2025.01.14
  • 税務調査

税務調査の対象となりやすい法人・個人の特徴とは?調査のリスクを減らすためのポイントを解説

読了目安時間:約 6分

事業を営む法人や個人事業主に対し、税務署から税務調査の連絡がくることがあります。

税務調査の対象となったとしても過度に恐れる必要はありませんが、事前の備えは重要です。

では、どのような場合に税務調査の対象となるのでしょうか。

本記事では、税務調査の対象になりやすいケースや、税務調査の対象にならないためのポイントを解説します。

税務調査の対象になる可能性は誰しもありますが、実は税務署が重点的に調査を行う法人や個人の特徴があるのです。

ぜひこの記事を参考に、どのような事業者に税務調査が積極的に行われるの理解を深め、適切な申告を行い、税務調査を乗り切りましょう。

税務調査とは

そもそも税務調査とは、国税局が管轄する税務署などによる、納税者が正しく税務申告を行っているのか調査することをいいます。

納税者が正しく申告・納税していれば問題ありませんが、中には計算ミスや漏れ、税額の計算ミス、さらには虚偽の申告をしている人もいるのです。

そのため、申告内容の確認と不正防止を目的として、国税庁が管轄する税務署などによって行われています。

税務調査の種類

税務調査は、以下の2種類に分けられます。

  • 任意調査
  • 強制調査

納税者の同意を得て、任意で実施されるものを任意調査、犯罪の取締りを前提とし、事前に通知がなく行われる調査を強制調査といいます。

任意調査と聞くと拒否できるかのような印象を持たれるかもしれませんが、たとえ任意調査だとしても調査の協力を拒否したり虚偽報告をしたりすると、罰則の対象となるので、任意調査・強制調査のいずれも拒否できないと思ってください。

税務調査は個人事業主も対象になる

法人企業に比べると個人事業主は事業規模が小さいことが多いため、税務調査が入らないのではと思われがちですが、事業規模の大小は関係なく、確定申告が必要な個人事業主に対しても税務調査は実施されます。

ただし、個人事業主に税務調査が入る確率は0.5%~1%程度と、法人に比べて少ないです。

それでも、確定申告を怠っていたり、不正申告していたと判断されると、本来支払うべき税金に加え、加算税や延滞税などのペナルティが課されるため、個人事業主であっても必要性を認識し、正確に確定申告をする必要があります。

税務調査で指摘を受けた場合のペナルティ

税務調査が入り、税務署から申告のミスや不正などの指摘を受けた場合、本来納めるべき税金の他に、ペナルティとして以下の税金を納めなければならなくなります。

  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 不納付加算税
  • 重加算税
  • 延滞税

内容にもよりますが、最も重いペナルティであれば、納めるべき税額の40%の加算税が課されるだけでなく、納付期限の次の日から計算して課される延滞税も納める必要があり、さらには刑事罰に処されるリスクもあるので、注意が必要です。

税務調査の対象となりやすい法人の特徴

税務調査 法人

毎年税務調査を実施する法人・個人の数には限りがあり、すべての法人を対象に行われるわけではありません。

法人の中でも、以下の特徴に該当するケースでは税務調査の対象になりやすい傾向があります。

  • 事業規模が大きい
  • 売上や利益に大きな変動がある
  • 税務調査が入りやすい業種である
  • 過去の税務調査で指摘を受けた企業
  • 売上が増加しているが利益が少ない

それぞれ詳しく説明していきますので、該当する場合には税務調査に備えて対策をしていきましょう。

事業規模が大きい

事業規模が大きいほど納税額が多くなる傾向にあるため、規模が大きい法人は税務調査の対象なりやすいです。

なぜなら、納税額が多いということは、申告内容に誤りがあった場合に影響も大きくなるといえるからです。

ただし、事業規模が小さいからといって税務調査の対象から外れるわけではなく、他に目立つ特徴がある場合には税務調査が行われる可能性もあるので注意しましょう。

売上や利益に大きな変動がある

売上や利益などが大きく変動している法人は、調査の対象となる確率が高まります。

特に、大幅な黒字転換や利益の急増が見られる場合は税務署から目をつけられる可能性が高いです。

直近数年の間で売上が大きく増加していれば、架空売上や不正な取引を疑われる場合があり、利益の急増は、収入の過大計上、もしくは費用の過少計上などが疑われやすくなります。

