2024.12.3
  • 税務調査

税務調査で役員社宅が指摘されないためのポイントとは?役員社宅についても解説

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

役員社宅とは、会社が提供する社宅の中で、役員が利用するための制度です。

会社が契約した賃貸物件に役員が住む場合、家賃を全額会社が負担することによって、経費として認められるので、税金対策としてメリットがあります。

しかし、役員社宅は税務調査において指摘を受けやすいのも事実です。

そのため、税務調査で役員社宅が指摘されないためのポイントを把握しておくことは重要です。

今回は、税務調査で役員社宅が指摘されないためのポイントを紹介します。

他にも「役員社宅の家賃の決め方」や「役員社宅の設ける際の注意点」についても解説していきます。

ぜひこの記事を参考にして、税務調査で役員社宅が指摘されないようにしましょう。

役員社宅とは?

役員社宅とは、会社の役員が利用する社宅制度の一つです。

大きな魅力として、節税効果が期待できることが挙げられます。

会社名義で賃貸住宅を借りて、役員が居住する場合、その家賃は会社の経費として計上され、全額を損金として扱うことが可能です。

しかし、役員が利用する住居であっても、会社が負担する賃料は業務に関連する支出とみなされるため、適切な手続きを踏むことが求められます。

具体例を挙げると、賃料が40万円のマンションを会社が社宅として契約し、そのうち20万円を会社が負担する場合、会社は20万円×12カ月で年間240万円を経費として計上でき、結果として節税効果を得ることが可能です。

また、社会保険料の負担が軽減されたり、役員の可処分所得が増えることが挙げられます。しかし、どのような物件でも役員社宅として認められるわけではなく、一定のルールや基準が設けられているので、あらかじめ注意が必要です。

役員社宅の種類

役員社宅の種類については、以下の3つが挙げられます。

住宅の種類 床面積 賃貸料相当額
小規模な住宅 ・法定耐用年数が30年以下の場合:床面積が132㎡以下

・法定耐用年数が30年を超える場合:床面積が99㎡以下

※区分所有の建物に関しては、共用部分の床面積を按分して、専用部分の床面積に含めます。

住宅の賃貸料に相当する額は、次の要素を合計して計算します。

・その年の建物に対する固定資産税の課税標準額 × 0.2%

・ 建物の総床面積(㎡) ÷ 3.3㎡ × 12円

・ その年の敷地に対する固定資産税の課税標準額 × 0.22%

小規模でない住宅 上記以外 その年の建物に対する固定資産税の課税標準額に応じて、次の計算を行い、合計額を12で割ります。

・その年の建物の固定資産税課税標準額 × 12%(ただし、法定耐用年数が30年を超える場合は10%)

