2025.04.3
  • 税務調査

個人事業主で税務調査の目をつけられる金額はいくらから?

読了目安時間:約 6分

税務調査は、法人、個人に関係なく、納税の義務がある人を対象に実施される調査です。個人事業主も納税の義務があれば、税務調査の対象になる可能性があります。正しく確定申告を行っているとしても、できれば税務調査は避けたいと考える方が多いのではないでしょうか。

納税者は誰もが税務調査の対象となる可能性があるといっても、個人事業主の場合、税務調査の対象として目をつけられる金額の目安があるといわれています。では、税務調査の対象として目をつけられる金額の目安とはどのくらいになるのでしょうか。

今回は、個人事業主が税務調査の対象として目をつけられる可能性が高い金額や税務調査の対象として選ばれやすい個人事業主の特徴などについてご説明します。

 

税務調査の対象となる個人事業主の所得金額は?

一定以上の所得を得ている個人事業主は、納税の義務があるため、税務調査の対象になります。納税の義務が発生するのは、年間の所得金額が48万円以上となる人です。この48万円という金額は、売上高ではありません。所得額とは、売上から必要経費を差し引いた金額のことです。

例えば、個人事業主として1年間に100万円の売上を得た場合でも、事業を営むためにかかった経費の額が60万円だった場合は、所得額は40万円です。そのため、確定申告をする必要はありません。

また、企業に勤め、企業から給料を得ている人の場合は、会社が従業員に変わって所得税の納税をしているため、医療費控除や住宅ローン控除などがない限り、確定申告は不要です。しかしながら、昨今では、副業解禁の動きを捉え、本業以外に副業をする人も増えています。会社員で副業をしている人も、副業で一定金額以上の所得を得ている場合には確定申告が必要です。副業で確定申告が必要になるのは、年間20万円を超える所得がある場合です。

 

税務調査で目をつけられる金額の目安は?

税務調査で目をつけられる金額の目安は、年間の課税売上が1,000万円を超えるあたりだといわれています。しかしながら、税務署が税務調査の対象とする個人事業主の売上の金額について公に発表しているわけではありません。そのため、確実に税務調査の対象として目をつけられる金額の目安は売上1,000万円前後となると言い切ることはできません。しかし、税務調査の実施状況を見ると売上1,000万円を1つの目安金額として税務調査の対象を選んでいると考えられます。

 

1,000万円という金額が税務調査で目をつけられる理由

年間の売上高が1,000万円前後であることが税務調査の対象として選ばれやすくなる、1つの目安となる理由には、消費税が関係します。消費税は、売上高1,000万円を超えると納税が必要になるからです。インボイス制度のスタートにより、年間の売上高に関わらず、課税事業者を選択するケースも増えています。しかしながら、インボイス制度が開始される前は、年間の課税売上高によって消費税の納税義務が発生するかどうかが変わったため、年間の売上高を1,000万円以下に抑えようとする個人事業主が多かったのです。

年間の売上金額が1,000万円を超えると、翌々年度から消費税の課税事業者となります。そのため、売上を過少申告したり、経費を多めに計上するなどして、売上額が1,000万円を少し下回るような金額に抑えているケースが少なくありませんでした。そのため、年間の売上金額が1,000万円あたりにある個人事業主は不正が行われやすいと税務署にも認識され、税務調査の対象として目をつけられることが多いのです。

 

税務調査時に消費税も同時に調査されるケースが多い

年間の売上金額が1,000万円前後の個人事業主が税務調査の対象として目をつけられるもう1つの理由は、税務署側で所得税だけの調査ではなく、消費税も合わせて調査をしたいと考えるケースが多いからです。一般的に、個人事業主を対象とした税務調査の際には、消費税の課税事業者であれば、所得税と消費税の申告内容について同時に調査を行います。しかし、所得税だけの納税義務しかない個人事業主の場合、消費税について税務調査を実施することはできません。そのため、年間の売上金額が1,000万円を超える、または1,000万円をギリギリ超えない程度の納税者に目をつけることが多いのです。

 

年間の売上金額が1,000万円以下だと税務署から目をつけられない?

