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無申告加算税が課されるケースとは。免除されるケースもあるって本当?
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
無申告加算税とは、確定申告の申告期限までに申告を行わず、納税をしなかった場合に課せられる税金です。申告をしていない場合のみに課せられる税金であるため、無申告加算税にはペナルティの意味合いがあります。
しかしながら、無申告加算税は無申告の場合でも必ず課せられるわけではありません。では、どのような場合に無申告加算税が課され、無申告加算税が免除されるのでしょうか。
今回は、無申告加算税の概要や無申告加算税が課税されるケース、免除されるケースなどについてご説明します。
無申告加算税とは
会社員の場合は、会社は従業員に支給される給与や賞与から所得税を徴収し、個人に代わって国に納税する義務があります。そのため、会社員の場合は、給与や賞与から所得税や住民税を差し引かれる形で納税しています。
しかし、会社に勤めていない人であっても一定以上の所得を得ている方は、自分で確定申告を行い、税金を納めなければなりません。しかし、日本では納税者が自ら申告をして納税をする申告納税制度が採用されているため、中には確定申告を行わない人もいます。確定申告をする必要があるにもかかわらず、申告期限までに確定申告をしなかった場合に課せられる税金を無申告加算税といいます。
無申告加算税と確定申告
無申告加算税は、確定申告を期限までに行わなかった場合に課せられる税金ですが、すべての人に確定申告の義務があるわけではありません。では、どのような場合に確定申告が必要になるのでしょうか。
確定申告が必要になるケースを、給与所得者以外と給与所得者に分けてご説明します。
給与所得者以外で確定申告が必要な人とは
給与所得者ではない人の場合、確定申告が必要になるのは、次のような条件に当てはまるケースです。
・自営業などの個人事業主で、年間48万円を超える事業収入がある人
・土地や家屋などを貸すことで年間48万円を超える不動産所得を得ている人
・特定口座を使わずに、株取引で年間48万円を超える譲渡益を得ている人
・FX取引で年間48万円を超える譲渡益を得ている人
・生命保険の一時金や競馬の払戻金など、年間50万円を超える一時所得を得ている人
・源泉徴収されていない退職所得がある人
・400万円を超える公的年金を受給している人
・公的年金以外に20万円以上の所得を得ている人
給与所得者で確定申告が必要な人とは
給与所得者の場合、源泉徴収がなされており、会社で年末調整を行っているため、原則として確定申告をする必要はありません。しかし、次のような場合は給与所得者であっても確定申告が必要です。
・年間の給与収入が2,000万円を超える人
・副業をしており、年間20万円以上の所得を得ている人
・2か所以上から給与を受けており、年末調整を行っていない給与収入が20万円を超えている人
無申告加算税が課せられる場合の流れと税率
確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に得た所得について、翌年の2月16日から3月15日までに申告し、所得税を納付するルールです。前述のように確定申告の必要がある人がこの期限内に確定申告を行わず、所得税を納税しなかった場合には、無申告加算税が課せられます。
無申告加算税が課せられる場合には、次の3つのケースがあり、ケースによって無申告加算税の税率も変わります。
税務署の指摘を受けて修正申告を行った場合
税務署では、納税者が正しく税金を納めているかを調べるため、毎年、税務調査を実施しています。税務調査では、収入や支出の状況などについて帳簿や請求書、領収書などの書類を細かく確認し、どの程度の課税所得を得ているのか、正しく確定申告を行い、正しく納税を行っているかの調査がなされます。税務調査によって、確定申告の必要があるにもかかわらず確定申告を行っておらず、所得税を納税していないことが発覚すれば、無申告加算税の納付が求められます。
この場合の無申告加算税の税率は、納めるべき税額が50万円までの部分については15%、50万円を超え300万円以下の部分までは20%、300万円を超える部分については30%です。
無申告加算税の税率は段階的に高く設定されており、納税額が多いにもかかわらず確定申告を怠り、申告漏れの額が大きくなっている人ほど、重い税率が課せられる仕組みとなっています。
税務調査からの事前通知を受け、税務調査前に期限後申告を行った場合
税務調査の際には、事前に税務署から税務調査を行う旨の通知がなされます。この連絡を事前通知といいます。
事前通知を受ける際には、調査日時について相談することが可能です。そのため、税務調査が実施されるまでの間に自主的に期限後申告を行い、納税を済ませることもできます。この場合は、無申告加算税が5%軽減される措置を受けることが可能です。
事前通知を受けて期限後申告を行う場合の無申告加算税の税率は、50万円までの部分については10%、50万円を超え300万円以下の部分までは15%、300万円を超える部分については25%です。
税務調査からの事前通知を受ける前に自主的に期限後申告を行った場合
うっかり確定申告を忘れていた人や確定申告が必要であることを理解していなかった人が、何かのきっかけで確定申告が必要と気が付くこともあるでしょう。税務署からの事前通知を受けずに、納税者が自主的に期限後申告をした場合は、無申告加算税の税率はさらに軽減されます。
税務署からの通知を受けずに、期限後申告をした場合の無申告加算税の税率は、納めるべき税額の5%です。
過去に無申告加算税等を課せられたことがある場合は税率がさらに加重される
過去5年以内で、税務調査後に無申告加算税や重加算税が課されたことがある場合や、3年連続で無申告を繰り返した場合には、さらに税率が10%加重されます。
無申告の状態が長くなるほど、納めるべき税額も多くなる点に注意しなければなりません。
無申告加算税が免除になるケース
確定申告を行う義務のある人が2月16日から3月15日までの確定申告期間に確定申告を行わなければ、無申告加算税が課せられます。しかし、例外として無申告加算税が免除されるケースがあります。無申告加算税が免除になるケースをご紹介しましょう。
法定申告期限から1ヶ月以内に期限後申告をした場合
次の要件をすべて満たす場合は、期限後申告であっても無申告加算税が免除になります。
