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法人に対して税務調査が入る確率はどれくらい?調査対象となる条件を解説
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
事業を営む個人や法人の事業者には、税務署から税務調査の連絡がくる場合がありますが、そもそも税務調査の対象となる確率はどのくらいなのでしょうか。
本記事では、法人企業で税務調査が入る確率や調査の対象となりやすい法人の特徴について解説します。
また、税務調査は何年おきにくるのか、赤字の企業も調査の対象となるのかなど、多くの法人が疑問に思うポイントについても詳しく説明しますので、ぜひこの記事を参考に、会社のリスク管理に役立てていただけたら幸いです。
目次
税務調査とは
そもそも税務調査とは、国税局や税務署などが個人や法人の税務申告内容についてミスや不正がないか帳簿などを確認し、誤りがあった場合は是正を求めるという調査です。
税務調査で確認の対象となるのは、過去5年分の申告内容が一般的ですが、不正が疑われる場合は、過去7年分を確認されるケースもあります。
税務調査は国税通則法に基づいて実施され、調査官には納税者に質問をしたり帳簿書類の提示・提出を求めたりする権限が与えられるため、税務調査の対象になった場合は、それに協力して適切な調査を行えるようにする必要があります。
税務調査は拒否できる?
税務調査から何となく恐いイメージがあるため「逃げることはできるのか」と気になる方もいるでしょう。
税務調査は大きく以下の2種類に分けられます。
- 任意調査
- 強制調査
それぞれ強制力に違いがあるのですが、いずれにせよ税務調査を拒否することはできず、国税通則法128条によると、税務調査を拒否した場合の罰則として、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。
ここでは、任意調査と強制調査の違いについて説明していきます。
任意調査
任意調査は、いわゆる一般的な税務調査で、あらかじめ電話などで調査日が通知される「予告調査」と、予告なしで行われる「無予告調査」があります。
どちらも納税者の同意を得て、任意で実施されるものです。
「任意」と聞くと拒否しても良いものだと思われがちですが、実際はそうではありません。
納税者が調査の協力を拒否したり虚偽報告をしたりすると、罰則が科せられる可能性があるため、実質的には強制に近いです。
強制調査
強制捜査は、国税局査察部(通称マルサ)によって、脱税に関する証拠を収集し、刑事事件として立件することを目的とする強制力の高い調査です。
また、強制捜査は事前に通知がなく、準備期間もなしに調査が行われます。
任意調査と違い、犯罪の取締りを前提としているため、納税者の意思に関係なく行われ、犯罪捜査と同様の調査が行われるのが特徴です。
法人に対して税務調査が入る確率は?どのようなときに実施されるのか
税務調査は法人・個人に関わらず全ての納税者が対象です。
しかし、全ての納税者が受けるわけではなく、一般的には個人事業主であればおよそ0.5〜1.5%程度、法人へ税務調査が入る確率はおよそ1.5〜3.0%程度と、法人の方が高い傾向にあります。
税務調査に入る法人・個人は完全にランダムではなく、規模の大きい企業や不正を疑われる企業など、一定の条件のもと行われるケースが多いです。
税務調査が入りやすい時期
税務調査が行われる時期や頻度に明確な決まりはなく、年中行われているため、いつ実施されてもおかしくありません。
しかし、傾向として3月決算の法人の調査を行なうのを想定し、税務調査は確定申告の提出期間前後を避け、税務署の人事異動が終わる7月から年末にかけて多く行なわれるとされています。
あくまでも目安であるため、いつ税務調査がきても問題がないようにしておくのがおすすめです。
赤字企業でも税務調査は入る
「赤字決算だったので税務調査の心配はない」と勘違いされやすいですが、決算が黒字であっても赤字であっても税務調査は入ります。
意図的に赤字にして納税を逃れようとする企業もあるからです。