・その年の敷地の固定資産税課税標準額 × 6%

※借り上げ社宅の場合

会社が賃貸主に支払う家賃の50%と、上記で算出した賃貸料相当額のうち、どちらか高い金額が基準となります。

豪華住宅 • 240㎡を超える住宅

物件の価格や賃料、内外装の仕様を考慮し、豪華住宅に該当するかを判断します。

• 240㎡以下の住宅

プールなどの特別な設備が設置されている場合や、役員個人の趣味が大きく反映されている場合など、特定の条件を満たす住宅も豪華住宅とみなされることがあります。

家賃全額

役員社宅で節税を行うには、役員本人が国税庁の定めた基準に基づく家賃の一部を負担する必要があります。

基準額は「賃貸料相当額」と呼ばれ、住宅の種類や床面積によって分類されています。

役員社宅として認められる項目

役員社宅として認められる項目については、以下の3つが挙げられます。

  • 法人名義で賃貸契約を結ぶ
  • 家賃の支払いは名義人の法人が行う
  • 家賃の一部を役員本人が負担する

それぞれの項目について解説していきます。

法人名義で賃貸契約を結ぶ

役員社宅として認められる項目として、法人名義で賃貸契約を結ぶことが挙げられます。

役員が個人名義で賃貸契約を結んでしまうと、会社が負担する家賃の部分が「住宅手当」と見なされ、課税の対象となってしまう可能性があります。

役員社宅制度の大きな目的は節税効果を得ることですが、個人名義だとその効果が失われてしまいます。

家賃の支払いは名義人の法人が行う

家賃の一部を会社の経費として処理するのであれば、家賃の支払いは必ず会社から行う必要があります。

役員が個人で支払ってしまうと、税務調査の際に経費として認められないリスクがあり、経費計上が否定される可能性が高くなります。

また、役員本人が役員社宅の一部を負担する際には、会社が役員報酬から差し引く形で処理することが必要です。

このように手続きを整えることで、税務上のリスクを軽減できます。

家賃の一部を役員本人が負担する

役員社宅の家賃を経費として扱うことができますが、全額を会社が負担することはできないので、必ず役員自身が一部を自己負担する義務があります。

自己負担額は、国税庁が定める基準に従う必要があり、床面積などによって支払う家賃が異なります。

万が一、国税庁が定める基準を超えて、または家賃の全額を会社が負担する形にすると、役員報酬の一部を現物給与として支払っていると見なされる可能性があります。

また、会社が負担した家賃分は経費ではなく給与として扱われ、税務調査の際に課税対象となるリスクがあります。

税務調査で役員社宅が指摘されないためのポイント

税務調査で役員社宅が指摘されないためのポイントについては、以下の3つが挙げられます。

  • 社内規程を作成する
  • 家賃相当額を支払う
  • 税務上の豪華な住宅は避ける

それぞれのポイントについて解説していきます。

社内規定を作成する

役員や社長の自宅を社宅として利用する際には、まず社内での規定を事前に整えておくことが重要です。

規定が整っていない状態で役員社宅を設置してしまうと、特定の人物にのみ特別な優遇措置をしていると国税庁に受け取られる可能性があるので注意が必要です。

具体的に、社内規定は以下のような項目を含めるようにしましょう。

  • 入居資格:誰が対象となるのか、同居できる家族の範囲などを明確にする
  • 使用料と負担の割合:賃料の何割を負担するか、また水道光熱費や管理費などの諸経費をどのように分担するかを記載する
  • 入退去の手続き:入居期間や契約更新の手順などを明示する。

また、規定に違反があった場合の対応方法をあらかじめ定めておくことで、問題が発生した際に迅速に対応することにもつながります。

家賃相当額を支払う

役員の家賃自己負担分は、必ず会社に支払う必要があります。

万が一、無償で社宅を利用していたり、賃料相当額よりも低い家賃を支払っている場合には、その差額が給与とみなされ、課税対象となることがあるので注意が必要です。

無償提供の場合、家賃全額が経費として認められるわけではなく、その賃料相当額が給与として課税されるので、結果的に税負担が発生してしまうので、あらかじめ注意が必要です。

税務上の豪華な住宅は避ける

税務上で豪華な住宅を役員社宅とする際には、節税効果を期待するのは難しいです。

特に、プールやサウナなどの贅沢な設備を設置したり、床面積が240㎡を超える場合は注意が必要です。

また、賃料に関しては、最低でも3年に一度は見直すことが求められるので、そのタイミングで役員社宅の賃料も再計算し、適正な額に調整することが重要です。

役員社宅のメリット

役員社宅のメリットについては、以下の3つが挙げられます。

  • 家賃を損金扱いにできる
  • 役員の可処分所得額が増える

それぞれのメリットについて解説していきます。

家賃を損金扱いにできる

役員社宅の最大のメリットとして、会社負担の家賃が全額損金扱いになる節税効果が挙げられます。

具体的には、会社が支払った家賃分は地代家賃として経費に計上でき、結果的に損金扱いとなります。

また、社宅に関連する費用の中には、以下のように計上できるものがいくつかあります。

項目 内容
全額経費として計上可能なもの ・賃貸契約にかかる仲介手数料

・引越しに伴う費用

・敷金

一部を経費計上できるもの ・礼金

・管理費

・共益費

・火災保険料

経費として扱えないもの ・水道光熱費

・駐車場代

このように、役員社宅制度を導入する際は、可能な限り多くの費用を経費に計上することによって、最大限の節税効果を引き出すことが可能です。

役員の可処分所得額が増える

役員社宅として、役員の可処分所得が増加するというメリットも挙げられます。

例えば、月額80万円の役員報酬を受け取っている役員が、家賃30万円のマンションに住んでいる場合、役員が個人名義で賃貸契約を結んでいれば、家賃の30万円は全額自己負担となります。

