2024.10.21
  • 無申告

相続税申告のペナルティは無申告加算税だけじゃない!追徴課税が発生するケースや対処法を解説

相続税

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

相続税について、「それほどお金持ちではないから申告しなくても良いだろう」「相続税を申告しなくてもバレずに済むのでは?」と考える方もいるでしょう。

しかし、相続が発生すると、税務署は速やかにその情報をキャッチし、申告漏れがないかを厳しくチェックするため、そのような甘い考えでいるのは危険です。

期限内に相続税を申告しなければ無申告加算税などのペナルティが課され、より大きな税負担が相続人に発生してしまいます。

本記事では、相続税の申告が必要なケースや申告しなかった場合のペナルティについて詳しく解説します。

また、税務調査で追徴課税が課されないための対処法についてもお話ししますので、ぜひこの記事を参考に相続税についての理解を深め、正しく申告・納税するようにしましょう。

相続税とは

相続税とは

そもそも相続税とは、被相続人(亡くなった人)からお金や土地などの財産を相続した場合に、その財産に課される税金を指します。

そのため、相続が発生した場合は、相続する財産の状況によっては相続人が相続税を申告し、支払う必要があるのです。

相続税の申告と納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と決められており、相続準備や必要な書類を集めるのに意外と時間がかかるため、スムーズに手続きを進めるためにも、できるだけ早く財産や法定相続人を把握し手続きに備えることが大切です。

相続税の対象となる財産

被相続人から相続した財産全てに相続税がかかるわけではありません。

相続税がかかる財産とかからない財産の範囲は以下のようになっています。

相続税がかかる財産 預貯金、株式、土地、建物、生命保険金、死亡退職金
相続時精算課税制度による贈与財産、生前贈与財産など
相続税がかからない財産 墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚などの祭祀財産
生命保険金、死亡退職金のうち一定の金額
相続財産から控除できるもの 被相続人の債務、葬儀費用など

生命保険金や退職金も相続財産とみなされるものの、それぞれ一定の金額までは相続税がかからないとされており、非課税限度額の計算式は以下の通りです。

【生命保険金、退職金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数】

相続税の申告が必要なケース

相続税の課税価格が遺産に係る基礎控除額を上回るときのみ相続税が課されるため、その際に相続税の申告が必要となります。

基礎控除額の計算式は、以下の通りです。

【遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数】

例えば、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)となり、相続税の課税価格が4,200万円に満たないときは相続税はかからないため、申告は必要ありません。

相続税の無申告がバレる理由

「相続税は申告しなかったとしてもバレないだろう」と考える人は多くいますが、高い確率でバレてしまいます。

税務署は、税法上の規定に基づき、相続人などの了解なしに様々な情報を調査する権限を有しており、具体的には以下の情報から無申告であるとわかってしまうのです。

  • 亡くなった人の情報が把握されている
  • KSKシステムにより情報が共有されている
  • 相続した情報は税務署に連携される

税務当局は、国内の国税局や税務署をネットワークで結び、申告や納税に関する情報を一元管理する「国税総合管理システム(KSKシステム)」を導入しており、納税者の情報を把握しています。

また、相続した金銭の情報も保険会社や金融機関から入手できるため、逃れることはできないのです。

相続税を申告しなかった場合のペナルティ

相続税を申告しなかった場合のペナルティ

相続税を申告期限までに申告しなかった場合や税逃れのために故意に隠していた場合には、加算税や延滞税などのペナルティが課されます。

ここでは、相続税の申告漏れがあった場合のペナルティについて、詳しく説明していきます。

無申告加算税

無申告加算税は、確定申告の期限までに申告や納税を行わなかった場合に課される加算税です。

無申告加算税の金額は、原則として納税額に対して15%ですが、納付すべき税額が50万円を超える部分は20%課されます。

確定申告の期間は原則として毎年2月16日~3月15日となっていますが、この期間を過ぎた後であっても税務調査前に自主申告すれば、加算税率は5%軽減されます。

過少申告加算税

過少申告加算税とは、確定申告を期限内に申告して納税したものの、申告納税額が本来納めるべき税額よりも過少であった場合に課される加算税です。

過少申告加算税の場合は、新たに納税することになった金額の10%に相当する額が加算されます。

また、期間内に申告した納税額または50万円のいずれか多い金額を超えている場合は、超過分に対し15%の過少申告加算税が課されます。

重加算税

重加算税は、意図的に隠ぺいや仮装などを行った場合に課される加算税で、加算税の中でも最も税率が高く、重いペナルティです。

故意に事実と異なる申告をしたり、申告漏れをしたりと、悪質性があると判断された場合、上記の加算税に代えて支払う必要があります。

重加算税は、過少申告加算税に代えて課される場合は35%、無申告加算税に代えて課される場合は40%です。

延滞税

延滞税は、各種税金が期限までに納付されない場合、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて課される附帯税です。

