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税務調査では売上除外を徹底調査!よくある不正のパターンとは
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税務調査では、納税者が正しく申告を行い、納税を行っているか、厳しい調査が行われます。税務調査は、公平で正しい納税を促すことを目的に実施される調査です。したがって、正しく納税している人たちが不公平の犠牲になることがないよう、不正が行われていないかという点を中心にチェックが行われます。
税務調査は、限られた時間の中で限られた人員で進める調査です。そのため、いくつかのポイントについて重点的に調査が行われる傾向にあります。その重点ポイントの1つが「売上除外」です。
今回は、税務調査で実施される売上除外の調査とよくある不正のパターンについてご説明します。
目次
売上除外とは
売上除外とは、文字通り、売上を除いてしまうことです。本来は発生していた売上を帳簿に計上しない行為を売上除外といいます。ミスにより、意図せずに売上除外をしてしまうケースもありますが、売上を少なく申告をするために意図的に売上除外をするケースもあります。
ミスにより、結果的に売上除外になってしまった場合は、税務調査時に指摘を受けますが、それほど大きな問題にはならないでしょう。しかし、意図的に売上除外を行っていると判断されれば、脱税の疑いがかけられる可能性もあります。
税務調査で売上除外をチェックする理由
売上除外は、税務調査で重点的に調査が行われるポイントであるとご説明しましたが、なぜ調査官は売上除外に注目するのでしょうか。調査官が税務調査で売上除外に注力して調べる理由をご説明します。
売上除外で納税額を不正に低く抑えられるから
所得税や法人税などの税金は、売上の額から経費を差し引いた額、つまり利益に対して課せられものです。所得税には累進課税制度が用いられているため、課税対象額である利益が高ければ高いほど課せられる税率も高くなります。一方、法人税には累進課税制度は適用されませんが、資本金1億円以下の中小企業では年800万円以下の部分については税率が低く設定されています。
また、税率だけでなく、利益の額自体も納税額に大きく関係します。所得税や法人税は、利益に定められた税率をかけて計算するため、税率をかける利益が低ければ、当然、納税額を低くできるのです。
単純に利益を低く見せかける方法が何かと考えれば、本来よりも売上を少なく計上する方法と売上より差し引く経費を本来よりも多く計上する方法の2つが思いつくでしょう。売上除外とは、前者の本来よりも売上を少なくする不正に該当します。
不正を行い、納税額を低く抑えようとする企業の多くでは売上除外を行っているため、税務調査では売上除外をしていないか重点的に調査が行われているというわけなのです。
多額の追徴課税を課せる可能性が高いから
繰り返しになりますが、税務調査では調査官は不正をただし、適正な納税を推進することを目的に調査を進めます。しかし、小さなミスを指摘し、わずかな額の納税漏れを指摘しても、それほど大きな効果は得られません。そのため、調査官としては、不正が行われることが多いものから効率的に調査を進めたいと考えます。
売上の額は大きいため、売上除外を指摘できれば多額の追徴課税を課せられる可能性が高くなります。したがって、税務調査では、多額の追徴課税を課せられる可能性が高い売上除外について、徹底的に調査を行うのです。
税務調査で発覚する売上除外のよくある不正パターン
何とか売上を低く見せかけ、納税額を抑えようと、さまざまな方法で売上除外を行う例がありますが、税務調査で売上除外が発覚しやすい主なパターンをご紹介しましょう。
飲食店などで行われやすい売上除外
もっとも単純で、昔から行われている売上除外の方法は、売上を計上せずに伝票を破棄する方法です。レジを用いずに計算をしている場合であれば、売上の証拠が残りません。そのため、売上の一部を計上せずに、売上を低く装うのです。また、レジを利用している場合でも、いったんレジを通した後にデータを抹消するケースがあります。
しかし、税務調査で仕入れの状況をチェックすれば、仕入れの額や量と売上の額が合わないため、売上の除外をしているのではという疑いを持たれるでしょう。さらに、飲食店の場合、調査官が客を装って店を訪れ、客の入り具合や客単価などを調査する覆面調査が実施されるケースもあります。覆面調査を行えば、おおよその売上額を予想できるため、売上を過少に申告していると売上除外が指摘されることになるのです。
一部の取引先からの売上だけを除外する
メインの取引先ではない、一部の取引先からの売上だけを除外する例もあります。税務調査が入っても不正がバレないように、主要な取引先の売上は計上しているものの、目立たないように一部の取引先の売上だけを計上しないのです。
しかし、調査官には必要に応じて銀行口座の取引履歴を確認できる権利を持っています。取引先からの入金履歴を確認していけば、売上を除外してもすぐに不正は発覚します。
期ズレを利用した売上の除外
税務調査では、期ズレによる売上の計上漏れもチェックします。本来、当期に計上すべきだった売上を翌期に計上すれば、当期の売上を減らすことができます。そのため、売上の計上月を意図的にずらし、納税額を抑えようとするケースがあるのです。
売上を計上するタイミングがずれていないかを調べるため、税務調査では期末近くの取引を中心に入念な調査をします。意図的に売上を翌期にずらしていると疑われる処理があれば、取引先に対しても反面調査を行う可能性があります。取引先の情報と照らし合わせ、売上の計上漏れが発覚すれば、売上除外に該当するとして指摘を受けることになるでしょう。
特定の事業用口座に入金された売上の除外
メインとして利用している銀行口座に入金される売上高だけを計上していれば、売上の除外がバレないのではと考えるケースもあるようです。ほとんどの取引は、メインの銀行口座に入金を依頼し、特定の取引先や単発の取引などで生じる売上をメインとは異なる別の口座に入金させる場合があります。メインの口座に入金された売上額だけを売上として計上すれば、売上を低く装うことができます。
しかし、税務調査では帳簿を細かくチェックし、場合によっては取引先に対する反面調査も実施するため、銀行口座を別に用意していた場合でも売上除外が発覚することになります。
売上除外以外にも税務調査でチェックされるポイントは?