(1) その期限後申告が、法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に行われていること。
(2) 期限内申告をする意思があったと認められる一定の場合に該当すること。
(1)の要件について
法定申告期限とは、2月16日から3月15日までの間のことで、開始日と終了日が土曜日や日曜日にあたる場合は、次の平日が期限となります。例えば3月15日が土曜日だった場合の法的申告期限は3月17日です。したがって、この場合に無申告加算税の免除を受けるためには、4月17日までに申告を済ませておく必要があります。
つまり、期限後申告であっても無申告加算税が免除されるためには、必ず法定申告期限から1ヶ月以内に自主的に期限後申告をしなければならないのです。
(2)の要件について
期限内申告をする意思があったと認められる場合とは、次のすべての要件を満たす場合です。
・その期限後申告に係る納付すべき税金の全額を法定納期限までに納付していること。(口座振替納付の手続きをした場合は期限後申告書を提出した日まで。)
・その期限後申告書を提出した日の前日から起算して5年前までの間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていないこと。
この要件を見ると「納付すべき税金の税額を法定期限までに納付している」と記載されています。法定納期限とは、確定申告の期限と同じ日です。したがって、この要件は法定申告期限から1ヶ月以内に行う期限後申告であっても、無申告加算税が免除されるのは、納税を法定期限までに済ませているケースに限定されることを意味します。
確定申告を行うためには、確定申告書等の書類を準備しなければなりません。しかし、納税の計算が済んでいれば、申告書が完成していなくても納税することはできます。そのため、確定申告は遅れても、納税は期限までに済ませていなければ無申告加算税は免除されないのです。このことから、無申告加算税の免除が適用されるケースは、非常に稀なケースであると考えられるでしょう。
正当な理由があると認められる場合
期限までに確定申告を終えられなかった正当な理由が認められた場合も、無申告加算税が免除される要件となっています。しかしながら、確定申告が遅れた理由としてどのような理由が正当な理由として認められるのかは、明確に示されてはいません。
これまでの事例を見ると、災害や感染症の拡大の際などに無申告加算税が免除されるケースがありました。新型コロナウィルスの感染が拡大した際には、コロナの影響で期限までに申告や納税をすることができないと認められるやむを得ない理由がある場合には、所属税務署長に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を申請し、承認を受けることで、2ヶ月以内の範囲で個別指定による期間延長が認められる措置が取られています。
また、東日本大震災が発生した際にも、申告・納付の期限延長措置が取られています。この場合は、震災による大きな被害を受けた青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の5つの県に限り、申告・納付期限を延長するというものでした。特に被害が大きかった岩手県の一部の自治体では、東日本大震災の発生から1年以上が経過した平成24年4月2日に延長期限の期日が設定されていました。
このようなことから、災害や感染症の流行などの理由で、期限内に申告や納税ができない場合などが、無申告加算税が免除される正当な理由として認められると考えられます。
無申告加算税の額が5,000円未満だった場合
無申告加算税の額を計算した際に、その額が5,000円未満だった場合は、無申告加算税は免除となります。これは、無申告加算税だけでなく、過少申告加算税や不納付加算税といった加算税すべてを対象とした少額不徴収と呼ばれるルールです。
ただし、この場合であっても無申告加算税の納税は免除されるものの、無申告加算税は課されているという点に注意しなければなりません。無申告加算税が5,000円未満の場合に納税が免除される理由は、本来納めるべき税金と申告した税金との差額に1万円未満の端数がある場合は、切り捨てるというルールが関係しています。このルールに則った場合、無申告加算税が5,000円未満であった場合には無申告加算税は課されるものの、徴収は免除されるというわけです。
本来納めるべき税金が1万円未満だった場合
また、期限までに申告・納税をしていなかった場合でも、無申告加算税の計算の基礎となる増差税額が1万円未満の場合も、無申告加算税は免除されます。
無申告加算税を軽減するためには自主的な期限後申告を
無申告加算税が免除される要件をご紹介してきました。しかし、無申告加算税の免除を受けるためには、税金の納付は法定納期限までに済ませている場合や正当な理由が認められる場合など、厳しい要件を満たす必要があります。したがって、期限までに確定申告を行うのを忘れていた、確定申告の必要性があることを知らなかったという事情だけでは、無申告加算税は免除にならないのです。
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告を行えば、無申告加算税の税率は5%に低減できます。また、事前通知を受けた場合であっても、税務調査が実施される前に期限後申告を行えば、無申告加算税の税率が軽減され、負担する税額を軽減することが可能です。
無申告の状態を続けている場合、少なくとも過去5年分に渡って税務調査が実施され、5年分の税金と5年分の無申告加算税が課されます。追徴課税は、原則として一括で納付しなければなりません。5年分の所得税と無申告加算税、さらには延滞税も加えた額の納税が求められれば、その額は高額になる恐れがあります。
期限までに確定申告を行っていない場合には、税理士にも相談しながら、早めに期限後申告を行うようにしましょう。
まとめ
無申告加算税とは、法定申告期限までに確定申告を行い、税金を納税しなかった場合に課せられるペナルティの意味合いを持つ税金です。無申告加算税が免除されるケースは、法定納期限内に納税は済ませており、法定期限から1ヶ月以内に期限後申告をした場合や正当な理由が認められる場合などに限定されます。したがって、期限内に確定申告を行わなかった場合、ほとんどのケースにおいて無申告加算税の納税が課せられると考えておいた方がよいでしょう。
何らかの理由で申告と納税を行ってこなかった場合には、税務調査の前に期限後申告を行い、少しでも税額を抑えることをおすすめします。
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