2025.04.4
  • 税務調査

税務調査では過去何年分まで調べる?3年・5年・7年の違いを解説

読了目安時間:約 6分

税務調査とは、納税者が提出した申告書の内容が正しいかを確認する税務署などによる調査です。税務調査の際には、事業所に税務署の調査官が訪れ、帳簿や書類などを細かくチェックしながら、申告書の内容と照合します。税務調査によって申告内容に誤りが見つかった場合、不足分の税金や加算税などの納税が求められます。これまで正しく確定申告を行ってきたか自信のない場合などは、税務調査では過去何年分について調べられるのか不安に思う場合もあるでしょう。

そこで今回は、税務調査時には、過去何年分まで遡って調査される可能性があるのか、調査対象となる期間について詳しくご説明します。

 

一般的な税務調査の流れ

税務調査で過去何年分の調査が行われるかについてご説明をする前に、まずは税務調査の流れについて確認しておきましょう。一般的には税務調査は、次のような流れで進められます。

 

税務調査についての事前通知

原則として、税務調査を実施する際には、税務署から納税者に事前通知を行うことと定められています。そのため、税務調査を行う際には、税務署から電話で次のような内容が伝えられます。

・実地調査を行うこと

・調査を開始する日時と場所

・調査の対象となる税目

・調査の対象となる期間

・調査の目的

・調査の対象となる帳簿や書類

事前通知の際には、調査官が訪問する日時について相談をすることは可能ですが、調査自体を拒否することはできない点に注意が必要です。業務が忙しい場合や税理士に立ち会いを依頼したい場合などはスケジュールの調整をしたうえで、税務調査の準備を進めるようにしましょう。

また、基本的には、事前通知なしで税務調査が実施されることはありません。納税者が帳簿などの準備を行う時間を考慮したうえで、ある程度の余裕を持って日時の提案がなされるケースが一般的です。そのため、急に調査官がオフィスなどを訪れ、税務調査が始まるということはありません。

ただし、全ての税務調査において必ず事前通知がなされているわけではありません。事前通知をすることで、正しい調査を実施できなくなる恐れがある場合には、事前通知なしで税務調査を実施することも認められています。状況によっては事前通知なく調査官が訪れ、調査が実施されるケースがあるということも覚えておくようにしましょう。

 

実地調査

調査日程を調整後、決定した調査開始日時に調査官が調査対象となる場所を訪問し、税務調査が行われます。調査官が現地を訪れ、質問や検査などを行うことを実地調査といいます。

実地調査では、納税者に対し事業の内容や経営の状況などについて質問がなされた後、帳簿などを見ながら、詳細な確認がなされます。書類を確認する中で、追加の資料の提出を求められるケースや質問がなされるケースもあるでしょう。このときの調査の状況によって、過去何年分の申告内容を調査するのかが決まってきます。

 

調査結果の通知

実地調査後に税務署から税務調査の結果が通知されます。帳簿や関係書類と照合しても、何も問題が見つからず、申告内容が正しいと認められた場合にはそのまま調査は終了です。また、税務調査時に誤りが指摘された場合には、原則として納税者が自ら申告内容を修正し、不足分の税金と加算税などの納税を行います。

 

税務調査は過去何年分まで遡って調べる?

税務調査では、通常は過去3年分の申告内容について調査が行われます。しかし、調査を進めるうちに不審な点が見つかった場合には、過去3年分より長い、過去5年分、過去7年分についての調査が行われる場合もあります。

 

過去3年分まで遡るケース

国税通則法第70条では、次のように規定されています。

 

第七十条 次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年(第二号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があったものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、三年)を経過した日以後においては、することができない。

 

この条文から、法律のうえでは税務調査は申告から5年間についての調査が認められていると捉えることができるでしょう。しかしながら、一般的には税務調査時には過去3年分の申告内容について調査を行うことがほとんどです。

 

過去5年分まで遡るケース

実地調査の際、過去3年分の申告内容を調べたうえで、誤りや不正などが見つかった場合は、過去5年にまで遡って調査される場合があります。調査期間が過去5年分になるケースは、過去3年分の申告の中で同様の誤りを繰り返していたような場合です。

例えば、過去3年分の帳簿や書類を調査したところ、本来は経費としては取り扱うことができないプライベートな支出を経費として計上していることが発覚するケースもあるでしょう。そのような場合は、過去にも同様の処理を行っている可能性が高くなります。そのため、調査期間を過去5年に延長し、調査を続けるのです。

また、確定申告をする必要があるにもかかわらず、そもそも確定申告をしていない無申告状態の法人や個人を対象に税務調査を実施する場合は、必ず過去5年分について調査が行われます。

 

過去7年分まで遡るケース

先ほど、国税通則法では過去5年分についての調査が認められたとご紹介しました。そのため、税務調査の調査対象期間は最長でも過去5年分になるのではと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、悪質な不正行為や重大な申告漏れが認められる場合など、深刻な状況が発覚した場合は、過去7年分に渡って調査が行われる場合があります。実は、国税通則法第70条第5項では、次のように規定し、不正行為によって税金を逃れる行為があった場合は、過去7年までの調査を認めているのです。

 

5 次の各号に掲げる更正決定等は、第一項又は前二項の規定にかかわらず、第一項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、同項各号に定める期限又は日から七年を経過する日まで、することができる。

一 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等

 

過去7年分にまで遡って税務調査が行われるケースは、重加算税の対象となる悪質な事例です。単純にミスによる不備などが原因の場合などは、過去7年分にまで遡って調査がなされることはありません。

 

事前通知のときの調査対象期間と異なっても問題ないの?

