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国税局の犯則調査とは?税務調査との違いや流れを解説!

読了目安時間:約 7分
国税局の犯則調査とは、どのような調査なのでしょうか。税務調査とは違うのか、犯則調査される可能性や、調査の流れなども気になる方もいることでしょう。
本記事では、犯則調査の概要や税務調査との違い、調査の流れや納税者が犯則調査にあう可能性などについて解説しています。
目次
国税局の犯則調査とは
まずは、国税局の犯則調査とはどのようなものなのかについて解説します。
国税局査察部が行う税務調査のこと
犯則調査とは、国税局査察部が行う税務調査のことで「査察調査」などと呼ばれることもあります。
国税局査察部は「マルサ」の通称で呼ばれることもあります。ニュースやドラマ、映画などで見かける黒いスーツを着た多数の調査官が、ビルや経営者の自宅などへ入っていくシーンなどが、犯則調査の風景であることが多いでしょう。
「税務調査」と聞いて、こうしたシーンをイメージする方も少なくないかもしれませんが、一般的な税務調査と犯則調査には明確な違いがあります。
一般的な税務調査と犯則調査の違い
犯則調査と一般的な税務調査(以下、税務調査)には、以下のような違いが挙げられます。
・基づく法律
税務調査と犯則調査では、根拠とする法律が異なる点がまず挙げられます。
税務調査は国税通則法の74条の2から6に基づいて実施されますが、犯則調査は国税通則法131条以下に基づいて実施されます。
元々犯則調査は国税犯則取締法という法律でさだめられていましたが、2018年4月から国税通則法へ編入されています。
参照:
国税庁「第1章 法第74条の2~法第74条の6関係(質問検査権)」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/zeimuchosa/120912/01.htm
e-gov法令検索「国税通則法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000066#Mp-Ch_11-Se_1-At_131
・所轄
税務調査の場合、実施するのは納税者の地域を管轄している税務署の調査官となりますが、犯則調査は国税局査察部によって実施される点も違います。
国税局は全国に12か所(沖縄国税事務所含む)あり、税務署は全国に524か所あります。国税局は国税庁の指導のもと、税務署の指導や監督、税金に関する犯罪や事件の調査などを行います。
税務署では、国税庁や国税局からの指導をもとに、確定申告の窓口や税金徴収、税務調査などを行っています。
国税局が統括的な行政機関であるのに対して、税務署では納税者と直接関わる業務が多いといった違いもあります。
・目的
税務署が実施する税務調査が、納税者の申告と納税に間違いがないかを確認、指導する目的で実施されるのに対し、国税局査察部が実施する犯則調査は巨額の脱税や所得隠しといった税金に関する犯罪を摘発し、刑事責任を追及する目的で実施される点が異なります。
税務調査で訪問するのは税務署の調査官2~3名ですが、犯則調査では国税局査察部から100名以上が立ち入り調査に入ることも珍しくありません。
・強制調査か任意調査か
税務調査は原則として「任意調査」です。任意調査は、事前に税務署の調査官から税務調査を実施する旨の連絡を受け、日程や調査の目的などの通知を受けてから実施されます。
「任意」というものの、納税者には「受忍義務」と呼ばれる調査に協力する義務があることが法律でさだめられているため(国税通則法128条)、実際には拒否することはできません。しかし、調査を実施する日程などはある程度調整可能で、調査官の訪問を受ける際にも、書類やデータの閲覧などは、その都度納税者の同意を得て行われる形となるのが一般的です。
一方で、犯則調査は「強制調査」となり、裁判所から令状を取って実施されます。犯則調査は何の前触れもなく、ある日突然に本店と支店や倉庫、工場や経営者の自宅などに一斉調査が入ります。
強制調査には当然ながら拒否権はなく、書類や金庫、パソコンなどのあらゆる証拠が問答無用で押収されることとなります。
・権限の違い
税務調査の調査官には「質問検査権」と呼ばれる、納税者に対して質問や書類を検査したり、書類等の提出を求めて占有(領置)したりすることができる権利があります。
