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特殊関係使用人の定義と適正な給与|人件費実態の税務調査について
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
特殊関係使用人とは、法人においてどのような立場の人を指すのでしょうか。
家族や親族が特殊関係使用人となりますが、
みなし役員との違いはどのような点があるのでしょうか。
また特殊関係使用人への不相当に高額な給付は損金算入が認められませんので、適正な給与についても考えておくべきです。
税務調査の対象になると、必ず人件費の調査があります。
特殊関係使用人の定義と適正な給与について、また税務調査で行われる人件費の調査内容についてお伝えします。
目次
特殊関係使用人の定義
特殊関係使用人とは、どのような人を指すのでしょうか。
特殊関係使用人と混同されやすい言葉にみなし役員がありますが、違いを理解していると税務調査で指摘された時に適切に反論できます。
税務調査で追徴課税となると大きな負担になりますので、正しく知識をつけておきましょう。
- 特殊関係使用人とは
- みなし役員とは
特殊関係使用人とは
法人税法施行令より、特殊関係使用人は以下のように定義されています。
(特殊関係使用人の範囲)
第七十二条 法第三十六条(過大な使用人給与の損金不算入)に規定する政令で定める特殊の関係のある使用人は、次に掲げる者とする。
一 役員の親族
二 役員と事実上婚姻関係と同様の関係にある者
三 前二号に掲げる者以外の者で役員から生計の支援を受けているもの
四 前二号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族
引用|法人税法施行令
このいずれかの条件に当てはまれば、特殊関係使用人となります。
平たく説明すれば、家族や親族です。
みなし役員とは
みなし役員とは、形式上は役員ではなくとも実質的に役員と同じ立場の人を指します。
法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、
理事、監事および清算人でなくとも、以下のような条件に当てはまれば、税法上は会社の役員となります。
- 家族以外で法人の仕事に従事している
- 同族会社の使用人のうち、株式所有割合の要件を満たす者
細かい株式の所有率の定義については、参考資料をご確認ください。
平たく説明すると、1番は役員でもないのに経営に意見するような従業員で、2番は社長の奥さんが重要な経営に関する業務を行っているようなケースです。
特殊関係使用人に関する税務調査
特殊関係使用人に関する税務調査のポイントについてご説明します。
- 親族等への給与について
- 不相当に高額な給与とは
親族等への給与について
法人税法により、親族等に対する給付について不相当に高額な給付は損金算入が認められません。
不相当に高額な給付を認めてしまうと、不当な税金逃れが多発してしまう懸念があるためです。
もちろん仕事に対する相当な給付であれば認められるものとなりますので、「高額な給付」とはいくらからなのかを的確に判断しなくてはいけません。
不相当に高額な給与とは
では特殊関係使用人への不相当に高額な給与とは、いくら以上の給与を指すのでしょうか。
業務内容や業務時間だけでなく、業種や給与水準など以下の4つのポイントを基準に算出されます。
- 職務内容の実態
- 収益状況との整合性
- 他の従業員の給与状況
- 同業他社の従業員の給与水準
1.職務内容の実態
まずは調査が入るのが、職務内容の実態と給与のバランスが取れているかという点です。
例えば、特殊関係使用人となる家族が経理の仕事しかしていないのに、月100万円の給与を受け取っていたらどうでしょうか。
中には月に数日しか仕事をしていないというケースもあり、そのような状況で月100万円の給与をもらっていたとすれば誰がみても不相当に高額な給付となります。
「職務内容の実態があるのか」「またその業務に見合った給与なのか」という点がひとつの争点となります。
2.収益状況との整合性
法人の収益状況として、赤字が続いている状態であれば経費を削減しようとするのが一般的です。