税務調査を実施する際には、税務署は原則として事前通知を行わなければなりません。その際、調査開始日時などとともに調査対象となる期間が伝えられます。しかし、事前通知において過去3年分の申告内容を調査すると伝えられても、過去5年分に延長して調査が行われるケースもあります。

事前通知で伝えられた調査対象期間より長く調査することは違法になるのではと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、国税通則法第74条の9第4項において次のように規定しています。

 

国税通則法第74条の9

4 第一項の規定は、当該職員が、当該調査により当該調査に係る同項第三号から第六号までに掲げる事項以外の事項について非違が疑われることとなった場合において、当該事項に関し質問検査等を行うことを妨げるものではない。この場合において、同項の規定は、当該事項に関する質問検査等については、適用しない。

 

これは、法律に背く行為が見られた場合には、事前通知で伝えた期間を超えて、調査を行うことを認めるという意味合いとして捉えることができるでしょう。不正行為によって多額の脱税が行われている場合や正しく申告をしていない場合などは、法に違反した状態です。したがって、事前通知で伝えた過去何年分という調査期間を超えて調査を行っても問題はないのです。

 

帳簿や書類は過去何年分まで保管が必要?

税務調査では、過去3年分まで遡って調査が行われるケースが一般的です。また、故意に売上を過少に申告していたり、経費を過剰に計上していたりといった不正行為をしていなければ、過去7年分まで調査が及ぶことはありません。そのため、税務調査時に準備が必要になる帳簿や書類は、過去5年分まで保管しておけばよいと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、帳簿や書類などの保管期間と税務調査の調査対象期間は同じわけではない点に注意が必要です。

 

法人の帳簿や書類の保管期間

法人の場合、一定期間以上の保管が必要となる帳簿や書類は次のようなものです。

 

帳簿:総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、当座預金出納帳、小口現金出納帳、売上帳、仕入帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、商品有高帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳

書類:賃借対照表、損益計算書、棚卸表、契約書、注文書、領収書など

 

これらの書類は、税法上では7年間保管しておかなければなりません。ただし、帳簿については、会社法と法人税法上での保管期間には違いがあります。会社法では、帳簿は10年間保管しなければならないと定めているのです。

税務調査で遡るのは、最大でも過去7年分についての申告内容です。それ以上の申告内容を調査することはありませんが、会社法では帳簿を10年間保管することが定められているため、過去10年間分は帳簿を保管しておくようにしましょう。

 

青色申告をしている個人事業主の帳簿や書類の保管期間

個人事業主も、帳簿や関係書類は一定期間保管しなければなりません。まず、青色申告をしている個人事業主の場合は、帳簿については7年間の保管が必要です。また、損益計算書や賃借対照表、棚卸表などの決算関係書類の保管期間も7年です。また、領収書や小切手の控え、預金通帳、借用証などの保管期間は7年ですが、前々年の所得が300万円以下の場合は保管期間が5年に短縮されます。さらに、契約書や請求書、見積書、納品書、送り状などについては5年間保管をしなければなりません。

 

白色申告をしている個人事業主の帳簿や書類の保管期間

白色申告をしている人の場合、青色申告をしている人と比べ、確定申告時に提出する書類は少なくなりますが、それぞれ、保管期間は決められています。

収入金額や必要経費を記載した法定帳簿については7年間の保管が必要です。また、業務に関して作成した法定帳簿以外の任意帳簿の保管期間は5年となっています。加えて、決算のために作成した棚卸表やその他の書類、業務に関して作成又は受領した請求書や納品書、送り状、領収書などの書類は5年間保管が必要です。

 

インボイス発行事業者として登録した場合の領収書の保管期間は7年

個人事業主の場合、領収書の保管期間は5年です。しかし、消費税の課税事業者としてインボイスに登録し、仕入税額控除をする際に使用する請求書については7年間保管しなければなりません。また、インボイスを発行した場合は、発行したインボイスの写しや電磁的記録を7年間保管しなければならない点に注意が必要です。

 

電子帳簿保存法に則り、電子データを保存することも忘れずに

2022年1月1日に施行された電子帳簿法では、電子取引で授受した書類やその控えは、電子データで保存することを求めています。2024年1月1日には、電子取引のデータ保存が完全義務化されました。これにより、電子データで取引に関係した契約書や請求書、見積書、領収書などを発行した、又は受け取った場合は、受け取った書類や発行した書類の控えを電子データとして保存する必要が生じています。従来のように、電子データで受け取った領収書などを紙に印刷し、保存することは認められなくなりました。そのため、電子データで受け取った書類は、必ず電子データとして保管しておくようにしましょう。

ただし、紙で受け取った領収書や請求書などは、これまで通り紙で保存することができます。

 

まとめ

税務調査では、過去3年分についての調査が行われるケースが多くなっています。しかしながら、3年分の調査の中で誤った処理が散見される場合などは、過去5年分にまで延長して調査が行われる場合もあります。さらに、悪質な不正が行われている場合や巨額の申告漏れが発覚した場合などは、過去7年分に遡って調査がなされます。また、確定申告をしていない無申告の状態であった場合には、過去3年分ではなく、過去5年分を遡った調査になる点に注意が必要です。

帳簿や関係書類は、法律で保管しなければならない期間が定められています。法人と個人によって、帳簿や書類の保管期間は異なりますが、法人の場合、会社法と法人税法で保管期間に違いがある点に注意しましょう。また、電子データで授受した書類については電子データとして保管しなければならない点にも注意が必要です。

 

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

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