年数
車を購入し、減価償却をしていくのであれば耐用年数についても理解しておきましょう。
耐用年数とは、固定資産を本来の用途に沿って使用した時に、期待した通りの効果を発揮できるであろう期間です。
例えば新車を購入するのであれば、普通車は耐用年数が6年、軽自動車は耐用年数が4年となります。
中古車になるとまた車によって異なり、「(新車購入時の耐用年数−経過年数)+経過年数×20%(1年未満切り捨て)」という計算式で求めます。
契約タイミングを意識する
車を法人の経費にしようとした場合、1ヶ月単位で減価償却を計算していきます。
もしも決算月に車を購入したとすると、その年度で減価償却の対象となるのは最後の1ヶ月のみです。
次期決算までのスケジュールを考えた時に、費用対効果を重視するのであれば決算の翌月がおすすめのタイミングとなります。
計画的に車を購入していくのであれば、このような購入タイミングも視野に入れておくといいでしょう。
宗教法人に税理士が必要な理由
宗教法人の税処理は一般法人と異なりますので、複雑なポイントが多々あります。
税理士が必要な理由について、考えてみましょう。
- 一般法人より税務処理が複雑
- 宗教法人としての信頼を保つ
- 宗教法人への税務調査は厳しい
- 税理士は税務調査の立ち合いが可能
一般法人より税務処理が複雑
宗教法人は、非課税の宗教活動と、課税対象の収益事業があります。
このボーダーラインをはっきりさせるのは難しく、悪意なくとも申告漏れを指摘されてしまうケースがあります。
一般法人よりも税務処理が複雑になるというのが、宗教法人の悩ましいところです。
住職がひとつひとつ頭を抱えながら処理をしていると、時間がかかる上に誤った処理をしてしまう可能性があります。
税理士に相談しながら、依頼できる業務は任せてしまうのがおすすめです。
宗教法人としての信頼を保つ
一般法人には株主がいますが、宗教法人に株主はいません。
宗教法人を支えているのは、地域の方や檀家・信徒・門徒などの信者の方です。
信頼関係はとても重要であり、もし税の申告漏れといったトラブルが噂になれば宗教法人としての信頼が保てなくなってしまいます。
税処理の複雑さから不明瞭な会計処理をしてしまいがちですが、クリーンな処理をして地域の方や信者の方と良い関係を続けていけるようにしましょう。
宗教法人への税務調査は厳しい
税務調査とは、正しく税申告・納税が行われているかの確認のために、税務署の調査官が現地に出向いて行うものです。
「宗教法人は税務調査の対象にならないのでは」と思われがちですが、収益事業に課税されていますので税務調査が行われる可能性はあります。
お寺などの宗教法人は領収書の発行が日常的に行われていないなどの理由から、収支の計上を調査するのに時間がかかる場合があります。
プライベートで乗っている車や子供の進学先の授業料など、暮らしぶりから逆算して給料が正しく計算されているかを確認する場合があります。
税理士は税務調査の立ち合いが可能
不正をしていないとしても税務調査を受ける方は、気分の良いものではありません。
もし税理士がついていれば、税務調査の立ち合いや調査官への対応を代理で行えます。
税務署の調査官が行っている調査の意図がわかりますので、不利な受け答えをしない、ペナルティが課せられたとしても最小限に抑えられるといったメリットがあります。
宗教法人の経費に関するよくある質問
宗教法人の経費に関するよくある質問をまとめました。
- 宗教法人は自動車の税金を払いますか?
- お寺の土地を駐車場にするのは非課税ですか?
- 法事に来たお坊さんのお車代はいくら必要ですか?
宗教法人は自動車の税金を払いますか?
宗教法人が収益事業のために購入した車を維持するためには、自動車税がかかります。
名義が宗教法人であったとしても、一般の自動車税と同様であり、自動車税に優遇措置があるわけではありません。
お寺の土地を駐車場にするのは非課税ですか?
お寺の土地に駐車場スペースを設けたとしても、「参拝者用の駐車場である」「無料で運営している」という場合には税金はかかりません。
ただし、「有料駐車場にする」「月極駐車場にする」というように収益がある場合は課税対象となります。
法事に来たお坊さんのお車代はいくら必要ですか?
お車代はお布施とは別物で、気持ちを表すもので金額など具体的な決まりはありません。
交通費としての意味合いがありますので、実際にかかる交通費を目安に金額を決めて包むと感謝の気持ちが伝わります。
経費で購入した車は正しく処理を
宗教法人でも税申告が必要であり、車を購入したら経費として計上できます。
ただし高額な経費となりますので、減価償却で時間をかけて正しく計上していく必要があります。
「税処理が複雑で難しい」「宗教活動に集中したい」という方は、ぜひ税理士にご相談ください。
お寺や宗教法人の性質を理解した上で、税理士というプロの立場からアドバイスやサポートをさせていただきます。
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