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税務調査の受忍義務とは?任意なら拒否できる?罰則なども解説

読了目安時間:約 6分
税務調査の説明において聞かれる「受忍義務」とは、どのような義務なのでしょうか。税務調査にも「強制調査」や「任意調査」などいくつかの種類があり、それぞれどのような調査を受けるのか、任意の場合は調査を拒否することは可能なのかなど、気になる点も多いのではないでしょうか。
ここでは、税務調査の受忍義務や調査官の質問検査権など、税務調査における義務や権利のほか、拒否した場合の罰則の有無などについてわかりやすく解説していきます。
目次
税務調査の受忍義務とは
まずは、税務調査の受忍義務とは何かについて解説します。
税務調査に対する納税者の義務
納税者が税務署から税務調査や帳簿書類などの提出を要求された場合、拒否したり妨げたりしてはいけないことが法律で定められています(国税通則法第128条)。
税務調査の受忍義務とは、納税者は正当な理由がない限り、税務調査に応じなければならない義務のことをさします。
税務調査における「質問検査権」とは
税務調査の調査官には「質問検査権」と呼ばれる権利があります。質問検査権とは、税務調査の際に必要となる資料の確認や情報の聞き取りなどができる権利です。税務調査における主な質問検査権には、次のようなものが挙げられます。
・納税者に対する質問
「この月から急に経費が増えているのはなぜですか」「なぜこの取引先だけ売掛金の回収が遅いのですか」など、税務調査において必要とされる質問を納税者に対して行う権利です。
・書類、資料の検査
帳簿類や領収書、請求書、パソコン内のデータ、契約書や各管理表、台帳など、税務調査において必要とされる書類や資料、データなどを確認し、内容を検査する権利です。
・書類、資料の提出要請
上記検査で必要な書類や資料、データについて、納税者へ提出や提示、閲覧などを要請する権利です。
税務調査において、調査官が質問検査権を行使するためには、納税者の承諾が必要となります。納税者が拒否すれば質問検査権を行使することができなくなってしまうため、納税者には質問検査権を拒否してはならない「受忍義務」が法律で定められているのです。
質問検査権を拒否したらどうなる?
調査官の質問検査権を納税者が拒否した場合、国税通則法第128条では1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることが定められています。
質問検査権と受忍義務は、納税者の承諾がなければ質問検査権を行使できないが、納税者は拒否すると罰則の対象となるため、実質拒否することができないという関係性となっています。
任意調査は断れる?税務調査の種類
税務調査にはいくつかの種類に分けることができ、中には「任意調査」と呼ばれる税務調査もあります。「税務調査は任意で応じてもいいのか」「任意とつくなら絶対じゃないのだろう」と考えてしまいそうですが、実際はどうなのかについて解説していきます。
税務調査の種類
税務調査は「任意調査」と「強制調査」の2種類に大きく分けることができます。
・任意調査
所得税や法人税、消費税や相続税など、納税者の申告内容について正しいか、間違いがないかを確認する調査です。一般的な企業や個人事業主が受ける税務調査のほとんどが任意調査となります。
管轄の税務署の税務調査官が調査を行うのが一般的ですが、国税局調査部などが調査を行うケースもあります。調査官には質問検査権があり、納税者には受忍義務があることは上記で解説した通りです。
任意調査には、事業所や店舗、倉庫などに調査官が直接出向いて行う「実地調査」や、電話書面などによる簡易な接触、税務署へ来てもらって調査する「来署依頼」などがあります。
・強制調査
国税犯則取締法に基づき、国税庁調査査察部によって行われる税務調査です。裁判所から令状も発行され、証拠品の押収なども行われる強い権限のある税務調査となります。
任意調査と強制調査の違い
強制調査が事前の予告なく行われるのに対し、一般的な任意調査では事前に調査を実施する旨の連絡があります。強制調査では納税者の承諾を得ることなく強制的に調査されるのに対して、任意調査では税務調査の実施から資料の閲覧、提示など、すべて納税者から同意を得た上で行われる点が異なります。
