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オペレーティングリースの基礎知識と節税の仕組み|税務調査対策について
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
法人の節税のひとつとしてオペレーティングリースという方法があります。
大きなお金を動かして大きな節税効果が期待できるものですが、その分リスクもあります。
オペレーティングリースのメリットやデメリットについて理解し、オペレーティングリースを節税対策として取り組むべきかを考えていきましょう。
オペレーティングリースを検討すべき会社の特徴についてもご紹介しますので、参考になさってください。
なぜオペレーティングリースをすると節税になるのか、お金の流れや税処理の仕組みについてご説明します。
目次
オペレーティングリースの基本知識
オペレーティングリースや日本型オペレーティングリースとはどのような仕組みなのか、
ファイナンスリースと何が違うのかをご存じですか?
まずはオペレーティングリースの基礎知識について、ご説明します。
- オペレーティングリースとは
- 日本型オペレーティングリースとは
- ファイナンスリース取引との違い
オペレーティングリースとは
オペレーティングリースとは、貸付により収益を得る事業です。
レンタル事業は不特定多数の利用者向けに貸付を行いますが、オペレーティングリースは特定の利用者に中長期間の貸付を行います。
貸付期間が長くなりますので、安定的に収益を得られるという特徴があります。
日本型オペレーティングリースとは
日本型オペレーティングリースは、Japanese Operating Leaseの頭文字をとってJOLと表現されます。
基本的なオペレーティングリースの仕組みに、「匿名組合」という契約形態を組み合わせるのが日本型オペレーティングリースの一般的な形です。
匿名組合とは、投資家から出資を募って、
リース事業を営む組織です。
投資家からの出資金や金融機関からの借入金でリース物件を購入し、リースします。
リース期間の初期は収益よりも費用が上回るため、損失が大きくなります。
出資持分に応じて損失を計上するため、節税効果が大きくなるというのが日本型オペレーティングリースです。
ファイナンスリース取引との違い
ファイナンスリースとは、貸し手が借り手の代わりに商品を購入して貸し出す仕組みです。
リースという名称ではありますが、借り手が分割で購入するようなイメージです。
オペレーティングリースとファイナンスリースの違いは、リース終了時の残存価格にあります。
ファイナンスリースは、リース満了時に購入金額を回収できるようにリース価格を決めておきます。
一方オペレーティングリースは、リース前にリース満了時の残存価格を査定します。
回収できるリース料は安くなりますが、リース満了時に資産を売却して購入資産を回収するという仕組みです。
オペレーティングリースの全体像
オペレーティングリースは節税の手段のひとつとなります。
例えば航空機でオペレーティングリースを行う場合、購入には巨額の資金が必要になるので、リース期間の初期の頃は収入よりも減価償却費用の方が大きくなります。
つまり赤字決済となりますので、結果的に法人税の節約になるという仕組みです。
減価償却は毎年少なくなっていきますので対策は必要となりますが、最終的には航空機などの資産を売却して購入資金を回収します。
オペレーティングリースの対象
オペレーティングリースは、具体的に以下のようなものが対象となります。
最小価格は3,000万円ほどで、1億円以上のオペレーティングリースも珍しくありません。
- 航空機
- ヘリコプター
- フォークリフトなどの輸送機械
- 重機などの建設機械
- レントゲン装置などの医療機器
- 船舶
- 自動車
このように事業に必要な高額な機械や乗り物がオペレーティングリースの対象となります。
建設や輸送、医療といった幅広い分野で、リース商品が存在します。
オペレーティングリースのメリット
オペレーティングリースは、節税などのメリットがあります。
以下のようなメリットを理解し、オペレーティングリースの投資を行うべきか考えてみましょう。
- 節税効果が期待できる
- 支払いは初回のみ
- 他のリースより安定している
節税効果が期待できる
オペレーティングリースの大きなメリットは、やはり節税です。
法人税の節税を始め、株価や退職金の資源にも関わりますので詳しくご説明します。
減価償却費による評価損の発生
オペレーティングリースをする航空機やヘリコプターといったリース商品は、減価償却資産となります。
減価償却費の計算方法は定額法と定率法がありますが、オペレーティングリースは定率法で計算します。
一定の割合で減価償却を行っていきますので、初年度の償却額が最も高額になります。
法人として事業利益が発生する年度にオペレーティングリースを開始すると、利益と相殺できる償却率が大きくなり、節税効果が期待できます。
一時的に会社の株価が下がる
オペレーティングリースの開始時は、赤字が大きくなりますので一時的に会社の株価が下がります。
法人代表が子などに株式を渡す場合、生前贈与であれば贈与税がかかり、相続するなら相続税がかかります。
贈与税や相続税は、計算上の株式評価額が関与しますので、株価が下がったタイミングの方が節税になるというカラクリです。
オペレーティングリースを使って、事業継承に関わる節税を計画的に行うといいでしょう。
リース資産の売却益は退職金の資金源に
オペレーティングリース満了時には、資産を売却して購入資金を回収します。
リース売却の資金は大きくなりますので、この時の節税に関しても計画的に考えておくべきです。
例えば、リース売却金を法人代表者の退職金とすれば、利益の相殺が見込めます。
支払いは初回のみ
オペレーティングリースだと、支払いは初回の
1回のみです。
例えば生命保険での節税だと毎年、掛け金を払わなければいけませんので、「支払いは無理なく行えるのか」「利益がでるのか」といった不安がつきまといます。
オペレーティングリースは、「大きな利益が出た時」「資金に余裕がある時だけ」支払いをすれば良いという仕組みなので、継続的な支払いの心配はありません。
