2024.08.2
  • 税務調査

経費の水増しは脱税!税務調査で法人・個人事業主がバレたときのリスクとは

経費

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

法人や個人事業主に対して行われる税務調査では、事業と関係のない支出を経費計上する「脱税」が指摘されることがありますが、どのようなケースで脱税となるのでしょうか。

本記事では、税務調査で指摘されがちな脱税行為や脱税に課されるペナルティについて解説します。

結論として、税金を誤魔化そうと故意に売上を少なく見せたり、費用を偽って計上したりすると、税務調査で指摘され、非常に重い加算税が課される恐れがあるのです。

経費計上できる支出とできない支出、税務調査で指摘された際のリスクについても詳しくまとめました。

単なるミスや税法上の誤解でも、支払うべき税額に加算して支払わなければならなくなるため、ぜひこの記事を参考に、脱税のリスクや適切な申告の大切さを理解し、正しく経費計上しましょう。

脱税とは?

そもそも脱税とは、本来納めなければならない税金の額を意図的に誤魔化し、不当に税負担を軽減させる行為を指します。

税金は事業の売上から経費や所得控除を差し引いた金額に、決められた税率を適用して計算して決まるものです。

そのため、脱税の手法としては不当に売上を少なくする方法と、経費を増やす方法が存在します。

節税との違い

脱税とは間違われやすい言葉に「節税」がありますが、節税は法律の範囲内で税負担を軽減させるための方法をとるものであり、合法的な税金対策です。

例えば、事業のために使った支出を必要経費として計上したり、税金の控除を利用したりする方法などが挙げられます。

そのため、正しく節税を行えば罪に問われることはなく納める税額を抑えられるのです。

脱税に当てはまる行為

では、脱税とはどのような行為を指すのでしょうか。

脱税に当てはまる主な行為は以下の4つです。

  • 売上の過少申告
  • 経費の水増し
  • 二重帳簿の作成
  • 期末在庫の調整

それぞれ詳しく説明していきます。

・売上の過少申告

売上の一部を差し引いたり、現金で受け取った売上を申告しなかったりするなどして、売上を少なく申告することを売上の過少申告といい、脱税にあたります。

売上を本来のものよりも少なく申告すれば、その分納税額も少なくなるので、税負担を軽くできるのです。

売上の過少申告をして納税額を減らそうとする事業者は一定数いるため、税務調査においては売上や仕入れ、在庫などを徹底的に調べて見つけます。

・経費の水増し

脱税でよく行われる行為として、経費の水増しも挙げられます。

これは、領収書を偽造するなどして実際の経費よりも多い金額を経費として計上したり、架空の経費を計上したりするものです。

税法上は、必要経費を多く認めてもらえると、その分課税される所得や税額を減らせるため、それを悪用して経費を水増しする事業者もいます。

・二重帳簿の作成

帳簿を複数作成して売上を本来の額より少なく見せたり、申告している銀行口座とは違う口座を作って、そこに売上を入れたりするなど、二重帳簿を作成しての脱税行為もやってはいけません。

帳簿を複数作成すれば、税務署に対しては1つの帳簿で売上を少なく見せて納税額を少なくできるほか、銀行や株主に対しては利益が大きい帳簿を使って決算書を作成し、評価に繋げようと考える事業者がいるのです。

しかし、税務調査では仕入れや売上、在庫に不審な点があると調査員がすぐに指摘しますし、銀行に出向き、入出金を調べる場合もあるので、見抜かれてしまいます。

・期末在庫の調整

期末在庫を本来のものより少なく申告することも脱税行為にあたります。

期内に売れた商品の仕入れにかかる費用を売上原価といい、納税額を算出する際には、売上から売上原価を引いて計算しますが、在庫を少なく計上し、売れていないものを売れたとして計算して納税額を減らそうと考える事業者もいるのです。

