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法人の税務調査の流れと対象になりやすい傾向とは?
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
目次
法人の税務調査とは
税務署が法人の調査対象期間における所得や消費税などの申告内容について調査を行うことを指します。
税務署の職員が企業の帳簿や記録を点検し、税務申告書の正確性や適正を確認するための手続きです。調査対象となる法人は、統括官または調査官が選定しています。調査の結果によって、課税所得の再計算や追徴税額の請求、税務上の違反行為がある場合には罰則が科されることもあります。
法人の税務調査の流れ
一般的な税務調査(任意調査)の流れは、以下のとおりです。
1. 調査の予告
税務署は法人に対し、税務調査の予告を通知します。通知書(事前通知)には、調査の目的、期間、調査の範囲、必要な書類や情報の提出日などが記載されています。
この際、税務署から指定されている調査日が、仕事でどうしても都合がつかない場合は、別日を希望し、日程を変更することも可能です。
また、事前通知なしの無予告で調査が入る可能性もあります。無予告調査が多いのは、現金を中心とした商売を行っている業種です。具体的には、飲食業や小売業、美容院・理容院、サービス業などが対象となりやすいと言われています。 現金商売は、入金や出金の記録が残らず、お金の流れを後追いしにくいという特徴があるためです。
2. 書類・情報の事前準備と提出
調査日程が決まったら、調査当日まで資料等の準備を行いましょう。必要書類をそろえたり、顧問税理士がいる場合は税理士と調査の事前打ち合わせをしたりしましょう。
調査当日、法人は税務署の要求に応じて、依頼された書類や情報を提示または提出します。これには、法人の申告書や総勘定元帳、取引記録、資金移動記録、契約や請求書、顧客などのリスト、従業員の給与データなどが該当します。
3. 調査の実施
税務署の調査官が法人の事業所を訪れ、提出された書類や情報を詳細に確認し、法人の所得や経費、税金の申告の正確性を見ていきます。調査官は、取引の正確性や法的要件を満たしているか、租税回避手段の有無なども確認していきます。また、疑わしい項目や不透明な取引について調査官が追加の質問をする場合もあります。
4. 調査結果の通知
税務署は最終的な調査結果を法人に通知します。結果によっては、法人の所得や税金が修正され、追徴課税が行われる場合があります。
税務調査の対象になりやすい法人
税務調査が入りやすい法人は、以下のとおりです。
1.同業他社と比較して所得率が低調
税務署は、所得率(所得÷売上)を重要視しています。この所得率が同業他社と比較して低調な法人は、利益を圧縮して税金をごまかしているのではないかと疑いの目で見ています。そのため、同業他社と比較して所得率が低調な法人は税務調査の対象となりやすいでしょう。
2.売上や利益が大きく変動している
昨年と比較して、売上や利益が大幅に変動している法人も、調査対象になりやすい傾向にあります。黒字に転換したり、利益が大幅に増減したりしている場合は目に付きやすいでしょう。
3.不正が多い業種
国税庁の「令和3年度実地調査の状況」 によると、不正発見割合の高い業種が「その他の道路貨物運送業32.8%、医療保険業31.2%、職別土木建築工事業29.6%」になっており、不正1件当たりの不正所得金額の大きい業種が「情報サービス・興信所業、自動車・同部品卸売業、鉄鋼製造業」が高くなっています。
これらの業種に属する法人は、税務署が調査する必要度が高いと位置付けられています。
4.過去の税務調査で指摘を受けている
過去に申告漏れなどの指摘を受けた場合、税務署のリストに追加されているため、申告内容の誤りや不正がないかを疑われやすくなります。
税務署が過去に指摘した事項が改善されているかを確認する必要もあるため、調査対象になりやすいと言えます。
法人の税務調査で確認されやすい箇所
税務調査では、一見雑談のように「ここ数年事業の近況はどうですか」「従業員の数はどのくらいですか」など、会社の沿革や業務内容をはじめ、取引先の範囲、役員や従業員についての情報などを聞かれることが多いです。
そして、帳簿や経理業務の管理体制、経理担当者は誰か経験年数はどのくらいかを質問されることもあります。
仕入に関しても、架空の仕入がないか、棚卸はされているかと帳簿や棚卸表も調査となります。調査状況によっては取引先へ反面調査などが行われる場合もあります。
調査でよく確認されやすい箇所は、以下のとおりです。
1.売上と経費の比率の変化
税務調査では、3年ほどの売上と経費の比率が比較されます。
例えば、売上はあまり増えていないのに、経費率が大きく増えていれば「なにかしら経費が水増しされているのではないか」と疑いをもたれます。事業が変わっていなければ、経費率がその年によって急激に上下することはあまりありません。
数値を細かく見て、平均的な伸び率や経費の割合を算出して、大幅にはみ出していないか確認されます。経費が急激に上がっているため、確認したところ設備投資にお金をかけただけというケースもありますので、税務調査できちんと説明できるように整理しておきましょう。
2.架空人件費が計上されていないか
実際に発注していない架空の外注費が計上されていたり、勤務実態がない従業員の給料を計上していたりするケースでは、税務調査で最もチェックされるポイントのひとつです。
架空人件費分の台帳は作成しておらず、給与台帳の合計金額と元帳の給料の金額が一致しないことや、架空の人物分だけ源泉徴収簿がないことで調査官が気づくことがあります。
3.接待交際費は適切に処理されているか
接待交際費については、本来接待交際費で処理すべき経費をその他の科目で処理していないかを見られます。法人の接待交際費は一部が経費(損金)にならないため、課税所得を減らす目的で、接待交際費ではない別の科目で処理していることがあるためです。
まとめ
法人の税務調査の流れから税務調査の対象となりやすい法人の傾向や、税務調査でチェックされるポイントなどについてご紹介しました。
税務調査では、思いもかけない細かい点についても質問されることがあります。受け答えがあいまいになると嘘をついている可能性があると見られることもあります。
調査には、税務調査に強い税理士のサポートが欠かせません。現在、顧問税理士がついていない場合でも、税務調査のみのスポットで対応してくれる税理士もいます。1人で不安を抱えず、早めに相談してみることをおすすめします。
税理士法人松本は、税務調査のスポット対応も可能です。ぜひお気軽に電話またはLINEにてご相談ください。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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