2024.04.27
  • 税務調査

時計売却で得たお金の確定申告は必要?税務調査で指摘される?

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

昨今、人件費や材料費などが高騰していることから、腕時計の価格も高騰しています。特に、高級腕時計ブランドの時計は、中古であっても価値が高まり、購入時よりも高額な値段で売却できるケースが少なくありません。そのため、所有する時計の売却を検討している人もいらっしゃるでしょう。では、時計売却によって得られる利益は、確定申告が必要なのでしょうか。
今回は、時計売却で得た収益と確定申告や税務調査の関係についてご説明します。

 

時計売却で得たお金は、原則として課税対象にはならない

所有している腕時計を売却して得られたお金については、原則として、課税の対象とはなりません。時計売却で得たお金に税金が課せられない理由は、時計は生活用動産として扱われるからです。

 

時計は生活用動産に該当

生活用動産とは、生活に必要な財産のことです。具体的には、自動車や家具、衣服などが生活用動産に該当します。生活用動産を譲渡した場合に得られる所得は、所得税を課さないことが決められています。
したがって、個人が自分で使用していた腕時計を売却する際に得られる所得は、生活用動産を売却して得られる所得となるため、所得税の課税対象になることはほとんどありません。
そのため、時計売却で所得を得た場合、確定申告をする必要はないのです。

 

時計売却の所得が課税対象となるケース

生活用動産である時計の売却で得られる所得は、原則として課税対象とはなりません。しかし、例外として時計売却の所得に対して税金が課せられる可能性が生じるケースがあります。
生活用動産であっても、1つの価格が30万円を超える貴金属や宝石、真珠、さんご製品、骨とう品、美術工芸品などを売却した場合は課税対象となるのです。そのため、ダイヤなどの宝石が埋め込まれた30万円以上のジュエリーウォッチに該当する時計を売却した場合には、譲渡所得に該当し、課税対象になるケースがあります。
また、骨とう品としての価値を持つアンティークの時計を売却した場合も、30万円以上の値が付けば、課税対象として申告しなければならない可能性もあります。

 

時計売却で税金が発生する場合の課税方法

ジュエリーがちりばめられた時計やアンティークの時計などで、30万円以上の価値があるものの場合、譲渡所得が発生する可能性があります。譲渡とは、所有資産を移転させる行為を指し、譲渡所得の対象となる資産を売買する行為も譲渡に含まれます。
譲渡所得は、譲渡資産の種類によって分離課税の対象と総合課税の対象になるものに区分されますが、譲渡所得が課せられる時計の場合には総合課税方法が用いられます。
総合課税とは、事業所得や給与所得など、そのほかの所得額と合計した額に対して、累進税率によって税額を計算する方法です。

 

総合課税の譲渡所得の計算方法

総合課税の場合、譲渡所得は次の計算式で計算できます。

譲渡所得額=売却価格-取得費用-譲渡費用-50万円

取得費用とは、購入した代金のことを指します。つまり、売却対象の時計を購入したときの費用が取得費用に該当します。また、譲渡費用とは売るためにかかった費用のことで、譲渡費用に含まれるのはインターネットなどで時計を売却する際にかかった配送費やシステム利用料などです。また、譲渡所得の特別控除額は50万円です。
例えば50万円で購入したジュエリー付きの時計を、時計買い取り店に出向き、100万円で売却したとします。取得費用が発生しなかったと仮定すると、この場合の譲渡所得額は、次のように計算できます。

100万円-50万円-50万円=0円

したがって、この場合の譲渡所得額は0円となり、時計売却によって得た所得に対する納税の義務は発生しないことになります。

先ほど、30万円を超えるジュエリー付きの時計やアンティークの時計を売却した場合は、課税対象となると説明しました。しかし、譲渡所得には50万円の特別控除があるため、実際には売却価格が取得費用と譲渡費用、50万円を合計した額を上回らなければ、課税対象とはなりません。つまり、少なくても、時計売却によって得られる利益が50万円を超えなければ、確定申告をする必要はないというわけです。

 

転売目的で時計売却をしている場合は確定申告が必要

ここまで個人が所有する時計を売却した場合の確定申告や納税の必要性についてご説明してきました。
しかし、複数の時計を転売のために仕入れ、売却をし、繰り返し利益を得ているような場合は、個人の生活用動産を売却しているのではなく、商売として時計売却を行っているとみなされます。転売目的の場合、30万円以下のジュエリー付きの時計やアンティークの時計でなくても、時計売却によって生じた所得は課税対象となります。
昨今ではネットオークションやフリマサイトなどを利用する人も増えているため、税務署ではインターネットを通じた売買にも目を光らせています。そのため、インターネットを介した取引で所得を得ているにもかかわらず、確定申告を行っていない個人に対して税務調査を行うケースが増えているのです。

 

税務調査で時計売却による転売の所得がバレたら?

転売目的で時計を仕入れて売却をし、所得を得ている場合、所得が一定の額を超えたときには、確定申告が必要になります。もし、確定申告をしていなかった場合には、税務調査でバレる可能性があります。

 

時計売却で確定申告が必要になる所得額とは

正社員やアルバイト、パートなどとして勤務しており、給与所得を得ている人が副業として時計売却を行っている場合、確定申告が必要になるのは、時計売却を含めた給与以外の所得が年間20万円を超えるケースです。</専業主婦の場合は、利益が年間48万円以上に達すると確定申告をしなければなりません。

 

税務調査で無申告がバレた場合

時計の売却で一定の利益を上げ、確定申告の必要があるにもかかわらず確定申告をしていなかった場合、税務調査で無申告がバレると、本来納めるべき税金に加え、ペナルティとして無申告加算税を課されるようになります。税務調査では、5年前までにさかのぼって調査される可能性があるため、無申告加算税も最大5年分課される可能性があります。令和5年分以降についての無申告加算税の税率は、納付すべき税額に対し、50万円までは15%、50万円超~300万円までは20%、300万円超える部分については30%です。
一般的に、税務調査の前には、税務署から税務調査に入る旨の事前通知が入ります。税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告を行った場合は、無申告加算税の税率が5%に軽減されます。また、事前通知を受けた後に自主的に申告を行った場合も、令和5年分以降については、50万円までは10%、50万円超~300万円までは15%、300万円超える部分については25%に軽減されます。
つまり、時計売却によって年間20万円または48万円以上の利益を得ているにもかかわらず、確定申告をしていない場合は、税務調査で指摘される前に自主的に期限後申告を行った方が、納税額は軽減できるのです。確定申告の方法が分からない場合などは、税理士に相談することをおすすめします。

 

まとめ

個人が所有する時計を売却する場合、時計は生活用動産として捉えられるため、原則として、確定申告の必要はありません。そのため、税務調査で時計売却による所得を指摘されるケースはないでしょう。
しかし、転売目的で時計を売却し、利益を得ている場合は、利益の額に応じて確定申告が必要になります。一定以上の利益があるにもかかわらず確定申告をしておらず、税務調査で時計売却による所得がバレた場合は、無申告加算税が課せられ、本来納めるべき税額よりも多くの税金を支払わなければなりません。
転売による時計売却を行っている場合は、税務調査に入られる前に、期限後申告を行うようにしましょう。

 

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