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名義預金は税務調査で狙われる!相続税がかからないようにするための対処法を解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
相続税の税務調査で税務署から指摘されることが多い現金や預貯金ですが、そのなかでも申告漏れの財産として特に多いとされるのが、名義人と預金者が別である「名義預金」です。
名義預金とみなされると、子や孫へあげたいと思っていた財産が、被相続人の財産として相続税の課税対象となってしまうので、注意しなければなりません。
本記事では、税務調査で名義預金とみなされるケースや対処法を解説します。
相続税申告に名義預金を含めなかった場合のペナルティについても説明していきますので、ぜひこの記事を参考に、名義預金についての理解を深め、対策をしていただけたら幸いです。
目次
名義預金とは
そもそも名義預金とは、実際のお金の所有者と口座の名義人が異なる預金を指します。
例えば、祖父母が孫名義の口座を作って預金をしていたり、専業主婦(夫)が配偶者の収入を自身の名義で預金していたりするなどのよくあるケースが名義預金と呼ばれるものです。
法律上、名義預金という定義はありません。
名義預金の財産の所有者は名義人ではなく、亡くなった人の財産であるため、相続税の課税対象となります。
名義預金は税務調査でバレやすい
名義預金は被相続人とは違う名義預金であるため、「税務調査がはいってもバレないだろう」と無申告にするケースが多いです。
しかし、相続税の税務調査においては、名義預金を重点的にチェックするため、名義預金の存在は高確率でバレてしまいます。
なぜなら、相続税の税務調査では被相続人だけでなく、相続人の預金口座も調査対象となるほか、税務署はKSKシステム(国税総合管理システム)によって被相続人や相続人のある程度の収入が把握でき、収入に対して預金額が多ければ名義預金を疑うからです。
名義預金とみなされるケース
自分以外の家族名義で作った口座が名義預金に当てはまるのか、気になる方は多いでしょう。
税務署に指摘されやすい名義預金の主な判断基準は以下のとおりです。
- 預金の資金源(原資)が誰か
- 名義人が預金の存在を知っていたか
- 名義人が贈与を受けたという認識があるか
- 預金の管理・運用をしていたのは誰か
これらを踏まえ、名義預金とみなされやすいケースについて詳しく説明していきます。
名義人に収入がない
名義預金かどうかを判定する過程において、重要視されるのは原資の出どころです。
例えば、配偶者が自身が働いた分の収入を配偶者名義の口座に貯めていた場合、その預金は配偶者固有の財産となるため、相続税の課税対象とはなりません。
しかし、配偶者に収入がなく、かつ、相続や贈与も受けていないのにも関わらず配偶者名義の預金が存在する場合、名義預金とみなされることがあります。
このように、名義は相続人となっていても、被相続人のお金が原資となっていれば、名義預金認定されやすいのです。
名義人が通帳の存在を知らない
口座の名義人が預金の存在を知らない場合、贈与が成立しないため、この預金は被相続人の名義預金とみなされる可能性が高いです。
例えば、祖父母が孫名義で預金していても、孫がその預金があることを知らない場合、孫に受贈の意思表示がないと判断され、贈与は成立していないものと見られ、相続税の課税対象となる恐れがあります。
この場合、預金管理能力が十分でないため、親や祖父母の判断で本人に口座を管理させず、名義預金となっているケースも多いです。
財産が贈与された場合、それを受け取った人が管理・利用できる状態でなけれならないため、通帳や印鑑を被相続人が管理していた場合は、「被相続人の財産である」と判断されます。
預金を受贈した認識がない
銀行口座の名義人に収入がなくても、贈与として受け取ったお金を預金していることは少なくありません。
贈与で受け取ったお金は受贈者の固有財産であり、贈与金額が年間110万円以内の場合は贈与税も非課税となります。
しかし、贈与は贈与者と受贈者の双方の合意のもと成立するものであるため、受贈者が財産をもらうことに同意していなければ、その預金は名義預金となり、相続税の課税対象となるので注意が必要です。
被相続人が家族名義の口座を勝手に開設し、お金を貯めていた場合がこれに該当します。
贈与の記録を残していない
名義人本人の収入などによる預金ではない場合、税務調査で「この預金の原資は何か」と問われることもあるでしょう。
その際に、口頭で贈与であると伝えても、税務署側は贈与だと認める可能性は低いです。
通帳の記録だけでは、贈与した人とされた人それぞれの意思を確認するのは難しいため、贈与であることの記録を残していないと名義預金とみなされる可能性が高くなります。
名義預金を含めずに相続税申告をするとどうなる?