前述のように、税務署では税務調査の対象となる納税者を選ぶ際の基準を明確に示していません。したがって、売上や所得の金額だけで税務調査の対象を選んでいるとは言い切れない部分があります。もし、金額だけを目安に税務調査の対象者に目をつけるとなると、少額の納税者は、不正をしていても税務調査の対象として選ばれないということになってしまいます。そのため、年間の売上金額が1,000万円に満たないからといって絶対に税務調査の対象として目をつけられないわけではありません。売上金額が1,000万円未満であっても、しっかりと期限までに正しく確定申告を行うことが大切です。

 

税務調査の対象として目をつけられる個人事業主の特徴

税務調査の対象として目をつけられる個人事業主には、金額の面以外においても特徴があります。税務調査の対象になりやすい個人事業主は次のような条件に該当する人です。

 

確定申告をしていない

確定申告をしなければならないにもかかわらず、確定申告をしていない状態を「無申告」といいます。無申告の人は、税務調査の対象として目をつけられる確率が高くなります。

確定申告をしていない場合でも、何らかの所得を得ている場合、税務署ではその情報を把握しています。例えば、企業や個人事業主と取引をし、報酬を受け取っている場合、取引先の企業や個人事業主は税務署に支払調書を提出しなければなりません。支払調書とは、誰に、どのくらいの報酬を支払ったのかについて記載した法定書類です。

したがって、個人事業主として一定以上の報酬を受け取っている場合、取引先が提出した支払調書によって、おおよその売上額を税務署は把握しているのです。そのため、納税の義務があるにもかかわらず、確定申告をしていない個人事業主は、税務調査の対象として目をつけられやすいといえます。

 

不正の多い業種を営んでいる

不正がよく行われている業種に該当する事業を営んでいる場合、売上金額に関わらず、税務調査の対象として目をつけられる傾向にあります。国税庁では毎年、税務調査の実施状況についての報告書を公開しており、その中で、申告漏れ所得金額が高額な業種のランキングも公表しています。

令和6年11月に公表された「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を見ると、令和5年に申告漏れの額が高額だった業種は次のようになっています。

 

順位 業種 1件あたりの申告漏れ所得金額 1件あたりの追徴税額(含加算税)
1 経営コンサルタント 3,871万円 1,040万円
2 ホステス、ホスト 3,654万円 507万円
3 コンテンツ配信 2,381万円 436万円
4 くず金卸売業 2,068万円 683万円
5 ブリーダー 2,028万円 459万円
6 焼き鳥 1,657万円 427万円
7 太陽光発電 1,625万円 119万円
8 内科医 1,621万円 408万円
9 スナック 1,616万円 326万円
10 西洋料理 1,517万円 288万円

参照:国税庁:令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況

 

多少の入れ替わりはあるものの、申告漏れ所得金額が大きな業種は毎年、それほど大きく変動することはありません。正しく申告をしている人に対して税務調査を行っても、不正を正すことはできません。そのため、税務署では効率よく税務調査の成果を上げるため、不正をしている可能性が高い業種に目をつけることが多いのです。したがって、上にご紹介したような業種を営んでいる場合、税務署に目をつけられる可能性は高いといえます。

 

売上に比べて利益率が低すぎる

業種によって違いはあるものの、提出した申告書の中で、売上として計上している金額に比べ、利益が極端に低くなっている場合も税務署に目をつけられる可能性が高くなります。同業種に比べて利益率が極端に低い場合には、税金の納税額を低く抑えるために、経費を水増しして計上するなど、何らかの不正を行っているのではと疑われる可能性があるのです。

また、同様に、前年までに比べて極端に売上額が低くなった場合なども、何らかの不正があるのではと疑われ、目をつけられやすくなるでしょう。

 