そのため、収入や支出の計上にミスはないか、帳簿の整合性がとれているかをチェックしましょう。

税務調査が入りやすい業種である

過去の実績から不正が多いと税務署や国税庁から判断されている業種は税務調査が入りやすいです。

国税庁が公表している近年の「実地調査の状況」によると、税務調査が入りやすい業種として具体的には以下が挙げられます。

  • バー・クラブ
  • 風俗業
  • 外国料理店
  • 廃棄物処理業
  • 飲食店
  • 自動車修理工場
  • 土木建築業者 など

これらは実際の売上額を申告せず、一部を除外する不正が発生しやすい業種といえるでしょう。

このような不正を防止するために、不正が多い業種を重点的に調査の対象とする傾向にあります。

過去の税務調査で指摘を受けた企業

税務調査

過去に税務調査の対象となり、指摘を受けたことがある企業も、再度調査の対象となりやすいです。

指摘された事項を遵守しているかどうか、特に厳しく監視されます。

売上が増加しているが利益が少ない

納税額は売上から経費などを差し引いた利益から算出されるため、売上が増えても利益が伴わなければ、納税額は増えないということになります。

そのため、売上が増加しているにもかかわらず利益が少ない場合、過少申告を疑われて税務調査の対象となる可能性があるのです。

特に、同業他社と比べて売上規模が同程度であるのに、利益率が著しく低い場合などは注意しましょう。

税務調査の対象となりやすい個人事業主の特徴

個人事業主

先述した通り、税務調査の対象になるのは法人だけではなく、個人事業主が対象になるケースもあります。

税務調査の対象になりやすい個人事業主の特徴としては、上述した項目に加えて以下の通りです。

  • 確定申告をしていない
  • 売上が1,000万円近くある
  • 多額の現金取引をしている
  • 新しいビジネスを行っている
  • 経費に不審な点がある
  • 顧問税理士がついていない

詳しく見ていきましょう。

確定申告をしていない

そもそも確定申告をしていない個人事業主は、税務調査の対象になる可能性が高くなります。

「確定申告しなければそもそもバレないのでは」と思われがちですが、取引先の税務申告や税務調査によって、取引している個人事業主の売上が推測できるので、すぐに発覚してしまいます。

売上がある程度あるにもかかわらず、納税していなければ税務調査の対象になる確率は上がってしまうので、注意しましょう。

売上が1,000万円近くある

売上の規模が大きいほどミスも発生しやすいため、個人事業主の場合、課税所得が1,000万円を超えると税務調査の対象になりやすいと言われています。

さらに、売上が1,000万円を少し下回っている場合にも注意が必要です。

なぜなら、インボイス登録をしている場合を除き、売上が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の課税業者として消費税を納税しなければならないため、売上が1,000万円をぎりぎり下回っているような場合には、消費税逃れを疑われる可能性があるからです。

多額の現金取引をしている

現金取引を行っている個人事業主も税務調査が入る確率が高いといえます。

例えば、顧客からの対価を現金で行っている飲食店や小売店、美容室などが挙げられます。

現金でやり取りを行っていると、脱税の証拠が残りづらいため、不正を疑われやすいのです。

さらに、建設業など多額の支払いを現金で取引しているような場合も注意しなければなりません。

新しいビジネスを行っている

ビジネスマン

ITやインターネット系のビジネス、シェアリングビジネス、暗号資産など、近年経済活動が広がっている新興企業に対しては、その事業形態が従来のものと異なるため、情報を集めるために積極的に税務調査を行っています。