税務調査では在庫チェックも行うため、在庫に不審な点があると、脱税を疑われます。

脱税に対する処分

脱税を行ったことが知られると、事業者に対して重いペナルティが課され、社会的な信用を失うリスクがあります。

税逃れは前述した通り様々なものがありますが、悪質なものほど、処分も重くなるため、正しく申告しなければならないのです。

納税額が少なかったり、税金を納めなかったりした場合には、以下の加算税が課される可能性が高いです。

  • 過少申告加算税
  • 無申告加算税
  • 不納付加算税
  • 重加算税

詳しく説明していきますので、脱税のリスクをしっかり把握しておきましょう。

過少申告加算税

過少申告加算税は、期限内に申告して納税したものの、納税額が本来納めるべき税額よりも過少であった場合に課される加算税です。

過少申告加算税の場合、追加で収める税金の10%に相当する税金が加算されます。

また、期間内に申告した納税額または50万円のいずれか多い金額を超えている場合、超過分に対し15%の税金が加算されます。

無申告加算税

無申告加算税は、確定申告の期限までに申告や納税を行わなかった場合に課される加算税です。

無申告加算税の場合、税務調査が行われる前に自主申告すれば加算税率は5%となります。

しかし、税務調査の通知後に期限後申告を行うと、原則として納税額に対して15%、納付すべき税額が50万円を超える部分は20%課されてしまいます。

このように、状況によって税率が大きく変わるので注意しなければなりません。

不納付加算税

不納付加算税は、減税所得税の納付が納付期限までに行われなかった場合に課される加算税です。

納期限を過ぎ、税務調査が行われる前に自主的な納付をした場合の加算税は5%、税務調査で指摘を受けてから納付する場合には10%の加算税が課されます。

なお、納付が遅延する正当な理由がある場合や、納付期限から1月を経過する日までに納付し、過去1年以内において納付期限内に源泉所得税を納付している場合には、不納付加算税は課されません。

重加算税

重加算税は、意図的に隠ぺいや仮装などを行った場合に課される加算税で、加算税の中で最も重いペナルティです。

故意に事実と異なる申告をしたり、実際よりも少ない納税申告をしたりと、悪質な所得隠しや脱税と判断された場合、無申告加算税や過少申告加算税、不納付加算税に代えて支払わなければならなくなります。

重加算税は、過少申告加算税・不納付加算税に代えて課される場合は35%、無申告加算税に代えて課される場合は40%と税率が高くなるのです。

悪質な場合は刑事罰もあり

重加算税が最も重い加算税ですが、さらに悪質性が高いと判断された場合には、刑事罰として、「10年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金」(法人税法159条1項)となる恐れもあります。

いずれにせよ、ペナルティとならないよう日頃から適切に処理しなければなりません。

脱税はどうしてバレるのか

売上や経費を誤魔化して行われる脱税ですが、ではどうして脱税したことが第三者に知られてしまうのでしょうか。

脱税がバレる主な理由は以下の3つです。

  • 税務調査
  • 関係者からの密告
  • 資産状況

税務調査

脱税は主に、税務署や国税局査察部、通称マルサの調査によって発覚するケースが多いです。

税務調査は法人企業や個人事業主に対して行われ、意図して脱税を行っていなくても申告漏れや不備があると指摘される場合もあります。

たとえ故意によるものではなくても加算税が課されることがあるため、事業を営んでいる法人や個人事業主は顧問弁護士をつけると安心です。

関係者からの告発・通報

従業員や関係者からの告発や通報により脱税が発覚する場合もあります。

国税庁には情報提供の窓口が用意されているため、誰でも脱税の通報行えるようになっているのです。

税務調査は、誰でも平等に行われるものではなく、脱税などの違法行為の恐れがある事業者に絞って行われるため、告発や通報による情報を元に調査を行い、疑わしいと判断されると税務調査の対象となります。