赤字の法人が、特殊関係使用人に対して月100万円の給与を払っているとなると、給与を払いすぎであると指摘を受けても仕方ないでしょう。
法人の収益との整合性がとれているかも、調査のポイントとなります。
3.他の従業員の給与状況
他の従業員の給与状況も、調査のポイントとなります。
特殊関係使用人と同等の業務をしている従業員がいたら、給与も同等になるはずです。
しかしその従業員には月30万円の給与しか払っていないのに、特殊関係使用人の給与が月100万円だとすると、税務署からの指摘が入ります。
4.同業他社の従業員の給与水準
法人内での整合性を調査するだけでなく、同業他社の従業員の給与水準も参考になります。
同業であっても会社が違えば従業員の給与水準が異なるかもしれませんが、あまりにもかけ離れた高額な給与は認められません。
不相当に高額な給与かどうかは、このように多方面から調査をし整合性を判断していきます。
特殊関係使用人の適切な給与とは
では特殊関係使用人の適切な給与とは、いくらなのでしょうか。
業務実態に基づいた適切な給与であるべきで、給与が安ければいいというわけではありません。
明確な基準や数値があるものではないので難しいと感じるかもしれませんが、タイムカードをつけるなど実態を証明できるようにしておくといいでしょう。
特殊関係使用人であれ、業務に対する給与を受け取る権利がありますので、上記のような整合性がとれた給与を意識しておくといいでしょう。
人件費の実態の税務調査
税務調査が行われると、特殊関係使用人に限らず人件費の実態の調査が行われます。
税務署の調査官はどんな点をチェックしているのか、人件費に関する税務調査についてまとめました。
- タイムカードなどの帳簿類
- 業務日誌などの原始記録
- 住民票住所の不存在
- 従業員へ直接聞き取り
タイムカードなどの帳簿類
税務調査では架空人件費といった不正を調べるため、まずはタイムカードや厚生年金の加入者一覧表などの帳簿類をチェックしていきます。
タイムカードは過去数年分のものを全員分集め、出退勤の時間を確認していきます。
「タイムカードの出退勤時間が複数名同じものがある」「整いすぎて不正が疑われる出勤簿」などは、追求の対象になってしまうかもしれません。
従業員1人1人がどのような仕事をしているのか、という点についても細かく聞かれる可能性があります。
業務日誌などの原始記録
毎日の業務の進捗状況や課題について書き記した、業務日誌も税務調査の資料となります。
タイムカードや帳簿は必ず調査されるものであると警戒しているかもしれませんので、これらの資料から業務の実態が見えてくる場合があるのです。
例えば、営業回りをしているはずの社員がいるとされていたにも関わらず、日誌の記録も顧客名簿もないと疑いの目がむけられます。
住民票住所の不存在
不審な社員、実態が不透明な社員がいると、
次は役所に確認をとります。
実在する人であれば住民登録がされているはずですし、住民税や社会保険料の支払いもされているはずです。
社員だけでなく、アルバイトやパートも疑いがあれば調査の対象です。
自宅が遠方であるなど不審な点があれば、住民票住所の確認を行います。
従業員へ直接聞き取り
ここまで調査をし、それでも不明な点があれば最終的には従業員への聞き取りが行われます。
税務署の調査官から質問をされると従業員も緊張してしまうかもしれませんが、世間話のような切り口から、だんだんと会社の情報を収集していきます。
調査官の質問の意図を汲み取るのは難しいので、素直に受け答えをしているだけで不正が暴かれてしまうケースもあります。
税務調査の否認とは
税務調査において、申請内容が認められない「否認」についてご説明します。
- 税務調査での否認
- 否認を交渉する余地
- 経費の経費の修正申告をする
税務調査での否認
法人が提出した税申告の書類の内容について、認められないと判断されるのが否認です。
税務調査を行い、実態を調査した上で判断されるもので、否認となると追徴課税がかかってきます。
過少申告加算税や延滞税がかかってきますので、納税の負担が大きくなってしまいます。
否認を交渉する余地
正しく申告したつもりであっても、単純な計算ミスなどの間違いが起きる場合もあります。