経費の計上金額が大きい

架空の人件費を計上したり、架空の請求書を作成して経費計上したりといった経費の水増しも税金を逃れるために用いられることの多い不正の手段です。また、本来は経費に計上することができない、事業とは関係のないプライベートな支出を経費計上しているケースもあります。

事業によっては、経費の割合が多くなるケースがあるのも事実です。しかし、同業の事業を営む人も確定申告を行っているため、税務署では業種ごとのある程度の経費の割合を把握しています。そのため、他の同業者と比べても明らかに経費の金額が大きい場合などは、税務署も不審に思うはずです。したがって、確定申告時に経費の金額を高く計上している個人事業主は税務調査の対象として目をつけられる可能性が高くなります。

 

現金をメインとした取引を行っている

銀行振込で取引をする場合、振り込みや入金の記録が残ります。そのため、売上や支払いの金額について正しく申告をしていない場合でも、銀行の記録があるために不正はしにくくなります。

しかし、現金で取引を行うことが多い飲食店や理髪店、美容室、小売店などの場合、銀行取引のように現金取引については記録が残りません。記録が残らなければ、不正をしてもバレないだろうと考え、売上を正しく計上せず、売上を過少に申告する個人事業主が少なくないのです。そのため、現金をメインとした取引を行っている事業者も税務署から目をつけられやすくなります。

 

税理士がついていない個人事業主

意外かもしれませんが、税理士がついていない個人事業主も税務署から目をつけられやすくなります。税理士がついている場合は、記帳や経費処理などについても適切に実施されている可能性が高いといえます。反対に税理士がついていない場合、帳簿の記帳ミスや確定申告の作成時の計上漏れなどが起きやすくなります。また、税務処理についての詳しい知識がないために、経費の計上方法などを誤ってしまうことも多いでしょう。

そのため、税理士がついていない個人事業主の場合、税理士がついている場合に比べ、意図せず誤った処理をしていたり、不正を行っている可能性が高くなります。したがって、税理士がついている個人事業主に比べると、税理士が関与していない個人事業主は、税務調査の対象として目をつけられやすくなるのです。

 

個人事業主が税務署から目をつけられないようにするためには

個人事業主が税務署の対象として選ばれないようにするためには、どのような対策ができるのでしょうか。

 

税務署から目をつけられることで生じるリスク

個人事業主が税務署から目をつけられると、不正が行われているかをチェックするための税務調査が行われます。正しく申告を行っていれば税務調査に入られても、特に問題を指摘されることなく終了します。しかし、何らかのミスや不正が指摘された場合には、過少申告加算税などの追徴課税がなされるのです。また、税務調査が実施されると、当日の立ち会いはもちろん、準備のための時間も確保しなければならず、事業に影響を与える可能性もあるでしょう。そのため、できれば税務署からは目をつけられないようにしたいと考える個人事業がほとんどです。

 

税務調査を防ぐためには、正しい申告が重要

税務署から目をつけられないためには、日頃から正しく記帳を行い、正しい確定申告を行うことが最も重要になります。税務調査は、正しい納税を推進するために実施する調査です。そのため、正しく申告をしている納税者に対して税務調査を実施しても、不正を正すという目的を達成することはできません。申告内容に不審な点がなければ、たとえ年間売上の金額が1,000万円前後であっても、税務署から目をつけられる可能性は低くなります。

経理処理などに詳しくない場合などは、税理士に相談するのも1つの手段でしょう。税理士が関与することで、正しく納税をしているというアピールにもつながります。

 

まとめ

個人事業主の場合、年間の売上金額が1,000万円前後になると税務署から目をつけられ、税務調査の対象になりやすいといわれています。しかし、売上金額が1,000万円前後であるかどうかに関わらず、確定申告をしていない場合や申告内容に不審な点が多い場合、不正の多い業種を営んでいる場合などは、税務調査の対象として選ばれる可能性が高くなります。

税務調査を避けたいのであれば、正しく確定申告を行うことが大切です。また、忙しい場合や経理処理に自信がない場合などは、税理士に相談することをおすすめします。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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