税務調査では、売上除外に注力した調査が行われますが、売上除外だけを調べるわけではありません。売上除外のほかにも税務調査でチェックが行われやすいポイントには次のようなものがあります。
架空の経費計上はないか
売上除外と並び、経費の架空計上は納税額を抑えるために行われやすい不正行為です。実際には発生していない取引の請求書や領収書を偽造し、経費が発生したかのように装うケースや、同じ経費を二重に計上するケースなどよく見られます。また、従業員の給料よりも多く支払っているように見せかけ、人件費を水増ししているケースもあるのです。
税務調査では、帳簿などを詳細に確認しながら売上と経費のバランスを確認するため、不正に経費を水増し計上した場合も、調査官から指摘を受けることになります。
プライベートな支出を経費に計上していないか
経費として計上できる支出は、事業に必要となった費用だけです。しかし、経費を水増しするために、プライベートな支出まで経費として計上されているケースがあります。具体的には、社長が個人的に乗っている車を社用車として扱っていないか、プライベートな食事の費用を経費として計上していないかなどがチェックされるのです。
棚卸資産を適切に計上しているか
在庫を多く抱える業種では、棚卸資産が利益を大きく左右します。期末の在庫の計上が正しいか、外部の倉庫や外注先などに預けている在庫がないか、発注後まだ届いていない在庫がないか、細かいチェックがなされます。
特に預け在庫がある場合には、計上漏れのケースが多くなっています。そのため、勘定科目などから倉庫の管理料などの履歴を確認し、預け在庫の計上漏れについて厳しく調査が行われる傾向にあります。
税務調査で売上除外を指摘されるとどうなる?
税務調査で売上除外が発覚した場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
修正申告が求められる
税務調査が終了し、調査の結果、売上除外による申告の誤りが発覚した場合、修正申告が求められます。修正申告とは、既に提出した申告書について、誤っていた箇所を修正し、税額を正しい額に訂正して申告する手続きのことです。修正申告は、税務署が行うものではなく、納税者が自ら行わなければなりません。
追徴課税がなされる
売上除外を指摘され、修正申告を行う場合、ペナルティとして追徴課税が行われます。売上除外によって売上を過少に申告していれば、納税額は本来納める額よりも少なくなります。したがって、期限までに申告をしていたものの納める税金が不足していた場合に課せられる過少申告加算税の納税が必要です。
過少申告加算税の税率は、原則として10%ですが、期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分については15%が課せられます。また、税金の納付が遅れたことに対する延滞税の納税も必要です。
したがって、売上除外が発覚し、修正申告をする際には、不足している分の税額、不足している税額の10%または15%分の過少申告加算税、納付が遅れた日数分の延滞税を納付しなければなりません。
少しでも納税を低くしようと売上除外を行うと、結果として税務調査で不正が指摘され、本来よりも多くの税金を支払わなければならなくなってしまうのです。
まとめ
売上除外による不正は、税務調査で発覚することが多く、発覚した場合、多額の追徴課税が課せられる可能性が高いものです。そのため、税務調査では売上を過少に申告することで税金逃れを図る売上除外が行われていないか、詳細に調査が進められます。
税務署では必要に応じ、法人口座だけでなく、社長などの関係者の個人預金口座などを調べるケースがあります。また、取引先に対して調査を行うケースもあり、売上除外を行っていた場合は、遅かれ早かれ不正が発覚することになるのです。
売上除外を指摘されることのないよう、普段から売上や経費は正しく計上するようにしましょう。また、万が一、売上除外などをしている恐れがある場合には税務調査が入る前に早めに税理士に相談し、自主的に修正申告を行うことをおすすめします。
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