延滞税が課される主なケースは以下の通りです。

  • 期限内に申告を行ったが、税金の納付が期限後になった
  • 期限後に(修正)申告をした
  • 税務調査によって更正・決定処分を受けた

延滞税は、納期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて課税されますが、直近の延滞税の税率として、令和5年1月1日~令和6年12月31日では以下のように定められています。

  • 納期限の翌日から2か月を経過する日まで:年2.4%
  • 納期限の翌日から2か月を経過した日以後:年8.7%

相続税の税務調査で追徴課税が発生するケース

相続税の税務調査で追徴課税が発生するケース

相続税に関しては、税務調査で悪質だと判断されると追徴課税が発生しますが、それ以外にも以下のようなケースで発生する恐れがあるので注意が必要です。

  • 家族が把握していない財産がある場合
  • 生前贈与がある場合
  • 財産の評価を間違えた場合

それぞれ詳しく説明していきます。

家族が把握していない財産がある場合

家族でも把握しない相続財産というものは意外と多く、特に以下のような目に見えない財産の申告漏れが発生しやすくなっています。

  • ネット銀行の口座
  • ネット証券の口座
  • 生命保険
  • 遠隔地に購入している不動産
  • 海外の金融資産
  • 暗号資産 など

このような家族も把握できない財産は、決して意図的でなくても申告漏れの確率が高くなるため、申告漏れなどがあったときは、早めに修正申告しておくようにしましょう。

生前贈与がある場合

生前贈与も税務調査で疑われやすく、相続財産へ加算していない場合や贈与が成立していない場合もあり、無申告加算税や延滞税がかかるケースがあるので、注意しなければならないポイントです。

相続開始前3年以内の贈与に関しては相続財産に加算する必要がありますが、税制改正により、対象期間が、相続開始前の3年以内から7年以内に延長されることになったため、注意しましょう。

また、名義預金(口座の名義人と実質的な預金者が違う預金)は税務調査で指摘されやすいため、子や孫などの名義人に渡す予定の財産であれば、贈与契約書を作成しておくようにしてください。

財産の評価を間違えた場合

相続税を計算する際に、相続により取得した財産を一つひとつ評価する必要がありますが、これを間違えると正しく申告できないため、追徴課税が課される原因になります。

特に、不動産や非上場株式などは、相続税評価額の計算が難しく、本来の価値よりも低く評価しているケースも多くあるのです。

自身で計算した評価額に不安がある場合は、税理士に依頼して再評価してもらうのが望ましいです。

相続税で加算税が課されないための注意点

相続税で加算税が課されないための注意点

相続税を正しく申告していなかった場合には、状況に追徴課税が課されてしまいます。

相続税は本税そのものが高額であるケースが多く、追徴課税が加算されることで支払いが不可能になってしまう恐れもあるほか、悪質な脱税行為と判断されると刑事罰の対象にもなるので注意が必要です。

ここでは、相続税で追徴課税が課されないために注意すべきポイントや対処法をご紹介します。

手続きが難しい場合は税理士に相談する

相続税の課税対象となる項目は多岐にわたり、申告書の作成は容易ではありません。

そのため、税の専門家である税理士が関与していない申告書は不備が生じやすく、税務調査が入りやすい傾向にあります。

ですから、税務調査の確率を減らしたい場合は申告書作成のタイミングで税理士に依頼するのがおすすめです。

税理士が申告書を作成すれば不備を防げるだけでなく、仮に税務調査が行われることになった場合でも、依頼した税理士に対応してもらえます。

納税が難しい場合は延納を利用する

相続税は相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内に金銭で一括納付することが原則となっていますが、相続財産のほとんどが不動産であった場合など、手元に現金がなく納税ができない人もいるでしょう。