任意調査の中でも、現金取引がメインの店舗などにおいて無予告で抜き打ち的に税務調査が実施されることもありますが、その際でも税理士へ連絡するまで待ってもらうことなどは可能です。
任意調査は断れるのか
結論から言うと、納税者が任意調査を拒否することはできません。任意調査は「任意」と呼ばれるため、必ず調査を承諾しなくてもよいように考えたくなりますが、実際には受忍義務により、正当な理由なく任意調査を拒否することはできず、拒否すれば懲罰の対象となってしまいます。
ただし、任意調査を承諾できない正当な理由があれば、調査日時をずらしたり、延期したりすることは可能です。正当な理由としては
・出張などで調査日に出社できない
・重要な商談があり業務を中断できない
・事故や入院などで調査協力が難しい
・代表取締役又は経理担当者が不在
・同席予定の税理士の日程を確認したい
などが挙げられます。事前通知で税務調査が実施されることがわかった時点ですぐには承諾せず、日程を確認してから折り返すようにすると調整しやすいでしょう。
税務調査で確認されやすいポイントと注意点について
ここでは、一般的な任意調査において確認されやすいポイントや注意点について解説します。
税務調査で確認されやすいポイント
税務調査で確認されやすいポイントとしては
・会社概要や仕事の内容
・起業のきっかけ
・経費
・取引先
・従業員数、雇用形態
・申告、記帳
・家族構成
などが挙げられます。
起業のきっかけや家族構成など、一見雑談のように見える会話から、思わぬ指摘が入るケースも少なくありません。
例えば、事業が軌道に乗るまでの間の収入源を聞きたい時に、開業や起業のきっかけについて質問されることがあります。
専従者給与や架空の給与が存在しないか、プライベートの支出を経費にしていないかを確認したい時には、家族構成や従業員に関する質問をされることもあるのです。
税務調査の質問に答える際の注意点
税務調査では納税者に受忍義務があるため、調査官の質問検査権を拒否するような態度は取るべきではなく、基本的には誠実に協力する姿勢が大切となります。
しかし、次のような対応は誤解を招く可能性があるため注意が必要です。
・攻撃的、感情的な口調
自身が正しいことを主張しようとするあまりに、攻撃的な口調や大きな声を出す、まるで喧嘩を売っているような口調になってしまうことはおすすめしません。図星を突かれて怒っていると捉えられるため、調査が厳しくなる可能性や調査を妨害しているとみなされ、ペナルティを受ける可能性もあります。
抜き打ちで行われる強制調査の場合は物々しい雰囲気の中行われますが、一般的な任意調査は、穏やかに淡々と進むケースが多いものです。
とはいえ、調査官も人間ですから相性の合う、合わないがあるかもしれません。ちょっとした表現や言い方などから嫌な気分になったとしても感情的にならず、淡々と事実だけを説明するようにしましょう。
・過度の雑談
商談や会議の際にする雑談はよい雰囲気づくりに役立ちますが、受忍義務があるとはいえ、税務調査においては過度な雑談は控えた方がよいでしょう。
例えば、家族旅行の話をしていて、同時期に同じ地方への出張費を計上していた場合、私的な支出を経費に計上していないか疑われる可能性があります。ブランド品や車の購入など、高価な買い物への支出はどこから出ているのかなど、事業と関係のない話からあらぬ疑いをかけられるリスクが高まってしまうこともあります。
和やかに場を進行させたい気持ちからだったとしても、税務調査では質問に端的に答え、事業と関係ない話はし過ぎないなど、必要最低限の会話に留めた方がよいでしょう。
・曖昧な表現
「たぶんそうだったと思います」「はっきり覚えていませんが」「もしかしたらやっていたかもしれない」など、曖昧な表現は疑惑を持たれやすいため注意が必要です。
はっきりと答えられるべき情報について曖昧な表現を使うと「架空の話ではないか」「申告内容が嘘だったのでは」といった疑いの原因となることがあります。
曖昧でいい加減な性格だとみなされた場合、計算や計上、申告内容もいい加減にしていないかと疑われる可能性もあります。記憶が曖昧な場合は「○○の資料を見ればわかります」「その件は担当の○○が知っているので確認します」など、これも淡々と確実な情報を提供するように努めましょう。