そのため、たとえ赤字企業でも税務調査で問題が見つかって所得が増えると、繰越欠損金が減ったり、黒字に転換したりして法人税などの納税義務が生じる可能性があります。
また、赤字企業であっても支払うべき税金が全くないわけではなく、消費税や源泉所得税などについては納税しなければならないため、それを確認するために調査が行われる場合もあるのです。
税務調査は何年おきにくるのか
税務調査は決まった間隔でくるのか、それとも不定期にくるのか気になる法人の方も多いでしょう。
結論から言うと、税務調査がくる周期は決まっておらず、法人によって異なります。
一般的には5〜10年に1度の頻度で税務調査がくると言われています。
しかし、過去に重加算税を課されたことがあるなど、隠ぺいや仮装によって税金を過小申告した経験があれば、税務署側からの印象も悪くなり、5年も経たず高頻度で税務調査が入る可能性が高いです。
税務調査の対象になりやすい法人の特徴
税務調査は、法人税や所得税などの国税を納める人であれば誰でも対象となり得ます。
しかし、税務調査の対象となる法人は、特定の特徴を持っているケースが多く、具体的には以下の7つです。
- 事業規模が大きい法人
- 売上や利益が急激に伸びた法人
- 売上や利益の変動が大きい法人
- 売上の伸び率の割に利益が少ない法人
- 同業他社と比較して所得率が極端に低い法人
- 不正が多い業種に属する法人
- 過去に税務調査で指摘を受けている法人
これらを理解することはリスク管理に役立つはずですので、詳しく見ていきましょう。
事業規模が大きい法人
事業規模が大きい法人は、小さい法人と比べて納税額が高いため、ミスが生じたときの影響も大きくなります。
そのため、徴税事務の効率化の観点から規模が大きい法人の方が税務調査の対象となりやすいです。
しかし、事業規模に関係なく取引に不審な点があれば調査を行う必要があるため、売上規模が小さい法人も税務調査の対象となるという点を覚えておきましょう。
売上や利益が急激に伸びた法人
売上や利益が急激に増加したり減少したりしている場合、その背景に何があるのかを確認するために税務調査を行うことがあります。
特に、売上が急激に伸びた法人は、その分納めるべき税金も多いだろうと予測でき、申告箇所が多くなると税務申告で修正すべき箇所も増えやすいため、税務調査の対象となりやすいです。
また、多額の利益を隠すために架空経費をつくったり、個人的な支出を経費に入れたりするケースも多いため、疑われやすくなります。
売上や利益の変動が大きい法人
例年に比べて売上や経費が大幅に増加した場合や利益が極端に減少している場合は、不正な会計操作が疑われるため、税務調査の対象となりやすくなります。
もちろん、不正がない場合は全く問題がありません。
なぜ売上が増えたのか、利益が極端に減ったのかを証拠とともに説明できるようにしておきましょう。
売上の伸び率の割に利益が少ない法人
売上がある程度あるにも関わらず、利益が利益が少なく損失が多い法人は、所得隠しが疑われ、税務調査の対象となりやすいです。
事故など何らかの理由で損失が多くなってしまうことはありますが、経常的な売上があるにも関わらず、損失が多く赤字が続いているようなら疑わしいです。
また、交際費や広告宣伝費、外注費など、特定の経費が高額な場合、税務署はその経費の妥当性を疑問視するケースもあります。
そのため、法人側はなぜ利益が少ないのか、証拠に基づいて説明する必要があるでしょう。
同業他社と比較して所得率が極端に低い法人
申告内容に不審な点がある法人も、調査に入る条件となります。
税務署は、所得率(所得÷売上)を重要視しています。
所得率が同業他社と比較して著しく低い法人は、利益を圧縮して税金から逃れようとしているのではないかと疑う傾向にあるため、税務調査の対象となりやすいです。
不正が多い業種に属する法人
過去のデータや統計に基づき、不正が発生しやすい業種の法人は税務調査の対象となりやすい傾向にあります。
統計的には、以下の特徴を持つ事業者が多いです。
- 現金取引が多い業種
- 深夜営業が多い業種
- 海外取引が多い業種