新しい分野のビジネスは盛り上がりを見せているため、参入を検討する個人事業主も多いです。

しかし、税務調査のリスクがあるということは把握しておきましょう。

経費に不審な点がある

経費の計上に不自然な点がある場合、詳細な調査が行われる場合があります。

たとえば、一般的に交際費が少ない業種で、多額の交際費を計上している場合には、私的な支払いを経費に計上しているのではと疑いをもたれ、税務調査の対象となることがあるのです。

特に、個人事業主は仕事とプライベートとの境界が曖昧になりやすいため、事業と関係ない経費が計上されていないか厳しくチェックされます。

高額な支出がある場合には特に注意しましょう。

顧問税理士がついていない

確定申告を税理士に依頼せず、自分で行う個人事業主も多いかと思いますが、顧問税理士をつけている人に比べると、税務調査が入りやすくなります。

税理士が作成した確定申告書であれば、単純ミスや故意による脱税が起こりにくくなるほか、税務署からも脱税や過少申告の可能性が低いと判断されるため、税務調査の優先度は低くなります。

一方、個人事業主が自分で確定申告書を作成すればミスが発生しやすく、不正を疑われやすいです。

税務調査の対象とならないための注意点

税務調査対策

税務調査が入ると、たとえ意図的な不正がなかったとしても、加算税が課されて経済的な負担が増えたり、企業の信頼が損なわれたりと、さまざまなリスクが生じる恐れがあります。

このようなリスクを避けるためにも、正確な税務申告が行えるように日々心掛けることが重要です。

ここでは、税務調査が入る確率を下げるためのポイントをご紹介します。

確定申告を正しく行う

正しい確定申告書を作成することは、税務調査のリスクを避けるためには欠かせません。

確定申告書には、収入や経費、税額などを記載しますが、これらの情報に誤りがあると、税務署からの問い合わせや調査が入るリスクが高まるので、計算ミスや記入漏れがないかどうか、提出前に入念にチェックしましょう。

また、確定申告の締め切り前にまとめて行うと、ミスが起きやすくなるので、日々、時間の余裕があるときに、こまめに記帳を進めるのがポイントです。

意図的な不正は行わない

税務調査が入るリスクを減らすためには、経費を水増ししたり意図的に売上を調整したりするなどの意図的な不正行為は避けなければなりません。

税務署は納税者の情報を一元で管理する「KSKシステム(税総合管理システム)」を使って申告内容に不正がないか厳しくチェックするなど、さまざまな手段を使って脱税行為を見逃しません。

悪質な不正行為が発覚した場合は税率の高い重加算税に加えて延滞税という非常に重いペナルティが課されるだけでなく、刑事罰に処される恐れもあります。

このようなリスクを避けるためにも、意図的な不正は決して行わず、日頃から正確な申告・納税を心がけるようにしましょう。

顧問税理士をつける

顧問税理士がいれば、普段から税務調査対策を心がけることができるほか、確定申告の作成や提出も代行してもらえます。

確定申告の作成や提出を税理士に依頼すると、確定申告書の欄に担当した税理士が署名押印してくれるので、税務調査が入るリスクを軽減できるでしょう。

また、万が一、法人や個人事業主が税務調査の対象となった場合でも、顧問税理士がいれば税務調査前の書類の準備をサポートしてもらえるだけでなく、税務調査当日も立ち会ってもらえ、税務調査官の専門的な質問に対しても経営者に代わって回答してもらったり、専門的知見に基づいて助言したりといったサポートを受けられます。

不正を疑われないよう適切な申告・納税を行おう

税務調査対策

きちんと税務申告をしているつもりでも、いざ「税務調査が入る」となったときは不安になるものです。

また、調査はもちろん、準備にも手間や時間がかかるため、なるべく税務調査を避けたいですよね。

今回ご紹介した税務調査の対象になりやすい法人・個人の特徴や注意点についてしっかりと理解し、対策をとっておけば税務調査のリスクを減らすことが可能です。

意図的な不正はすぐに発覚してしまうので、顧問税理士を雇うなどの対策をとりながら、疑われないように日々正しく記帳を行い、正しく申告するようにしましょう。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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