しかし、会社が家賃の半分を補助してくれるとすれば、役員は残りの15万円だけを支払うことになり、その分可処分所得が増えることになります。

また、会社が家賃分を役員報酬から控除する形になるので、社会保険料や所得税、住民税などの負担が軽減され、結果として手元に残るお金を増やすことが可能です。

役員社宅を設ける際の注意点

役員社宅を設ける際の注意点を把握しておくことで、トラブルや課税されてしまうリスクを防ぐことにもつながります。

具体的に、役員社宅を設ける際の注意点については、以下の4つが挙げられます。

  • 初期費用が発生する
  • 住宅ローン控除は適用されない
  • 課税されてしまうものもある
  • 住んでいる住宅を役員社宅にするのは難しい

それぞれの注意点について解説していきます。

初期費用が発生する

役員社宅を導入する際には、家賃だけでなく、さまざまなコストが発生します。

例えば、敷金や仲介手数料といった初期費用も考慮する必要があります。

導入時にこれらのまとまった支払いが必要になるだけでなく、契約の更新時にも更新手数料がかかる場合があるため、計画的に準備することが重要です。

また、家賃以外の費用を会社が負担した場合、給与として扱われてしまい、課税対象となってしまうため、適切な対応が求められます。

住宅ローン控除は適用されない

個人で住宅を購入する際には、住宅ローン控除を利用して最大400万円の税控除が受けられますが、会社では住宅ローン控除は適用されないので、あらかじめ注意が必要です。

実際に、役員社宅として会社が物件を購入するケースは少なくありません。

このように、物件購入を検討する際には、住宅ローン控除が利用できないことを考慮した上で、しっかりとした資金計画を立てることが重要です。

課税されてしまうものもある

役員社宅に関する費用では、経費扱いできずに課税されてしまうものがあるので注意が必要です。

具体的に、役員社宅で課税されてしまうものについては、水道光熱費や駐車場代などが挙げられます。

これらの費用を会社が負担し、役員社宅に関する規定に含めたとしても、役員報酬の一部と見なされ、課税対象となってしまうので注意が必要です。

住んでいる住宅を役員社宅にするのは難しい

役員が現在住んでいる住宅を役員社宅にする際には、実施することはできますが、手続きや条件が複雑になってしまうので注意が必要です。

基本的な手順としては、賃貸契約の名義を個人から法人に変更し、家賃は会社が負担する形に移行します。

そして、役員が負担する家賃分は役員報酬から差し引く形で処理することが可能です。

しかし、社宅の本来の目的は、従業員の住環境をサポートすることや福利厚生の一環として提供されるものなので、すでに住んでいる住宅に対して会社が補助を行う場合、目的が曖昧になりがちなのも事実です。

そのため、社宅としての扱いが難しくなる可能性があり、特に税務署の判断では、社宅と認められず、住宅手当として課税対象となるリスクも考えられます。

このように、役員社宅に関する手続きや税務上の扱いについては慎重な対応が必要です。

税務調査で役員社宅が指摘されないように対策をしよう!

今回は、税務調査で役員社宅が指摘されないためのポイントや役員社宅の内容について紹介しました。

役員社宅とは、主に会社の役員が利用するための社宅制度の一つで、節税効果が期待できます。

また、税務調査で役員社宅が指摘されないためのポイントについては、以下の3つが挙げられます。

  • 社内規程を作成する
  • 家賃相当額を支払う
  • 税務上の豪華な住宅は避ける

今回の記事を参考にして、税務調査で役員社宅が指摘されないように対策をしましょう。

 

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