・喋らない
人前で話すのが苦手な場合や、税務調査という状況による緊張感から、質問を受けてもうまく言葉が出ず沈黙してしまうと、調査の妨害行為と捉えられる可能性があります。
税務調査の対応に自信がない場合は無理に対応しようとせず、税理士などの専門家に同席してもらうことをおすすめします。
税務調査の対応を税理士に任せるメリット
税務調査の対応を税理士に任せた場合のメリットには、以下のような点が挙げられます。
税法上の観点から対応してもらえる
税務署の調査官は、税務調査のプロであり、多くの税務調査でどこを見るべきか、追徴課税となるポイントなどを見極めて調査や質問を行います。
税務調査は税理士がいなくても対応することが可能ですが、税法のプロである税理士に同席してもらうことで、税法上の観点から回答してもらうことが可能となります。
プロにはプロが対応することで調査もスムーズに進み、追徴課税のリスクも押さえやすくなるのです。
税務調査前からサポートを受けることで適正な申告、納税ができる
税務調査が入る前の段階や、申告前の段階から税理士のサポートを受けていれば、税務調査で指摘されやすいポイントを押さえて書類を作成、申告することができます。
特に申告時の書類作成を税理士へ依頼することで書類の信頼性が高まり、税務調査時にも税理士が作成した書類の方が税理士自身で説明しやすいため、2重のメリットが得られます。税理士が申告書類を代理作成する際に書面を添付する「書面添付制度」を利用すれば、税務調査の連絡も納税者ではなく税理士のところへ連絡が行くため、事前通知から対応を税理士へ任せることが可能です。
間違った知識や計算方法で申告を続けるリスクが減らせるだけでなく、合法的な節税方法を教えてもらうことも可能です。
適正な申告と納税を続けていれば税務調査を怖がる必要もなく、安心して営業活動に専念できるでしょう。
税理士へ依頼するメリットを高めるポイント
税務調査への対応を税理士へ依頼するメリットを高めるなら、税務調査対応の実績を持った税理士へ依頼することが大切です。
税務署や国税の内情に詳しく、安心して調査対応を任せられる税理士へ依頼すれば、追徴課税のリスクを軽減しやすくなるでしょう。
税務調査対応は経験豊かな税理士へ相談を
税務調査の悩みを解消するには、税務調査対応の実績が豊富な税理士事務所へ相談してみるのがおすすめです。
税理士法人松本では、国税OBや元税務署長の税理士が10名以上在籍しており、年間1,000件を超える税務調査の相談実績を持っています。
これまでに数多くの税務調査で追徴金ゼロの結果を出しており、税務調査対応を専門に扱う税理士法人です。
「既に顧問の税理士がいる」「無申告の期間があるが誰にも相談できない」といったご相談にも親身に対応しています。
全国どこでも、ご相談予約はフリーダイヤル又は専用フォーム、LINEにて受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
税務調査の受忍義務とは、納税者が税務調査の拒否や妨害をしてはならないと法律で定められた義務のことです。ある日突然強制的に実施される強制調査は拒否する間もなく実施されますが、実施に納税者の承諾が必要な任意調査も、受忍義務があるため拒否することはできなくなっています。受忍義務を無視して税務調査に対応しなければ、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されます。
税務調査には協力しつつ、あらぬ疑いをかけられないように対応することが大切です。対応に不安がある場合は税理士のサポートを受けて、税務調査のリスクを最小限に抑えましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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- 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
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