他のリースより安定している
オペレーティングリースは中途解約は難しいものとなっており、中長期的な契約となります。
そのため貸付側としては長い目で節税、収益の目途が立てられるというメリットがあります。
特に航空機のオペレーティングリースは、コンテナや船舶のオペレーティングリースと比較して安定しているといわれています。
収益確保や売却益確保の面で安全性の高い物件を選びたいのであれば、航空機のオペレーティングリースを検討するといいでしょう。
オペレーティングリースのデメリット
オペレーティングリースには節税などのメリットがありますが、デメリットについても正しく理解しておきましょう。
- 元本の保証がない
- 外貨建て商品がほとんど
- リース期間終了後の出口戦略
- 個人投資家には節税効果がない
元本の保証がない
オペレーティングリースは中長期的な節税、
収益を見込める方法ではありますが、一方で元本の保証がないというリスクを伴っています。
もしかしたら貸付した会社が倒産した場合、
商品を購入した資金の回収が難しくなってしまうかもしれませんし、貸付先のトラブルで商品が破損してしまうかもしれません。
オペレーティングリースは7年~10年という時間をかけて行いますので、シュミレーション通りの投資ができるかは未知数です。
またリース満了時に想定通りの価格で売却できるかもわかりませんし、リース資産の価値が低下する可能性があります。
元本割れのリスクがある投資であるという仕組みを、正しく理解しておきましょう。
外貨建て商品がほとんど
オペレーティングリースは外貨建ての商品が多く、日本円で取引きできる商品は少ないのが現状です。
日本円の商品を探したとしても商品数が少ないので、結局外貨建ての商品を選ぶ場合が多いです。
為替の影響を受けますので、リース満了時に円安になれば想定よりも高く売却できますが、
円高になるリスクもあります。
購入前には為替リスクについても精査して、
オペレーティングリースを始めるべきでしょう。
リース期間終了後の出口戦略
オペレーティングリースの初期の頃は大きな赤字が計上できるため節税となりますが、これは減価償却が収益を上回っている期間だけです。
だんだんと収益が増えていきますし、リース期間が終了すると当然損金として計上はできません。
リース期間終了後に増える収益に、どう節税対策をしていくべきなのか、出口戦略もしっかり立てておく必要があります。
個人投資家には節税効果がない
法人にとっては大きな節税効果が期待できるオペレーティングリースですが、個人投資家や個人事業主は同様の節税効果が見込めません。
個人事業主や個人投資家が得た分配金は「雑所得」として扱われてしまうためです。
雑所得は、事業所得などの所得と所得と損益通算できません。
オペレーティングリースをすべき会社とは
オペレーティングリースにはメリットとデメリットがありますので、どのような会社がオペレーティングリースを検討すべきなのか迷ってしまうかもしれません。
オペレーティングリースの検討がおすすめな会社の条件について、ご紹介します。
- 一時的に利益が大きくなった会社
- 余裕資金を運用と投資に使いたい会社
- 事業継承の自社株対策をしたい会社
一時的に利益が大きくなった会社
一時的に大きな利益が出た会社は、そのまま税申告をすると法人税が高額になってしまいます。
例えば航空機リースの最小価格は3,000万円程度だといわれています。
一時的な利益が3,000万円以上であるという会社は、オペレーティングリースでの節税を検討するといいでしょう。
余裕資金を運用と投資に使いたい会社
資金に1億円以上の余裕があり、運用しながら投資もしていきたいという方針の会社は、オペレーティングリースが向いているかもしれません。
オペレーティングリースは7年~10年という期間をかけて投資をしていきますので、分散投資をしながら節税ができるようになります。
事業継承の自社株対策をしたい会社
お伝えした通り、オペレーティングリースをすると一時的に赤字となり、株価が下がります。
事業継承、自社株を第三者や親族に引き継がせたいと考えている時には、オペレーティングリースの節税は非常に効果的であるといえます。
オペレーティングリースや税務調査に関するよくある質問
オペレーティングリースや税務調査に関するよくある質問をまとめました。
- オペレーティングリースは税務調査の対象になりやすいですか?
- オペレーティングリースのリスクを減らすには?
- オペレーティングリースの失敗事例はありますか?
オペレーティングリースは税務調査の対象になりやすいですか?
事業主であれば、税務調査の対象になる可能性があります。
オペレーティングリースをしたから税務調査の対象になりやすいというものではありません。
ただ利益が大きな事業主は税務調査の対象になりやすいという傾向がありますので、「突発的な収益が出たからオペレーティングリースをした」という場合には、税務調査が入るかもしれません。
オペレーティングリースのリスクを減らすには?
オペレーティングリースには元本割れのリスクがありますので、リース先をしっかりと選ぶべきです。
上場企業など大手の会社など、リスクが少なくなるように対策をしておきましょう。
オペレーティングリースの失敗事例はありますか?
オペレーティングリースの失敗例としては、「リース先が倒産して契約が途中で終了してしまう」という状態が挙げられます。
またリース中に事故などのトラブルに遭うと、商品が使用不能になるだけでなく、他に損害を与えてしまう可能性もあります。
基本的には損害保険でカバーされますが、限度額を超えると追加出資を求められるかもしれません。
オペレーティングリースの税申告は税理士に相談を
オペレーティングリースを行うと節税となりますが、減価償却を計上していきますので税処理が複雑になります。
正しく税申告していかないと税務調査の対象になる可能性がありますので、顧問税理士をつけて正しく税処理を行っていきましょう。
顧問税理士がいれば税務調査の対応もできますので、税務調査に関する不安を感じている法人の方はぜひご相談ください。
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