- 会計処理がアナログな業種
- 新しいビジネスモデルに関わる業種
具体的には、バーやクラブなど深夜にお酒を提供する店や海外取引の多い外国料理店、その他飲食店、日雇いや請負場所が変わる土木建築業者などはこれまで多くの不正が見つかっています。
過去に税務調査で指摘を受けている法人
過去の税務調査で指摘を受けた法人は、税務署のリストに追加されているため、申告内容にミスや不正がないか疑われやすくなります。
また、過去に指摘された内容がきちんと改善されているかを確認する目的もあるため、税務調査の対象となりやすいです。
ほかにも、不正を行った法人と取引があった法人も調査対象となるケースもあります。
税務調査で指摘を受けないようにするための対策
法人が税務調査の対象とならないために、もしくは、税務調査が入っても指摘を受けないようにするためには、税務に関して疑われないようにしておくことが重要です。
ここでは、日頃からの税務調査対策について説明します。
適切な経理処理を行う
税務調査が入らないようにするために、まずできることは、正しく経理処理を行うことです。
税務調査の主な目的は、税金の適正かつ公平な徴収であり、不正計算をしていないか、悪質な税金逃れがないかを重要視しています。
軽度な経理上のミスならば、指摘し修正の指導を行うだけで済むでしょうが、悪質な脱税とみなされると、加算税によるペナルティだけでは済まず、刑事罰が科されるケースがあるので、注意が必要です。
そのため、隠ぺいや不正を行えば脱税行為であると認識し、勘定科目などに注意しながら適切な会計処理を行うようにしましょう。
税理士に監査してもらう
申告数値に誤りがないか、申告漏れがないか注意する必要がありますが、そのためにも税理士からの定期的な監査を受けることが大切です。
年に1回の本決算の際にしか監査を受けていない法人の場合、税理士が確認や修正をするのに時間がかかるほか、ミスが発生するリスクも高くなります。
そのため、規模が大きい法人ほど、月次監査を受け、日頃から適切な会計処理を行えるような仕組みづくりをしておくのが有効です。
資料を適切に管理する
申告内容に関連する領収書などの資料を保管しておかなければ、税務署から指摘を受けた際に証拠を提示して、納得のいく説明をすることができません。
万が一、帳簿のほとんどを紛失していたり、帳簿が著しく不正確であったりする場合は「推計課税」の措置がとられ、実所得より高く所得を推定され、課税額が高くなる恐れがあります。
税務調査では過去5~7年分の資料を見られる可能性があるため、それぞれしっかりファイリングなどして資料を適切に長期保管できるようにしておき、もしものときに管理力の高さを示せるようにしましょう。
また、日頃から資料を整理しておけば、必要な時にすぐに取り出せ、業務効率化にもつながります。
領収書を廃棄しない
領収書は普段の会計処理の際に使うだけでなく、税務調査時の経費の証拠とするために重要なものであるため、帳簿などの資料と同様、適切に管理する必要があります。
領収書の管理方法としては、紙で管理する方法と電子データで管理する方法があり、近年では改正電子帳簿保存法の影響から、電子データで管理する方法が進んでいます。
経理業務の効率化が図れるという点では電子データで管理する方がメリットがありますが、いずれにせよ自社に合った方法で無くさないように保管することが重要です。
条件が揃うと税務調査の対象となる可能性が高くなる!
法人に税務調査が入る確率は1.5〜3.0%程度と考えられており、実施率は決して高くありませんが、企業規模や業種、売上や利益の変動など、条件に当てはまる法人は調査が入る可能性が高くなります。
特に、申告内容に不審な点がある場合や、過去に不正を指摘された法人は、疑われやすくなるので注意が必要です。
たとえ税務調査に入られたとしても、根拠があるものを提出し、説明責任を果たせば問題ありません。
税務調査でミスや不正を指摘されないためにも、適切な経理処理を心掛けるほか、日頃からのリスク管理をしっかり行いましょう。
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