一方、犯則調査を実施する国税局査察部は、裁判官の許可を得て臨検と呼ばれる調査や捜索を行うほか、書類や帳簿などを差し押さえられる「犯則調査権限」を持っています。
税務調査に比べると、犯則調査はかなり厳しく、悪質性や重大な犯罪性が認められるケースで実施されるものであるということがわかります。
犯則調査の流れ
犯則調査の大まかな流れについて解説します。
内偵調査
国税局では、脱税などの疑いがある納税者を発見した場合、まず内偵調査と呼ばれる調査を行います。内偵調査とは、どんな手口で脱税をしているか、規模はどのくらいになるのかなどを、納税者のもとへ出向く前に秘密裡に行う調査のことです。
内偵調査では、取引先や金融機関、納税者の親族や知人といった関係者も調査対象となります。客を装って店舗へ潜入することもあるほか、尾行や聞き込みなど、警察と同等の調査が実施され、情報収集を行います。
裁判所へ許可状の請求
内偵調査によって多額の脱税やその手口などの悪質性が認められた場合、その結果について裁判官へ説明を行い、裁判所から許可状の交付を受けます。
犯則調査の実施
許可状の交付を受けたら、全国に配置されている国税査察官の協力体制のもとに犯則調査が実施されます。犯則調査は100名規模になることも多く、オフィスや店舗、倉庫や犯則嫌疑者(犯則調査の対象となった納税者)の自宅などへ査察官が一斉に立ち入り、強制調査が実施されます。犯則調査では帳簿や通帳、パソコンなどが証拠類として差し押さえられ、押収されます。
検察官への告発
差し押さえられた帳簿や書類などはその後局内で更に詳しく調査され、犯則嫌疑者への厳しい取り調べも行われます。
最終的に正確な脱税額や犯罪性などに関する調査結果を書類として取りまとめ、検察へ告発されることとなります。
起訴
告発を受けた検察官は捜査を行い、刑事罰に相当するとみなされた場合、裁判所へ起訴することとなります。起訴後は裁判が開始され、有罪の判決が出た場合には刑事罰が科せられます。
脱税は起訴されるとほぼ有罪に
国税庁が発表しているデータによると、2023年度に実施された犯則調査件数は154件、うち告発に至ったのは101件となっており、犯則調査で告発に至る確率は例年70%前後となっています。
また、同年に脱税で起訴された裁判の一審判決の結果は100%が有罪であることもわかっています。脱税で有罪になると、最長で10年の懲役と1,000万円以下の罰金が科せられる可能性がありますが、罰金については脱税した額が巨額な場合、1,000万円を大きく超える罰金刑に処されるケースも少なくないのです。
参照:国税庁「令和5年度 査察の概要」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sasatsu/r05_sasatsu.pdf
犯則調査にあうのはどんなケース?
犯則調査の対象となるのはどのようなケースなのでしょうか。いくつかピックアップして見ていきましょう。
多額の脱税
犯則調査は、脱税額が数千万円から1億円以上にのぼるような、多額の脱税が疑われるケースに対して実施されています。
2023年度に実施された犯則調査において、告発した脱税総額は約89億円、1件あたりの脱税額は約8,800万円となっていました。
消費税の不正還付
パスポートの偽造などで消費税が免税となる売上を計上したり、架空の課税仕入を計上したりして、不正に消費税の還付を受けているようなケースについても、犯則調査の対象となります。
国際事業
実態のない海外法人と架空の取引を行い、海外での収入として日本で所得税の課税を免れた、多額の経費水増しなどを行って得た多額の資金を海外で浪費していた、といったケースにも、犯則調査が実施されています。
無申告
無申告は、無申告であること以外に特段の不正行為がなかったとしても犯則調査の対象となる可能性があります。2023年度に無申告者に対して実施された犯則調査の件数は16件で、そのうち11件が不正行為はなく、故意に無申告にしていたケースであることがわかっています。
社会的影響が大きいビジネスによる不正
インターネットを利用したシェアリングサービスやマルチレベルマーケティング、その他時流や流行に乗ったビジネスなど、社会的な波及効果が高いとみなされるビジネスによる脱税などの不正行為も、犯則調査の対象となっています。