名義預金は名義人の財産ではなく、被相続人の財産とみなされるため、相続税の対象となりますが、名義預金を申告しなかった場合はどうなるのでしょうか。
結論として、相続税の税務調査で指摘を受けた場合、修正申告の時期に応じたペナルティが課されます。
ここでは、名義預金を相続税に含めず申告した場合のペナルティや時効について説明していきます。
重いペナルティが課される可能性がある
相続税申告後に名義預金が発覚した場合、速やかに修正申告を行う必要があります。
しかし、「バレないだろう」と放置した結果、税務調査で指摘されると、以下のペナルティが課される恐れがあります。
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 重加算税
- 延滞税
【加算税の種類】
種類 | 税率 | 対象となるケース |
---|---|---|
無申告加算税 | 15%(納付すべき税額が50万円を超える部分は20%) | 申告期限までに申告書を提出しなかった場合に課される税金 |
過少申告加算税 | 10%(期間内に申告した納税額または50万円のいずれか多い金額を超えている場合、超過分に対し15%) | 申告期限までに申告書を提出したが、申告内容に誤りがあった場合に課される税金 |
重加算税 | 過少申告加算税に代えて課される場合は35%、無申告加算税に代えて課される場合は40% | 仮装隠ぺい行為により、税金をごまかしていた場合に課される税金 |
延滞税は、各種税金が期限までに納付されない場合、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される附帯税です。
名義預金には時効がない
名義預金には時効があるのでしょうか。
贈与税の時効は法定申告期限の翌日から原則として6年、悪質だと判断された場合は7年の時効が法律で定められています。
しかし、名義預金は贈与契約が成立していないため、贈与税の時効は適用されません。
名義預金ははあくまで俗称で、時効のルールは存在しないため、生前贈与と混同しないよう注意しましょう。
名義預金とみなされないための対処法
名義預金を申告していなかったことが税務調査で発覚した場合、申告の不備に対するペナルティがあるほか、納税の遅れに対して延滞税も納めなければならなくなります。
では、受け取った預金が名義預金とならないためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
ここでは、相続税の課税対象となる名義預金とみなされないための対処法を説明していきます。
贈与契約書を作成する
贈与は口約束でも成立しますが、税務調査が入った場合に贈与があったことを客観的に証明するのが難しいため、贈与契約書を作成するのが望ましいです。
贈与契約書とは、財産を贈与する際に、贈与する側と贈与される側とで作成する契約書をいい、契約書には贈与額や贈与する方法、そして贈与した日付などが記載されます。
贈与契約書があれば、財産を渡す側と、財産を受け取る側の意思表示を明確化できるため、名義預金と認定されない可能性が高くなるでしょう。
贈与税申告をする
必要に応じて贈与税申告をすることも有効です。
1月1日から12月31日までに贈与された財産の金額が110万円を超える場合は贈与税がかかるため、贈与を受けた人の贈与財産が110万円を上回るときは、贈与税を申告してもらうようにしましょう。
贈与税申告をすれば、税務署に贈与の事実を認めてもらえ、名義預金とは疑われにくくなります。
贈与税申告は、財産が贈与された翌年の2月1日〜3月15日に申告書を提出する必要があるため、忘れずに準備するようにしてください。
銀行振込にする
贈与財産の受け渡しは現金手渡しにせず、銀行振込で行って資産が移動したことを客観的な証拠として残るようにするのがおすすめです。
お金のやり取りに銀行振り込みを利用すれば、贈与した人とされた人それぞれに記録として残るため、贈与契約書の通りに生前贈与が行われたと証明することができます。
ただし、記帳せず何度も振込をしたり、キャッシュカードを使っていたりすると、証跡がわからなくなるので、通帳はこまめに記帳するのが望ましいです。
贈与を受けた人が通帳や印鑑を管理する
名義預金だとみなされないためには、名義人自身が通帳や印鑑、キャッシュカードなどを管理・保管していることが重要です。
贈与を受けた人がその預金口座を管理しており、預金を自由に使用できる状況だったという証拠となります。
子どもや孫が無駄遣いしないよう、贈与した親や祖父母が通帳や印鑑を管理しているケースが多く見られますが、この場合は贈与を受けた人が預金を管理ていないことになり、名義預金とみなされる可能性が高いので、注意しましょう。
贈与された預金口座を使っておく
生前贈与の条件を満たしていたとしても、入金のみで出金のない預金口座は名義預金を疑われやすくなります。
そのため、贈与を受けた人がその預金を使っておくようにしましょう。
とはいえ、無理に使う必要はなく、家賃や電話料金、公共料金などの引き落とし口座に設定するなど、生活に必要な経費の支払いなどに利用すると無駄にならず、出金の実績を作ることもできるのでおすすめです。
相続に詳しい税理士に相談する
相続税の税務調査が入った際に、名義預金であると判断されると追徴課税だけでなく加算税や延滞税も課され、相続人の負担が大きくなってしまうため、名義預金と判断されないように先述した方法を試すようにしましょう。
しかし、名義預金と判断されるか分からない、名義預金があるがどうすれば良いのか分からないといった場合には、相続問題に強みを持つ税理士に相談するのがおすすめです。
名義預金の問題を解消するだけでなく、相続税対策についても助言も受けられるため、相続に関する様々な悩みを解決できるでしょう。
すでに名義預金をしている人の対処法
名義預金とみなされないための対処法をお伝えしましたが、では、すでに名義預金となっている場合はどうすれば良いのでしょうか。
具体的な方法として、以下が考えられます。
- 名義預金を戻す
- 相続税申告をする
詳しく見ていきましょう。
名義預金を戻す
名義預金を解消したい場合、親や祖父母など実質的に預金している人に返して名義預金を解消する方法があります。
名義預金を戻す際は、元の持ち主名義の預金口座に戻せば問題ありません。
また、この送金には贈与税はかかりません。
税務署から送金理由を尋ねられた場合は、「名義預金を解消するために送金した」と事実を伝えましょう。
相続税申告をする
実質的な預金者がすでに亡くなっている場合、その人からの相続財産となるため、名義預金を戻すことはできません。
この場合、預金残高は相続財産として申告する必要があります。
相続税申告書を作成する際は、「〇〇名義」といった記載を行うようにしましょう。
名義預金を相続財産として申告すれば、税務署から指摘されることはありません。
名義預金と指摘されないように対策をしよう
祖父母が子や孫の名義で預金をしていたり、夫が稼いだお金を妻名義の口座で預金していたりと、名義預金になり得る預金の仕方を行っている方も多いのではないでしょうか。
このような場合、実際にお金を出した人が亡くなると、たとえ名義が違う人であってもその人の財産として相続税の課税対象となるので、注意しなければなりません。
名義預金と指摘されないようにするには、預金が贈与されたものであるという明確な証拠を提示する必要があります。
また、名義預金にあたるのか分からない、名義預金になってしまっているという方は、対応方法を税理士に相談してみると良いでしょう。
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