そのような場合に検討したいのが、納税者の申請により、納付を困難とする金額を限度に分割払いをする「延納」です。

延納で納付する場合には以下の条件を満たす必要があります。

  • 相続税額が10万円を超えること
  • 納期限までに金銭で一括納付するのが困難
  • 担保を提供する

延納する場合には申請書や必要書類の提出を行わなければならないため、覚えておきましょう。

特例が適用される場合でも申告する

特例が適用される場合でも申告する

「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などが適用となり、相続税が0円となるケースもありますが、このような特例は、たとえ納付が必要なくても申告しなければ適用になりません。

もし申告しておらず、税務調査によって申告漏れが発覚すると、追徴される相続税は特例を適用しない額で計算されるだけでなく、その税額から無申告加算税や延滞税が計算されて課されてしまうのです。

そのため、特例が適用される場合でも正しく申告するようにしてください。

被相続人の財産を把握しておく

相続税の申告に不備が生じるのは、被相続人の全ての財産を相続人が把握していないことが大きな要因です。

被相続人が亡くなった後は一般的に、亡くなった人の財産を全て洗い出して財産額を確定させる「相続財産調査」を行いますが、財産調査は地道な作業でありながら、被相続人の家族が把握しきれていない預金口座、高価な収集物、知人との金銭の貸し借りがあるケースもあるため、なかなか進まないということもよくあります。

そのため、生前からどのくらいの財産があるのかを家族が把握しておくと安心です。

生前贈与の場合は証拠を残しておく

生前贈与は節税効果の高い相続税対策となるため、子や孫に少しずつ財産を分けておくケースも多いです。

しかし、相続税の税務調査で生前贈与を否認された場合は、贈与分を相続財産に合算しなければならないため、贈与であることの証拠を残しておく必要があるのです。

そのため、現金を手渡しで贈与せず、銀行振込で記録を残したり、たとえ家族であっても契約書を作成したりするなど、必ず証拠を残すようにしましょう。

相続に関するやり取りは記録に残す

相続に関するもので被相続人や相続人と何かやり取りをする際は、口約束にはせずにきちんと書面などに記録として残すことが大切です。

被相続人から何をもらうのか、誰がいくらもらうのかによって、相続人それぞれが納める相続税額が変わってきます。

相続についてのやり取りが記録に残っていれば、正しく申告・納税できたことが明確に証明できるため、税務調査が入るリスクを減らせるでしょう。

相続税を申告しないのは危険!

相続税を申告しないのは危険!

相続税に関しては税務署が目を光らせており、様々な手段を使って亡くなった人や相続人の情報を掴みます。

「どうせバレないだろう」と安易な考えで相続税を申告しないと、税務調査で指摘され、本来納めるべき税額以上の重いペナルティが課されてしまうので、被相続人の財産を正しく把握し、適切に申告・納税することが望ましいです。

また、亡くなる前から家族がある程度の財産を把握しておくと、申請がスムーズに進みやすくなるでしょう。

相続税の申告を自身で行うのが不安な方は、相続税に関する知識が豊富な専門家である税理士に依頼すると、手間が省けるだけでなく、税務調査のリスクも減らせるのでおすすめです。


免責事項

当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。

全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上

  • 現在、税務調査が入っているので困っている
  • 過去分からサポートしてくれる税理士に依頼したい
  • 税務調査に強い税理士に変更したい
  • 自分では対応できないので、税理士に依頼したい
といったお悩みを抱えている方は、まずは初回電話無料相談をご利用ください。
税務調査の専門家が対応させていただきます。

税理士法人松本の強み

  • 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
  • 過去の無申告分から現在まですべて対応可能
  • 査察案件から税務署案件までの経験と実績が豊富にあります
  • 顧問税理士がさじを投げた案件も途中から対応できます

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断

あわせて読みたい記事

税務調査ブログをもっと見る

税務調査は対応次第で結果が大きく変わります!

税務調査お悩み解決しませんか?
いますぐ電話1本で相談できます!

専門家があなたの税務調査に関する不安を一つ一つ丁寧に解決。
初回有料相談は返金保証付きで、どんな小さなご相談も全国から承ります。

税理士法人松本代表税理士 松本 崇宏

30秒で完了かんたん税務調査リスク診断