資産状況

税務署は法人や個人事業主の資産や高い買い物までチェックしています。

そのため、資産を取得したにもかかわらず税金の支払いをしていなかった場合にはすぐに分かってしまうのです。

また、資産状況に合わない支出があったり、入出金に不自然な点があったりすると、税務調査に至るケースがあります。

これは脱税になる?経費計上できる支出・できない支出

支出の中には、経費として計上できるのか判断が難しいケースがあります。

そのため、意図していなくても税務調査で脱税を疑われる場合があるのです。

ここでは、経費として認められる支出、認められない支出について説明していきます。

経費として認められる支出

必要経費を計上すると税額を抑えられるのが事業者側の大きなメリットですが、税務調査で脱税を指摘されないためにも、経費を正しく計上することが大切です。

経費となる代表的な勘定科目は以下の通りです。

  • 人件費
  • 消耗品費
  • 接待交際費
  • 旅費交通費
  • 研究開発費
  • 新聞図書費
  • 通信費
  • 広告宣伝費
  • 地代家賃
  • 減価償却費
  • 福利厚生費
  • 修繕費
  • 支払手数料
  • 租税公課

それぞれの特徴をまとめたので、把握しておきましょう。

人件費

従業員に対する給与、賞与、退職金など。
事業者が人を雇用することで発生する費用。

消耗品費 耐用年数が1年未満、もしくは10万円未満のものを購入したときにかかる費用。
接待交際費 会食や冠婚葬祭で渡す香典、祝金など、事業に関わる飲食代や謝礼などの費用。
旅費交通費 社内の人間が業務で使用した交通費や宿泊代など。
研究開発費 商品もしくはサービスの開発のための費用。
新聞図書費 新聞や雑誌など、事業に必要な情報や知識を得るための費用。
通信費 業務で使った携帯電話料金やインターネット回線、切手代や配送料など、通信関係の費用。
広告宣伝費 商品やサービスを宣伝するためにかかる費用。
地代家賃 事業に必要なオフィスや店舗、駐車場などの賃料など。
減価償却費 建物や車など、事業に必要な固定資産の購入額を耐用年数に合わせて分割し、その期ごとに費用として計上するための勘定科目。
福利厚生費 企業が従業員に対して支払う給料以外の非金銭報酬。
修繕費 固定資産の維持管理や修理のために必要な費用。
支払手数料 金融機関の振込手数料や弁護士、税理士の報酬など。
租税公課 国に納める税金(租税)と、公共団体へ納める会費や罰金(公課)。

経費として認められない支出

以下のような費用は、支払いをしても必要経費となりません。

  • 家事費・家事関連費
  • 経費計上できない税金
  • 罰金、科料および過料など

それぞれ説明していきますので、誤った仕分けをしないためにも把握しておきましょう。

家事費・家事関連費

家事費とはいわゆる生活費で、個人事業主とその家族が消費する食費、娯楽遊行費、医療費などがこれにあたります。

事業とは全く関係のないプライベートの支出であるため、当然ながら経費として計上できません。

また、自宅兼事務所の家賃や水道光熱費、火災保険、通信費、事業でも使用する車の減価償却費などは税務調査において判断が難しい場合があります。

業務を行うにあたっての必要性が明らかにならなければ、必要経費とは認められないため、注意しましょう。

経費計上できない税金

以下に該当するものは、税金でも経費計上できません。

  • 所得税
  • 住民税
  • 相続税
  • 贈与税

所得税や住民税は事業主が個人として支払う税金であり、控除される必要経費にはなりません。

また、相続税や贈与税も、事業ではなく個人が取得した財産に対して課される税金のため、経費にはなりません。

罰金、科料および過料など

罰金や科料および過料などは原則として経費計上できません。

罰金などを経費にすると結果として節税効果が得られてしまうので、それを防ぐ意味もあります。

経費を正しく計上して脱税の疑いを晴らそう

税務調査で脱税だと指摘されると、重加算税のように重いペナルティが課され、税負担が大きくなるほか、社会的信用も失うリスクがあるので、売上や経費を偽装せず、正しく申告しなければなりません。

経費の中には明確に経費と判断できるものと税法上の解釈の違いによって判断が変わるものがあります。

そのため、経費として計上できるかどうか不安な支出がある場合は、税務調査で脱税と疑われないためにも、税理士に相談してみるのがおすすめです。

 


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