調査官の指摘の通りであると納得できるのであれば、無駄に声を荒げずに追徴課税を払いましょう。
調査官の指摘に対して納得できない場合は、
こちらの申告が正当であるという主張をしても構いません。
交渉によって正当性が認められれば、税金が減額される可能性があります。
ただしこれらの交渉をするためには、経費に関する関係書類が保存されている必要があり、
本当に正当性が認められると期待できる内容にのみ有効であるといえます。
追徴課税されたくないという一心で、なんでもかんでも交渉をすれば良いというわけではありません。
経費の経費の修正申告をする
調査官が指摘する否認内容に納得できたら、
修正申告を行います。
修正申告とは、確定申告書を提出した後に発覚した誤りを、訂正するための書類です。
税務署に修正申告を提出して国税を修正し、
法人県民税・法人事業税・法人市町村民税の修正のためには自治体にも修正申告を提出しなくてはいけません。
修正申告をせずに放置していると延滞税がどんどん高額になってしまいますので、早めに取り掛かるようにしましょう。
特殊関係使用人の税申告に税理士が必要な理由
特殊関係使用人に給与を払う行為は問題のあるものではありません。
しかし正しく税申告しておく必要がありますので、税理士がついていた方が良いでしょう。
税理士が必要な理由として、以下のような点が挙げられます。
- 決算業務の正確性と信頼性の確保
- 業務に専念できる
- 税務調査で立ち合いができる
決算業務の正確性と信頼性の確保
税理士がついていると、税申告書類や決算業務に関して正確性と信頼性を確保できます。
これらの書類の作成は複雑なので、専門知識がある税理士にサポートを受けるのがおすすめです。
税理士に依頼すると費用がかかるのがデメリットですが、税務調査の対象になり追徴課税を課される方が大きな負担となるでしょう。
業務に専念できる
事業をしていく中で、同時に決算業務や税申告書類を作成していくと本業に支障がでてしまう可能性があります。
税理士に依頼できる部分を任せてしまえば、
本業への支障なく双方の流れがスムーズになります。
特殊関係使用人に関して税務調査を受ける場合、調査官の書類の調査だけでなく聞き取りが行われる可能性があります。
従業員が本業に専念する環境を整えるためにも、まずは税務調査の対象にならないような適正な申告をしていくべきです。
税務調査で立ち合いができる
それでも税務調査の対象になってしまった場合には、顧問税理士であれば税務調査の立ち合いが可能です。
税務調査当日だけでなく、税務調査当日に向けて書類の準備や想定される質問について、すり合わせをしていきます。
調査官への対応も基本的には顧問税理士が行いますので、安心して税務調査に臨めます。
税務調査に関するよくある質問
税務調査に関するよくある質問をまとめました。
- 税務調査はある日突然来ますか?
- 税務調査が入って追徴課税がない場合もありますか?
税務調査はある日突然来ますか?
税務調査は事前に電話で連絡があります。
税務調査の日程や時間を決めるためのものなので、無視せずに対応するようにしましょう。
悪質な脱税が疑われる場合は強制調査として突然調査が行われる場合もありますが、一般的には任意調査として事前連絡があります。
税務調査が入って追徴課税がない場合もありますか?
税務調査が入っても、追徴課税されない場合もあります。
税申告に誤りが認められなかった場合で、
「是認(ぜにん)」「申告是認」という結果が届きます。
是認という結果を受け取ったら調査は終了です。
これからも正しい申告を心がけていきましょう。
顧問税理士を検討しよう
特殊関係使用人とは、仕事を手伝っている家族や親族です。
業務内容や実態に基づき、また他の従業員や同業他社との水準が保たれた給与であれば問題ありません。
「正しく計算していても不正を疑われないか不安」「税理士と相談したい」という方は、お気軽に税理士にご相談ください。
顧問税理士を選ぶ際には、相性も重要です。
得意業務だけでなく、価値観や税制への倫理観、人間性も考慮した上で、相性の良い税理士を探していきましょう。
免責事項
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