参照:国税庁「令和5年度 査察の概要」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/sasatsu/r05_sasatsu.pdf
犯則調査で告発されないための対処法
犯則調査の対象となった場合、7割ほどの確率で検察へ告発されることとなります。告発されればほぼ100%起訴され、有罪判決が出ていることもわかっています。
犯則調査で告発されなかった場合は、通常の税務調査と同様に修正申告などを行い、追徴課税やペナルティを受けて終了となります。犯則調査で告発されないためには、どのような対処法があるのでしょうか。
無申告にしない
「犯則調査は巨額の脱税しか対象にならない」「マルサは大手企業しか狙わないから関係ない」と思っている方も多いかもしれませんが、必ずしも脱税額や取引の規模が大きくなくても、無申告を続けていると犯則調査の対象となる可能性があります。
国税庁では無申告者へ厳しい対応を取っています。現在無申告にしている期間がある場合、ほぼその事実を税務署に知られていると考え、一刻も早く無申告状態を解消するようにしましょう。
早い段階で修正申告を行う
犯則調査の対象となった場合、調査を免れることや脱税の事実をなかったことにすることはできません。しかし、調査が実施される前に修正申告を行うことで、ペナルティを軽減することは可能です。
過去の申告内容に間違いやミスなどの心当たりがある場合は、早めに修正申告することをおすすめします。
税務署からの連絡を無視しない
犯則調査は何の事前連絡もなく、ある日突然行われます。しかし、税務署からの「簡易な接触」と呼ばれる電話などによる申告内容に関する確認や、任意調査の事前連絡などを無視した結果、何らかの隠ぺいや脱税、調査の妨害といった疑いを強められ、強制調査へと切り替わる可能性もあるため注意が必要です。
犯則調査に限らず、一般的な任意調査の場合でも、悪質性が認められる場合には重加算税などの重い追徴課税や刑事罰に問われる可能性は充分にあります。
税務署からの連絡は内容を聞き取りして後で折り返すようにして、税理士などの専門家へ相談して再度連絡するなど、無視しないようにしましょう。
犯則調査や税務調査の相談をする専門家の選び方
犯則調査や税務調査に関する不安や悩みを相談は、どの税理士でもよい訳ではなく、税務調査に関する相談や対応実績が豊富な税理士事務所を選ぶことが大切です。
「顧問の税理士に相談したら良い顔をされなかった」「税務調査対応はやってないと言われた」と諦める前に、税務調査や強制調査の対応実績が豊富な税理士事務所へ相談してみることをおすすめします。
税務調査に対する不安や悩みは税理士法人松本へご相談を
「身近で犯則調査の噂を良く聞いて不安がある」「無申告期間を解消したいがやり方がわからない」など、税務調査や過去の申告内容などに関する不安や悩みをお持ちの場合は、1度税理士法人松本へご相談ください。
税理士法人松本には、国税OBや元税務署長の税理士が10名以上在籍しており、税務調査対策に全力で対応しています。追徴課税ゼロの実績も多数あり、顧問の税理士がいる場合のセカンドオピニオンとしてもご相談が可能です。
税務署から調査がある旨の連絡が入ってからの相談や、期限後の申告といったご相談にも誠実に対応しています。
ご連絡は全国どこでも、ご相談予約はフリーダイヤルまたは専用フォーム、LINEなどからお気軽にお問い合わせください。
まとめ
犯則調査は国税局査察部が行う調査で「査察調査」「強制調査」とも呼ばれます。犯則調査は多額の脱税や税金の還付、不正な所得隠しといった悪質性の高い行為について、裁判所から令状を取って行われ、何の前触れもなく多数の査察官から一斉調査を受けるだけでなく、書類やデータの差し押さえや勾留しての取り調べなども行われます。
告発されれば100%有罪の判決が出るため、犯則調査を受けないようにすること、告発されないことが重要となります。犯罪に手を染めていなくとも、無申告状態を続けていると犯則調査の対象となるリスクは高まります。不安な場合は税務調査対応に強い税理士へ相談するなどして、適正な申告・納税に努めましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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